今回は、朝食やおつまみの定番、ハムとソーセージについてみていきます。
この2つ、おなじみの食材ですが違いを説明できるでしょうか?また、ハムやソーセージを食べ続けると癌リスクが高まる、などという噂を聞いたことはないか?この答えは、ずばり肉と製造方法にあるようです。
今回は、ハムとソーセージの違い、そして本当に体に悪いのか?について雑学好きの元ツアーコンダクター、きさらぎ と解説していきます。

ライター/如月(きさらぎ)

「見たい」「知りたい」「食べたい」の好奇心を胸に世界中を飛び回ってきた、元ツアーコンダクターの食いしん坊ライター。

ハムとソーセージのざっくりした違いは?

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どちらも加工肉ですが、使用する肉の形状、製造方法が違います。加工肉とは、保存のために加工処理をした肉製品のこと。ハムは、原料を肉塊のまま加工する商品。ソーセージは、ひき肉を香辛料や調味料と混ぜ合わせてケーシング(食べられる袋状のもの)などに詰めスモークやボイルなどをした商品です。

ハムとソーセージの違いを詳しく知ろう!

ここから、ハムとソーセージの違いについて詳しく解説していきます。

違いその1 原材料と製造方法  

まずは、原材料となる肉ですが、使用する種類と部位、形状に違いがあります。ハムに使われるのは、主に豚(もも肉、ロース)塊肉ソーセージに使われるのは、豚、牛、羊の主に腕部分の肉で、これをひき肉にしたもの。次に製造方法ですが、ソーセージはハムの作業工程に、「肉を挽く」「細切・混和」「袋状のものに詰める」の3つを加えます

もう一つの代表的な加工肉であるベーコンは、豚のばら肉を利用し、ハムと同じ製法で作ったものです。

《製造方法》
 1.整形…原料肉のスジや余分な脂肪を取り除き、大きさを整える
     ソーセージは「肉挽き」(ひき肉にする)
 2.塩漬…原料肉に、塩、発色剤などを加えて漬け込む
      ソーセージは「細切・混和」(調味料などを加えて細切、均一に混ぜる)
 3.充填…型につめて形を整える
     ソーセージは「袋状の皮(ケーシング)に詰める」
 4.燻製・乾燥…煙で燻製し、良い香りと色を付け、保存性を高める
 5.蒸煮or湯煮…中心まで十分加熱する
 6.冷却…冷却して細菌の増殖を防ぐ

\次のページで「違いその2 歴史と種類」を解説!/

塩漬には、保存性を高めて、見た目を良くする(変色を防ぎ良い色に発色させる)、適度に塩味を与えて風味を向上させる効果があります。無塩漬というのは、発色剤を含まないものの事で、塩や香辛料などは使用したもの。この発色剤などの添加物が、発がん性物質と関わりがあるとされているのです。この添加物については、後でもう少し詳しく説明しますね。

違いその2 歴史と種類

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ハムとソーセージ、実はどちらも正確な起源はわかっていません。古くから存在していたようですが、歴史背景がわかる文献などが少ないためです。

ハムの最古の文献は、紀元前160年のローマの農業書『De Agri Cultura』で、ハムの作り方の記載があります。ソーセージの最古の文献は、紀元前8世紀古代ギリシャの有名な長編叙事詩、ホメロス作の『オデュッセイア』で、「ヤギの胃袋に血と脂身を詰めた兵士の携行食」として登場。

これらのことから、ハムよりもソーセージの方が古くから存在していたのではないか、と考えられています。

ハムの語源 
 1.古英語「ham(ハム)」、動物のもも肉の意
 2.中国語「はんろう」塩漬け肉の意

ハムは紀元前にはすでに存在しており、古代中国~ガリア地方(今のイタリア、フランス、ドイツ)が起源とされているようです。また、ハムは使われる部位と製法によって下記のように分類されます。

<ハムの種類>
・ロースハム…豚ロース肉(肩から腰にかけての背肉)
・ボンレスハム…豚もも肉
・ショルダーハム…肩肉

生ハムは、生肉と思いがちですが、豚もも肉を20度以下の低温でじっくりスモークしたもので、冷燻製した加熱品です。非加熱のものは、プロシュート(イタリア)で、塩漬けと燻製のみ。他には、ハモンセラーノ(スペイン)、金華ハム(中国)など。その他、鶏ハムなど豚以外の塊肉を使用したものは、素材の名前を入れるなどして区別しています。

ソーセージの語源
 1.後期ラテン語「Salsus(サルスス)」、塩漬けにしたの意
 2.ドイツ語の豚「Sau(ザウ)」+スパイス「sage(セージ)」の造語

ソーセージは、5000年~3000年ほど前、メソポタミア地方のシュメール人が豚肉の腸に塩漬けの肉を詰めたのが始まりで、その後、古代エジプトやギリシャに伝わったとされています。(メソポタミア地方とは、エジプト、黄河、インダス文明と並ぶ世界四大文明の一つメソポタミア文明が生まれた場所。現在のイラク、シリア北東、トルコ南東のあたり。)そして、ギリシャに代る勢力としてローマ帝国が台頭、繁栄とともにソーセージも各地に伝わりました。

しかしソーセージというと、ドイツのイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?その理由は、ドイツの土地はやせており、冬は長く厳しいため、12~13世紀に保存食として定着し、ヨーロッパに広がったから。その後、十字軍の遠征や、大航海時代に東方からスパイスを持ち帰るようになり、ドイツでは1500種類以上ものソーセージに発展、ソーセージ大国となったのです。

日本農林規格では、以前はソーセージを天然腸の種類で大きく3種類に分けていました。

<ソーセージの種類>
1.羊腸を使用したものを「ウインナー」(ウィーン風のソーセージ)
2.豚腸を使用したものを「フランクフルト」(フランクフルト風のソーセージ)
3.牛腸を使用したものを「ボロニア」(ボローニャ風のソーセージ)

現在はコラーゲンケーシングなどの人口腸もあり、この3つはソーセージの太さや腸の種類によって以下のように分類されています。

・「ウインナー」は直径20㎜未満のもの
・「フランクフルト」は直径20㎜以上36㎜未満のもの
・「ボロニア」は直径36㎜以上のもの

また、皮なしソーセージは食べられないセルロースなどのケーシングに充填し、加熱後にケーシングを取り除いた皮はぎ製品、ドライソーセージは加熱しないで乾燥させて水分を35%以下にしたもの。原材料に豚肉のみ、豚及び牛肉、牛肉のみを使用したものをサラミソーセージと呼びます。

魚肉ソーセージはスケトウダラなどの魚肉のすり身が原材料の50%以上を占めている魚肉ねり製品の一種。豚脂を混ぜ合わせてケーシングし、高圧高温殺菌を行ったもの。豚肉が禁忌であるイスラム教徒向けに、豚由来成分を使わないハラル認証を得た魚肉ソーセージもあります。

続いては、ドイツのソーセージ分類について見ていきましょう。ドイツには実に1500種類以上ものソーセージがあり、調理方法によって大きく3種類に分けています。

<ドイツのソーセージ分類>
 1.調理ソーセージ(Kochwurst コッホ・ヴルスト)
   加熱処理した肉を細かくしたものに、内臓や血、皮、調味料などを混ぜてから腸詰め。
   血のソーセージ「ブルートヴルスト」や「レバーヴルスト」など。
 2.加熱(茹で)ソーセージ(Brühwurst ブリュー・ヴルスト)
   生肉を細かくした後に腸詰めし、70~80度のお湯でゆでたもの。
   白ソーセージ「ヴァイス・ヴルスト」など。
 3.生ソーセージ(Rohwurst ロー・ヴルスト)
   ペースト状の塗るソーセージ。「メットヴルスト」など。

ハムやソーセージなどの加工肉は体に悪いのか?

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ハムやソーセージなどの加工肉を食べると、癌のリスクが高まるという説があります。一体どういうことなのでしょうか?これは、加工肉を作る際の塩漬に関係。塩漬に使用される添加物に、健康を損なう恐れがあるというのです。

使用している添加物に注意が必要

加工肉を作る際の塩漬で、発色剤として使用するのが亜硝酸ナトリウム。この亜硝酸ナトリウムが、食品中にある「ジメチルアミン」と反応し、発がん性物質「ニトロソアミン」をつくるとされることから、加工肉は体に悪いと言われています。

しかし、これは少々大げさな説。これらのアミン類は、魚介類に多く、食肉にはほとんどないとされているから。ニトロソアミン生成至適はpH3.6付近で、食肉加工品の多くはpH6以上なので、あまり心配ありません。また、亜硝酸ナトリウムと酸化防止剤(ビタミンC)を同時に使用することで、ニトロソアミン生成を阻害できるのです。

亜硝酸ナトリウムを使用する理由は、食中毒の原因となるボツリヌス菌を抑制する効果があるから。このボツリヌス菌の語源となったのは、ラテン語のソーセージ、腸詰を意味する「ボトゥルス(botulus)。1000年以上前から被害が起きていて、この菌の抑制が加工肉の大きな課題でした。

加工肉の主な添加物>
 ・発色剤(亜硝酸ナトリウム)…ボツリヌス菌の繁殖を抑え、見た目を良くする
 ・酸化防止剤(ビタミンC)…発色剤とのバランスをとる
 ・pH調整剤…pHを下げる(酸性にする)ことにより、細菌の増殖を抑制
 ・ソルビン酸(保存料)…広い範囲の微生物に対して抗菌作用がある。主に日持ち向上に利用されるナナカマド由来の成分
 ・リン酸塩(結着補強材)…食感を良くするために、肉の保水性、結着性を高める

この頃は、健康志向の観点から、発色剤を使用しない無塩漬の商品や、添加物不使用などの商品も多くなりました。添加物が一概に悪いとは言えませんが、体に合う、合わないなどはあります。塩分はどの製品にも多く含まれていますので、小さな子供やアレルギーのある方、食べ過ぎにはやはり気をつけたいもの。

過度に心配する必要はありませんが、どのようなものが使用されているのかについては理解と注意をしておいた方が良さそうです。

ハムとソーセージはどちらも加工肉だが、使用する肉の形状が違う

ハムは塊肉をそのまま加工、ソーセージはひき肉にしてから袋状のものに詰めて加工した肉製品です。これらの加工肉を作る際に使用される添加物には注意が必要ですが、健康を損なうほど危険なものではありません。しかし、塩分の取りすぎは万病のもとですので、食べ過ぎには気をつけましょう。

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雑学

3分でわかる!ハムとソーセージの違い!加工肉は体に悪い?雑学好きライターがわかりやすく解説

今回は、朝食やおつまみの定番、ハムとソーセージについてみていきます。
この2つ、おなじみの食材ですが違いを説明できるでしょうか?また、ハムやソーセージを食べ続けると癌リスクが高まる、などという噂を聞いたことはないか?この答えは、ずばり肉と製造方法にあるようです。
今回は、ハムとソーセージの違い、そして本当に体に悪いのか?について雑学好きの元ツアーコンダクター、きさらぎ と解説していきます。

ライター/如月(きさらぎ)

「見たい」「知りたい」「食べたい」の好奇心を胸に世界中を飛び回ってきた、元ツアーコンダクターの食いしん坊ライター。

ハムとソーセージのざっくりした違いは?

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どちらも加工肉ですが、使用する肉の形状、製造方法が違います。加工肉とは、保存のために加工処理をした肉製品のこと。ハムは、原料を肉塊のまま加工する商品。ソーセージは、ひき肉を香辛料や調味料と混ぜ合わせてケーシング(食べられる袋状のもの)などに詰めスモークやボイルなどをした商品です。

ハムとソーセージの違いを詳しく知ろう!

ここから、ハムとソーセージの違いについて詳しく解説していきます。

違いその1 原材料と製造方法  

まずは、原材料となる肉ですが、使用する種類と部位、形状に違いがあります。ハムに使われるのは、主に豚(もも肉、ロース)塊肉ソーセージに使われるのは、豚、牛、羊の主に腕部分の肉で、これをひき肉にしたもの。次に製造方法ですが、ソーセージはハムの作業工程に、「肉を挽く」「細切・混和」「袋状のものに詰める」の3つを加えます

もう一つの代表的な加工肉であるベーコンは、豚のばら肉を利用し、ハムと同じ製法で作ったものです。

《製造方法》
 1.整形…原料肉のスジや余分な脂肪を取り除き、大きさを整える
     ソーセージは「肉挽き」(ひき肉にする)
 2.塩漬…原料肉に、塩、発色剤などを加えて漬け込む
      ソーセージは「細切・混和」(調味料などを加えて細切、均一に混ぜる)
 3.充填…型につめて形を整える
     ソーセージは「袋状の皮(ケーシング)に詰める」
 4.燻製・乾燥…煙で燻製し、良い香りと色を付け、保存性を高める
 5.蒸煮or湯煮…中心まで十分加熱する
 6.冷却…冷却して細菌の増殖を防ぐ

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