端的に言えば「三人市虎を成す」の意味は「嘘でも大勢がそうだと言うと真実と思われてしまうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「三人市虎を成す」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「三人市虎を成す」の意味は?
「三人市虎を成す」には、次のような意味があります。
事実でなくても、多くの人がそうだと言えば、事実だと思われるようになることのたとえ。
出典:故事成語を知る辞典(小学館)「三人言いて虎を成す」
この言葉は「事実無根のことでも、大勢の人が言えば真実だと思われてしまうこと」をたとえた故事成句です。「事実無根のことでも」という前置きがポイントで、あり得そうもない事柄が引き合いに出されることもあるでしょう。
そのため、「そんなことを信じてしまうなんて」という驚きや呆れ、信じてしまう人たちの愚かさを批判する気持ちが表れてくることも。現代だと、ネットのデマなどむしろ理解のしやすい表現と言えるかもしれません。どのようなシチュエーションにこの言葉が使えそうか想像してみてください。
上の引用で「三人言いて~」となっているように、この表現には同じ意味で異なるバリエーションがいくつもあります。「三人、市虎を成す」と読点を入れても構いませんし、「三人、虎を成す」や「市に虎あり」なども。どうしてそんなにあるのかは、次の語源の項で説明します。
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「三人市虎を成す」の語源は?
次に「三人市虎を成す」の語源を確認しておきましょう。これは中国の書物『韓非子(かんぴし)』や『戦国策(せんごくさく)』に見られる言葉です。
他国へ行く龐恭(ほうきょう)という人物が王に「誰かが、市に虎が現れたと言ったら信じますか?」と問いかけ、「一人二人なら信じないが、三人なら信じてしまうかもしれない」と王が答えます。
このたとえをもとに、「真実ではなくても、多くの人が言うと信じてしまう(だから、他者に惑わされず私を信じてください)」という話なのですが、結局、龐恭は国に戻ってきても王に信じてもらえなかった…というオチまでつくのです。
実際、最初は信じていなかったのに多くの人が言うので信じてしまった…なんてことはないでしょうか。この時代から、そんな人間の本質を描いている面白い話です。似た言い方の慣用表現が定着したのも、人々の共感を得たからかもしれませんね。
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