シリアルとパラレルって聞いたことあるよな。日本語にすると直列と並列だけど、何の列だかわかるか。パソコンやスマホの中や、パソコンやスマホとつなぐ機器との間の通信に関する言葉のようですが、どう違い、どういう特徴があるんでしょうな。シリアルやパラレルの違いや使い方、特徴や速度まで、30年以上パソコンを使いスマホにも詳しいプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさんです。

直列と並列?違いは線の数

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パソコンやスマホとプリンタやメモリカードなどの機器の間でデータのやり取りをしますよね。ざっくり説明すると、直列にデータを送るのがシリアル、並列にデータを送るのがパラレルです。でも直列や並列ってどういうことでしょう?まずはそこから見ていきましょう。

シリアル:1本の線でデータ通信

例えばパソコンやスマホですっかり普及したのがUSBケーブル。このUSBは「Universal Serial Bus」の頭文字を取ったものです。名前の通りデータのやり取りをシリアル(直列)で行います。シリアルとは「連続した、一続きの」という意味。家電などにもシリアル番号というものがありますよね。同じ型番のものでも1つ1つ違う番号が付いています。データを順番に一続きで送るのがシリアルです。

このケーブルの中は数本の電線が入っていますが、データのやり取りに使用するのは1本の電線だけ。正確にはノイズ対策などで複数の電線を使っていますが、仕組みとしては1本の信号線でデータをやり取りしています。

パラレル:数本の線でデータ通信

マンガなどでパラレルワールドという言葉を聞いたことがあるかもしれません。自分の世界とは別に複数の世界が存在するという考え方ですよね。パラレルとは並行や並列という意味。データを同時に複数の信号線でやり取りするのがパラレル(並列)です。

例えば、水を入れたペットボトルに穴を開けたとします。この時1つよりは2つ、2つよりは4つの穴を開けたほうが早く空になりますよね。データのやり取りも1本の信号線より多くの信号線を使った方が早くなります。そのため、パソコンやスマホの内部のやりとりはパラレルです。パソコンやスマホの中ではパーツとパーツの間は32本や64本などの信号線でつないでいます。

データをやり取りするには何本の線が必要?

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データを1本の線で直列に送る方式がシリアル、複数の線で並列に送る方式がパラレル、と説明しました。しかし、そもそも何を送るのでしょう。続いてデータとは何かや、データのやり取りの仕組みを確認していきます。

データの単位を表すビット

パソコンやスマホで32ビットとか64ビットなどの「ビット」という言葉を聞いたことがありますよね。数字が大きい方が性能がよいと思っていないでしょうか。このビットというのが情報(データ)の単位になります。1ビットは0か1かの2通りを表現することが可能です。2ビットなら4通り、4ビットなら16通り、8ビットなら256通りとnビットで2のn乗通りの表現ができます。

例えば、16ビットなら65,536通りです。これを-32768〜32767までの整数を表すといったルールをコンピュータでは決めています。これがデータ。16ビットというのは0と1の集まりが16個あるということです。この16個の0と1の集まりを直列に流すのがシリアル、並列に流すのがパラレルになります。

実は指揮者がいる?データ転送の仕組み

パソコンやスマホで「クロックが3GHz」とか聞いたことがありますよね。クロックとは時計のこと。ただここでは音楽で使うメトロノームの様な一定間隔を刻むものという意味になります。

データを送るということは電気信号を送ることです。その場合、どこからどこまでが1つの区切りなのか分からないと困りますよね。そのため、クロックで一定間隔を刻みながら1拍で1ビットのデータを送るのです。オーケストラで言えば全体の調整を行う指揮者の様なものがクロック。このクロックで揃えることを同期すると呼び、そのためにクロックが出す信号を同期信号と呼びます。

シリアルとパラレルは線の数、まとめて送るパラレルが速い

シリアル通信では1個のデータを一続きに送ります。例えば、16ビットのデータを送る場合。通信する時はクロックの1拍で1ビット送るので、1本の線で16ビット送るには16拍必要ですよね。

一方、パラレルはまとめて送ります。コンピュータ業界では8ビットの単位でデータを扱うことが多いです。この8ビットを1バイトと呼びます。メモリやファイルのサイズでおなじみですよね。データのやり取りでもこの8ビット=バイトの単位で扱うことが多いです。8ビットを並列に扱う場合は8ビットパラレルなどと呼ぶこともあります。8ビットパラレルで16ビットならば、2拍で送ることができますよね。線の数だけまとめて送ることができるのでその分早くなるわけです。

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シリアルとパラレル、速度は?メリットは?

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シリアルとパラレルの違いやデータとその通信の仕組みを確認してきました。その中で触れたように複数の線があるのでパラレルの方が早いです。しかし、今のパソコンやスマホはUSB端子がついているものが普通ですよね。USBは名前の通りシリアルです。なぜパラレルが使われないのでしょう?

その辺りの歴史や経緯、今なぜUSBが主流なのかを説明していきます。

シリアルとパラレル、どこでどう使われている?

今のパソコンやスマホはプリンタなどの機器を接続するのはUSBです。しかし、昔のパソコンは今でいうネット回線との接続にはシリアルポート、プリンタをつなぐにはパラレルポートという2つの接続端子を使い分けていました。名前の通りシリアル通信するのがシリアルポート、パラレル通信するのがパラレルポートです。

これがUSBになった理由の1つは複数の端子を使い分けるよりも、1つの端子で色々できた方が便利だから。USBの頭のUはUniversalの略ですが、一般的な、万能なという意味です。初期のパソコンはキーボードやマウスも専用の端子がありましたが、今は全てUSBになっています。専用の端子だと他のことに使えませんが、USBなら色々な機器を接続できます。そのため、今はUSBが主流に。そしてパラレルではなくシリアルが主流になりました。しかし、その他にもパラレルには弱点があります

シリアルとパラレルのメリット・デメリット

スピードが速いパラレルの弱点。それは信号線の本数が多いことの裏返しです。まとめてデータを送ることができるので高速に通信できますが、その分だけ電線の数が増えてしまいます。どうしてもケーブルが太く、硬くなるので取り回しにくいです。信号線が少なくてケーブルが細いUSBケーブルは取り回しも簡単ですよね。

さらに、パソコンの性能が上がりやり取りするデータの通信速度が上がることで、問題が出てきます。複数の電線で一気にデータを送信するので他の信号線の内容に影響を受けたり、微妙な信号線の長さの差で生じる信号のずれの問題です。データ通信の仕組みで説明したクロックで同期をとってデータを送っているのに、流れる信号の到着がずれてしまうと正しくデータ通信ができません。技術が発達してパソコンの性能が上がることで高速通信できるはずのパラレルの弱点が表面化したのです。

中はパラレル、外はシリアル。用途に合わせた使い分け

ここまで説明したように、パソコンの外では現在はシリアル通信が主流になっています。昔はパラレル通信が主流だった外付けストレージの接続も今はシリアルのUSBが主流です。高速になったがために、パラレルのデメリットがメリットを上回ってしまったのが理由になります。

しかし、パソコンやスマホの中はパラレルが主流です。これらの中ではデータのやり取りをケーブルで行うのではなく、電子基盤の中の回路でやり取りします。外の機器と繋ぐようなケーブルは1m〜3mくらいのものがありますが、パソコンの中の回路はそんなに長くありません。信号のずれの影響も少ないので、パラレルのデメリットをメリットである高速性が上回るためです。また、内部はとにかく高速で動作することが優先なので、そのために高い部品を使ったり、配線を工夫するといったコストをかけることもできます。ケーブルとパソコンやスマホ本体では価格が違いますからね。

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内部ではパラレルも多いが、外部とはシリアルが主流

シリアルはデータを1ビットずつ順番に送る方式です。一方、パラレルは複数のビットをまとめて送ります。そのため、パラレルの方が通信速度が速いです。しかし、まとめて扱うがゆえの制約もあります。

昔のパソコンはプリンタなどの他の機器と接続するために、用途に応じてシリアルとパラレルを使い分けました。本来はパラレルにしたほうがまとめてデータを送信できるので速くなります。しかし、技術が発達した結果、パラレルのデメリットがメリットを上回ってしまいました。そのため、今ではパソコンやスマホと別の機器をつなぐ時はシリアルであるUSBケーブルを使います。一方、そういう制約が少ない内部では高速性を重視したパラレルです。特性に応じて使い分けているのですね。

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シリアルとパラレルの違いとは?直列と並列?特徴や利用例・メリットもプログラマーがわかりやすく解説

内部ではパラレルも多いが、外部とはシリアルが主流

シリアルはデータを1ビットずつ順番に送る方式です。一方、パラレルは複数のビットをまとめて送ります。そのため、パラレルの方が通信速度が速いです。しかし、まとめて扱うがゆえの制約もあります。

昔のパソコンはプリンタなどの他の機器と接続するために、用途に応じてシリアルとパラレルを使い分けました。本来はパラレルにしたほうがまとめてデータを送信できるので速くなります。しかし、技術が発達した結果、パラレルのデメリットがメリットを上回ってしまいました。そのため、今ではパソコンやスマホと別の機器をつなぐ時はシリアルであるUSBケーブルを使います。一方、そういう制約が少ない内部では高速性を重視したパラレルです。特性に応じて使い分けているのですね。

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