メロンは芳醇な香りと濃厚な甘みが人気の初夏のフルーツです。贈答用としての知名度も高く、「高級」というイメージが強いかもしれない。では、なぜ高級なのか、理由を知っているか?しかも、メロンが人々に好まれたのは今に始まったことではない。メロンの歴史は驚くほど古く、長い長い栽培と研究の年月がメロンの価値を作っていったんです。今回の記事では、歴史や栄養成分・効能など、メロンの成り立ちを果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。特にメロンは、シャーベット作りのために1日70玉以上味見した経験あり。

メロンってどんな果物?

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メロンは、初夏の頃に出回る果実を食用とする、一年生草本植物です。その果肉は柔らかく、繊維質を感じる歯ざわりがあります。ジューシーで青っぽい風味と濃厚な甘さ独特の香りが特徴です。形は11~16㎝ほどの球形で、重さ800g~2㎏、大きいものだと2.5㎏を超えるものも。一般的には半月状にカットして、果肉をスプーンですくって食べることが多いですね。

主な産地として、北海道や熊本県のイメージが強いかもしれませんが、日本一の特産地は茨城県です。では、メロンの基礎知識をさらに詳しく解説していきましょう。

メロンの分類

メロンの植物学上の分類は「ウリ科キュウリ属」で、キュウリの仲間です。同じウリ科にはお馴染みのスイカがありますね。私たちの食生活では果物として扱われるメロンとスイカですが、植物の分類上は野菜の仲間なのです。さらに、メロンの品種の中でも、その特徴によっていくつかの種類別にされます。

メロンの分け方
栽培方法:温室栽培/露地栽培
表面の網目:網目のある「ネット型」/網目のない「ノーネット型」
果肉の色:青肉系/赤肉系/白肉系

また、メロンと同じルーツを辿る植物にマクワウリがあります。もとは同じ植物だったわけですが、西洋に伝わって品種改良された品種を「メロン」と呼び、中国など東方に伝わった品種を「マクワウリ」と呼ぶようになりました。

名前の由来は?

メロンは和名でも「メロン」、または漢字表記で「西洋甜瓜」と言います。「甜瓜」とも書きますが、「甜瓜」だとメロンの他にマクワウリも含んだ言い方になりますね。

英語では「メロン(melon)」フランス語は「ムロン(melon)」です。英語とフランス語は綴りは同じですが、発音が違うようですよ。もともとの語源は、ギリシャ語で「リンゴのようなウリ」という意味の「melopepon(メーロペポーン)」と言われています。

メロンの歴史はとても古い

メロンの原産地は諸説ありますが、西アフリカが有力とされています。メロンの歴史は大変古く紀元前3000年の古代エジプトにはすでに存在し、当時の壁画にも描かれているそうです。また、古代ギリシャ・ローマ時代や、紀元前1300年の中国にも記録が残っており、世界中で遥か昔から栽培されていたことが分かります。

その後、中近東や東アジアに伝わり、13~15世紀頃には温暖な地域を中心としたヨーロッパ各地に広まり、16世紀頃のイギリス網目模様の品種が栽培され始めました。

日本でも東洋系メロンであるマクワウリの歴史は古く弥生時代には栽培されていたようです。現在のメロンである西洋系メロンは明治時代にやってきましたが、当時は大変な高級品だったとか。しかしその後、温室栽培の成功と共に品種改良も重ねられ、特に1962年低価格で甘い「プリンスメロン」の登場により、一般的な果物として人気が定着していきました。

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高級メロンってどんなもの?

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メロンというと高級なイメージですが、すべてが高価というわけではありません。品種によっては、手ごろな価格で手に入るメロンもたくさんあります。しかし、確かに1玉2万円を超えるような高級なものもあるのです。高級なメロンは甘みも濃厚で、香りも芳醇、見た目さえ芸術品のようですね。

その高級さには理由があります。メロンは通常1つのツルに数個の実がなりますが、高級メロンの栽培では、大きくて甘い果実を育てるために、栽培過程で1番良い果実を残し他の実は摘み取ってしまうとか。そうすることで、1つの果実に栄養が集中し、特に美味しい実に成長するわけです。また、温室で栽培されることが多く、手間のかかる果物なので、設備や人件費にも費用がかかってしまいます。収穫量が少なく、コストが掛かれば、高価になってしまうのもうなずけますね。

では、高級メロンの証ともいえる特徴を見ていきましょう。

1.網目模様の作られ方

網目模様のある「ネット型」と呼ばれるメロンには濃厚な甘みと芳醇な香りがあり、マスクメロンに代表されるような高級品種があります。メロンの皮の網目模様はどのように出来るか、ご存じでしょうか。

メロンの成長過程では、一度果実の生長が止まり、先に果皮が硬くなります。その後、再び果肉が大きく成長する際に、果皮がはじけてヒビ割れになり、そのヒビを塞ごうとして出来るコルク層が網目模様を作るのです。

その網目模様は「ネット」と呼ばれ、ネットがはっきりして細かく均等な模様で盛り上がっているほど、価値が高くなります。しかし、ネットは、果実が硬すぎても柔らかすぎてもきれいに入らず、栽培中にしっかり管理されないときれいな深い網目になりません。ネットの栽培管理の部分でも、高級メロンは大変手間がかかるのです。

2.T字のツルにも意味がある

高級なメロンを見てみると、上部にT字型のツルが付いて状態であることが多いです。このツルにも意味があるのですよ!

メロンは通常、どの果実も1本のツルになっている果実です。1つのツルには数個のメロンがなり、収穫時に果実の部分だけ切り取ります。しかし、T字型のツルをつけて収穫する場合は、ツルごと切ることになりますので、同じツルにある実は育たなくなってしまいますね。つまり、ツル付きのメロンは、「1つのツルに1個の果実だけ」で育てられた証なのです。

また、ツル付きの果実を出荷するためには、ツルを傷めないよう配送に配慮したり、大きめの箱が必要だったりとコストもかかります。ツルがない方が収穫量が上がり、コストもかからないのですが、あえてツルを付けることで、メロンに付加価値を付けているのです。ちなみに、美味しさの指標としては、左右の太さが違うツルが良いメロンだそうですよ。

メロンの栄養と効能

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メロンの成分はおよそ90%が水分ですが、カリウム・ビタミン・食物繊維など体に大切な栄養素もたくさん含まれています。果肉の色が「青肉」と「赤肉」では、少し違いもあるようですよ。では、メロンにはどのような効果・効能があるか詳しく解説していきましょう。

1.カリウム:高血圧予防・むくみ改善

「カリウム」は野菜や果物に多く含まれる栄養素ですが、メロンはその含有量が特に多く、同じ夏のウリ科のフルーツ・スイカの3倍もの量が含まれています。カリウムは、ナトリウムとバランスを取りながら、細胞の浸透圧を維持してくれる栄養素です。余分なナトリウムの体外への排出を促しますので、高血圧予防の効果が期待できますよ。また、利尿作用により、塩分と共に水分も排出されるため、むくみ解消にも効果があります。

カリウムは水溶性なので、調理をすると水に溶けだし失われることがありますが、生のまま食べられることの多いメロンは、豊富なカリウムを無駄なく摂取できますね。

\次のページで「2.ビタミンC:美肌効果」を解説!/

2.ビタミンC:美肌効果

メロンにはビタミンCが含まれています。ビタミンCは「美容ビタミン」とも呼ばれ、美肌に効果がある栄養素です。肌のハリと潤いを維持するには「コラーゲン」というたんぱく質が必要ですが、このコラーゲン生成にはビタミンCが欠かせません。また、シミの原因であるメラニンの生成も抑制してくれますよ。さらに、ビタミンCには抗酸化作用がありますので、体内の酸化による老化防止・アンチエイジングなどにも効果が期待できます。

他にも、ビタミンCは体の免疫力を高め、風邪やストレスから体を守ってくれる役割もありますよ!

3.βカロテン:老化防止・がん予防

赤肉のメロンには、そのオレンジの果肉の色に「βカロテン」が豊富に含まれています。同じメロンでも、青肉のものと比べると、赤肉メロンのβカロテン含有量は約25倍

βカロテンは強い抗酸化作用を持っていますので、老化防止やアンチエイジング・がん予防に効果が期待できます。また、βカロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換され、視力や粘膜・皮膚の健康を守ってくれますよ。

4.食物繊維:整腸作用

メロンのなめらかな舌触りの中には「ペクチン」という水溶性の食物繊維が含まれています。ペクチンには整腸作用があり、便を柔らかくし排便を促す効果が。さらに、便が脂質や糖・ナトリウムを吸着しやすくなり、共に体外に排出してくれますよ。コレステロールの吸収を抑える働きもあるため、食後のデザートに食べると効果的ですね。

メロンを食べ過ぎるとどうなるの?

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前の見出しではメロンを食べるメリットについて解説してきましたが、メロンも食べ過ぎれば少なからずデメリットもあります。美味しくて大きいメロンはついつい食べ過ぎてしまいそうですが、カロリーや糖質、たくさん含まれる水分などは健康のためにも気にしたいところですね。では、メロンを多量に摂取する場合の注意点を見ていきましょう。

カロリーと糖質は低い?

濃厚な甘さのメロンは、その分カロリーや糖質も高そうですよね。特にダイエット中には気になるところ。では、メロンのカロリーと糖質がどの程度なのか、他の主要な果物と比較して考えてみましょう。

果物名:100gあたりのカロリー/100gあたりの糖質
メロン:42kcal/9.8g
スイカ:37kcal/9.2g
リンゴ:54kcal/13g
バナナ:64kcal/21.4g
ミカン:46kcal/11g

上記から、メロンのカロリーや糖質量は、同じ夏のフルーツであるスイカより少し多いですが、他の主要な果物と比べるとかなり低いことが分かります。つまり、メロンはダイエット中にもおすすめのフルーツなのですね!

ちなみに、中玉メロン(1.5kg)の8分の1カットが、可食部およそ100gの大きさです。ダイエット中のおやつは80~100kcalまでが目安とされていますので、メロンだったら8分の1もしくは4分の1くらいが良いでしょう。

\次のページで「下痢の原因に」を解説!/

下痢の原因に

メロンの食べ過ぎは下痢を引き起こす可能性があります。カリウムは先ほど紹介した効能の他に、体を冷やす効果もあり、過剰摂取は体を冷やし過ぎてしまうことがあるのです。体が冷えると、胃腸の機能が低下し、消化不良から下痢を引き起こしてしまいます。また、ビタミンCの過剰摂取も、胃腸に刺激となり下痢の原因になることも。

甘くておいしいメロンですが、ジューシーなため水分も多く、他の食べ物の消化不良を起こしやすい果物です。食べ過ぎによる下痢には注意しましょう。

喉のイガイガはどうして起こる?

メロンを食べて、喉がイガイガしたり、口の中がかゆくなった経験はありますか?その症状は気のせいではなく、メロンに含まれているたんぱく質分解酵素「ククミシン」の効果なのです。私たちの口内はたんぱく質で出来た粘膜で刺激から保護されているのですが、メロンを食べるとククミシンが口内の粘膜を壊してしまいます。すると、直接イガイガという刺激を感じるというわけです。

同じようなたんぱく質分解酵素はパイナップルなどにも含まれています。メロンもパイナップルも、喉がイガイガするほか、ゼリーを作る際にゼラチンの凝固を阻害してしまうのです。反対に、スペアリブや酢豚にも使われているように、お肉を柔らかく焼き上げる効果もありますよ。

ククミシンによる症状は、通常15分程度で収まりますが、少しでも早く改善したい場合の対処法をご紹介します。

・水で口をしっかりゆすぐ
・温かい飲み物を飲む
・牛乳を飲む

ククミシンは果実が未熟な時に多く含まれ、熟すにつれ少なくなっていきます。のどのイガイガが気になるようでしたら、完熟のメロンを食べるようにしましょう。

ククミシンはアレルギー反応を起こすこともありますが、メロンを食べてすぐに起こる喉や口内の不快感はアレルギー反応ではないと言われています。しかし、15分以上不快感が続いたり、激しく痛む場合はアレルギーの可能性も。特にもともと花粉症の人はアレルギー反応が出やすいと言われています。気になる場合は病院で相談してみましょう。

妊婦さんや赤ちゃんは食べられる?

メロンは妊娠中でも安心して食べられる果物です。水分が多く喉ごしも良いので、つわり時期にもおすすめ。むくみ改善を促すカリウム、胎児の発育に欠かせない葉酸など、妊婦さんに大切な栄養素も摂取できますよ。ただし食べ過ぎると、糖分の取りすぎや体を冷やす原因にもなるため、美味しくても程々に。

また、リステリア菌など感染症リスクを下げるため、出来るだけ早い段階で、表面をしっかり洗浄しておきましょう。

赤ちゃんに与える場合は、離乳食初期(生後5~6か月頃)から食べられます。おかゆや野菜を食べ慣れた頃に始めましょう。最初は裏ごしした果汁の状態で、スプーン1さじから。まれにアレルギーを発症する場合がありますので、初めて食べる時はしっかり様子を確認してください。心配な場合は、加熱してから与えると安心です。離乳食中期では果肉を荒くつぶしたり、みじん切りに。後期には5㎜角にカットまたは薄くスライスが良いですね。

みんなの人気者「メロン」!ジューシーなメロンで初夏の体を整えよう!

5000年前から人々に愛されてきたメロンは、栽培方法や品種が進化しながら、現在でも高級フルーツとして人気を誇っています。赤ちゃんから妊婦さん、ダイエット中の人にもおすすめなメロン。暑くなり始める季節には、喉を潤すジューシーなメロンでみんなの体を整え、その味わいを楽しみましょう!

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家庭科

メロンの栄養や効能は?食べ過ぎるとどうなる?メロンの特徴や古い歴史も果物大好きパティシエが詳しくわかりやすく解説

メロンは芳醇な香りと濃厚な甘みが人気の初夏のフルーツです。贈答用としての知名度も高く、「高級」というイメージが強いかもしれない。では、なぜ高級なのか、理由を知っているか?しかも、メロンが人々に好まれたのは今に始まったことではない。メロンの歴史は驚くほど古く、長い長い栽培と研究の年月がメロンの価値を作っていったんです。今回の記事では、歴史や栄養成分・効能など、メロンの成り立ちを果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。特にメロンは、シャーベット作りのために1日70玉以上味見した経験あり。

メロンってどんな果物?

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メロンは、初夏の頃に出回る果実を食用とする、一年生草本植物です。その果肉は柔らかく、繊維質を感じる歯ざわりがあります。ジューシーで青っぽい風味と濃厚な甘さ独特の香りが特徴です。形は11~16㎝ほどの球形で、重さ800g~2㎏、大きいものだと2.5㎏を超えるものも。一般的には半月状にカットして、果肉をスプーンですくって食べることが多いですね。

主な産地として、北海道や熊本県のイメージが強いかもしれませんが、日本一の特産地は茨城県です。では、メロンの基礎知識をさらに詳しく解説していきましょう。

メロンの分類

メロンの植物学上の分類は「ウリ科キュウリ属」で、キュウリの仲間です。同じウリ科にはお馴染みのスイカがありますね。私たちの食生活では果物として扱われるメロンとスイカですが、植物の分類上は野菜の仲間なのです。さらに、メロンの品種の中でも、その特徴によっていくつかの種類別にされます。

メロンの分け方
栽培方法:温室栽培/露地栽培
表面の網目:網目のある「ネット型」/網目のない「ノーネット型」
果肉の色:青肉系/赤肉系/白肉系

また、メロンと同じルーツを辿る植物にマクワウリがあります。もとは同じ植物だったわけですが、西洋に伝わって品種改良された品種を「メロン」と呼び、中国など東方に伝わった品種を「マクワウリ」と呼ぶようになりました。

名前の由来は?

メロンは和名でも「メロン」、または漢字表記で「西洋甜瓜」と言います。「甜瓜」とも書きますが、「甜瓜」だとメロンの他にマクワウリも含んだ言い方になりますね。

英語では「メロン(melon)」フランス語は「ムロン(melon)」です。英語とフランス語は綴りは同じですが、発音が違うようですよ。もともとの語源は、ギリシャ語で「リンゴのようなウリ」という意味の「melopepon(メーロペポーン)」と言われています。

メロンの歴史はとても古い

メロンの原産地は諸説ありますが、西アフリカが有力とされています。メロンの歴史は大変古く紀元前3000年の古代エジプトにはすでに存在し、当時の壁画にも描かれているそうです。また、古代ギリシャ・ローマ時代や、紀元前1300年の中国にも記録が残っており、世界中で遥か昔から栽培されていたことが分かります。

その後、中近東や東アジアに伝わり、13~15世紀頃には温暖な地域を中心としたヨーロッパ各地に広まり、16世紀頃のイギリス網目模様の品種が栽培され始めました。

日本でも東洋系メロンであるマクワウリの歴史は古く弥生時代には栽培されていたようです。現在のメロンである西洋系メロンは明治時代にやってきましたが、当時は大変な高級品だったとか。しかしその後、温室栽培の成功と共に品種改良も重ねられ、特に1962年低価格で甘い「プリンスメロン」の登場により、一般的な果物として人気が定着していきました。

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