梨は、日本では「西洋梨」とも呼ばれる、秋から冬にかけて出回るフルーツです。旬の時期は長いように聞こえるが、色んな品種が期間をずらして収穫されていて、さらに、追熟という保存期間が必要なため、1つの品種の食べごろの旬は短のです。また、缶詰やケーキとして加工されることもありますが、完熟の洋梨は、ごつごつとした見た目とは裏腹の、なめらかでジューシーな繊細な食味の果物なんです。この記事では洋梨の旬や産地、人気品種や洋梨の選び方など果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。洋梨はタルト作りの定番で、フレッシュでは遅めの品種「シルバーベル」の美味しさに感動。

洋梨の旬

image by iStockphoto

洋梨は秋の味覚ですが、洋梨全体の収穫時期に比べて、一つ一つの品種の旬はとても短いのです。どのようなタイミングで収穫されているのでしょうか?まずは「洋梨の旬」について見ていきましょう。

旬っていつ?

洋梨の旬は9月~11月頃の秋が主となっていますが、1品種の収穫時期は1か月半から2か月ほど。早生種が8月下旬ごろから収穫され始め、いくつもの品種がリレーして少しずつ収穫時期をずらし最終的には1月中頃までスーパーなどに出回ります。洋梨の出回る品種に気づけば、秋の始まりから冬の訪れまで、季節を感じることが出来ますね。

品種ごとの旬

それでは、洋梨の主力品種のそれぞれの収穫時期をみてみましょう。

品種名:旬の時期
バートレット:8月下旬~10月上旬
オーロラ:9月上旬~10月上旬
マルゲリット・マリーラ:9月中旬~10月下旬
メロウリッチ:9月下旬~10月中旬
バラード:9月下旬~10月下旬
ラ・フランス:10月上旬~1月上旬
シルバーベル:11月上旬~1月中旬
ル・レクチェ:11月上旬~1月中旬

洋梨は完熟前に収穫され、その後半月から1か月くらいの追熟の期間を経て市場に出荷されます。そのため、収穫時期と食べ頃が出回る時期少しだけずれてしまうのが特徴です。「追熟」は洋梨にとって大切な作業ですが、見極めは大変難しいとされています。その必要な期間や温度は品種によっても異なり、繊細な管理が必要です。

洋梨の産地

ヨーロッパから世界に伝わり、日本では山形県から始まった洋梨栽培。現在ではどのような広がりを見せているのでしょうか?では、次に日本と世界洋梨の生産地を見ていきましょう。

国内の名産地

日本での洋梨の名産地はどこでしょうか?国内の洋梨の生産地と収穫高を下記にまとめました。

順位:県名:生産高
1位:山形県:17,700トン
2位:青森県:1,850トン
3位:新潟県:1,670トン
4位:長野県:1,550トン
5位:福島県:636トン

\次のページで「品種ごとの栽培面積」を解説!/

国内の洋梨の生産高は、山形県が圧倒的に多く、全体の70%以上を占めています。次いで青森県、新潟県と比較的冷涼な地域で栽培されていることが分かりますね。

品種ごとの栽培面積

次に国内の洋梨の品種ごとの作付面積を見てみましょう。どの品種が人気なのか分かりますね!

順位:品種名:作付面積 
1位:ラ・フランス:867,5ヘクタール 
2位:ル・レクチェ :131,1ヘクタール 
3位:バートレット:74,7ヘクタール 
4位:ゼネラル・レクラーク:48,8ヘクタール
5位:オーロラ:47,7ヘクタール

品種ごとの作付面積はラ・フランスが圧倒的に人気で、全体の60%以上を占めています。次いで、近年人気の伸びているル・レクチェ10%ほど。以下は1桁台となっています。日本では「洋梨=ラ・フランス」というイメージが作られるのも頷けますね!

世界の洋梨

では最後に、世界の洋梨の生産高を見てみましょう。原産がヨーロッパである洋梨は、いまや世界中で栽培されているんですよ!

順位:国名:生産高
1位:中国:1,600万トン
2位:イタリア:61万9,290トン
3位:アメリカ:60万9,628トン
4位:アルゼンチン:59万5,427トン
5位:トルコ:54万5,569トン

1位は中国で、こちらも世界全体のおよそ70%を占めています。2位以下は年によって国の入れ替わりがありますが、中国は不動の生産高を誇っているのです。梨のもともとのルーツが中国であったように、環境風土が洋梨にも適しているのかもしれませんね。

ちなみに、日本の洋梨生産高は世界で第11位です。導入当時はなかなか栽培が広がらなかった洋梨も、現在では国内需要の高まりが伺えます。

洋梨の国内の主要産地は山形県、主要品種はラ・フランス、世界のトップシェアは中国ということですね!

洋梨の人気品種6選

image by iStockphoto

洋梨は見た目の似ている品種が多いですが、実は世界には約4000もの品種が存在すると言われているのです!今回はその中から、国内で生産されるおすすめ品種を6種類ご紹介します。どれも甘く香り豊かで、中には高級な品種も存在しますよ。美味しさを食べ比べた後は、贈答用にもいかがでしょうか。

1.洋梨の代表格:ラ・フランス

ラ・フランスの国内の栽培は1900年頃から始まりましたが、当時は食用ではなく受粉用としての果樹でした。しかし、国内での洋梨の生食需要が高まるにつれ、ラ・フランスの美味しさにも注目が集まり、一躍人気品種となったのです。現在では国内の洋梨生産で約6割を誇る、洋梨の代名詞的存在ですね。

果実の大きさは250~300g位の中サイズ、ごつごつした見た目は不揃いで、緑色や黄色地にサビ(茶色の斑点)のものが多いです。そのいびつな形とは対照的に、食味は「最高峰の洋梨」と言われる美味しさ!多汁でとろけるような食感と芳醇な香り、爽やかな酸味と14~15度にもなる高い糖度の甘みで濃厚な味わいが楽しめますよ。

ラ・フランスを多く栽培する山形県では、生産者や市場など県全体で追熟の必要期間を徹底し、ラ・フランスの高い品質を守っています。2020年には「山形ラ・フランス」が地理的表示保護制度に登録されたそうです。

\次のページで「2.新潟の幻の西洋梨:ル・レクチェ」を解説!/

2.新潟の幻の西洋梨:ル・レクチェ

ラ・フランスに次いで生産量の多いル・レクチェ。意外に古い歴史を持っており、日本にやってきたのは明治36年頃と言われています。最初に栽培されたのは新潟県。ル・レクチェは現在でも新潟県が生産量のトップです。当時は栽培が難しく「幻の西洋梨」としてなかなか広まりを見せなかったのですが、その後栽培方法が確立され、贈答用などの需要の高まりと共に生産量も増えているのですね。

果実の大きさは300~450g程、果皮は「サビ」と言われる斑点が少なく、熟す前は黄緑色で、完熟すると黄色になります。果肉は密度があり、なめらか。16%以上の糖度と甘みを引き立てるような酸味、豊富な果汁、独特の芳醇な香りが特徴的ですね。

ル・レクチェは収穫してから40日もの長い追熟期間が必要です。そのため、11月上旬頃から収穫が始まりますが、食べごろとして出回るのは12月~1月頃となります。

3.上品な味わいが魅力の大玉種:マルゲリット・マリーラ

マルゲリット・マリーラは1874年にフランスで発見された洋梨です。女性のような名前は、その通り、発見者の奥様の名前が付けられたとか。

洋梨の中でも特に大きい部類で、重さは400~800gほどにもなりますよ。熟す前の果皮は黄緑色、果肉も白っぽいですが、完熟後は全体が黄金色になり、果肉も黄色っぽくなっていきます。形は比較的整っていますが、表面にはサビが入りやすい品種です。洋梨の特徴である芳醇な香りとなめらかな食感、酸味が少なめな上品な味わいが堪能できます。

マルゲリット・マリーラは早生種なので、9月上旬頃から収穫され始め、その後2週間ほど追熟させると食べ頃です。旬の短い品種ですので、市場に出回るのはひと月ほど。スーパーなどで見かけたら、旬を逃さないようにぜひ手に取ってみてください。

4.加工に最適:バートレット

バートレットは1770年頃イギリスで発見された洋梨です。もともとは「ウィリアムズ・ボン・クレティエン」と呼ばれていたそうですが、その後アメリカで栽培される内に、そのルーツを知らなかったバートレット氏が、自分の名前を付けて広めてしまいました。後からイギリスのものと同一の洋梨ということが判明しましたが、すでに「バートレット」の名が広く定着していたそうです。

果実は250g前後で、大きく下膨れしている形が特徴。熟す前は黄緑色、熟すほどに黄色みと香りが増します。完熟の果実は、柔らかくジューシーで控えめな甘みと程よい酸味を楽しめますよ。

また、バートレットは世界で一番生産されている洋梨です。その理由は、完熟前の果肉が硬い時期でも甘みがあり煮崩れしないことから、缶詰などの加工に向いているからだそう。生食が一般的になった現代でもその需要は続き、洋梨の缶詰は根強い人気があることが分かりますね。

5.蜂蜜のような甘さ:バラード

バラードは、1984年に「バートレット」「ラ・フランス」を掛け合わせて生まれた山形原産の洋梨です。まだ生産量が少ないため、あまり知名度は高くないかもしれません。バラードの名前の由来は、バートレットの「バ」、ラ・フランスの「ラ」、音楽用語の「バラード」をかけて付けられたそうです。

果実は350~500gとやや大きめ、バートレットと似た形をしており、表面のサビは多めで、収穫時の果皮は黄緑色、熟すにつれ黄色になっていきます。果肉は白く詰まっており、洋梨の中でも特に糖度が高く、ジューシーな果汁は蜂蜜のような濃厚な甘さです。酸味は少なく、ほぐれるようなソフトな口当たり、芳醇な香りで大変食べ応えのある美味しい洋梨ですよ。

バラードの収穫時期は9月下旬頃からと、旬の時期は早め。それから追熟期間を経て、食べ頃の出回り時期は10月になります。

6.クリスマスの大玉種:シルバーベル

シルバーベルは1957年に山形県ラ・フランスから生まれた洋梨です。その可愛らしい名前は、育成者の鈴木寅雄氏の「鈴」と、収穫の季節から「白銀の雪」「クリスマスベル」をイメージして付けられました。

果実の特徴は、美味しさもさることながら、その大きさ!平均で350~450gほど、大きいものだと800gにもなるそうです。しかし見た目に反して、味わいはとっても繊細。濃厚な甘さと程よい酸味、緻密な果肉の食感は柔らかく、とてもジューシーで芳醇な香りを感じられます。

シルバーベルは晩生種ですので、収穫の旬は11月頃。食べ頃はクリスマス前後の12月上旬~1月下旬になります。保存性も良いので、クリスマスやお歳暮などの贈答用にもおすすめです。

美味しい洋梨の選び方

image by iStockphoto

続いて、様々なシーンでの洋梨の見分け方について解説していきます。果皮の雰囲気や追熟の期間は品種によって異なりますが、良い状態や悪い状態大体同じような特徴が見られるのです。せっかくなので美味しい洋梨を食べたいですよね。しっかりポイントを抑え、美味しい洋梨を選びましょう!

良い洋梨って?

ひとまず、完熟かどうかは置いておいて、「良い洋梨はどのようなものか」選ぶポイントを解説します。

・左右対称
・果皮にツヤとハリがある
・ずっしりしている
・果実に傷が無い
・一部分だけが柔らかくなっていない

洋梨はゴツゴツしたいびつな形のものが多くありますが、皮がむきにくいデメリットはあるものの、味には影響しません。また、すぐ食べない場合は、黄緑色のものを選び、紙袋に入れ高温多湿を避けた15~20℃位の室温の場所に置いて家庭で追熟させましょう。

\次のページで「完熟の見分け方」を解説!/

完熟の見分け方

買ってきてすぐに食べたい場合は、出来るだけ完熟のものを選びたいですね。洋梨の食べごろの見極めは難しいとされていますが、以下の目安を参考に選んでみてください!

・甘い香りがする
・ふっくらしている
・黄色く色づいている
・軸の周りが柔らかい
※お店で洋梨に触るときは、必ずお店の人に確認してからにしましょう。

逆にこのような特徴が無ければ、まだ熟しきっていない証拠。洋梨はきちんと追熟されていないと美味しく食べられません。また、しっかり追熟され食べごろになった洋梨は、乾燥防止にビニール袋などに入れ、冷蔵庫に入れて早めに食べましょう!完熟していれば冷凍保存も可能ですよ。

どんな状態が良くないの?

では最後に、状態の悪い洋梨の特徴を紹介します。以下のような特徴が見られれば要注意!食べずに廃棄したほうが良いでしょう。

・果肉が溶けている/汁が出ている
・濃い茶色や黒に変色している
・干からびている
・酸っぱい臭いがする
・口に入れると、酸っぱい、またはピリピリする
・カビが生えている

洋梨は傷みやすい果物です。もともと長期保存には向いておらず、特に完熟後は食べる前の保存方法が悪いとあっという間に傷んでしまいますよ。

食べられない状態の茶色い変色と、ラ・フランスなどに見られる果皮のサビは全くの別物ですよ。果実全体の他の状態も確認して見分けましょう。

洋梨はどの品種も甘くて豊かな香り!世界中で愛される果物を美味しく食べよう!

日本では山形県、世界では中国と、生産量のトップシェアは揺るぎないですが、世界各地で愛され、日本での需要も高まりを見せる洋梨。人気品種はどれもジューシーで甘く、芳醇な香りは気持ちもまで豊かにしてくれますね。洋梨に秘められた物語を知り、短い旬の移り変わりに季節の変化を感じてください。完熟の見極めは難しいとされますが、そのサインを見極めて、ぜひ洋梨の季節を最高の状態で味わいましょう!

" /> 完熟の洋梨の見分け方って?旬や産地、おすすめ人気品種6選も果物大好きパティシエが詳しくわかりやすく解説 – Study-Z
家庭科

完熟の洋梨の見分け方って?旬や産地、おすすめ人気品種6選も果物大好きパティシエが詳しくわかりやすく解説

梨は、日本では「西洋梨」とも呼ばれる、秋から冬にかけて出回るフルーツです。旬の時期は長いように聞こえるが、色んな品種が期間をずらして収穫されていて、さらに、追熟という保存期間が必要なため、1つの品種の食べごろの旬は短のです。また、缶詰やケーキとして加工されることもありますが、完熟の洋梨は、ごつごつとした見た目とは裏腹の、なめらかでジューシーな繊細な食味の果物なんです。この記事では洋梨の旬や産地、人気品種や洋梨の選び方など果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。洋梨はタルト作りの定番で、フレッシュでは遅めの品種「シルバーベル」の美味しさに感動。

洋梨の旬

image by iStockphoto

洋梨は秋の味覚ですが、洋梨全体の収穫時期に比べて、一つ一つの品種の旬はとても短いのです。どのようなタイミングで収穫されているのでしょうか?まずは「洋梨の旬」について見ていきましょう。

旬っていつ?

洋梨の旬は9月~11月頃の秋が主となっていますが、1品種の収穫時期は1か月半から2か月ほど。早生種が8月下旬ごろから収穫され始め、いくつもの品種がリレーして少しずつ収穫時期をずらし最終的には1月中頃までスーパーなどに出回ります。洋梨の出回る品種に気づけば、秋の始まりから冬の訪れまで、季節を感じることが出来ますね。

品種ごとの旬

それでは、洋梨の主力品種のそれぞれの収穫時期をみてみましょう。

品種名:旬の時期
バートレット:8月下旬~10月上旬
オーロラ:9月上旬~10月上旬
マルゲリット・マリーラ:9月中旬~10月下旬
メロウリッチ:9月下旬~10月中旬
バラード:9月下旬~10月下旬
ラ・フランス:10月上旬~1月上旬
シルバーベル:11月上旬~1月中旬
ル・レクチェ:11月上旬~1月中旬

洋梨は完熟前に収穫され、その後半月から1か月くらいの追熟の期間を経て市場に出荷されます。そのため、収穫時期と食べ頃が出回る時期少しだけずれてしまうのが特徴です。「追熟」は洋梨にとって大切な作業ですが、見極めは大変難しいとされています。その必要な期間や温度は品種によっても異なり、繊細な管理が必要です。

洋梨の産地

ヨーロッパから世界に伝わり、日本では山形県から始まった洋梨栽培。現在ではどのような広がりを見せているのでしょうか?では、次に日本と世界洋梨の生産地を見ていきましょう。

国内の名産地

日本での洋梨の名産地はどこでしょうか?国内の洋梨の生産地と収穫高を下記にまとめました。

順位:県名:生産高
1位:山形県:17,700トン
2位:青森県:1,850トン
3位:新潟県:1,670トン
4位:長野県:1,550トン
5位:福島県:636トン

\次のページで「品種ごとの栽培面積」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: