日常生活の中で混同しがちな「超える」と「越える」。
使用頻度の高い動詞ですが、この表記の違いに違和感を覚えた人もいれば、何となくで使ってきた人もいるでしょう。
今回は両者の違いについて、雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

「超える」と「越える」の違い

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「超える」と「越える」。どちらも漢字を含めた動詞で、似たような意味の言葉と言えます。この2つの明確な違いを答えられる日本人はそこまで多くないでしょう。ここでは「超える」と「越える」の違いについて、おおまかな意味を元に解説していきます。

超える:基準を上回る

「超える」は一定の基準点を上回ることを指します。英語で表現すれば「over」です。例えば「人口が100万人を超える」などのように使います。「超える」は基準点を含まないので、100万人ちょうどでは「人口が100万人を超える」と言いません。「以上」ではないということですね。特に数字や数量に用いられることが多い表記です。

越える:通り過ぎる

これに対して「越える」は一定の基準点を通過点とすることを指します。「超える」は上回るでしたが、「越える」は通り過ぎると言った方が適切でしょう。英語で表現するなら「through」と言ったところでしょうか。

例えば「峠を越える」という表現は、もともと山岳のいただきを通り過ぎることから、転じて物事のピークを乗り切ることを指しています。また「一線を越える」と言うのは、心の中のどうしても譲れない限度を通過すること。かなり怒り心頭なときに使う表現です。

2つの使い分け方は?

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「超える」と「越える」の意味の違いがわかったところで、気になるのは両者の使い分けですよね。日常生活のいろいろな場面で、どちらが適切なのか悩むこともあるでしょう。ここでは「超える」と「越える」の使い分け方を解説していきます。

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主語との整合性で使い分ける

基本的に主語との整合性という観点で判断しましょう。文脈としての自然さとも言えますね。以下に具体例を挙げてみます。

「100万人」という「数値」は上下しかない基準です。「重量」や「速度」、「気温」なども「数値」。この場合は「数値」を上回るという考え方をするので「超える」が適しています。

これに対して「峠」は「地点」や「場所」とみなせますね。これらは上下の概念にとらわれない基準です。他には「国境」や「スタートライン」も「地点」や「場所」に上げられますね。「地点」や「場所」を上回るという考え方は不自然なことが感覚的におわかりいただけるでしょう。この場合は「越える」が適切ということになります。

「年齢」などどちらでも良い言葉もある

しかし一部「超える」と「越える」のどちらでも良い言葉も存在します。代表的なものが「年齢」です。「祖母が100歳を超えた」と「祖母が100歳を越えた」、これらはどちらも正解と言えます。

なぜなら「超える」であれば「100歳という長寿の基準を上回った」という事実、「越える」であれば「100歳は通過点に過ぎず、まだまだ生きるだろう」という期待がそれぞれに込められているからです。このケースでは、自分が表現したいニュアンスで言葉を選んで問題ないということになります。

どちらも使えそうと思ったら

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上記の通り「超える」と「越える」の使い分け方を解説しましたが、そうは言っても判断できるか不安という人も多いでしょう。ここではシーンに合わせて両者を使い分けるためのテクニックを解説します。

熟語に置き換えて違和感がない方を選ぶ

ズバリ、迷ったら熟語に置き換えてみましょう。例えば「超える」なら「超過」という漢字に置き換えて考えてみましょう。「水は100度を超過したら沸騰する」に違和感はないはずです。

また「年越し」という言葉を思い浮かべてください。ここから「年」という「時点」は「越える」ものであることがわかります。「年越し」が「年を越す」なら、「越冬」から「冬を越す」を導き出すこともできるはず。なぜなら「冬」は「年」と同様に「時点」の一種だからです。

両方の意味を伝えたければひらがなでもOK

実は無理にどちらかの漢字を使う必要はありません漢字は表意文字なため文字が限定的で、それが意味を直感できる強みを生みます。これに対しひらがなは表音文字で、動詞にしたときの感じ方は人それぞれです。

具体例としては「乗りこえる」とすれば過去の自分という基準を「超える」ニュアンスと、高い壁を人生の1つの通過点とみなす「越える」ニュアンスの両方を持たせることができます。

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「超える」は上回る、「越える」は通り過ぎる

ここまで「超える」と「越える」の意味の違い、使い分け方、また使い分けに迷った際の対処方法を解説してきました。よく使いがちな日本語ですが、意外と奥深いと感じていただけたのではないでしょうか。

「超える」が「上に伸びる」イメージなら、「越える」は「横に動く」イメージです。私たちは日々何かを超えたり、越えたりしています。それは自分が成長することと、かけがえのない時間が過ぎ去っていくことの両方を意味しているのです。

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3分でわかる「超える」と「越える」の違い!年齢にはどちらを使う?雑学好きライターがわかりやすく解説

日常生活の中で混同しがちな「超える」と「越える」。
使用頻度の高い動詞ですが、この表記の違いに違和感を覚えた人もいれば、何となくで使ってきた人もいるでしょう。
今回は両者の違いについて、雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

「超える」と「越える」の違い

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「超える」と「越える」。どちらも漢字を含めた動詞で、似たような意味の言葉と言えます。この2つの明確な違いを答えられる日本人はそこまで多くないでしょう。ここでは「超える」と「越える」の違いについて、おおまかな意味を元に解説していきます。

超える:基準を上回る

「超える」は一定の基準点を上回ることを指します。英語で表現すれば「over」です。例えば「人口が100万人を超える」などのように使います。「超える」は基準点を含まないので、100万人ちょうどでは「人口が100万人を超える」と言いません。「以上」ではないということですね。特に数字や数量に用いられることが多い表記です。

越える:通り過ぎる

これに対して「越える」は一定の基準点を通過点とすることを指します。「超える」は上回るでしたが、「越える」は通り過ぎると言った方が適切でしょう。英語で表現するなら「through」と言ったところでしょうか。

例えば「峠を越える」という表現は、もともと山岳のいただきを通り過ぎることから、転じて物事のピークを乗り切ることを指しています。また「一線を越える」と言うのは、心の中のどうしても譲れない限度を通過すること。かなり怒り心頭なときに使う表現です。

2つの使い分け方は?

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「超える」と「越える」の意味の違いがわかったところで、気になるのは両者の使い分けですよね。日常生活のいろいろな場面で、どちらが適切なのか悩むこともあるでしょう。ここでは「超える」と「越える」の使い分け方を解説していきます。

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