カマスは塩焼きや干物以外にもさまざまな食べ方ができるぞ。カマスを安全に美味しく食べるためには、正しい下処理が必要です。カマスのような中型魚には、少し変わったおろし方や保存方法がある。この記事ではカマスの下処理や保存方法、おすすめの食べ方まで現役料理人のテルトラと解説していきます。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。得意分野は魚料理。

カマスの基本的な下処理

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傷みやすいウロコ・エラ・内臓を、真っ先に取り除きます。カマスのような肉食魚は、どんな食べ方でも内臓を取ったほうが安全です。未消化の小魚などに残っている細菌が、繁殖している恐れがあります。刺身の場合は頭自体を落とすので、エラを取る必要はありません(姿造りを除く)。

カマス以外にも使える大名おろし

カマスのような細い魚をおろすときは、「大名おろし」というおろし方が有効です。1回で片身を切り離せるので、三枚おろしより身に負担がかかりません。骨に身が多く残りますが、大名のように気前よく贅沢におろすのが大名おろしです。

【基本的な下処理】
カマスは「頭左・腹手前」にして置く
1.包丁の刃先でウロコをこそぎ落とす
2.胸ビレの後ろから斜めに頭を落とす
3.肛門から包丁を入れて腹を開く
4.包丁の刃先で内臓をかき出す
5.血合い部分を水で洗い流す
6.水気をしっかり拭き取る

【大名おろし】
カマスを「頭右・腹手前」にして置く
1.頭側から包丁を入れ背骨に沿って片身をはがす
2.裏返し反対側も頭側から一太刀で切りはがす

背骨(真ん中の太い骨)の上を、滑らせるように包丁を動かすのがコツです。包丁の刃を気持ち下向きにすると、身が残りにくくなります。

塩焼きを美味しくする塩締め

塩締めとは、調理前の魚に塩を振り余分な水分を抜く下処理のことです。水分の中に含まれる臭みを抜き、カマス本来の旨みを凝縮させます。

1.ウロコ・エラ・内臓を取ったカマスに薄く塩を振る
2.丸ごと1尾なら20~30分・切り身なら10~15分放置
3.カマスの表面に浮き出た水分をよく拭き取り完了

水分が残っていると、仕上がりが生臭くなります。浮き出てる水分内に、カマスの臭みが含まれているからです。キッチンペーパーなどを使い、丁寧に拭き取りましょう。

\次のページで「干物するなら背開き」を解説!/

干物するなら背開き

カマスの場合「片袖開き」という特殊な開き方が主流です。頭を付けたまま背開きにするやり方で、アジやサンマなどに用いられます。焼くときに高さを安定させることや、盛り付けの見栄えを良くするのが目的です。

1.ウロコとエラを取ったカマスを「頭右・背を手前」にして置く
2.背側からエラ蓋を開いて頭の付け根に包丁を入れる
3.背骨に沿って尻尾まで切り込みを入れる
4.背骨から腹骨を断ち切り背開きにする
5.手で内臓を取り血合いを水洗いする

三枚おろしと同じ要領で、背側だけ切り裂きます(腹側はつながったまま)。開いたカマスは塩分濃度3~4%の塩水に90分漬け込んでから、冷蔵庫などで24時間以上干します。

一味違ったカマスの美味しい食べ方

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味にクセがないカマスは、焼き物や刺身以外の食べ方も可能です。皮目の美味しさや、繊維質な白身の食感を活かした調理法をご紹介します。

1.皮目が美味しいポワレ
2.サクサク食感のフライ
3.フワフワ食感のつみれ

塩締めの下処理を忘れずに行いましょう。水分が残っていると焼き目が付かなかったり、つみれがまとまらなかったりします。

#1 皮目の美味しさを楽しめるポワレ

ポワレは適量の油を引いたフライパンで、肉や魚をカリッと焼く調理方法です。皮目の脂が多い魚や、皮が厚い魚に向いています。油やバターを使って揚げ焼き状態にし、皮はカリカリ・身はふんわりと仕上げるのが狙いです。

ポイントは「アロゼ」という工程をはさむこと。食材から出た脂をスプーンですくい、食材に回しかける技法です。高温の脂が食材にかかり、揚げ焼き状態になります。ただし下処理の段階で、カマスをしっかり脱水しておくことが重要です。水分が残っていると、臭みを含んだ脂をかけることになります。

#2 外サク中フワ食感が味わえるフライ

通常のフライと作り方は同じ。おろしたカマスの半身に、小麦粉・卵・パン粉をまぶして揚げるだけです。コツは下処理にあります。

\次のページで「鍋や汁物にピッタリのつみれ」を解説!/

・塩締めで水分をしっかり抜くこと
・骨を丁寧に取り除くこと

カマスは水分が多いため、本来は揚げ物に向いていません。時間をかけて水分を抜き、長所である強い旨みを引き出しましょう。パン粉が湿らないので、油跳ねを防いでサクッと揚がります。フライ用に下処理する場合、塩締めの時間は20分以上が目安です。

カマスの骨は細くて硬いので、喉につかえる恐れがあります。血合い部分にある骨は、骨抜きを使って1本残らず取り除きましょう。食べやすくなり、お子さまやご年配の方でも安心です。

#3 鍋や汁物にピッタリのつみれ

下処理でしっかり水分を抜くと、まとまりやすくなります。カマスは皮を引き、塩を振って20分以上脱水しましょう。

もっちりとしたつみれにするコツは、粘り気を出すこと。皮を引いたカマスの身を細かく刻み、包丁で叩くだけです。叩けば叩くほど粘り気が出て、加熱したときモチモチの食感になります。口当たりを滑らかにする「つなぎ」は、卵・油脂類・ねぎ・粉物がおすすめです。

フワフワの食感にしたい場合は、空気を含ませながらよくすります。フードプロセッサーを使うと簡単です。山芋やはんぺんを加えると、よりふんわりと仕上がります。

カマスの正しい保存方法

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カマスの保存方法で重要なことは2つ。

・水分(ドリップ)をよく拭き取る。
・空気に触れないよう密封すること。

カマスの保存にも塩締めが役立ちます。塩を振ることで、腐敗の原因となる水分が抜けるからです。脱水処理したカマスを保存袋に入れて密封すれば、上記2つのポイントをクリアできます。

保存の際は、尖ったカマスの頭は落としてください。保存袋が損傷したり、保存スペースがなくなったりするからです。落とした頭は骨せんべいや唐揚げで食べられるので、別袋で冷凍保存しましょう。

冷蔵保存

チルド室(0℃)で低温保存するのが鮮度を保つコツ(鮮魚の保存に適した温度は0~3℃)。

【冷蔵保存方法】
1.下処理をしたカマスの水気をよく拭き取る
2.キッチンペーパーとラップでピッタリ包む
3.保存袋に入れてしっかり空気を抜く
4.毎日キッチンペーパーを交換する

保存期限:2~3日

アルミ製のバットに乗せたまま、冷蔵庫に入れるのがおすすめです。熱伝導率が高いため、短時間で冷やせて劣化も遅らせられます。丸ごと1尾の場合は、お腹の中にもキッチンペーパーを入れておきましょう。もっとも腐敗しやすい腹部を清潔に保てます。

冷凍保存

切り身の場合は冷蔵保存とほぼ同じ。水気を取ったカマスをラップでピッタリ包み、保存袋に入れて密封するだけです。アルミ製バットに乗せると、急速冷凍できます。

丸ごと1尾の場合は「氷漬け冷凍」がおすすめです。カマスを水に浸けたまま冷凍することで、氷の膜が全身を覆い乾燥から守ります。カマスのように小型~中型の魚に向いている保存方法です。

【氷漬け冷凍方法】
1.すぐに冷えるようカマスの腹に氷を詰める
2.深めの容器に並べてかぶるくらい水を張る
3.水がもれないよう蓋をして冷凍庫へ入れる

保存期限:1~2ヶ月ほど。

仕込み冷凍

下ごしらえをしてから冷凍保存する方法で、すぐに調理できて時短につながります。カマスのフライやすり身、干物などにおすすめの保存方法です。

【フライ・すり身】
1.ラップを敷いたアルミバットに1個ずつ並べて冷凍する
2.完全に凍ったらバットから取り外し保存袋で密封する

【干物】
1枚ずつラップに包み保存袋で密封する

フライやすり身は一度完全に冷凍させると、1個ずつ取り出せて便利です。干物は冷凍庫内の他の食材に臭いが移らないよう、しっかり密封しましょう。

正しい解凍方法

丸ごと1尾や切り身の冷凍カマスは、流水で短時間に解凍するのが基本。解凍に時間がかかると、解ける過程で劣化するからです。カマスに直接水がかからないよう、密封したまま流水にあてます。

仕込み冷凍したカマスは、冷蔵庫内でじっくり自然解凍してください。水にあてると形が崩れたり、パン粉が湿ったりします。電子レンジや常温での解凍はNGです。電子レンジで解凍すると火が入り、常温解凍では細菌が繁殖して食中毒の危険が高まります。

正しい下処理と保存方法でカマスを安全に美味しく食べよう

カマスのいろいろな食べ方がわかりましたね。カマスは魚体が細いので、身に負担がかからない大名おろしが主流です。同様の理由で干物にする場合も、頭を付けたまま背開きにします。下処理の段階で、余分な水分を抜いておくことが重要です。カマス本来の旨みを凝縮し、腐敗の原因を取り除けます。

保存方法のポイントは、水気をよく拭き取りしっかり密封すること。正しい下処理と保存方法を覚えることで、いつでも美味しいカマスを安全に食べられます。

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家庭科

カマスの正しい下処理と保存方法は?定番以外の美味しい食べ方も現役料理人が詳しくわかりやすく解説

カマスは塩焼きや干物以外にもさまざまな食べ方ができるぞ。カマスを安全に美味しく食べるためには、正しい下処理が必要です。カマスのような中型魚には、少し変わったおろし方や保存方法がある。この記事ではカマスの下処理や保存方法、おすすめの食べ方まで現役料理人のテルトラと解説していきます。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。得意分野は魚料理。

カマスの基本的な下処理

image by iStockphoto

傷みやすいウロコ・エラ・内臓を、真っ先に取り除きます。カマスのような肉食魚は、どんな食べ方でも内臓を取ったほうが安全です。未消化の小魚などに残っている細菌が、繁殖している恐れがあります。刺身の場合は頭自体を落とすので、エラを取る必要はありません(姿造りを除く)。

カマス以外にも使える大名おろし

カマスのような細い魚をおろすときは、「大名おろし」というおろし方が有効です。1回で片身を切り離せるので、三枚おろしより身に負担がかかりません。骨に身が多く残りますが、大名のように気前よく贅沢におろすのが大名おろしです。

【基本的な下処理】
カマスは「頭左・腹手前」にして置く
1.包丁の刃先でウロコをこそぎ落とす
2.胸ビレの後ろから斜めに頭を落とす
3.肛門から包丁を入れて腹を開く
4.包丁の刃先で内臓をかき出す
5.血合い部分を水で洗い流す
6.水気をしっかり拭き取る

【大名おろし】
カマスを「頭右・腹手前」にして置く
1.頭側から包丁を入れ背骨に沿って片身をはがす
2.裏返し反対側も頭側から一太刀で切りはがす

背骨(真ん中の太い骨)の上を、滑らせるように包丁を動かすのがコツです。包丁の刃を気持ち下向きにすると、身が残りにくくなります。

塩焼きを美味しくする塩締め

塩締めとは、調理前の魚に塩を振り余分な水分を抜く下処理のことです。水分の中に含まれる臭みを抜き、カマス本来の旨みを凝縮させます。

1.ウロコ・エラ・内臓を取ったカマスに薄く塩を振る
2.丸ごと1尾なら20~30分・切り身なら10~15分放置
3.カマスの表面に浮き出た水分をよく拭き取り完了

水分が残っていると、仕上がりが生臭くなります。浮き出てる水分内に、カマスの臭みが含まれているからです。キッチンペーパーなどを使い、丁寧に拭き取りましょう。

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