由来が違う?語源から見るワイバーンとドラゴン
似ているドラゴンとワイバーンですが、言葉の由来はまったく違います。ドラゴンとドレイクはどちらも古代ギリシャ語で「大蛇」、「錦蛇」、「巨大な海の怪物」といった意味の言葉が由来です。そこからラテン語、古フランス語を経て英語になったのがドラゴン。ラテン語、古英語から英語になったのがドレイクです。つまり、ドラゴンもドレイクも言葉の先祖は同じということになります。
一方、ワイバーンは「毒蛇」を意味するラテン語から古フランス語を経て英語になったようです。毒蛇にバイパー(クサリヘビ)という種類がありますが、このバイパーと同じ語源になります。蛇という共通点はありますが、語源は違うのです。
どちらが強い?ワイバーン対ドラゴン
一般的にはドラゴンはモンスターの頂点とも言える強さなので、ドラゴンの方が強いイメージですよね。よくあるのは恐竜のような姿で、口から毒や炎の息(ブレス)を吐きます。ただ、中には東洋の竜のように細長いヘビのような姿のものもあり、翼や手足の有無や数も様々。また神話の中ではドラゴンは悪魔と同一視されたり、邪悪な存在とされることも多いです。知性も高く、魔法を使うものや中には人間の姿になることが可能なものも。
それに比べるとワイバーンは飛ぶことに特化したイメージですよね。ドラゴンが「飛べないか飛ぶこともできる」であるのに対してワイバーンは「飛ぶ」のが当たり前。その代償としてドラゴンに強さも知性も劣るという設定が多いです。強さという点ではドラゴンに軍配が上がりそうですね。だからこそ、ドラゴンが有名なのに対してワイバーンの知名度が今ひとつなのかもしれません。
RPGでドラゴンも進化?ゲームとドラゴン、ワイバーン
ドラゴンもワイバーンも神話の時代から存在しています。ただ、その頃のドラゴンやワイバーンは邪悪な存在で破壊の権化といったイメージ。知性もあるが獰猛で、人間に対して悪意を持つというのがパターンでした。
そこに登場したのが「ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)」というRPGです。D&Dにもドラゴンやワイバーンが登場します。それをきっかけにRPGと言えばドラゴンが出てくるように。当初は洞窟などに住んでいて金銀財宝をため込んでいるというのが定番でした。その時々のクリエイターたちの手によって様々な要素が追加、洗練されドラゴンも多様化していきます。今では人間に味方したり、尊敬を集めるようなドラゴンも。神話や伝説の存在からより身近なものに変わってきたわけです。
ドラゴンから分かれて紋章で発展したワイバーン
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ドラゴンとワイバーンの違いを見てきましたが、ワイバーンはどうしてもドラゴンに一歩およばないイメージですよね。ドラゴンが出てこないゲームは少ないですが、ワイバーンが出てこないものも多いです。そんなワイバーンですが実はイギリスでは人気が高く、しっかりと区別されています。
その理由が紋章。主にヨーロッパで個人や家系、組織・団体を象徴するのが紋章です。今風に言えばSNSのアイコンですね。古代ギリシャや古代ローマの時代から使われていたとされています。特に貴族や騎士につきものです。そこから現在でも軍隊で紋章のようなものが登場します。その図案の中でもイギリスで人気が高いのがワイバーンなのです。
実はイギリス特有なワイバーンの区別
ドラゴンとワイバーンは足の数が違うとざっくり説明しました。実はイギリス以外では特に区別されていないことも多いです。また、そのイギリスでも両者を明確に区別するようになったのは400年くらい前で、それ以前は4本足のワイバーンや2本足のドラゴンも存在していました。
そのように区別するようなきっかけになったのが紋章です。もともとは「ワイバー」という二足の竜が13世紀にイングランドで紋章に使われていたのが確認されています。このワイバーはワイバーンとは違い、トカゲの姿で翼もないことも。しかし、エリザベスI世の時代に紋章を管理する紋章官がワイバーのことを「ワイバーン」としてしまったことが発祥という説もあります。
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