メインフレームって知っているか。昔、会社の中で様々な仕事に使われていた大きなコンピュータのことです。今ならばサーバーと呼ばれるものを使っている。ではそのメインフレームとサーバーは何が違うのでしょう。そして、メインフレームは今どうなっているのでしょう。メインフレームの名前の由来から現状まで、学生時代にメインフレームを触ったプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。学生時代にメインフレームに触ったこともあります。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさんです。

ロボットアニメで例えるメインフレームとサーバーの違い

IBM 704 mainframe.gif
Lawrence Livermore National Laboratory, Attribution, リンクによる

突然ですが、上の写真の広い部屋に何台のコンピュータがあると思いますか。実はこれが1台のコンピュータです。今のパソコンとはだいぶ違いますよね。これがメインフレームです。1960〜70年代生まれでも実際に触ったことのある人は少ないと思います。80年代生まれになると話に聞いたことがある程度、90年代生まれ以降はそもそもメインフレームって何?という感じではないでしょうか。

多くの人は見たことも触ったこともないし、そもそも知らないかもしれないメインフレームとサーバーについて、ロボットアニメの戦うロボットに例えて解説していきます。

メインフレーム:1台でなんでもこなす巨大ロボ

ロボットで戦うマンガやアニメを見たことがありますか。ざっくり分けるととても大きな巨大ロボットと全高が数メートルから20メートル程度の比較的小型なロボットにわかれますよね。

巨大ロボットは圧倒的なパワーを持ち、敵のロボットや怪獣などを必殺技で倒します。そのような大きなコンピュータがメインフレームです。メインフレームは当時としては非常に高性能で、大きな会社の多数の従業員の給料計算などに使われていました。多くの人が電卓やそろばんを使って何日もかけて計算していた作業をあっという間にこなしてしまうスーパーヒーローだったのです。

サーバー:集団で戦うリアルロボ

ロボットアニメの主役が巨大ロボットだったのも今は昔。時代が変わるとそれよりも小型のロボットが集団で戦うアニメやマンガが主流になります。コンピュータも1台の巨大なコンピュータを使う時代から、比較的小型の複数のコンピュータを組み合わせる時代になったのです。

そのようなメインフレームに比べると小型のコンピュータのことをサーバーと呼びます。サービスという言葉がありますが、そのサービスをする人がサーバーです。店員のように様々なサービスを提供するコンピュータなので「サーバーコンピュータ」と呼ばれ、それが略されてサーバーになりました。

メインフレームとサーバー、何が違うの?

image by iStockphoto

メインフレームとサーバについてざっくりとしたイメージはつかめたでしょうか。続いてそれぞれの特徴や違いについて確認していきます。一番わかりやすいのは大きさです。でも、それだけではないそれぞれの名前が示す意味についても解説していきます。

\次のページで「時代によって違う?メインフレームの呼び方」を解説!/

時代によって違う?メインフレームの呼び方

メインフレームですがその時代や形態によって呼び方も様々です。まずはそれをまとめておきます。まずメインフレームとは直訳すれば主な枠。今のパソコンと違いメインフレームはいくつかの箱からできています。今のパソコンのCPUやスマホのSoCにあたる頭脳部分がメインフレームです。それにメモリやストレージ、端末やプリンタなどを組み合わせます。

また写真のように大きいので大型コンピュータとも。これは後から出てきたミニコンピュータとの比較から使われた言葉です。また、それ以前のコンピュータは科学技術計算用や砲弾の弾道計算用など専門分野が決まってました。それに対して様々な用途に使えることから汎用コンピュータ(汎用機)とも呼ばれます。このように様々な呼ばれ方をしますが、ざっくり言えば同じものと考えてください。

オープンとクローズ?OSから見た違い

メインフレームは汎用機と説明しましたが、OSというものが一般化したのもメインフレームから。OSの上で様々なアプリが動くから汎用と呼ばれたのです。ただ、この頃のOSは今と違い、コンピュータごとに違う専用のOSでした。同じメーカーでも違う型番のメインフレームではOSが違うということもあります。これにつなぐ周辺機器も原則としてそのメーカーのものだけ。そのため閉鎖的という意味でクローズなシステムと呼びます。

一方、パソコンやサーバーで一般的なWindowsやLinuxなどは特定のコンピュータ専用ではありません。また別の会社の製品も接続できます。これがオープン。クローズに対して開かれているという意味でオープンなのです。このように、メインフレームとサーバーではOSや周辺機器の位置付けも違います

群雄割拠?様々な種類があるサーバー

サーバーもいくつか種類があります。分類法は様々なので、ここでは代表的なもののみの紹介です。まずはパソコンと同じインテルのCPUを使うものをインテル・アーキテクチャー・サーバー、略してIAサーバーと呼びます。日本でサーバーと呼ばれるものの多くがIAサーバーです。

それ以外のものでOSにLinuxなどのUNIX系OSを使うものをUNIXサーバーと呼びます。一時は広く使われましたが、最近はIAサーバーが主流です。IAサーバーでもUNIX系OSを使うことが多いので、IAサーバーとそれ以外とざっくりした理解で構いません。他にもいくつかのサーバーがありますが、日本国内ではこの両者がほとんどを占めています。普段使っているインターネットの先にあるのは多くの場合これらのサーバーです。

メインフレームとサーバー、決定的な違いとは?

メインフレームを形態やOSの違いで見てきましたが、実は決定的な違いがあります。サーバーについてサービスを提供するからサーバーと説明しましたよね。では、この提供する相手、つまりお客さんとは何と思いますか。利用者?実は違います。手元のパソコンやスマホなのです。

サーバーはお客、つまりクライアントとセット。レストランでは料理を作る人と運ぶ人が分かれていることが多いですよね。それは料理する人はそれに専念した方が効率がよいから。コンピュータの世界でも入力や表示などの手元で行う処理と、それらを加工したり計算したりする処理を分けたほうが効率がよいのです。このような仕組みをサーバ・クライアントシステムと呼びます。そのサーバー側なのでサーバーコンピューターです。そして、メインフレームは分担しないで全てを自分1人でこなします。これが両者の最大の違いです。

\次のページで「全盛期には程遠いがまだまだ現役?メインフレーム盛衰記」を解説!/

全盛期には程遠いがまだまだ現役?メインフレーム盛衰記

image by iStockphoto

1台が1億円くらいするメインフレームに対して、IAサーバーは100万円しないことも。100台買うことができますね。しかし2000年頃はコンピュータシステムにかける費用の半分がメインフレームでした。それから10年でIAサーバが台頭し、メインフレームは比率で3分の1、金額では14分の1になってしまいます。

そんな時代遅れの象徴のようなメインフレームですがまだまだ現役です。最後にメインフレームの歴史と現状を見ていきます。

世界のIBM対日本メーカー?メインフレーム戦争

1950年に最初のメインフレームが登場し様々な会社が競争します。その結果、70年代にかけて最大のメーカーとなったのがIBMです。あまりに差が大きいためIBMはガリバー(巨人)やビッグブルー(IBMのロゴカラーが青いため)と呼ばれます。

日本でも海外のメーカーと協力しながら何社かがメインフレーム市場に参入。しかし、70年代に当時の通産省の主導で6つの会社を3つのグループに再編して、巨人IBMに対抗させたのです。激しい競争のため1982年にはIBM産業スパイ事件が発生します。結局、三大コンピュータグループと呼ばれたうちの1グループは撤退。残る2グループのうちの1社も撤退してしまいます。最終的に富士通、日立、日本電気が残りましたが、2017年に日立がハードウェアの製造から撤退2022年に富士通も2030年の撤退を発表しました。

小型化の波に逆らえず?メインフレームの衰退

激しい競争の上メインフレーム界の巨人となったIBMですが、それも1980年代まで1990年代に入るとパソコンの性能の向上、コンピュータ技術の小型化と高性能化が進みます。巨大なコンピュータを設置して動かすには多大なコストがかかることや、IBMの一人勝ちで競争がなくなってサービス低下したこともあり、サーバー・クライアントシステムが広く使われるようになったのです。

そのためメインフレームは時代の変化に対応できずに滅んだ恐竜に例えられ「レガシー(遺産)」と呼ばれてしまいます。ゲームをしている方はフロム・ソフトウェアという会社をご存知かも。今でこそゲーム会社ですが、実はメインフレーム向けの業務ソフトをつくる会社だったのです。しかし、時代の変化に対応して成功したのですね。

時代に適応して現役続行?新たなメインフレームの流れ

時代遅れとも言われるメインフレームですが、まだ世界では5000社が1万台のメインフレームを使っています。長い期間競争して進化してきたものなので、信頼性などメインフレームが勝る部分もあるのです。またメインフレームも進化しており、1台のメインフレームで複数のオープン系OSが動くものも出てきました。インターネットとWebの時代に適合した新しいメインフレームも出てきたのです。

そうは言っても、メインフレームの台数も販売金額も年々減少を続けています。いずれは恐竜と同じように滅んでしまうかも。あるいは、鳥類が恐竜の子孫という説があるように、形を変えて生き残るかもしれませんね。

時代遅れでもまだまだ現役のメインフレーム、だがサーバーへの置き換えも

メインフレームは単体ですべての処理をこなす大きなコンピュータ。それに対してサーバーとは手元のパソコンやスマホといったクライアントコンピュータとセットで動き、処理を分担しています。中の仕組みやOSの違い、オープンかクローズかといった様々な違いがありますが、最大の違いはこの分担の有無です。

一時はコンピュータシステムの主流だったメインフレームも、今では時代遅れとなり、サーバーに活躍の場を譲りつつあります。まだ1万台程度残っていると言われるメインフレームもいずれは置き換えられてしまうかもしれませんね。

" /> メインフレームとサーバーの違いとは?1台が1部屋?メインフレームの歴史もプログラマーがわかりやすく解説 – Study-Z
IT・プログラミング雑学

メインフレームとサーバーの違いとは?1台が1部屋?メインフレームの歴史もプログラマーがわかりやすく解説

メインフレームって知っているか。昔、会社の中で様々な仕事に使われていた大きなコンピュータのことです。今ならばサーバーと呼ばれるものを使っている。ではそのメインフレームとサーバーは何が違うのでしょう。そして、メインフレームは今どうなっているのでしょう。メインフレームの名前の由来から現状まで、学生時代にメインフレームを触ったプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。学生時代にメインフレームに触ったこともあります。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさんです。

ロボットアニメで例えるメインフレームとサーバーの違い

IBM 704 mainframe.gif
Lawrence Livermore National Laboratory, Attribution, リンクによる

突然ですが、上の写真の広い部屋に何台のコンピュータがあると思いますか。実はこれが1台のコンピュータです。今のパソコンとはだいぶ違いますよね。これがメインフレームです。1960〜70年代生まれでも実際に触ったことのある人は少ないと思います。80年代生まれになると話に聞いたことがある程度、90年代生まれ以降はそもそもメインフレームって何?という感じではないでしょうか。

多くの人は見たことも触ったこともないし、そもそも知らないかもしれないメインフレームとサーバーについて、ロボットアニメの戦うロボットに例えて解説していきます。

メインフレーム:1台でなんでもこなす巨大ロボ

ロボットで戦うマンガやアニメを見たことがありますか。ざっくり分けるととても大きな巨大ロボットと全高が数メートルから20メートル程度の比較的小型なロボットにわかれますよね。

巨大ロボットは圧倒的なパワーを持ち、敵のロボットや怪獣などを必殺技で倒します。そのような大きなコンピュータがメインフレームです。メインフレームは当時としては非常に高性能で、大きな会社の多数の従業員の給料計算などに使われていました。多くの人が電卓やそろばんを使って何日もかけて計算していた作業をあっという間にこなしてしまうスーパーヒーローだったのです。

サーバー:集団で戦うリアルロボ

ロボットアニメの主役が巨大ロボットだったのも今は昔。時代が変わるとそれよりも小型のロボットが集団で戦うアニメやマンガが主流になります。コンピュータも1台の巨大なコンピュータを使う時代から、比較的小型の複数のコンピュータを組み合わせる時代になったのです。

そのようなメインフレームに比べると小型のコンピュータのことをサーバーと呼びます。サービスという言葉がありますが、そのサービスをする人がサーバーです。店員のように様々なサービスを提供するコンピュータなので「サーバーコンピュータ」と呼ばれ、それが略されてサーバーになりました。

メインフレームとサーバー、何が違うの?

image by iStockphoto

メインフレームとサーバについてざっくりとしたイメージはつかめたでしょうか。続いてそれぞれの特徴や違いについて確認していきます。一番わかりやすいのは大きさです。でも、それだけではないそれぞれの名前が示す意味についても解説していきます。

\次のページで「時代によって違う?メインフレームの呼び方」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: