カマスの旬は2回あることを知っているか?産卵前だけでなく、産卵後もすぐに脂の乗りが戻ってくる。旬のカマスの旨さは、ことわざになるほど有名です。この記事ではカマスの種類や旬の時期について、現役料理人のテルトラと解説していきます。新鮮なカマスの選び方も紹介しているので参考にしてくれ。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。得意分野は魚料理。

代表的なカマスは2種類

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一般に流通するカマスは次の2種類です。

・アカカマス(本カマス)
・ヤマトカマス(水カマス)

アカカマスのほうが味が良く、市場価値も高いです。安価なヤマトカマスは水分量が多いため、干物に加工されます。水分を抜くことで雑味が抜け、旨みが凝縮されるからです。

#1 もっとも味がよいアカカマス

一般的にカマスといえばアカカマスのことで「本カマス」とも呼ばれます。ヤマトカマスと比べて腹ビレが背ビレよりも前に生えており、全体的に黄色がかっているのが特徴です。体長40cm前後まで成長し、大型のものは高級魚として高値で取引されます。

アカカマスは「カマスの一升飯」と言うことわざがあるほど味が良い魚です(カマスの塩焼きが1尾あれば、他におかずがなくても一升(1.5㎏)は飯が食えるという意味)。旬が2回あるためほぼ一年中出まわり、冬以外は安定して入荷します。

#2 干物によく使われるヤマトカマス

「水カマス」と言われるほど水分が多い魚です。体長35㎝前後まで成長し、背ビレと腹ビレがほぼ同じ位置から生えています。ウロコが小さくはがれやすいので、刺身などの料理には向きません。皮には厚みがあり、骨は細いわりに硬いのが特徴です。白身には透明感があり、大きめの血合いはすぐに黒く変色します。

夏の終わりから秋にかけて流通量が増え、アカカマスと比べて安価です。干物に適した秋口に旬を迎えるため、鮮魚の状態で販売されることはほぼありません。

それぞれの産地は?

カマスは温暖な海域を好み、関東より南の地域が主な産地です。日本海側では、ヤマトカマスよりもアカカマスが多く漁獲されます。

\次のページで「カマスが美味しくなる旬の時期は?」を解説!/

【主な産地】
アカカマス‥富山県・神奈川県・愛媛県・長崎県・熊本県
ヤマトカマス‥神奈川県・千葉県・鹿児島県

【有名な産地】
太平洋側‥神奈川県・鹿児島県
日本海側‥富山県・長崎県

主な漁法は刺し網・定置網・底びき網などで、産地によって異なります。カマスはウロコがはがれやすいため、魚に負担がかからない漁法が鉄則です。

カマスが美味しくなる旬の時期は?

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カマスの種類によって産卵期が異なるため、必然的に旬の時期もずれます。産卵後すぐに脂が戻るアカカマスは2度旬を迎え、初夏に産卵するヤマトカマスは秋口が旬です。トータルすると真冬の時期(1~2月)以外は、通年カマスが出まわっていることになります。

アカカマスの旬は2回

アカカマス(本カマス)の旬は、秋から初冬にかけてと春先の2回です。夏に産卵し一時やせ細りますが、すぐに脂が戻り秋口には再び旬を迎えます。10~12月は脂がしっかりと乗り、3~4月は産卵前で活発に餌を食べるので栄養価が高いです。

秋のカマスは塩焼き、産卵前の春先は新鮮なら刺身でも食べられます。とくに秋の旬は「秋カマスは嫁に食わすな」と言うことわざがあるほど脂が乗って美味です(嫁に食べさせたくないほど、旨いものであるという意味)。

ヤマトカマスの旬は夏

ヤマトカマス(アオカマス)の旬は、夏から秋口にかけてです。春〜初夏に産卵期を迎え、夏の終わり頃から再び脂が乗り始めます。漁獲量も8月下旬から秋にかけて増え始め、8~11月がピークです。

とはいえ、水分が多いヤマトカマスは干物にされることが多く、旬の時期に鮮魚の状態で流通することはありません。秋口は干物づくりに適した季節であることも、加工される要因です。

2種類の相場価格は?

スーパーなどの小売店では、どちらもカマスという名前で販売されています。

\次のページで「新鮮なカマスの選び方5選」を解説!/

・アカカマスの相場‥1㎏あたり:600~800円・1尾あたり:84~112円
・ヤマトカマスの相場‥1㎏あたり:400~600円・1尾あたり:56~84円

カマスはサイズが大きいほど市場価値が高く、新鮮なアカカマスはキロ1300~2000円の高値が付きます。また、太平洋側で獲れたものより、日本海側のほうが値段は高めです。

新鮮なカマスの選び方5選

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新鮮で脂が乗ったカマスの選び方は、下記の5つです。見た目で判断するときは、照明の真下は避けましょう。光の加減で、色ツヤなどが正確に見分けられないからです。

1.目が透き通っている
2.全体的に丸みがある
3.ウロコが残っている
4.張り(弾力)がある
5.エラがキレイな赤色

パック詰めされていない場合は、匂いも確認しましょう。新鮮なカマスは臭みがなく、脂が乗っているものはいい香りがします。

1.目が透き通っている

新鮮なカマスの目は透明感があり、黒目がくっきりしています。白く濁ったり黒目がぼやけているものは、鮮度が落ちている証拠です。

ただし、氷漬けになっている場合は低温状態が長過ぎるせいで、新鮮でも目が濁ります。目の透明な部分が、丸みを帯びているかを確認しましょう。新鮮な魚の目はコンタクトレンズのような丸みがあり、鮮度が落ちると眼球が凹んできます。

\次のページで「2.全体的に丸みがある」を解説!/

2.全体的に丸みがある

脂が乗ったカマスは、腹だけでなく背中まで丸みを帯びています。魚は頭の後ろに栄養を蓄えるので、背中側にも脂がまわり膨らむのです。腹だけが丸いものは、選ばないようにしましょう。内臓に脂肪が付いているだけか、食べた餌を消化しきれていない可能性があります。

また、カマスを寝かせて上から見たときに、腹から背中までの幅が太いほど肉厚な証です。

3.ウロコが残っている

基本的に状態がいい魚は丁寧に扱われているので、傷がなくウロコもきちんと残っています。カマスの場合はとくに入念なチェックが必要。水分が多いため身がやわらかく、ウロコがはがれやすいからです。乱暴に扱えばすぐに傷ついたり、身がボロボロになったりします。身にダメージをうけた魚は傷みやすく、味も食感もよくありません。

ウロコを見るついでに、魚体の色ツヤもチェックしましょう。魚の体は粘膜で覆われており、鮮度が落ちると粘膜が白く濁るのでよく見ればわかります。

4.張り(弾力)がある

獲れたてのカマスは死後硬直が解けていないため、張りや弾力があります。指で押したとき、跳ね返ってくるものは新鮮な証拠です。時間がたち死後硬直が解けると、身がやわらかくなり凹んだままになります。

とくに見るべきなのは腹部です。鮮度が落ちると、内臓が溶けてお腹がブヨブヨになります。内臓部分は細菌が繁殖しやすく、真っ先に腐敗するからです。酷いものは裂けた腹や肛門から、溶けた内臓が流れ出ています。

5.エラがキレイな赤色

新鮮なカマスは、エラがキレイで鮮やかな赤色です。鮮度が落ちると、ドス黒く変色してきます。頭のすぐ後ろにある、エラ蓋を指で開いて見るだけです。ただし、エラ部分は鋭利なので、指を滑らせないよう注意してください。

エラは鮮度の差が出やすいので、魚を見慣れていない人でもすぐわかります。海水中の細菌が溜まりやすいため、劣化するのも早い部位です。カマスに触って選べる場合は、真っ先に確認しましょう。

新鮮な旬のカマスを選ぼう

カマスの種類や旬の時期がわかりましたね。分類上は20種類ですが、実は一般に流通するのは2種類なのです。味が良く市場価値が高いアカカマスと、干物でお馴染みのヤマトカマスと覚えましょう。カマスの旬は複数回あり、真冬以外は通年出まわります。

新鮮なカマスの選び方は、目の透明感やエラの色を見ると簡単です。裸で売られている場合は、臭みがないかも確認しましょう。旬のカマスは脂が乗って美味です。ぜひ味わってみてください。

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家庭科

新鮮なカマスの選び方5選!種類ごとに違う旬の時期も現役料理人が詳しくわかりやすく解説

カマスの旬は2回あることを知っているか?産卵前だけでなく、産卵後もすぐに脂の乗りが戻ってくる。旬のカマスの旨さは、ことわざになるほど有名です。この記事ではカマスの種類や旬の時期について、現役料理人のテルトラと解説していきます。新鮮なカマスの選び方も紹介しているので参考にしてくれ。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。得意分野は魚料理。

代表的なカマスは2種類

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一般に流通するカマスは次の2種類です。

・アカカマス(本カマス)
・ヤマトカマス(水カマス)

アカカマスのほうが味が良く、市場価値も高いです。安価なヤマトカマスは水分量が多いため、干物に加工されます。水分を抜くことで雑味が抜け、旨みが凝縮されるからです。

#1 もっとも味がよいアカカマス

一般的にカマスといえばアカカマスのことで「本カマス」とも呼ばれます。ヤマトカマスと比べて腹ビレが背ビレよりも前に生えており、全体的に黄色がかっているのが特徴です。体長40cm前後まで成長し、大型のものは高級魚として高値で取引されます。

アカカマスは「カマスの一升飯」と言うことわざがあるほど味が良い魚です(カマスの塩焼きが1尾あれば、他におかずがなくても一升(1.5㎏)は飯が食えるという意味)。旬が2回あるためほぼ一年中出まわり、冬以外は安定して入荷します。

#2 干物によく使われるヤマトカマス

「水カマス」と言われるほど水分が多い魚です。体長35㎝前後まで成長し、背ビレと腹ビレがほぼ同じ位置から生えています。ウロコが小さくはがれやすいので、刺身などの料理には向きません。皮には厚みがあり、骨は細いわりに硬いのが特徴です。白身には透明感があり、大きめの血合いはすぐに黒く変色します。

夏の終わりから秋にかけて流通量が増え、アカカマスと比べて安価です。干物に適した秋口に旬を迎えるため、鮮魚の状態で販売されることはほぼありません。

それぞれの産地は?

カマスは温暖な海域を好み、関東より南の地域が主な産地です。日本海側では、ヤマトカマスよりもアカカマスが多く漁獲されます。

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