この記事では「反りを合わせる」について解説する。

端的に言えば「反りを合わせる」の意味は「誰かと感覚などが合うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「反りを合わせる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「反りを合わせる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「反りを合わせる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「反りを合わせる」の意味は?

「反りを合わせる」には、次のような意味があります。

(刀身と鞘との関係から、「そりが合う」「そりを合わせる」などの形で用いる)人の性向や、世の風潮。また、それとの相性。「上役と反りが合わない」
「世間の―に合わぬことも多い」〈福沢・福翁自伝〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「「反り」4より」

この言葉は、「誰かの考え方や、やり方に沿うようにする」という意味の慣用表現です。「反りが合う」という慣用句があり、それが「合わせる」と変化し「あえてその動作をする」という意味合いになっています。

「反る」は、物が主に後ろ向きに曲がること。背中を後ろに倒すことも「背を反らす」といいますね。その曲がった形と他のものの形がフィットするという意味で、「相性が合っている」というニュアンスになっているのです。

なおまれにある勘違いですが、乗り物の「ソリ」のことではありません。「並んで走る、で相性を意味している?」なんて言われると、ちょっと納得してしまうかも。引っ掛け問題などにも注意してくださいね。

「反りを合わせる」の語源は?

次に「反りを合わせる」のもとになった「反りが合う」の語源を確認しておきましょう。「反り」は物が後ろに曲がっていることと述べましたが、この場合は特に「刀と鞘(さや)」が語源になっていると言われています。

刀はゲームなどでもお馴染みかもしれませんが、想像がつかない人は画像検索などもしてみましょう。刃の部分が直線ではなく、わずかなカーブをしている、つまり反っているのがわかるはずです。

そして鞘は、その刀を納めるケースのようなもの。当たり前ですが、鞘も刀に合ったカーブをしていなければしっかりとしまうことができませんね。この、形にしっかりフィットしているというニュアンスから、生まれたのがこの言葉なのです。

手作りの刀であればなおさら、その一本に合わせた鞘が必要だったはず。「反りを合わせて」、ぴったり合う感じを想像しながら使ってみてください。

\次のページで「「反りを合わせる」の使い方・例文」を解説!/

「反りを合わせる」の使い方・例文

「反りを合わせる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・新しいクラスに馴染めるか不安だったけれど、会話で出た単語をキーワードにして反りを合わせてみたら、いつの間にか友人ができていた。
・合わない相手とは、無理して反りを合わせようとしないで自然体でいたほうが、実はうまくいったりもするものだ。
・知らない用語を調べるのに、携帯やネットを使うのが普通なのに、辞書を使わなければいけない学校のやり方とは反りが合わせられなかった。

「(人や組織などの)やり方や考え方と合わせる」というニュアンスが伝わりますでしょうか。相性というと個人個人の関係を想像しやすいですが、例文三番目のように、組織などと比較して使うことも出来ます。

語源の項で「刀と鞘」がぴったり合う感じと説明したように、何かと「反りが合う」と言った場合は、その何かに対して好意的な意味合いになりますが、「反りを合わせる」の場合は「あえて合わせている」ニュアンスにも。

自分の考えを抑えて相手に合わせている、我慢の感情が読み取れるかもしれません。裏側に少し複雑な感情が表れているかもしれないため、注意して読み解きたい表現と言えるでしょう。

「反りを合わせる」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「反りを合わせる」の類義語は「足並みをそろえる」がいいでしょう。

「足並みをそろえる」:多くの人が考えや行動などを合わせること

「足並みをそろえる」は、「多くの人が考えや行動などを合わせること」を意味する慣用表現です。「反りを合わせる」との違いは、「多くの人が」というニュアンスを含むこと。

テレビの選挙ニュースなどで「野党・与党の足並みがそろう」などという言い方をするのを聞いたことがないでしょうか。たくさんの人たちが、歩幅やスピードを合わせて行進しているようなイメージになるかもしれません。個人対個人で使うことも出来ますが、文脈に応じてより適した表現を選べるようになるといいでしょう。

\次のページで「「反りを合わせる」の対義語は?」を解説!/

「これからの我々に必要なのは、争うことではなく足並みをそろえることだ」と演説していた政治家が、暴行事件で逮捕された。

「反りを合わせる」の対義語は?

「反りを合わせる」の対義語には「反旗を翻す(はんきをひるがえす)」を紹介します。

「反旗を翻す」:体制・組織に反対すること

「反旗を翻す」は、「体制・組織に反対すること」を意味する慣用表現です。「反旗(はんき)」とは、反逆する者が掲げる旗(はた)と言われていて、それが裏切りなどの象徴となりました。

まさに「反りを合わせる」とは反対の意味ですが、こちらの表現は個人相手に対してはほとんど使いません。もし個人だった場合でも、その人物は組織のトップやリーダーなどを指すことになるでしょう。

また、「もともとは仲間だったけれど(裏切った)」というニュアンスも含み、この言葉をヒントに色々な情報が読み取れます。読み飛ばさないようにしてくださいね。

「反りを合わせる」の英訳は?

image by iStockphoto

「反りを合わせる」の英訳は「fall in with~」で表すことができます。

「fall in with~」:~に同意する

これは、「~に同意する、~とぴったり合う」という意味のフレーズです。相手の考え方ややり方など、色々なものに対して使える「反りを合わせる」をうまく表現できるでしょう。

また、その他にも「誰かと偶然会う、友達になる、交際する」など、かなり広いニュアンスで使える表現で、「悪い友達とつるむ」などの意味にも。覚えておくと何かと便利に使えますよ。

ただ逆に言えば、色々な意味を持つため正確な内容は文脈から判断しなければいけません。もし「相手のやり方に合わせる」のように、はっきり言いたい場合は「adjust」などの単語を用いるのもいいでしょう。

He couldn't fall in with his school's plan,left school voluntarily.
彼は学校のやり方に反りが合わず、自主退学した。

\次のページで「「反りを合わせる」を使いこなそう」を解説!/

「反りを合わせる」を使いこなそう

この記事では「反りを合わせる」の意味・使い方・類語などを説明しました。もともとの「反りが合う」と合わせて、色々なことが読み取れる言葉でした。

個人か組織かに関わらず、相手のどんなところに合うのか、または合わせなければいけないと思っているのかなどまで理解できると読解力がアップするでしょう。しっかり押さえて欲しい慣用表現です。

" /> 【慣用句】「反りを合わせる」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「反りを合わせる」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「反りを合わせる」について解説する。

端的に言えば「反りを合わせる」の意味は「誰かと感覚などが合うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「反りを合わせる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「反りを合わせる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「反りを合わせる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「反りを合わせる」の意味は?

「反りを合わせる」には、次のような意味があります。

(刀身と鞘との関係から、「そりが合う」「そりを合わせる」などの形で用いる)人の性向や、世の風潮。また、それとの相性。「上役と反りが合わない」
「世間の―に合わぬことも多い」〈福沢・福翁自伝〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「「反り」4より」

この言葉は、「誰かの考え方や、やり方に沿うようにする」という意味の慣用表現です。「反りが合う」という慣用句があり、それが「合わせる」と変化し「あえてその動作をする」という意味合いになっています。

「反る」は、物が主に後ろ向きに曲がること。背中を後ろに倒すことも「背を反らす」といいますね。その曲がった形と他のものの形がフィットするという意味で、「相性が合っている」というニュアンスになっているのです。

なおまれにある勘違いですが、乗り物の「ソリ」のことではありません。「並んで走る、で相性を意味している?」なんて言われると、ちょっと納得してしまうかも。引っ掛け問題などにも注意してくださいね。

「反りを合わせる」の語源は?

次に「反りを合わせる」のもとになった「反りが合う」の語源を確認しておきましょう。「反り」は物が後ろに曲がっていることと述べましたが、この場合は特に「刀と鞘(さや)」が語源になっていると言われています。

刀はゲームなどでもお馴染みかもしれませんが、想像がつかない人は画像検索などもしてみましょう。刃の部分が直線ではなく、わずかなカーブをしている、つまり反っているのがわかるはずです。

そして鞘は、その刀を納めるケースのようなもの。当たり前ですが、鞘も刀に合ったカーブをしていなければしっかりとしまうことができませんね。この、形にしっかりフィットしているというニュアンスから、生まれたのがこの言葉なのです。

手作りの刀であればなおさら、その一本に合わせた鞘が必要だったはず。「反りを合わせて」、ぴったり合う感じを想像しながら使ってみてください。

\次のページで「「反りを合わせる」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: