今回は赤魚の種類について見ていきます。赤魚は学名ではなく総称です。流通する上で体が赤い魚を、まとめてアカウオと呼んでいる。では具体的にどんな種類があるのか、旬の時期や選び方のコツなんかも現役料理人のテルトラと一緒に解説していきます。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。得意分野は魚料理。

赤魚は全部で何種類?

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現在、赤魚として流通している魚は3種類です。

・アラスカメヌケ
・モトアカウオ
・チヒロアカウオ

海外からの輸入が主流で、日本近海で獲れる赤魚は希少です。スーパーで見かける粕漬けや冷凍切り身の種類は、モトアカウオが多くを占めます。

1.赤魚の代表格アラスカメヌケ

メバル科メバル属の魚で、見た目もメバルによく似ています。下あごの先が尖り、やや垂れ下がったように見えるのが特徴です。体長40cmを超えますが、赤魚の中では小型の種類に入ります。北大西洋の水深100~450mが主な生息域。釣り上げられる際に水圧の変化で目玉が飛び出すことから、目が抜ける→メヌケとも呼ばれます。

新鮮な物は刺身でも食べられますが、滅多にお目にかかれません。粕漬けにされることが多く、昔ながらの「鯛粕(たいかす)」の原料です。肉厚で弾力があり、適度に脂も乗っています。

近年は漁獲量が減り、大西洋で獲れる近縁種が多くなってきました。市場的にはアラスカメヌケのほうが、味もよく高値で取引されています。

2.漁獲量が多いモトアカウオ

水深100~1000mにすむメバル属。北大西洋北部に生息しているため、タイセイヨウアカウオとも呼ばれます。黄色っぽい魚体と赤くて大きい目玉が特徴です。体長40~60cmと大型の種類で、最大級のものは100cmにもなります。

身も皮もやわらかくて崩れやすいぶん、加熱してもかたくなりません。漁獲量が減ったアラスカメヌケに代わり、赤魚の代表格となりつつあります。ドレス(頭と内臓がない状態)やフィーレ(切り身)でも流通しますが、多くは加工品です。

3.もっとも小型なチヒロアカウオ

モトアカウオと同じ北大西洋北部に生息し、水深400~600mのより深い海で活動しています。体長40cm前後と、4種類の中ではもっとも小型です。

身離れがよくて食べやすいですが、脂の乗りはさほどよくありません。漁獲される海域が同じモトアカウオと比べて、市場価値は劣ります。主にヨーロッパなどから輸入され、冷凍フィーレや粕漬け・干物などの加工品がメインです。

4.高級魚になったアコウダイ

タイの名前が付いていますが、別種類の魚です。メバルやカサゴの仲間で、国産赤魚の代表格。大型のメバル属の中ではもっとも南に生息し、北海道より北では見かけません。主な生息地は、北海道南部〜土佐湾までの太平洋沿岸。体長51cm前後で、鮮やかな赤色の体と透き通るような白身が特徴です。成長が非常に遅く、稚魚から卵を産むまでに10年以上かかります。

皮に厚みがありますが、熱を通しても身は硬くなりません。加熱すると皮と身の間に、ゼラチン質の層ができます。皮ぎしの脂は、魚でもっとも美味しいとされる部分です。漁獲量が激減したため、現在は高級魚として扱われています。

\次のページで「赤魚の旬と産地」を解説!/

赤魚の旬と産地

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ほとんどが冷凍輸入の赤魚にも旬の時期があります。旬の赤魚は脂が乗り、冷凍物といえど美味です。産地(漁獲海域)は赤魚の種類によって異なり、中国などの加工国を経由して日本に輸入されます。

赤魚の旬はいつ?

赤魚の旬は秋から春ごろで、種類によって多少異なります。外国産赤魚の旬は4〜6月ごろ。遠くから運ばれるため、日本の店頭に並ぶまでに旬の時期がずれます。鮮魚の状態で水揚げされることは少なく、旬を感じにくい魚です。

国産のアコウダイの旬は秋から冬で、とくに関東周辺で獲れる近海物には高値が付きます。料亭や高級寿司店などで取り扱われるため、一般の小売店で見かけることはほぼありません。

主な産地は?

赤魚の産地(漁獲海域)は、大きく2つにわかれます。

・北太平洋‥アメリカ、カナダ、ロシア、北海道、青森など。
・北大西洋‥グリーンランド、アイスランド、ノルウェー、スペインなど。

オホーツク海や太平洋沿岸、ベーリング海やアラスカ湾で大量に獲れたアラスカメヌケは、数年前から漁獲量が減少しました。北大西洋ではモトアカウオ(タイセイヨウアカウオ)やチヒロアカウオが、安定した漁獲量を保っています。日本近海でまれに水揚げされるのは、北海道根室のアラスカメヌケや静岡県沼津のアコウダイです。

赤魚の輸入量

2021年1月~12月の流通量はおよそ19トンで、ほぼすべて輸入物です。かつては日本の漁船で大量に漁獲されていたものが、アメリカ産やロシア産に切り替わりました。現在はノルウェー産やアイスランド産など、北大西洋で獲れる赤魚が主流です。輸入物の赤魚には原産国のほかに、加工した国名が表示されます。

例:ノルウェー産(漁場:北大西洋)加工国:中国

新鮮な赤魚の選び方のコツは?

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日本近海では滅多に獲れない赤魚が、鮮魚(生)の状態で小売店に入荷することはほぼありません。仮に獲れたとしても希少価値の高さから、料亭や高級寿司店に買われていきます。

とはいえ、生鮮食品である以上鮮度は重要です。ここでは、スーパーで売られている赤魚の選び方を解説します。解凍時に身が反り返るような赤魚は、新鮮な証拠です。死後硬直が解ける前に冷凍されているため、筋肉が収縮するほど身に張りがあります。

\次のページで「赤魚はどこに売っている?」を解説!/

赤魚はどこに売っている?

赤魚のおもな販売場所は下記のとおりです。

・鮮魚店‥まれに鮮魚
・スーパー‥ほぼ加工品
・ネット通販‥種類が豊富

漁港近くの専門店では、鮮魚状態の赤魚(アコウダイ)が入荷する場合もあります。干物や開きなどの加工を自前でやっている店も多く、全体的に高品質。

スーパーなどの一般小売店では、粕漬けや干物などの加工品がメインです。業務用スーパーでは骨取り済みの切り身など、より食べやすい商品が売られています。おすすめはネット通販です。もっとも種類が豊富で、刺身や寿司ネタなどの生食用も見かけます。

新鮮な赤魚の選び方のコツ

鮮度を重視した選び方は下記の3つです。

新鮮な冷凍赤魚の選び方
・解けていない
・冷凍焼けがない
・賞味期限まで遠い

一度冷凍した魚が解けると、ドリップという水分が出ます。旨みが抜け、品質が低下している証拠です。パッケージではなく魚自体が白く変色している場合は、冷凍焼けしています。長期間の冷凍保存で、劣化している可能性大です。見たり触ったりすれば見分けられるので、真っ先に確認しましょう。

賞味期限までが遠いほど、新しい商品です。賞味期限か製造年月日が必ず記載してあるので、いつ加工された物かわかります。

鮮度以外の選び方のコツ

脂乗りや身質を重視した選び方は下記の3つを参考にしてください。

鮮度以外の選び方
・切り身の形(部位)
・産地(漁獲海域)
・値段

魚は部位によって脂の乗りと身質が違います。切り身の形でどの部分かわかるので、用途や好みに応じて選ぶとよいでしょう。

\次のページで「相場の値段は?」を解説!/

弓形‥頭に近い部位で脂が乗っている
半月形‥真ん中部分であっさりしている
三角形‥尻尾付近で弾力があり1切れが大きい

また、漁獲された海域が表示されている場合は、赤魚の種類を特定できます。

太平洋側→アラスカメヌケ
大西洋側→モトアカウオ・チヒロアカウオ

味や食感の特徴は、上記で解説したとおり。どうしても選びきれないときは、値段で決めるのもアリです。一番お買い得な物を選びましょう。

相場の値段は?

赤魚の相場は下記のとおり。
卸価格とは、生産者が中間販売業者(卸売業者)に販売するときの値段です。

【冷凍輸入の赤魚】
・平均卸価格‥1㎏あたり740円ほど
・6枚入り‥398円:1切れあたり66円
・500g入り‥398円:100gあたり79.6円
【国産赤魚(アコウダイ)】
・平均卸価格‥1kgあたり2,158円ほど
・通販価格‥1㎏あたり4,277~5,346円ほど

アコウダイは滅多に漁獲されない高級魚です。標準サイズは4.5㎏ほどで2万4~5千円ですが、大型の物では1尾5万円以上で取引きされることもあります。

脂が乗った赤魚を食べよう

赤魚にも何種類かいることがわかりました。旬の時期や獲れる海域によって、味や特徴が違います。国産赤魚の希少性や、スーパーなどで赤魚を選ぶときのコツもわかりましたね。1年中手に入る点は、冷凍輸入のメリットといえます。この機会に脂が乗った赤魚を食べてみましょう。

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家庭科

赤魚と呼ばれる魚は何種類ある?旬の時期や選び方のコツも現役料理人が詳しくわかりやすく解説

今回は赤魚の種類について見ていきます。赤魚は学名ではなく総称です。流通する上で体が赤い魚を、まとめてアカウオと呼んでいる。では具体的にどんな種類があるのか、旬の時期や選び方のコツなんかも現役料理人のテルトラと一緒に解説していきます。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。得意分野は魚料理。

赤魚は全部で何種類?

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現在、赤魚として流通している魚は3種類です。

・アラスカメヌケ
・モトアカウオ
・チヒロアカウオ

海外からの輸入が主流で、日本近海で獲れる赤魚は希少です。スーパーで見かける粕漬けや冷凍切り身の種類は、モトアカウオが多くを占めます。

1.赤魚の代表格アラスカメヌケ

メバル科メバル属の魚で、見た目もメバルによく似ています。下あごの先が尖り、やや垂れ下がったように見えるのが特徴です。体長40cmを超えますが、赤魚の中では小型の種類に入ります。北大西洋の水深100~450mが主な生息域。釣り上げられる際に水圧の変化で目玉が飛び出すことから、目が抜ける→メヌケとも呼ばれます。

新鮮な物は刺身でも食べられますが、滅多にお目にかかれません。粕漬けにされることが多く、昔ながらの「鯛粕(たいかす)」の原料です。肉厚で弾力があり、適度に脂も乗っています。

近年は漁獲量が減り、大西洋で獲れる近縁種が多くなってきました。市場的にはアラスカメヌケのほうが、味もよく高値で取引されています。

2.漁獲量が多いモトアカウオ

水深100~1000mにすむメバル属。北大西洋北部に生息しているため、タイセイヨウアカウオとも呼ばれます。黄色っぽい魚体と赤くて大きい目玉が特徴です。体長40~60cmと大型の種類で、最大級のものは100cmにもなります。

身も皮もやわらかくて崩れやすいぶん、加熱してもかたくなりません。漁獲量が減ったアラスカメヌケに代わり、赤魚の代表格となりつつあります。ドレス(頭と内臓がない状態)やフィーレ(切り身)でも流通しますが、多くは加工品です。

3.もっとも小型なチヒロアカウオ

モトアカウオと同じ北大西洋北部に生息し、水深400~600mのより深い海で活動しています。体長40cm前後と、4種類の中ではもっとも小型です。

身離れがよくて食べやすいですが、脂の乗りはさほどよくありません。漁獲される海域が同じモトアカウオと比べて、市場価値は劣ります。主にヨーロッパなどから輸入され、冷凍フィーレや粕漬け・干物などの加工品がメインです。

4.高級魚になったアコウダイ

タイの名前が付いていますが、別種類の魚です。メバルやカサゴの仲間で、国産赤魚の代表格。大型のメバル属の中ではもっとも南に生息し、北海道より北では見かけません。主な生息地は、北海道南部〜土佐湾までの太平洋沿岸。体長51cm前後で、鮮やかな赤色の体と透き通るような白身が特徴です。成長が非常に遅く、稚魚から卵を産むまでに10年以上かかります。

皮に厚みがありますが、熱を通しても身は硬くなりません。加熱すると皮と身の間に、ゼラチン質の層ができます。皮ぎしの脂は、魚でもっとも美味しいとされる部分です。漁獲量が激減したため、現在は高級魚として扱われています。

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