BSDとLinuxを知っているか。どちらもUNIXというOSを参考にしたOSです。ただLinuxは知っていてもBSDは知らないという奴もいるかもしれませんね。今はLinuxが有名で主流ですが、これもBSDがあってこそです。なぜUNIXではなくBSDやLinuxが登場したのか、両者の考え方の違いは何かを、実際にBSDやLinux経験者でプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。パソコンにBSDやLinuxを入れたこともあるが現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさんです。

BSDはアメリカの大学発祥、Linuxは個人が開発

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普段なじみのあるOSといえばWindowsやmacOSですよね。しかし、Webアプリやサービスなどでは別のOSが使われていることが多いです。それがBSDやLinux

どちらもUNIXというOSが元になっているためUNIX系OSと呼ばれます。では、このBSDとLInuxはどういう特徴があって何が違うのか。ざっくり言えば大学がつくったのがBSD、個人がつくったのがLiunuxです。目的は同じで用途も似ていますが、何が違うのか、どういう特徴がありどう使われているのかを解説していきます。

BSD:研究用からはじまったUNIX系OS

BSD(ビーエスディー)とは「Berkeley Software Distribution」の頭文字をとったものです。1977年から1955年にかけて、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校がつくって配布していました。正確にはOS以外にも様々なソフトウェアが配布しています。その中でもBSD UNIXが有名なので、BSDと言えばBSD UNIXのことであることが多いです。

その後、バークレー校はBSD UNIXの作成を終了。オープンソースのOSとしていくつかのグループがBSD UNIXの後継の作成を続けています。まず386BSDが登場しましたが作業が止まってしまって生まれたのがFreeBSDとNetBSDです。この2つは主にパソコン向けか、さまざまなコンピュータで動かすかの方針の違いで分かれました。さらに方針の違いで派生して、以下の様に分かれています。

・386BSD ※パソコン向け
 ・NetBSD ※パソコン以外も対象
  ・OpenBSD
   ・Bitrig
 ・FreeBSD ※主にパソコン向け
  ・macOS
  ・DragonFly BSD

Linux:趣味からはじまったUNIX系OS

Linux(リナックス)は1991年に登場します。当時ヘルシンキ大学の学生だったリーナス・トーバルズパソコン用に個人でつくり始めたのです。これを世界中に公開したため、多くの開発者がLinuxの作成に関わる様になります。

このLinuxの作成作業は当初はOSの心臓部分であるカーネルという部分のみです。しかし、その後Linuxの将来性に目をつけた個人や団体、会社がカーネル以外の部分もつくり、パッケージとして公開します。これがディストリビューションです。Linuxデイストリビューションの登場でLinuxが広く普及します。

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すべてはUNIXから!後継のBSDと、作り直したLinux

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BSDもLInuxもUNIX系OSです。これはどちらもUNIXを参考にしているため。ただ、この2つには大きな違いがあります。BSDはUNIXそのものから生まれたものであるのに対して、LinuxはUNIXを参考にして0からつくったのです。いわばUNIXの子孫がBSDなのに対して、Linuxは似ているが他人ということになります。

その違いがなぜ生まれたのか、UNIXがどんなものかというところから見ていきましょう。

現代のOSの多くが手本にしたUNIX

UNIX(ユニックス)は1969年にアメリカのAT&Tベル研究所でつくったOSです。UNIXは有償ですが、そのソースプログラムは公開されます。そのため、ベル研究所以外にも多くの組織、団体、会社がUNIXをベースにしたOSをつくったのです。ベル研究所のUNIX以外のこれらの派生OSも含めてUNIXと呼ばれます。さらに、BSDやLinuxなどのUNIXを元にしたOSもUNIX系OSと呼ばれたのです。

パソコンではWindowsやmacOSを使う人が多いかと思います。一方、会社内やネットで提供されるWebアプリやサービスで使うコンピュータにはUNIX系OSが使われることが多いです。これらのコンピュータをサーバー・コンピュータ、そこで動くOSをサーバーOSと呼びます。サーバーOSとしてUNIX系OS、そしてBSDやLinuxが広く使われているのです。

UNIXとライセンス問題、そしてBSDが生まれた

UNIXはソースコードが公開され、改良することもできます。様々な団体、会社が独自のUNIXをつくりますが、その1つがBSD UNIXです。ただ、UNIXを使うにはAT&Tにライセンス料金を支払う必要があります。BSD UNIXもBSDがつくった部分は無償で使えますが、AT&Tがつくった部分はライセンスが必要です。そこでBSDはAT&Tのラインセスが不要な新しいBSD UNIXをつくります。

この新しいBSD UNIXをパソコンで動くようにしたのが最初に紹介した386BSDです。ここからOpenBSDやFreeBSDといった〇〇BSDが登場し、フリーなUNIX系OSとして普及します。

自由を求めて!ライセンス問題が生んだLinux

この新しいBSDですが、残念なことに本家UNIXから訴えられてしまいます。その結果、〇〇BSDも作業が中断。それでは利用者も安心して使えませんよね。そこで登場したのがLinuxです。実はリーナスは自分でOSをつくろうとは考えていませんでした。386BSDが入手困難になったのでLinuxを作ったと後で語っています。無ければつくってしまおうということですね。

ライセンス問題に起因する訴訟は1992年から2011年まで続きます。その間にLinuxはフリーのUNIX系OSとして広く広がったのです。結果としてサーバーOSとしては〇〇BSDよりもLinuxが使われています。

パソコンで使うBSDとLinux

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元々パソコンではWIndowsやmacOSがついてくることが多いですよね。これらもUNIXを参考にしている部分が多いです。しかし本物のUNIXを使いたいというユーザーもいました。ただUNIXが動くコンピュータはパソコンよりも高価です。そのためパソコンで動くUNIXが登場します。

最後にパソコンで使う場合のBSDやLinuxの特徴や違いを見ていきましょう。

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パソコンに新たなOSの選択肢を!

パソコンのOSと言って思い浮かぶのはWindowsやmacOSですよね。しかしUNIX系OSのBSDやLinuxもパソコンで使うことができます。BSDの場合はNetBSDやFreeBSDなどの公式サイトから、Linuxではそれぞれのディストリビューションの公式サイトからダウンロードしてインストールできます。

なぜWindowsなどではダメなのでしょう。普段使うWebアプリやサービスはUNIX系OSで動かすことが多いと説明しましたよね。それらをつくるのもUNIX系OSでつくることが多いです。そのためプログラマーにはパソコンでもUNIX系OSを使うことが多くなります。また、普段はパソコンを買うとOSがついてくるので意識しないですがOSも有料です。少しでも安くするためにフリーであるUNIX系OSを使うこともあります。パソコンでも色々な選択肢が増えるのは良いことですよね。

プロ向けのBSD、初心者向けのLinux

選択肢が増えることはうれしい反面、どれを選んだらよいか困りますよね。もしパソコンでBSDやLinuxを使いたくなった場合、どちらを選択すればよいでしょう。ざっくり言えば初心者はLinuxがおすすめです。〇〇BSDはややプロ向け、通好みになります。

なぜLinuxが初心者向けかと言うと競争と情報の多さです。Linuxディストリビューションの数は〇〇BSDより多いほど。これらが切磋琢磨しているため使いやすさもどんどん進化しています。2000年以前はインストールするのにも、実用できるまでにも様々な作業も必要でした。しかし2020年代には特に知識がなくてもインストールでき、必要なソフトも一通り最初から揃っています。以下が主要なディストリビューションです。

・Debian GNU/Linux ※初期から存在して人気が高い
 ・Ubuntu ※人気が高い
  ・Linux Mint
・RedHat Enterprise Linux ※業務用に使われている有償Linuxディストリビューション
 ・CentOS ※RedHatを元に無償で利用可能、開発停止
  ・Rocky Linux ※CentOSの開発者が新たに作成
  ・AlmaLinux ※CentOSの後継を目指しているディストリビューション
 ・Amazon Linux 2 ※アマゾンのクラウドサービスで利用できる
・Slackware ※Linux登場時に人気だったディストリビューション

自由なLinux、管理されているBSD

Linuxの方が普及しているためBSDはもう不要なのでしょうか。BSDにはよい点もあります。Linuxはカーネルやディストリビューションの開発が自由です。そのため選択肢も多いですが、それらがどう違うのか確認するのも大変。また、まずは動くことを優先するので、BSDに比べるとセキュリティの問題が出ることもあるのです。一方、BSDはいくつかのグループに分かれていますが、それぞれが細かい点も管理しています。そのためセキュリティの問題がLinuxより少ないのが特徴です。

情報が多く、様々なディストリビューションが競争しているLinuxか、競争が少なく情報も比較的少ないがしっかり管理されているBSDか。目的に応じて選ぶことが必要です。

自由なOSを求めて生まれたBSDとLinux、Linuxが主流に

パソコンより強力なコンピュータで広く使われているのがUNIX系OSです。そのルーツはAT&Tベル研究所のUNIX。公開されており自由に改良できます。そのため広がったのですが問題になったのがライセンスです。使うには高額のライセンス料が必要になります。そのためUNIXのAT&Tのコードを除いてつくったのがBSDです。

しかし、そのBSDも訴えられたため0からつくったのがLinux。BSDが訴訟問題で作業中断したため一気に広がったのです。その結果、今では元々UNIX系が動いていたコンピュータ以外にもパソコンにも広がります。また、スマホのAndroidOSもLinuxがベースです。今では様々な分野でLinuxが使われています。

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IT・プログラミング雑学

BSDとLinuxの違いとは?UNIXの後継?特徴やライセンスもプログラマーがわかりやすく解説

BSDとLinuxを知っているか。どちらもUNIXというOSを参考にしたOSです。ただLinuxは知っていてもBSDは知らないという奴もいるかもしれませんね。今はLinuxが有名で主流ですが、これもBSDがあってこそです。なぜUNIXではなくBSDやLinuxが登場したのか、両者の考え方の違いは何かを、実際にBSDやLinux経験者でプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。パソコンにBSDやLinuxを入れたこともあるが現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさんです。

BSDはアメリカの大学発祥、Linuxは個人が開発

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普段なじみのあるOSといえばWindowsやmacOSですよね。しかし、Webアプリやサービスなどでは別のOSが使われていることが多いです。それがBSDやLinux

どちらもUNIXというOSが元になっているためUNIX系OSと呼ばれます。では、このBSDとLInuxはどういう特徴があって何が違うのか。ざっくり言えば大学がつくったのがBSD、個人がつくったのがLiunuxです。目的は同じで用途も似ていますが、何が違うのか、どういう特徴がありどう使われているのかを解説していきます。

BSD:研究用からはじまったUNIX系OS

BSD(ビーエスディー)とは「Berkeley Software Distribution」の頭文字をとったものです。1977年から1955年にかけて、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校がつくって配布していました。正確にはOS以外にも様々なソフトウェアが配布しています。その中でもBSD UNIXが有名なので、BSDと言えばBSD UNIXのことであることが多いです。

その後、バークレー校はBSD UNIXの作成を終了。オープンソースのOSとしていくつかのグループがBSD UNIXの後継の作成を続けています。まず386BSDが登場しましたが作業が止まってしまって生まれたのがFreeBSDとNetBSDです。この2つは主にパソコン向けか、さまざまなコンピュータで動かすかの方針の違いで分かれました。さらに方針の違いで派生して、以下の様に分かれています。

・386BSD ※パソコン向け
 ・NetBSD ※パソコン以外も対象
  ・OpenBSD
   ・Bitrig
 ・FreeBSD ※主にパソコン向け
  ・macOS
  ・DragonFly BSD

Linux:趣味からはじまったUNIX系OS

Linux(リナックス)は1991年に登場します。当時ヘルシンキ大学の学生だったリーナス・トーバルズパソコン用に個人でつくり始めたのです。これを世界中に公開したため、多くの開発者がLinuxの作成に関わる様になります。

このLinuxの作成作業は当初はOSの心臓部分であるカーネルという部分のみです。しかし、その後Linuxの将来性に目をつけた個人や団体、会社がカーネル以外の部分もつくり、パッケージとして公開します。これがディストリビューションです。Linuxデイストリビューションの登場でLinuxが広く普及します。

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