この記事ではショートニングっていったい何なのかについてみていきます。ショートニングはお菓子やパンなどに使われていて、マーガリンやバターに似ているイメージですが、何なのかよく分かんないな。ショートニングは身体に悪いっていう噂もあるみたいですが、何が悪くてどうなるのか知っておきたいところです。
今回はそんなショートニングについて、管理栄養士のミサキと一緒に解説していきます。

ライター/ミサキ

給食施設で働く現役管理栄養士。おいしい食事とおやつを食べることが生きがい。お菓子作りが趣味で、ショートニングを使用したことがある。

ショートニングって何?

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お菓子やパンに使用されるイメージのショートニング。聞いたことはあるけれど、何なのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。ショートニングとは何なのか、解説していきます。

ショートニングの特徴と用途

ショートニングは植物性油脂で、最大の特徴は白色で無味無臭であることです。バターやオリーブオイルなどは独特な香りがするので、他の材料の味や香りを際立たせたいときにショートニングを使います。焼き菓子やパンなどに使用され、口当たりの良い食感に仕上がるのも特徴です。ショートニングとベーキングパウダーを混同する方もいますが、ショートニングは油でベーキングパウダーはふくらし粉なので別物となります。

また、業務用のショートニングはべたつかずサクッと仕上がることから、揚げ油としてファストフード店などで使用されているようです。同じように冷凍食品やスナック菓子にも使用されることがあります。

ショートニングの原料と製造方法

植物性油脂から人工的に製造されるのがショートニングです。液状の植物性油脂(大豆油・菜種油・コーン油・サラダ油など)に水素を添加することで個体の油になり、そこに用途に合わせて乳化剤や添加物を加えて作られます。

また、バターやマーガリンの水分量が約15%なのに対して、ショートニングの水分量は0.5%以下でほとんど含まれません。ショートニングは水分がほとんど含まれないことから、バターやマーガリンと違って揚げ油として使用できるということです。

ショートニングの意味は「サクサクほろほろ」

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ショートニングの名前の由来は、英語の「short」という「サクサクほろほろ」などの食感を表す言葉です。ショートニングを使ってクッキーやケーキを作るとサクサクの食感になることから、そのまま「shortening」と名付けられました。

ショートニング性とショートニングは別物

ショートニング性とは、油脂がグルテンの組織形成を阻害することでサクサクの食感にさせる性質のことです。性質の名前であるので、ショートニングが一切含まれないバターにもショートニング性があります。ショートニング性は口当たりの良いサクサクのクッキーやタルト生地、パイ生地を作るときに重要です。生地の中にクリーム状のバターが分散して、小麦のグルテン形成を阻害することでサクサクの食感になります。

つまり、ショートニングを使用したクッキーがサクサクに仕上がるのも、ショートニング性によるものです。

ショートニングは体に悪いの?

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安価で扱いやすくお菓子をサクサクにしてくれるショートニングですが、身体に悪いと言われることがありますその理由は「トランス脂肪酸」です。

ショートニングに含まれる栄養素は?

ショートニング100g当たりの栄養は、以下の通りです。

エネルギー:889kcal
水分:0.1g
たんぱく質:0g
脂質:99.9g
炭水化物:0g
塩分相当量:0g

出典:日本食品標準成分表2020

\次のページで「トランス脂肪酸とは」を解説!/

カロリーが高く見えますが、脂質は1g当たり9kcalですのでショートニングのカロリーは妥当でしょう。「日本食品標準成分表2020」にはトランス脂肪酸の表記はありませんが、手元にある「日本食品標準成分表2010」には、トランス酸7.6gとされています。

ショートニングがバターやマーガリンと違うところは、たんぱく質が「0」なところとトランス脂肪酸が多く含まれるところです。

トランス脂肪酸とは

脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、脂質を構成する1つです。不飽和脂肪酸のトランス脂肪酸が天然に存在するのは微量ですが、牛肉や乳製品に含まれていることがあります。

トランス脂肪酸が生成される原因は、水素添加です。ショートニングのように水素添加が行われるとトランス脂肪酸が生成します。身体に悪いと言われているのが、このトランス脂肪酸なのです。

トランス脂肪酸の取りすぎは、心筋梗塞などのリスクが高まると言われています。世界保健機関は、トランス脂肪酸の摂取量を1日2g以下と提示していますが、多く摂取している日本人でも基準を下回っているので大きな問題にはなっていません。

食品中のトランス脂肪酸含有量

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食品に含まれるトランス脂肪酸の含有量です。

トランス脂肪酸の含有量は、原料の違いや加工方法の違いにより異なります。平成18年度に食品安全委員会が実施した調査では、マーガリンでは平均7.0g/100g、ビスケット類では平均1.8g/100g、ショートニングでは平均13.6g/100g、コーン系スナックでは、平均1.7g/100gなどです。
なお、平成22年度にマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングを検査したところ、トランス脂肪酸の含有量は減少傾向が認められました。

出典:厚生労働省HP

やはり、トランス脂肪酸はショートニングを使用しているビスケットやスナック菓子に含まれているようです。スナック菓子を2袋食べると摂取量が基準を超えてしまいそうですが、そんなにたくさん食べることもないですよね。過度に食べすぎなければ大丈夫そうです。

また、食品メーカーもトランス脂肪酸の含有量に気を使っているので、食品中の含有量は減少傾向にあります。ショートニングにはトランス脂肪酸の含有量を示しているメーカーもあるので、気になる方は表示のある商品を購入すると良いでしょう。

ショートニングでがんのリスクが上がる?

結論から言うと、がんのリスクは上がりません。トランス脂肪酸は、善玉コレステロールを減少させて悪玉コレステロールを増加させる働きがあります。トランス脂肪酸の取りすぎが原因になる疾病は、動脈硬化などの生活習慣病です。

しかし、トランス脂肪酸でがんになる、という情報には明らかな根拠はありません。身体に悪い=がんになる、という思い込みから出現したデマである可能性があります。

ショートニングは使用禁止になる?

日本ではショートニングが使用禁止になる予定はありません。健康に害を及ぼすほど摂取量が多くないと考えられているからです。先進国では使用禁止や表示義務のある国もあります

ショートニング使用禁止にしている国や地域は、アメリカのニューヨーク州やカリフォルニア州、カナダ、シンガポール、台湾、タイ、香港です。上限を決めている国はヨーロッパに多く、表示の義務付けには中国や韓国などがあります。

\次のページで「ショートニングでアレルギー発症する?」を解説!/

ショートニングでアレルギー発症する?

ショートニングは油でバターやマーガリンと違い乳製品を含まないので、ショートニング自体がアレルギー症状につながることはないでしょう。しかし、トランス脂肪酸の摂取でアレルギー発症率や症状が悪化するという研究もあります。ただ、日本人の摂取量より相当多いケースの結果なので、明らかなことは言えません

トランス脂肪酸に限ったことではなく、栄養の偏りや取りすぎは疾病につながる恐れがある、ということでしょう。

ショートニングは乳アレルギーの方におすすめ

ショートニングは、乳アレルギーのある方におすすめです。ショートニングには乳製品が含まれていないので、バターやマーガリンが食べられない乳アレルギーの方にも使用できます

ショートニングは市販のクッキーや菓子パン、お菓子のレシピにもよく使われて、乳アレルギーがあると食べられないことが多いです。しかし、ショートニングを使用したパンやお菓子には乳が含まれていないので市販菓子でも食べられるし、お菓子作りの時にも使用できます。

給食でアレルギーの方にショートニングを使用したクッキーを作った経験がありますが、周りと同じようなおやつや食べられるとアレルギーを持っている方も喜んでくれることでしょう。

ショートニングを知っておいしく食べよう!

身体に悪いと言われることもあるショートニングですが、普段の食生活ではそこまで気にしなくても大丈夫です。おいしく楽しく食事やおやつを食べることが大切だと思っています。トランス脂肪酸の含有量は減ってきていますし、使用していてもたくさん含まれているものは少ないです。ショートニングの特徴を知って、おいしく食べましょう。

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家庭科

ショートニングって何からできているの?体に悪い?特徴や栄養・注意点も管理栄養士が詳しくわかりやすく解説!

この記事ではショートニングっていったい何なのかについてみていきます。ショートニングはお菓子やパンなどに使われていて、マーガリンやバターに似ているイメージですが、何なのかよく分かんないな。ショートニングは身体に悪いっていう噂もあるみたいですが、何が悪くてどうなるのか知っておきたいところです。
今回はそんなショートニングについて、管理栄養士のミサキと一緒に解説していきます。

ライター/ミサキ

給食施設で働く現役管理栄養士。おいしい食事とおやつを食べることが生きがい。お菓子作りが趣味で、ショートニングを使用したことがある。

ショートニングって何?

image by iStockphoto

お菓子やパンに使用されるイメージのショートニング。聞いたことはあるけれど、何なのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。ショートニングとは何なのか、解説していきます。

ショートニングの特徴と用途

ショートニングは植物性油脂で、最大の特徴は白色で無味無臭であることです。バターやオリーブオイルなどは独特な香りがするので、他の材料の味や香りを際立たせたいときにショートニングを使います。焼き菓子やパンなどに使用され、口当たりの良い食感に仕上がるのも特徴です。ショートニングとベーキングパウダーを混同する方もいますが、ショートニングは油でベーキングパウダーはふくらし粉なので別物となります。

また、業務用のショートニングはべたつかずサクッと仕上がることから、揚げ油としてファストフード店などで使用されているようです。同じように冷凍食品やスナック菓子にも使用されることがあります。

ショートニングの原料と製造方法

植物性油脂から人工的に製造されるのがショートニングです。液状の植物性油脂(大豆油・菜種油・コーン油・サラダ油など)に水素を添加することで個体の油になり、そこに用途に合わせて乳化剤や添加物を加えて作られます。

また、バターやマーガリンの水分量が約15%なのに対して、ショートニングの水分量は0.5%以下でほとんど含まれません。ショートニングは水分がほとんど含まれないことから、バターやマーガリンと違って揚げ油として使用できるということです。

ショートニングの意味は「サクサクほろほろ」

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ショートニングの名前の由来は、英語の「short」という「サクサクほろほろ」などの食感を表す言葉です。ショートニングを使ってクッキーやケーキを作るとサクサクの食感になることから、そのまま「shortening」と名付けられました。

ショートニング性とショートニングは別物

ショートニング性とは、油脂がグルテンの組織形成を阻害することでサクサクの食感にさせる性質のことです。性質の名前であるので、ショートニングが一切含まれないバターにもショートニング性があります。ショートニング性は口当たりの良いサクサクのクッキーやタルト生地、パイ生地を作るときに重要です。生地の中にクリーム状のバターが分散して、小麦のグルテン形成を阻害することでサクサクの食感になります。

つまり、ショートニングを使用したクッキーがサクサクに仕上がるのも、ショートニング性によるものです。

ショートニングは体に悪いの?

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安価で扱いやすくお菓子をサクサクにしてくれるショートニングですが、身体に悪いと言われることがありますその理由は「トランス脂肪酸」です。

ショートニングに含まれる栄養素は?

ショートニング100g当たりの栄養は、以下の通りです。

エネルギー:889kcal
水分:0.1g
たんぱく質:0g
脂質:99.9g
炭水化物:0g
塩分相当量:0g

出典:日本食品標準成分表2020

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