今回は舞茸(まいたけ)についてみていこう。比較的安価な食材ですが、しいたけやえのきたけに比べるとあまり馴染みがないきのこかもしれませんね。でもその独特の香りと食感だけではなく、健康のために毎日の食卓に取り入れたい栄養素がたっぷりなんです。管理栄養士と一緒に解説していきます。

ライター/ママパンダ

主婦歴30年の管理栄養士。普通の会社員だったが、料理好きが高じて40歳代半ばにして大学に再入学、管理栄養士の資格を取得した経歴を持つ。現在は調理師養成施設で食費の栄養や調理理論を教えている。

舞茸ってどんなきのこ?

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舞茸はミズナラやブナなどの老木の切り株に発生する食用きのこ。根本から太い柄が分かれて広がり、先端のひらひらした半円形のかさがいくつも重なり合って大きな株をつくります。最大級で3kgを超え、青森県で15kgもの舞茸が採れてニュースになりました。ただ見つけるのが非常に難しく、見つけた人が「舞い踊って」喜ぶことから舞茸という名がついたとか。翌年、同じところに発生することが多く、見つけた場所を親子でも教えあわないとも言われます。

天然では希少な舞茸ですが、1970年代に人工栽培に成功して身近なきのこに。味噌汁や天ぷら、炊き込みご飯などの和風料理、スープや肉の煮込みなど洋風料理、炒め物など中華に幅広く料理に使われていますね。

「香り松茸味しめじ」、舞茸は?

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「香り松茸味しめじ」と言われますが、舞茸のスパイシーな香りとしゃきしゃきとした食感、複雑な旨味も負けていませんよね。舞茸の旨味は三大旨味成分のグルタミン酸とグアニル酸での2つを合わせると味の相乗効果で1つの時の数倍ものおいしさにだから秋田のきりたんぽ鍋には欠かせません。

旨味たっぷりなので塩こしょうはもちろん、料理酒で蒸してポン酢で、または唐辛子を効かせて、洋風にバターで、など様々な味つけで楽しめるところが舞茸の良いところ。また、新鮮な舞茸の鮮烈な香りには、しょうゆの香ばしさや黒こしょうのスパイシーな香りがよく合います。レモンやゆずなどの柑橘類の香りをプラスしてさらに香り高く、味わうのもおすすめ。

舞茸はダイエット向きの食材?

舞茸は、よく見かける1パック100gでわずか22kcal。鶏もも肉だったら一口大のそのまた半分と同じくらい。それは水分が90%以上で、脂質はほぼなく、3.5gがカロリーほぼ0の食物繊維だから。食物繊維は小腸で消化吸収されないまま大腸で水分を吸収して膨らみます。満腹感を感じやすくなって暴食を防ぐことができますね。さらにダイエットでは便秘になりがちですが、食物繊維が大腸の蠕動運動を活発にするので快便につながりますね。

舞茸の緻密な肉質は肉や魚のかさを増すのに最適。しかも舞茸のグルタミン酸と、肉や魚に含まれるイノシン酸を組み合わせるとおいしさをぐんと増しますよ。舞茸はおいしくて低カロリー、快便でぽっこりおなかの改善までダイエットの強い味方ですね。

舞茸に含まれる栄養素と効能は?

舞茸は水分が9割で低カロリーだからダイエット食材としては優秀でも栄養素は少ないのでは?と思ってしまう方もいるかもしれませんね。でも舞茸には食物繊維やビタミンD、ビタミンB群など私たちの健康を支えてくれる栄養素がぎっしり。どんな栄養素が詰まっているのか、なぜ積極的に摂りたい食材なのかを見ていきましょう。

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1.腸内環境改善に役立つ食物繊維

舞茸の食物繊維はレタスの約3倍。食物繊維には次の3つのはたらきがあります。

1.大腸の腸内環境を健全に保つ
2.糖質の吸収を穏やかにする
3.コレステロールの排出を促す

100兆個にも及ぶ大腸内の細菌には発がん性をもつ腐敗産物をつくる悪玉菌、ビタミンB群をつくる善玉菌があり、そのバランスは個人差があるとか。善玉菌を増やすにはまず、ヨーグルトや納豆、漬物などの善玉菌=プロバイオティクスを摂取すること。そして水溶性食物繊維など、善玉菌が好きなエサ=プレバイオティクスを摂取して菌を増やすことが大切。

食物繊維をほとんど摂らない人に比べて1日に20g以上摂る人の生活習慣病の発症率が低いことから、国の定める「日本人の食事摂取基準」で1日当たり男性21g、女性18gを摂取することを目標にしています。ところが令和元年実施の「国民健康・栄養調査」によれば、男性の食物繊維摂取量は19.4g、女性17.5gと摂取不足。食物繊維が豊富な舞茸を積極的に摂っていきたいですね。

2.コレステロールの吸収を抑えるエルゴステロールとβグルカン

βグルカンは舞茸など真菌に含まれる食物繊維の一種。βグルカンは、腸の細胞を刺激し、免疫細胞を増殖させます。この免疫細胞は病原菌などを攻撃する指令を出す細胞なので増殖すると免疫力がアップ

一方、エルゴステロールは紫外線を受けてビタミンDに変化する物質。ただし残念なことにこの変化は人体内ではほぼ起きません。でも、最新の研究によればこのエルゴステロールとβグルカンが腸管にあると、コレステロールの吸収を抑えるはたらきがあるとのこと。ヒトでの有効性についてはさらなる臨床試験など根拠を明確にする必要がありますが、高中性脂肪血症や糖尿病などの予防効果に期待大、ですね。

3.ビタミンD含有量はきのこ類でもダントツ

舞茸に含まれる栄養素の中で特に注目したいのがビタミンDビタミンDは、骨の材料となるカルシウムやリンの吸収を高め、骨や歯を強くするのに必要不可欠なビタミン。カルシウムは筋肉を収縮させる役割もあり、ビタミンDは血液や筋肉の中のカルシウム濃度の調節をするはたらきがありますよ。

このビタミンDが舞茸100g4.9㎍も入っているんですよ。舞茸のビタミンD含有量はきのこの中でダントツ、生椎茸の約10。舞茸にはカルシウムをほとんど含みませんが、チーズなどの乳製品とあわせればそのカルシウムを効率的に利用することができますね。またビタミンDは脂溶性なのでごま油で炒め物にしたり、バター焼きにすると吸収率がアップ。豚バラ肉やベーコンなど、脂の多い食材との相性もばっちりですね。

4.ビタミンB群で代謝をサポート

ビタミンB1は、糖質を分解する酵素に必要なビタミンです。糖質は脳や神経系のエネルギーで不足するとイライラしたり、疲れやすくなったり。江戸で流行った脚気(かっけ)は主食がビタミンB1を多く含んだ玄米から精白米に変わったことが原因だとか。舞茸は玄米ごはんとほぼ同じ0.1mg/100gのビタミンB1を含みます。パスタやご飯とあわせれば糖質の効率的な利用に役立ちますね。

ビタミンB2は動物性食品に多く、野菜など植物性食品にはわずかにしか含まれません。でも舞茸にはプロセスチーズの半分ものビタミンB2が含まれていますよ。このビタミンB2のはたらきは脂質とたんぱく質の分解。細胞の再生を助けて健康な髪や肌をつくり、口や目など粘膜を保護します。また、老化やがんの原因となる過酸化脂質も分解しますよ。ニキビや口内炎はこのビタミンB2不足のサイン。こんな時は舞茸でビタミンB2をチャージしましょう。

\次のページで「5.抗酸化作用のあるポリフェノール」を解説!/

5.抗酸化作用のあるポリフェノール

舞茸をゆでると汁が黒くなりますよね。あれは灰汁(あく)だと思って捨てている人もいるのでは?ところがあの黒い汁の正体はポリフェノール色素によるもの。ポリフェノールにはいろいろな種類がありますが、共通して活性酸素の害から細胞を守る抗酸化作用があります。ですので、老化や病気を防ぐだけでなく、発がん性物質を防ぐはたらきがあるんですね。

ポリフェノールは水溶性なので、黒くなった汁にこそたくさん含まれています。ぜひ汁ごと食べてくださいね。

舞茸の食べる時の注意点は?

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低カロリーなのに栄養豊富な舞茸。積極的に摂りたい食材ですが、食べるときの注意点はあるのでしょうか。食べたほうがいい人、あまり食べないほうがいい人はいるのでしょうか。また、舞茸は普通、加熱して食べることが多いと思いますが、生で食べてもいいのでしょうか。舞茸を食べるときの注意点について解説します。

食べ過ぎるとどうなる?

舞茸には食物繊維が多く含まれるので食べ過ぎると下痢などの腹痛を引き起こすことがあります。特に胃腸の弱い方は注意しましょう。また、舞茸には微量のシアンが含まれ、カリウムが結合した青酸カリは有毒です。シアンは加熱することで分解しますが、生や不十分な加熱のものを食べると吐き気などの中毒症状を起こすことがあるから注意してくださいね。

適量は3050g。だいたい1パック100gで売られていることが多いので1回に食べる量はパック半分くらいを目安にするとよいでしょう。また、アレルギー症状が出る人もいるので唇や喉に異常を感じたら医療機関でアレルギー検査を行いましょう。幼児など初めて舞茸を食べる場合は、少量で試してから。

妊娠中は食べても大丈夫?

妊娠中、舞茸はぜひ摂りたい食材のひとつ。というのは、舞茸には妊娠初期の胎児の成長に欠かせない葉酸が53㎍/100gも入っているから。受精卵の細胞分裂を助けるはたらきがあり、葉酸は妊娠してから3週間以内に摂るとよいとのこと。妊活中の女性は日頃から積極的に摂りたいですね。

またビタミンB群の一種であるナイアシンは血行促進作用があるため妊娠の大敵、冷えの改善に役立ちます

また舞茸は銅を0.22mg/100gときのこの中でも比較的多く含みます。銅は鉄の利用を高め赤血球の合成を助けるほか丈夫な骨や皮膚をつくるのにも欠かせません。ただし食べ過ぎや生焼けには注意してください。

栄養豊富な舞茸を食べよう!

しゃきしゃきした食感で香り高い舞茸。旨味成分もたっぷりでおいしいきのこですが、栄養豊富なこともおわかりいただけたでしょうか。特にビタミンDは骨粗しょう症予防のために高齢者や成長期のお子さんに、ビタミンB群は若々しさを保ちたい方や妊娠中の方にうれしい栄養素ですね。子どもから高齢者までみんなの健康を守る舞茸、今晩のおかずにいかがでしょう。

おいしい舞茸を見分けるコツは、「舞茸の旬・種類・選び方」の記事を参考にしてください。

また、舞茸の栄養をしっかり摂るおすすめレシピやめんつゆを使ったお手軽レシピ、舞茸を冷蔵や冷凍で長持ちさせる方法や乾舞茸の作り方などは「舞茸の食べ方・下処理・保存方法」でご紹介しているのでこちらもぜひご覧ください。

" /> 舞茸ってどんなきのこ?どんな栄養素がある?効能や健康効果も管理栄養士がわかりやすく解説 – Study-Z
家庭科

舞茸ってどんなきのこ?どんな栄養素がある?効能や健康効果も管理栄養士がわかりやすく解説

今回は舞茸(まいたけ)についてみていこう。比較的安価な食材ですが、しいたけやえのきたけに比べるとあまり馴染みがないきのこかもしれませんね。でもその独特の香りと食感だけではなく、健康のために毎日の食卓に取り入れたい栄養素がたっぷりなんです。管理栄養士と一緒に解説していきます。

ライター/ママパンダ

主婦歴30年の管理栄養士。普通の会社員だったが、料理好きが高じて40歳代半ばにして大学に再入学、管理栄養士の資格を取得した経歴を持つ。現在は調理師養成施設で食費の栄養や調理理論を教えている。

舞茸ってどんなきのこ?

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舞茸はミズナラやブナなどの老木の切り株に発生する食用きのこ。根本から太い柄が分かれて広がり、先端のひらひらした半円形のかさがいくつも重なり合って大きな株をつくります。最大級で3kgを超え、青森県で15kgもの舞茸が採れてニュースになりました。ただ見つけるのが非常に難しく、見つけた人が「舞い踊って」喜ぶことから舞茸という名がついたとか。翌年、同じところに発生することが多く、見つけた場所を親子でも教えあわないとも言われます。

天然では希少な舞茸ですが、1970年代に人工栽培に成功して身近なきのこに。味噌汁や天ぷら、炊き込みご飯などの和風料理、スープや肉の煮込みなど洋風料理、炒め物など中華に幅広く料理に使われていますね。

「香り松茸味しめじ」、舞茸は?

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「香り松茸味しめじ」と言われますが、舞茸のスパイシーな香りとしゃきしゃきとした食感、複雑な旨味も負けていませんよね。舞茸の旨味は三大旨味成分のグルタミン酸とグアニル酸での2つを合わせると味の相乗効果で1つの時の数倍ものおいしさにだから秋田のきりたんぽ鍋には欠かせません。

旨味たっぷりなので塩こしょうはもちろん、料理酒で蒸してポン酢で、または唐辛子を効かせて、洋風にバターで、など様々な味つけで楽しめるところが舞茸の良いところ。また、新鮮な舞茸の鮮烈な香りには、しょうゆの香ばしさや黒こしょうのスパイシーな香りがよく合います。レモンやゆずなどの柑橘類の香りをプラスしてさらに香り高く、味わうのもおすすめ。

舞茸はダイエット向きの食材?

舞茸は、よく見かける1パック100gでわずか22kcal。鶏もも肉だったら一口大のそのまた半分と同じくらい。それは水分が90%以上で、脂質はほぼなく、3.5gがカロリーほぼ0の食物繊維だから。食物繊維は小腸で消化吸収されないまま大腸で水分を吸収して膨らみます。満腹感を感じやすくなって暴食を防ぐことができますね。さらにダイエットでは便秘になりがちですが、食物繊維が大腸の蠕動運動を活発にするので快便につながりますね。

舞茸の緻密な肉質は肉や魚のかさを増すのに最適。しかも舞茸のグルタミン酸と、肉や魚に含まれるイノシン酸を組み合わせるとおいしさをぐんと増しますよ。舞茸はおいしくて低カロリー、快便でぽっこりおなかの改善までダイエットの強い味方ですね。

舞茸に含まれる栄養素と効能は?

舞茸は水分が9割で低カロリーだからダイエット食材としては優秀でも栄養素は少ないのでは?と思ってしまう方もいるかもしれませんね。でも舞茸には食物繊維やビタミンD、ビタミンB群など私たちの健康を支えてくれる栄養素がぎっしり。どんな栄養素が詰まっているのか、なぜ積極的に摂りたい食材なのかを見ていきましょう。

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