今回は、団塊ジュニアについて学んでいこう。

日本では、ある世代のことを「団塊ジュニア」と呼んでいる。団塊ジュニアには「2040年問題」があるといわれるが、いったい何のことでしょう。団塊ジュニアの特徴や2040年問題について、日本史に詳しいライターのタケルと一緒に解説していきます。

ライター/タケル

資格取得マニアで、士業だけでなく介護職員初任者研修なども受講した経験あり。現在は幅広い知識を駆使してwebライターとして活動中。

「団塊ジュニア」って何?

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まずは「団塊ジュニア」について、詳しく説明していくことにしましょう。

昭和40年代後半生まれ世代を指した言葉

団塊(だんかい)ジュニアとは、日本で1971(昭和46)年から1974(昭和49)年までに生まれた世代を指した言葉です。「団塊」は終戦直後生まれの「団塊の世代」から来ており、「団塊の世代」が親世代となって生まれた子供たちなので「団塊ジュニア」といいます。

「団塊ジュニア」が生まれた時代は、「第2次ベビーブーム」と呼ばれました。1973(昭和48)年の209万人をピークに、新生児の数が毎年200万人以上を記録したのです。2019年の出生数が90万人を割りましたので、それと比較しても子供の数が多かったのは容易に想像できるでしょう。

青年期にバブル崩壊を経験

団塊ジュニアが生まれる前の日本は、高度経済成長期のまっただ中でした。しかし、団塊ジュニアが生まれた1973(昭和48)年にオイルショックが発生。世界的に経済が混乱し、日本でも影響が避けられませんでした。物価が急上昇して消費が低迷したため、高度経済成長が止まりました。

その後は安定成長期へと移りますが、団塊ジュニアが小中学生だった1985(昭和60)年に急激な円高となり、バブル景気に沸くこととなります。しかし、土地や株式への過剰投資が、それらの価格を実体とはかけ離れたものにしました。そして、団塊ジュニアが高校や大学に通う1991(平成3)年に、バブルが崩壊したのです。

就職難に遭遇する

バブル崩壊後の日本は求人倍率が下がり、就職難の時代が続きました。その時期は「就職氷河期」と呼ばれ、就職氷河期を経験した世代を「就職氷河期世代」(またはロストジェネレーション・失われた世代)と呼びます団塊ジュニアも就職氷河期世代の一部です。

団塊ジュニアのうち、就職活動がうまくいかなかった者の中には、フリーターや派遣社員といった非正規雇用となった者もいました。一度非正規雇用者となった者が正社員となるのは困難で、貯蓄を残せない団塊ジュニアは少なくありません。リーマンショックや新型コロナの流行で景気が後退したこともあって、雇用状況は完全には回復していないといえます。

団塊ジュニアの親世代である「団塊の世代」とは?

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では、団塊ジュニアの親世代である「団塊の世代」とは、どのような世代でしょうか。

戦後まもなくに生まれる

「団塊の世代」は、終戦直後の1947(昭和22)年から1949(昭和24)年に生まれた世代です。「第一次ベビーブーム世代」とも呼ばれ、その世代だけで毎年260万人以上生まれました。年間200万人余りが生まれた団塊ジュニアと比べても、その数は突出しているのがわかるでしょう。

子供の頃に戦後復興期を迎えた団塊の世代は、成長して日本の高度成長期を支える人材となります。1970年頃から団塊の世代は結婚するようになり、その頃に生まれた子供たちが「団塊ジュニア」となりました。その後、団塊の世代はバブル期に働き盛りとなり、2000年代後半になり定年退職を迎えたのです。

2020年代より後期高齢者に差し掛かる

「団塊の世代」という言葉の由来は、堺屋太一の小説『団塊の世代』です。堺屋は、戦後まもなくに生まれた世代を「団塊の世代」と命名。小説では、団塊の世代に将来起こりうる問題をオムニバス形式で描きました。1976(昭和51)年から連載が始まったこの小説は、社会に大きな影響を与えることになります。

団塊の世代は、2007(平成19)年頃から定年退職を迎えました。2015(平成27)年になり、団塊の世代全員が年金受給対象者となります。令和に入り、団塊の世代は年齢が70代に。創業者や経営者でも、事業継承や引退を考える時期に差し掛かりました。

団塊ジュニアより下の世代

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「団塊の世代」や「団塊ジュニア」の下の世代にも呼び名があります。代表的なものとそれらの特徴について、簡単にまとめたものを見ていきましょう。

1.ポスト団塊ジュニア

「ポスト団塊ジュニア」とは、「団塊ジュニア」の後の世代を指す言葉です。ただし、「団塊の世代」の子供世代を「団塊ジュニア」と呼ぶのとは違い、「団塊ジュニア」の子供が「ポスト団塊ジュニア」というわけではありません。「団塊ジュニア」のすぐ下の世代が「ポスト団塊ジュニア」という位置付けになります。

「ポスト団塊ジュニア」は、1975(昭和50)年から1980(昭和55)年頃までに生まれました。団塊ジュニア同様、ポスト団塊ジュニアの世代も就職難に苦しんだのが特徴です。令和を迎えたポスト団塊ジュニアは、40歳前後のいわゆる「アラフォー」となり、日本の中核を担っています。

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2.ゆとり世代

1987(昭和62)年から2004(平成16)年頃までに生まれた世代を「ゆとり世代」といいます「ゆとり世代」は「ゆとり教育」を受けた世代です。かつての日本の教育は、「詰め込み教育」呼ばれるほどカリキュラムが多く、授業についていけない児童や生徒が続出しました。学力の差を是正するために、児童や生徒の負担を軽減したのが「ゆとり教育」です。

しかし、ゆとり教育による学力の低下が指摘されています。また、ゆとり教育で個性を大事にした結果、ゆとり世代は競争を好まない人が多いという評価を得るようになりました。さらに、合理性や効率性を重視するのもゆとり世代の特徴といえます。

3.Z世代

「Z(ゼット)世代」とは、1990年代中盤から2010(平成22)年頃までに生まれた世代です。アメリカなどでは、1960年代から70年代半ばまでを「Xジェネレーション」(X世代)、70年代半ばから1990年代前半までを「Yジェネレーション」(Y世代)と呼んでいました。「Z世代」は、それらに続くものです。

Z世代は、子供の頃からデジタル機器やSNSが身近な環境にありました。それらを巧みに操るのがZ世代の特徴です。また、日本のZ世代は、幼少期にリーマンショックや東日本大震災を経験しました、そのため、Z世代は若くして現実的な考えを持ち、社会問題に関心を持つ人が多いといわれます。

団塊ジュニアが抱える「2040年問題」とは?

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ところで、団塊ジュニアが直面するであろう「2040年問題」とは、はたしてどのようなものでしょうか。

労働者人口の減少

2040年には、団塊ジュニアの世代が66〜69歳となります。言い換えれば、団塊ジュニア世代全員が高齢者に分類されるようになるのです。国立社会保障・人口問題研究所が2017(平成29)年に推計した将来人口推計によると、日本で近い将来に急激な人口変動が起きると予測されました。

報告書では、日本の人口は2040年までに約1億1000万人にまで減少。さらに、2025年から2040年までのわずか15年の間に、20歳から64歳までの人口がおよそ1000万人も減少すると予測されています。つまり、このままでは2040年を境に、日本の労働力が著しく低下するのです。

\次のページで「社会保障費の増大」を解説!/

社会保障費の増大

日本の年金制度は、賦課方式を採用しています。働いている世代が保険料を納めて、その分を高齢者に支払うというものです。保険料率は現役世代の加入者と年金受給者の割合で決まります。しかし、高齢化が進むとそのバランスが崩れて、現役世代の負担が増える事態を免れられません。

さらに、高齢者が増えることで、介護の費用がかかることは容易に想像できるでしょう。厚生労働省が試算した社会保障給付費の将来見通しでは、2018 (平成30)年は約121兆円だった社会保障費が、2040年には190兆円ほどになると予測しています。今のままでは、社会保障制度の維持は難しいのです。

2040年問題の解決策は?

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では、2040年問題を解決する方法はあるのでしょうか。

就労環境の整備

団塊ジュニアを含む、就職氷河期世代の就職支援が官民両方で進められています。一部の地方自治体では氷河期世代を対象とした職員中途採用試験が行われ、試験によっては倍率が600倍になったこともありました。生活保護者やワーキングプアの団塊ジュニアも多く、1人でも減らさないと2040年問題の解決には至らないでしょう。

さらに、団塊ジュニアの上の世代には、定年引き上げが解決策になりえます。定年を延長することで、雇用側は安定した人材を確保でき、就業する側も収入や生きがいを得られるのです。安定した収入がある高齢者が増えれば、社会保障費の削減にもつながります

社会保障制度や介護サービスの見直し

日本の人口推計を見れば、現行の年金制度では将来破綻すると誰もが思うでしょう。そのため、さまざまな形での年金制度改革が提言されています所得に比例する保険料や給付額とする年金額を最低保障として一定の収入以上でゼロにする、などの案が提示されました。

また、介護サービスの生産性向上も、2040年問題解決策になると考えられます介護ロボットの実用化やシニア人材の活用は、介護業務の効率化や高齢者の雇用創生につながるでしょう。介護業務を効率化できれば、介護業界に有望な人材が集まるという効果も期待できます。

団塊ジュニアが直面する2040年問題への対策が求められる

昭和40年代前半に生まれた、第2次ベビーブームにあたる世代が「団塊ジュニア」です。2020年代に入ると、団塊ジュニアは50代を迎えます。しかし、団塊ジュニアがこの先直面すると考えられる「2040年問題」は、労働人口減少や社会保障費増大が予想されるほど深刻です。そのため、今からでも2040年問題への対策を、国や地方自治体が中心となって真剣に講じるべきでしょう。

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現代社会

2040年問題を抱える「団塊ジュニア」とは?年齢や人口・世代の特徴などを行政書士試験合格ライターがわかりやすく解説

社会保障費の増大

日本の年金制度は、賦課方式を採用しています。働いている世代が保険料を納めて、その分を高齢者に支払うというものです。保険料率は現役世代の加入者と年金受給者の割合で決まります。しかし、高齢化が進むとそのバランスが崩れて、現役世代の負担が増える事態を免れられません。

さらに、高齢者が増えることで、介護の費用がかかることは容易に想像できるでしょう。厚生労働省が試算した社会保障給付費の将来見通しでは、2018 (平成30)年は約121兆円だった社会保障費が、2040年には190兆円ほどになると予測しています。今のままでは、社会保障制度の維持は難しいのです。

2040年問題の解決策は?

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では、2040年問題を解決する方法はあるのでしょうか。

就労環境の整備

団塊ジュニアを含む、就職氷河期世代の就職支援が官民両方で進められています。一部の地方自治体では氷河期世代を対象とした職員中途採用試験が行われ、試験によっては倍率が600倍になったこともありました。生活保護者やワーキングプアの団塊ジュニアも多く、1人でも減らさないと2040年問題の解決には至らないでしょう。

さらに、団塊ジュニアの上の世代には、定年引き上げが解決策になりえます。定年を延長することで、雇用側は安定した人材を確保でき、就業する側も収入や生きがいを得られるのです。安定した収入がある高齢者が増えれば、社会保障費の削減にもつながります

社会保障制度や介護サービスの見直し

日本の人口推計を見れば、現行の年金制度では将来破綻すると誰もが思うでしょう。そのため、さまざまな形での年金制度改革が提言されています所得に比例する保険料や給付額とする年金額を最低保障として一定の収入以上でゼロにする、などの案が提示されました。

また、介護サービスの生産性向上も、2040年問題解決策になると考えられます介護ロボットの実用化やシニア人材の活用は、介護業務の効率化や高齢者の雇用創生につながるでしょう。介護業務を効率化できれば、介護業界に有望な人材が集まるという効果も期待できます。

団塊ジュニアが直面する2040年問題への対策が求められる

昭和40年代前半に生まれた、第2次ベビーブームにあたる世代が「団塊ジュニア」です。2020年代に入ると、団塊ジュニアは50代を迎えます。しかし、団塊ジュニアがこの先直面すると考えられる「2040年問題」は、労働人口減少や社会保障費増大が予想されるほど深刻です。そのため、今からでも2040年問題への対策を、国や地方自治体が中心となって真剣に講じるべきでしょう。

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