この記事では子供と子どもの違いについてみていきます。全て漢字の子供という表記はよくないという意見を聞くことがあるよな。ところが使われる場面による違いがありますが、「子供」と「子ども」はどちらの表現も間違いではない。今回はそんな賛否分かれる表現の違いを、児童福祉を学んだ会社員ライターれおな=007と一緒に解説していきます。
れおな=007

ライター/れおな=007

一般企業に勤務する傍ら執筆活動を続けるwebライター。得意分野は言葉の意味をはじめとする雑学からITや歴史に関するものまで多岐に及ぶ。大学で児童福祉を学んだ経験をもとに、本記事を執筆していく。

子供と子どものざっくりとした違いは?

子供と子どもという表記について考えたことはありますか。本項では、子供と子どもの表記についてざっくりとした違いをみていきましょう。

子供:現代の公用文で使われる表記

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「子供」という表記は、現代の公用文で使われます。なぜなら2010年以降現在の常用漢字では、「子供」という表記は正しいものとされているからです。そのため国や各省庁からの告知や通達などで、「子供」という表記を見かけることがあるでしょう。

子ども:差別的なイメージをなくした表記

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「子ども」という交ぜ書きの表記は、「供」という漢字によって作られる差別的なイメージをなくしたものであると言われています。理由は「供」という漢字が、「お供」や「供養」という使い方がされるからでしょう。そのため「子ども」は大人のお供つまり所有物ではない、ということを強調したかったのかもしれません。

そもそも「子ども」の由来は?

現代では「子ども」という表現が最もよく使われますが、そもそも由来はどういったものでしょうか。本項では「子ども」という言葉の由来について詳しくみていきましょう。

「子」+複数形の「ども」

「子ども」は現代の日本語では1つの単語として扱われていますが、もともとは「子」と複数形をしめす「ども」が合わさった形です。そのため日本の古典文法では「子ども」といえば複数人いることを示し、一人を示したい時は「子」と表現するでしょう。中世より後の時代に一人の場合は「子ども」、複数になると「子どもたち」と言われるようになりました。

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こ-ども 【子供・子等】
名詞
①(幼い)子供たち。▽自分の子にも、他人の子にもいう。
②(自分より)若い人たちや、目下の者たちに、親しみをこめて呼びかける語。
出典万葉集 六三
「いざこども早く日本(やまと)へ」
[訳] ⇒いざこども…。
参考「ども」は複数を表す接尾語。現代語の「子供」は単数を表すが、中世以前に単数を表す例はほとんど見られない。

(参照:子供の意味 - 古文辞書 - Weblio古語辞典)

お供え物や従属物の説は誤り

前述のとおり子どもの由来は子の複数形であるため、お供えものや大人に従属するものという意味はありません。そしてここで使われる「供」はそもそも当て字で、特定の意味を持たせているというわけではないとも言われています。つまり「子供」という表記は、子どもに対する差別を示しているものではないのです。

子供と子どもの表記は誰が提唱した?

それでは「子供」と「子ども」という表記は、誰が提唱したのでしょうか。本項ではそれぞれの表記の提唱者について触れ、それによる社会への影響についてみていきましょう。

子供:文部科学省

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「子供」という表記は、文部科学省が正しいものであり決して差別表現ではないと明言しています。しかしその一方で日本の法律や政策に目を通すと、「子ども」という表記がよく見られるでしょう。この事実があるからか「子ども」という表現が誤りであるとは示しておらず、積極的に「子供」という表現を推奨することはないともしています。

お尋ねの「「子供」の表記に関する世論の認識も差別表現との誤解」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「子供」の表記に関する国民の認識の在り方について、政府として積極的に働き掛けることは考えていない。

(参照:衆議院議員丸山穂高君提出「子供」の表記に関する質問に対する答弁書)

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子ども:日本子どもを守る会 2代目会長羽仁説子氏

「子ども」という表記は、日本子どもを守る会の2代目会長である羽仁説子氏が提唱した表記です。基本的人権の尊重が謳われた戦後の日本では、「子ども」という表記がふさわしいと考えられたのでしょう。その後子ども向けの書籍はもちろん、新聞をはじめとする報道でも一般的に見られるようになりました。

●「子ども」表記の契機となった「岩波講座」・羽仁説子の指摘
 「子ども」表記を普及したのは、戦後最初の「岩波講座」である『岩波教育講座』第7巻『日本の子ども』(昭和27年)で、同年5月に設立された「日本子どもを守る会」の副会長・羽仁説子氏(翌年、2代目会長に就任)は、次のように証言している。

 <会の名前を付けるとき、私が子供の供という字はいけないと主張して「供」を「とも」にしました。人権を認める時代に「供」という字はいけない、と考えたことを思い出します。(守る会事務局の)金田さんは(家永)教科書裁判の杉本判決で「子ども」になっていたと喜んでいます>

(参照:髙橋史朗 48 –「子ども」表記と「児童の権利条約」について考える | 公益財団法人モラロジー道徳教育財団)

その後、法律や条約などの表記でも広く使われるようになり、中でも「子どもの権利条約」が特に有名です。そして子供が公用文では正しいとされている現在でも「子ども」という表記は人々の意識に定着しており、親しまれていることでしょう。

「こども」表記はあり?

ここまで「子供」と「子ども」の表記の違いについてみてきましたが、すべてひらがなの「こども」という表現は使われるでしょうか。本項では「こども」という表記の具体例をご紹介します。

1.こどもの日

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子どもをひらがな表記で示した表現では「こどもの日」が最も有名でしょう。これは「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。」という趣旨を持った日本の国民の祝日で、1948年に制定されています。

2.認定こども園

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2006年に発足した「認定こども園」も、子どもを全てひらがなで表記した例として知られています。これは0歳から6歳までの幼児を預かることが可能な、保育園と幼稚園の両方の機能を兼ね備えた施設を示した言葉です。

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「子供」と「子ども」の表記は使う場面が違い「こども」も正しい

ここまで解説した通り「子供」と「子ども」の表記は使う場面によった違いで、どちらも正しいものとされています。そのためお供え物やお供といった意味は全くなく、差別表現でもありません。場合によっては「こども」という表記も、正しいものとされています。同じ言葉でも表記によって印象が違いますが、文章で使う際は読者にわかりやすいように上手に使い分けたいですね。

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子供と子どもの違いは?「こども」の表記は正しい?由来や使用する場面も会社員ライターが詳しくわかりやすく解説

この記事では子供と子どもの違いについてみていきます。全て漢字の子供という表記はよくないという意見を聞くことがあるよな。ところが使われる場面による違いがありますが、「子供」と「子ども」はどちらの表現も間違いではない。今回はそんな賛否分かれる表現の違いを、児童福祉を学んだ会社員ライターれおな=007と一緒に解説していきます。
れおな=007

ライター/れおな=007

一般企業に勤務する傍ら執筆活動を続けるwebライター。得意分野は言葉の意味をはじめとする雑学からITや歴史に関するものまで多岐に及ぶ。大学で児童福祉を学んだ経験をもとに、本記事を執筆していく。

子供と子どものざっくりとした違いは?

子供と子どもという表記について考えたことはありますか。本項では、子供と子どもの表記についてざっくりとした違いをみていきましょう。

子供:現代の公用文で使われる表記

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「子供」という表記は、現代の公用文で使われます。なぜなら2010年以降現在の常用漢字では、「子供」という表記は正しいものとされているからです。そのため国や各省庁からの告知や通達などで、「子供」という表記を見かけることがあるでしょう。

子ども:差別的なイメージをなくした表記

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「子ども」という交ぜ書きの表記は、「供」という漢字によって作られる差別的なイメージをなくしたものであると言われています。理由は「供」という漢字が、「お供」や「供養」という使い方がされるからでしょう。そのため「子ども」は大人のお供つまり所有物ではない、ということを強調したかったのかもしれません。

そもそも「子ども」の由来は?

現代では「子ども」という表現が最もよく使われますが、そもそも由来はどういったものでしょうか。本項では「子ども」という言葉の由来について詳しくみていきましょう。

「子」+複数形の「ども」

「子ども」は現代の日本語では1つの単語として扱われていますが、もともとは「子」と複数形をしめす「ども」が合わさった形です。そのため日本の古典文法では「子ども」といえば複数人いることを示し、一人を示したい時は「子」と表現するでしょう。中世より後の時代に一人の場合は「子ども」、複数になると「子どもたち」と言われるようになりました。

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