「洋梨」はそんなに頻繁には食べなくても、知っている人が多いフルーツじゃないか?秋頃にスーパーでも見かける黄色や緑の独特な香りが特徴の果物です。日本には梨というと洋梨の他に「和梨」と呼ばれる果物がある。一般的には「和梨」の方がよく食べられる気がしますが…そもそもどういった違いがあるのでしょう?この記事では、洋梨の特徴や和梨との違い、歴史や栄養素など、洋梨の基礎知識を果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。洋梨はタルト作りの定番で、フレッシュでは遅めの品種「シルバーベル」の美味しさに感動。

洋梨ってどんな果物?

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洋梨というと、ひょうたん型で黄色や緑で良い香り、「洋」梨というくらいだから発祥はヨーロッパ…というイメージでしょうか?庭先になっていることはあまりなく、日常で詳しく知るほど馴染みのあるフルーツではないかもしれません。では、まず「洋梨とはどんな果物なのか」、成り立ちを中心に詳しく解説していきましょう。

洋梨の特徴

洋梨は別名「西洋梨」英語では「ペア(pear)」フランス語では「ポワール(poire)」と呼ばれるバラ科ナシ属の落葉高木の果実です。原産地はその名の通りヨーロッパになります。

収穫時期は品種によって少しずつずれていますが、基本的には秋~冬が旬です。早生種は8月下旬ごろから収穫が始まり、晩生種は1月中旬頃まで食べごろのものが出回ります。完熟前に収穫され、追熟という期間を経てから出荷されることが多いです。

国内の主な産地は山形県や青森県・新潟県など。比較的冷涼な地域が好まれる傾向にあります。果実は黄色や緑色、茶色で、色付きにムラがあり、褐色の斑点がある個体も。ひょうたんのようにお尻部分が大きい形をしており、独特の芳醇な香りと、なめらかでねっとりとした食感に、酸味は少なく濃厚な甘みを堪能できます。

ルーツは中国から

梨は「洋梨・和梨・中国梨」と3つの種類に大別される果物です。もともとの起源は中国で、そこからヨーロッパに移動したものが「洋」梨ですね。現在栽培されている品種の多くは、フランスとベルギーが原産地になっています。

洋梨の歴史は古代ギリシャ時代から始まっており、ローマ時代には多くの品種が栽培され、ヨーロッパ各地へ広がっていきました。16世紀にはイギリスやドイツで約500種ほどが栽培されるようになります。しかしながら、現在では主力品種に注力するあまり、代表的な10品種ほどしか栽培されていません。

日本にやってきたのは明治時代。フランスやアメリカなどから伝わりました。ただ、日本の気候では栽培は難しく、山形県などの一部の地域でしか定着しませんでした。また外見の悪さから、長く加工品として利用されていました。現在のように広く生食されるようになったのは昭和後期からのことなのです。

和梨とはどんな違いがあるの?

日本で「梨」というと、「和梨」をイメージすることが多いと思います。もともとは同じ植物だった洋梨と和梨ですが、現代ではあえて区別されるほど、様々な部分で異なった特徴を持っていますね。洋梨と和梨の違いを下記にまとめました。詳しく見てみましょう!

違う部分:洋梨/和梨
・季節:秋~冬/夏~秋
・形:でこぼこしていて、上部が細くお尻の大きなひょうたん型/丸い球形
・香り:濃厚/淡泊
・果肉の食感:ジューシーででとろけるような口当たり/みずみずしくシャリシャリとした砂のような食感
・味:濃厚な甘み/爽やかでさっぱり
・食べ頃:樹上では完熟せず追熟が必要/もぎたて
・栄養素:あまり変わらないが、洋梨の方が食物繊維が多い

\次のページで「洋梨の栄養素と効能」を解説!/

こうしてみると、洋梨と和梨の特徴は反対同士に見えますね。ルーツは同じでも、栽培される環境や育てる人々の違いによって、こんなにも異なる進化を遂げることが分かります。

洋梨の栄養素と効能

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洋梨に含まれる栄養素は、一般的な果物と比較しても、残念ながらそう多くはありません。それというのも、洋梨の成分の90%近くが水分なのです。ジューシーなフルーツならではの悩みですね。しかし、含有量が少ないとは言っても、食物繊維やカリウム・ビタミン類・カルシウム・マグネシウム・鉄など幅広い栄養素が含まれています。

では、洋梨にはどのような効果が期待できるのでしょうか?洋梨の栄養と効能を詳しくご紹介しますので、食べたいタイミングの参考にしてくださいね。

1.水分・食物繊維:整腸作用・便通改善

洋梨に豊富に含まれている水分と、和梨の2倍ある食物繊維は腸の環境を整え、便秘の改善に効果があります。

2.カリウム:高血圧予防

カリウムは、ナトリウムとバランスを取ることで体内の細胞の浸透圧を維持し、細胞の機能を正常に保つ働きのある栄養素です。高血圧の一因であるナトリウムが余分に体内に残ると、カリウムが体外への排出を促します。ナトリウムが排出されることにより血圧が下がることから、高血圧予防が期待できますよ。

また、塩分と一緒に水分も排出されるため、むくみの改善にも効果があります。

\次のページで「3.アスパラギン酸:疲労回復」を解説!/

3.アスパラギン酸:疲労回復

アスパラギン酸は、筋肉疲労の原因物質である乳酸を分解する手助けをしてくれます。さらに、エネルギーを作るために必要なカリウムなどのミネラルの吸収を促進し、エネルギー生成をサポートしますので、疲労回復効果が期待できると言われていますよ。アスパラギン酸とカリウムが一緒に摂れる洋梨は一石二鳥ですね。

他にもアスパラギン酸には、体に有害なアンモニアを体外へ排出し、肝臓への負担を軽減する働きや、皮膚の新陳代謝を促し、コラーゲンの元となることから、美肌効果もあるといわれています。

4.ビタミンC:美肌・アンチエイジング

ビタミンCは「美容ビタミン」とも呼ばれており、肌にハリと潤いを与えるコラーゲン生成に不可欠な栄養素です。シミの原因となるメラニンの生成も抑制し、美肌を保ってくれますよ。また、細胞の老化を抑制する抗酸化作用がありますので、アンチエイジングにも効果が期待できます。

薬膳としての梨

洋梨を含む「梨」は昔から生薬としても使われてきました。「薬膳」という言葉をご存じですか?薬膳とは、紀元前の中国で発祥した、季節の食材や体調を考慮し「健康」と「長寿」を目的とした料理や食べ方のことです。

薬膳では「梨の豊富な水分は、体内に潤いを与え、熱を冷ます。のどの渇きや肺の炎症からくる空咳・のどの炎症・痰を出しやすくする」という薬効が言い伝えられているのです。のどが渇く夏から、乾燥が気になる冬に向けて旬を迎える梨にぴったりの、期待したい効果ですね。

洋梨を食べる際の注意点は?

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では、最後に梨を食べる時に気になるポイントを解説していきましょう。食べやすい果物とはいえ、色々な成分を含んでいます。食べるシーンによって、しっかり確認しましょう!

カロリーは低め?

洋梨はとても甘いので、ダイエット中に限らずカロリーや糖質は気になるかもしれません。では、洋梨と秋に食べられる他の果物のカロリーと糖質を比較してみましょう。

\次のページで「洋梨とアレルギー」を解説!/

果物名:100gあたりのカロリー/100gあたりの糖質
洋梨:54kcal/12.5g
・和梨:43kcal/10.4g
・リンゴ:57kcal/14.1g
・ブドウ:59kcal/15.2g
・カキ:60kcal/14.3g
・ミカン:46kcal/11g
・バナナ:86kcal/21.4g

上記の表を見ると、カロリー・糖質共に「和梨やミカンより高めですが、果物の中では低め」であることが分かります。濃厚な甘みですが、ダイエット中にもおすすめのフルーツです。とはいえ食べ過ぎると、カロリーや糖質は取りすぎになるため、1日200g(1個300gの約2/3)を目安に食べましょう。

洋梨とアレルギー

洋梨はバラ科の植物ですので、リンゴ・モモ・サクランボ・イチゴなどと同様に「バラ科アレルギー(口腔アレルギー症候群)」が発症する可能性があります。主な症状はかゆみや腫れ、チクチクやイガイガなどの刺激感など。まれに呼吸障害やアナフィラキシーショックなどを起こす場合もありますので注意が必要です。

口腔アレルギー症候群はもともと特定の植物の花粉症のある方に発症しやすく、バラ科のアレルギーは「カバノキ科」の花粉症の方に出やすいと言われています。アレルギーは体調が優れないときに発症しやすくなるそうです。カバノキ科の花粉症を持っている方は、疲れている時や風邪気味の時は洋梨を食べることは避けたほうが良いでしょう。

妊婦さんや赤ちゃんは食べられる?

洋梨は妊婦さんや小さいお子さんでも安心して食べられる果物です。ただし、水分が多いので、食べ過ぎると体を冷やす恐れがあります。冷えが気になる方は注意しましょう。

赤ちゃんは離乳食初期の生後5~6か月頃から与えることが出来ますよ。最初はすりつぶして濾したものをスプーンひとさじから、様子を見て徐々に慣らしていきましょう。洋梨は柔らかい果物ですので、離乳食後期の頃にはスライスしたものが食べられるようになりますね。自然の甘みが豊富に感じられますので、離乳食期のデザートにしてはいかがでしょうか。

ヨーロッパからやってきた洋梨!ジューシーな秋の味覚で体を整えよう!

古くは中国より海を渡って、独自の進化を遂げた洋梨。たっぷりの水分は夏の暑さや冬の乾燥にのどを潤し、低カロリーでありながら満足感のある芳醇な甘みは、疲れて体に染み渡ります。夏の終わりと冬の始まりにぴったりな洋梨は、健康な体つくりの一部として取り入れたいですね!

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家庭科

洋梨の栄養素にはどんな効能があるの?妊婦さんが食べても大丈夫?和梨との違いや歴史も果物大好きパティシエが詳しくわかりやすく解説

「洋梨」はそんなに頻繁には食べなくても、知っている人が多いフルーツじゃないか?秋頃にスーパーでも見かける黄色や緑の独特な香りが特徴の果物です。日本には梨というと洋梨の他に「和梨」と呼ばれる果物がある。一般的には「和梨」の方がよく食べられる気がしますが…そもそもどういった違いがあるのでしょう?この記事では、洋梨の特徴や和梨との違い、歴史や栄養素など、洋梨の基礎知識を果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。洋梨はタルト作りの定番で、フレッシュでは遅めの品種「シルバーベル」の美味しさに感動。

洋梨ってどんな果物?

image by iStockphoto

洋梨というと、ひょうたん型で黄色や緑で良い香り、「洋」梨というくらいだから発祥はヨーロッパ…というイメージでしょうか?庭先になっていることはあまりなく、日常で詳しく知るほど馴染みのあるフルーツではないかもしれません。では、まず「洋梨とはどんな果物なのか」、成り立ちを中心に詳しく解説していきましょう。

洋梨の特徴

洋梨は別名「西洋梨」英語では「ペア(pear)」フランス語では「ポワール(poire)」と呼ばれるバラ科ナシ属の落葉高木の果実です。原産地はその名の通りヨーロッパになります。

収穫時期は品種によって少しずつずれていますが、基本的には秋~冬が旬です。早生種は8月下旬ごろから収穫が始まり、晩生種は1月中旬頃まで食べごろのものが出回ります。完熟前に収穫され、追熟という期間を経てから出荷されることが多いです。

国内の主な産地は山形県や青森県・新潟県など。比較的冷涼な地域が好まれる傾向にあります。果実は黄色や緑色、茶色で、色付きにムラがあり、褐色の斑点がある個体も。ひょうたんのようにお尻部分が大きい形をしており、独特の芳醇な香りと、なめらかでねっとりとした食感に、酸味は少なく濃厚な甘みを堪能できます。

ルーツは中国から

梨は「洋梨・和梨・中国梨」と3つの種類に大別される果物です。もともとの起源は中国で、そこからヨーロッパに移動したものが「洋」梨ですね。現在栽培されている品種の多くは、フランスとベルギーが原産地になっています。

洋梨の歴史は古代ギリシャ時代から始まっており、ローマ時代には多くの品種が栽培され、ヨーロッパ各地へ広がっていきました。16世紀にはイギリスやドイツで約500種ほどが栽培されるようになります。しかしながら、現在では主力品種に注力するあまり、代表的な10品種ほどしか栽培されていません。

日本にやってきたのは明治時代。フランスやアメリカなどから伝わりました。ただ、日本の気候では栽培は難しく、山形県などの一部の地域でしか定着しませんでした。また外見の悪さから、長く加工品として利用されていました。現在のように広く生食されるようになったのは昭和後期からのことなのです。

和梨とはどんな違いがあるの?

日本で「梨」というと、「和梨」をイメージすることが多いと思います。もともとは同じ植物だった洋梨と和梨ですが、現代ではあえて区別されるほど、様々な部分で異なった特徴を持っていますね。洋梨と和梨の違いを下記にまとめました。詳しく見てみましょう!

違う部分:洋梨/和梨
・季節:秋~冬/夏~秋
・形:でこぼこしていて、上部が細くお尻の大きなひょうたん型/丸い球形
・香り:濃厚/淡泊
・果肉の食感:ジューシーででとろけるような口当たり/みずみずしくシャリシャリとした砂のような食感
・味:濃厚な甘み/爽やかでさっぱり
・食べ頃:樹上では完熟せず追熟が必要/もぎたて
・栄養素:あまり変わらないが、洋梨の方が食物繊維が多い

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