この記事では俳優と女優についての違いをみていきます。両方ともテレビドラマや映画、舞台などで役になりきって演技をする職業を表している。慣例で性別によって使い分けてはいるものの、近頃では言葉を統一する動きも活発になっているようです。他の職業でも同様の動きがでているぞ。今回は俳優と女優の違いについて、かねてから疑問に感じていたライター海辺のつばくろと一緒に解説していきます。

ライター/海辺のつばくろ

女優の対になる言葉は、男優であるのか俳優であるのか疑問に思って調べてみた文学部卒のライター。

俳優と女優の大きな違いとは?

image by iStockphoto

俳優も女優も芸能人で、職業を表す言葉。大きな違いは性別というイメージが強いです。俳優はドラマや映画、舞台などで演技をする男性で、女優は演技をする女性を指すことがほとんど。もし、対になる語を表すのであれば、男優と女優になるのではないでしょうか。なぜ、性別の違いを表すのに俳優と女優なのでしょう。

俳優:男性の俳優

俳優とは、演劇などで劇中の人物になりきって、セリフを言ったり動作をしたりして演技をする職業のことです。一般的には、男性の俳優を指すことがほとんど。テレビやラジオなどのドラマや映画、舞台で行われる演劇だけでなく、日本古来の芸能、能や狂言、歌舞伎などで演技をする人のことも俳優といいます。

女優:女性俳優の略称

女優とは「女性俳優」を略したもの。意味は俳優と同じですが、女性に対してだけ使います

なぜ俳優は男性を指す?

image by iStockphoto

仏教伝来以降、芸能の分野に限らず女性の存在が目立つのを避ける風潮がありました。日本古来の芸能である歌舞伎や能などは、依然として俳優として舞台に立つのは男性だけですね。実は、女性も舞台に上がれるチャンスはあったのです。江戸時代初期に出雲阿国(いずものおくに)という女性によって、歌舞伎の原型ができたといわれています。

江戸時代から明治初期まで女性が舞台に立つのを禁止された

風紀の乱れが問題となったようで、寛永6年(1629年)に江戸幕府によって女性が舞台に立つのを禁止されてしまいました。そのことにより、歌舞伎や能などで舞台で演技をするのは男性だけとなったのです。そのため、俳優は男性の演技者を指すのが暗黙の了解となりました。

女優は明治以降に新しく作られた言葉。明治以降鎖国政策が解かれ、西欧の劇や映画などが入ってきました。日本でも女性の役は女性が演ずることになり、男性だけで演技をするのが困難になり、女性の俳優が必要となったのです。そこで女性俳優、言いやすく縮めて女優という語が使われだしました。

俳優を女性にも使うようになった理由

image by iStockphoto

近年では、マスコミ、報道番組、新聞や雑誌、書籍などで職業を表す語を、男女ともに俳優」とひとくくりにしている例が多く見られます。女優の中にも、俳優という呼称を歓迎している方もみられるようですね。ただし、「大女優」「往年の大女優」といった、十分なキャリアがあり、素晴らしい演技で魅了した女性の俳優をたたえる表現については、他の表現や言い換えなどが難しいのでそのまま使うことがほとんどです。

性差別を防ぐため

女優という名称をできるだけ俳優に改めている背景には、『ジェンダー平等への配慮』があります。ジェンダーとは、社会制度や文化などの側面から作られた性差別のこと。女優という呼称は、男尊女卑を招きかねない表現で、女性を特別視したり、外見を強したりする可能性も。差別を助長させないため、男女ともに俳優という表現がふさわしいのではと考えられています。

\次のページで「「役者」は性差がない?」を解説!/

「役者」は性差がない?

近年では、「役者」という語なら性別を表す語句が入らないので、「俳優」とひとくくりにするよりも「役者」を使ったらどうだろうかという意見も見られます。

役者のもともとの意味:神仏に関する儀式で役を受け持つ人

役者は、もともと神仏に関連した儀式で特別な役目を担う人のことをいいました。転じて、演劇を行う人(歌舞伎では演技をする人をいうが、能の場合は囃子方、文楽では人形遣いも含める場合もある)のことを指すようにもなったということです。

優れた俳優を褒める時に使う語として好まれる傾向

古語では、優れた俳優や演技を褒めるときに使われ、転じて、駆け引きに優れた能力のある人を指すこともあるようです。「役者」という言葉には、演じる人にとって誇りに感じられることから、職業を表す際に俳優よりも役者という語を好む人もいるとのこと。男性にも女性の俳優の中にも、「役者」を使いたいという方も見られるようになりました。

女優以外に性差を感じないよう呼称が変わった職業

女優以外に、性差を感じさせないように呼称が変化した職業名を紹介します。代表的なものは以下の通りです。

看護師:男性でも看護の職に就くことが多くなってきたから。(以前は「看護婦」)
保育士:男女の区別なく呼称を統一(以前は「保母」や「保父」)
客室乗務員:男女の区別をなくす(以前は「スチュワーデス」や「スチュワード」)
会社員:男女ともに使える呼称に統一。「OL」(和製英語OfficeLadyの略)「サラリーマン」は使われなくなりつつある。
ただし、「サラリーマン川柳」のようにコンテストの名前といった固有名詞になっているものについては、そのまま変更はない。
ビジネスパーソン:「ビジネスマン」は仕事をする男性のみを指すことになる。人を表す「パーソン”Person”」は男女関係なく使える。また、営業マンも使われなくなりつつある。職種を表す場合「営業職」や「事務員」「経理」といった例がある。

\次のページで「使われなくなってきた女性特有の敬称」を解説!/

使われなくなってきた女性特有の敬称

ちなみに、女性特有の敬称も差別につながるとして使われなくなってきました。代表的な例は、以下の2つです。

女史(読み:じょし)才能のある女性をほめて使う言葉。「〇〇女史」のように使う。男性に対になる語がなく、からかうように言う時に使うこともあるため性差別を助長するとしてふさわしくない語とされ使われなくなった。


貴女(読み:きじょ・あなた)手紙などで女性への敬称。ビジネス用語では「貴殿」を使う場合もあるが、男性に使うイメージが強い。男女の区別なく使える名前の下に様をつけて、「〇〇様」とする企業が優勢に。

俳優と女優は性別で違いがあるが、今後は俳優に統一の流れ

俳優と女優の違いは、俳優は慣例で男性の演技をする人、女優は女性俳優の略語ということです。現代では性差別を助長する恐れがあるとして、男女ともに俳優で統一する流れとなっています。また、俳優の中には職業に誇りを持って、役者という語を使いたいという人も見られるようです。

" /> 3分で分かる俳優と女優の違いとは?俳優は男性だけ?呼称が変わった職業や敬称も文学部卒ライターが詳しくわかりやすく解説 – ページ 3 – Study-Z
雑学

3分で分かる俳優と女優の違いとは?俳優は男性だけ?呼称が変わった職業や敬称も文学部卒ライターが詳しくわかりやすく解説

使われなくなってきた女性特有の敬称

ちなみに、女性特有の敬称も差別につながるとして使われなくなってきました。代表的な例は、以下の2つです。

女史(読み:じょし)才能のある女性をほめて使う言葉。「〇〇女史」のように使う。男性に対になる語がなく、からかうように言う時に使うこともあるため性差別を助長するとしてふさわしくない語とされ使われなくなった。


貴女(読み:きじょ・あなた)手紙などで女性への敬称。ビジネス用語では「貴殿」を使う場合もあるが、男性に使うイメージが強い。男女の区別なく使える名前の下に様をつけて、「〇〇様」とする企業が優勢に。

俳優と女優は性別で違いがあるが、今後は俳優に統一の流れ

俳優と女優の違いは、俳優は慣例で男性の演技をする人、女優は女性俳優の略語ということです。現代では性差別を助長する恐れがあるとして、男女ともに俳優で統一する流れとなっています。また、俳優の中には職業に誇りを持って、役者という語を使いたいという人も見られるようです。

1 2 3
Share: