各磁性のスピン磁気モーメント配列
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常磁性はスピン間に相互作用がありません。そのため、外部磁界がない場合スピン磁気モーメントは自由に熱振動してバラバラの方向を向いており、全体的な磁化も0です。磁界をかけると熱振動が抑えられ、スピン磁気モーメントが少しずつ磁界の方向に向くようになります。
強磁性は隣り合うスピンを同じ向きにそろえようとする相互作用があり、スピン磁気モーメントもそれにならうため、常磁性のようにスピン磁気モーメントがバラバラの向きを向くことがありません。磁界がなくても規則的かつ同じ向きに配列し、ひとりでに強い磁化を形成します(自発磁化)。
反強磁性にもスピン間に働く相互作用がありますが、強磁性と違い隣り合うスピンを互いに反対向きにそろえようとする相互作用です。隣り合うスピン磁気モーメントも互いに反対向きで打ち消し合うため、磁界がないときは常磁性と同じく磁化が0になります。
反磁性、強磁性との違い
反磁性は磁界に対し逆向きに磁化する磁性です。反強磁性は名前に「反」がついていますが、常磁性と同じく磁界の向きに磁化します。強磁性と反強磁性の違いは前述の通り、隣り合うスピンおよびスピン磁気モーメントが同じ向きに整列しているか、逆向きに整列しているか、です。
フェリ磁性について
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酸化鉄を主成分とするセラミックス・フェライトに代表されるフェリ磁性も、反強磁性と同じく隣り合うスピンが反対方向に向いています。しかし、隣り合うスピン磁気モーメントの大きさが異なるため、全体としてスピン磁気モーメントが打ち消されず、自発磁化を形成するのです。
反強磁性を示す物質
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反強磁性を示す物質(反強磁性体)は、酸化マンガンMnOや酸化ニッケルNiOなど、酸化物が多いです。また、単体のクロムCrやマンガンMnは、複雑なスピン配列を持っていますが、スピン磁気モーメントが打ち消し合って全体的な磁化がないため、広義的に反強磁性とみなされています。
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反強磁性の原理と特徴
反強磁性の主な要因となる超交換相互作用や、特徴的な磁化過程について述べていきます。
超交換相互作用とは
反強磁性の主な要因である、隣り合うスピンが互いに逆向きを向くような量子力学的相互作用を、超交換相互作用といいます。これは、磁性イオンの間に酸素Oや塩素Clなどの陰イオンが存在することで起こる相互作用です。また、強磁性の要因である交換相互作用によっても、反強磁性的なスピン配列が起こる場合があります。
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