今回のテーマは「公転周期」です。

恒星の周囲を回る公転。地球を含め惑星が公転していることはみんな知っているでしょう。ところで、太陽系には8つの惑星がありますが、それぞれの公転周期がどれくらいかは知っているか。

今回は公転の謎とそれぞれの惑星の周期について学ぶ。解説は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

高校は化学部、大学は工学部化学系の科学館職員。理科教育にかかわる仕事がしたかったから、科学館の仕事が大好き。

公転って何?定義から確認する「公転」

今回のテーマは公転です。まずはその定義から確認していきましょう。辞書を見ると、公転は次のように書かれています。

天体が他の天体のまわりを回転すること。惑星,すい星の太陽のまわりの回転,衛星の母惑星のまわりの回転,連星で伴星の主星のまわりの回転など。自転の対。
[コトバンク 公転]

簡単に説明すると、公転とは「系の中心(重心)の周りを、天体が周る」ことなのです。

公転といえば太陽の周りを地球が回ることですが、実は公転運動の重心に必ず天体があるとは限りません。例えば同じくらいの質量をしたふたつの恒星が連星(2つの恒星が両者の重心(共通重心)の周りを軌道運動している天体)を作る場合、系の重心は2つの星の間となるのです。

公転といえば太陽の周りを公転する地球、地球の周りを公転する月がありますね。系の重心に恒星がある場合、この天体を主星といい公転する星を伴星(ばんせい)と言います。太陽系の場合、主星は太陽です。

太陽系で公転しているものとして、以下のものがあげられます。
【惑星】
水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星
【準惑星】
冥王星、ケレスなど
【小惑星】
パラス、ベスタなど
【衛星】
月(地球)、フォボス・ダイモス(火星)、ガニメデ(木星)、タイタン(土星)など

今回のテーマである公転周期は、1回個上転するのにかかる時間のことで、軌道周期とも言います。惑星、準惑星、小惑星、衛星についてはこちらの記事をどうぞ。

公転と対で覚えたい自転はこちらがおすすめです。

公転周期ランキング

公転周期ランキング

image by Study-Z編集部

それでは太陽系の惑星の公転周期を短い順にランキング形式でご紹介します。

1.公転周期が最も短い惑星、水星

メッセンジャーが2008年に撮影した水星。
NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington. Edited version of Image:Mercury in color - Prockter07.jpg by Papa Lima Whiskey. - NASA/JPL, パブリック・ドメイン, リンクによる

公転周期が最も短いのは水星約88日で地球の周りを1回公転しています。水星は太陽に近く、大きさ・質量が太陽系で最小の惑星です。水星は地球よりも内側に公転軌道があるため、観測できるのは日の出直前と日の入り直後の短い時間だけとなっています。

2.地球の姉妹惑星、金星

探査機「ガリレオ」による撮影(1990年2月)
NASA/JPL - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00223, パブリック・ドメイン, リンクによる

大きさや質量など地球と似たところが多く、地球に最も近い公転軌道を持つ金星。金星の公転周期は約225日です。水星同様、地球の内側に公転軌道があるため、見える時間は日の出、日没の頃しか見る事ができません。また、金星は地球から太陽、月の次に明るく見えるため、日の出の頃に見えるものを明けの明星・日没の頃に見えるもの宵の明星と言われています。

3.生命の星、地球

アポロ17号にて撮影された写真『ザ・ブルー・マーブル』
NASA/Apollo 17 crew; taken by either Harrison Schmitt or Ron Evans - https://web.archive.org/web/20160112123725/http://grin.hq.nasa.gov/ABSTRACTS/GPN-2000-001138.html (image link); see also https://www.nasa.gov/multimedia/imagegallery/image_feature_329.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

地球の1年は365日。これは地球が365日かけて地球の周りを1回、公転しているということです。公転にかかる正確な時間は365.242日、そのため4年で約1日分の誤差が生じます。これを解消するためにあるのが閏年(うるうどし)なのです。

自転公転の向きは、北極側の天から見て反時計回りとなっています。自転も公転同様、反時計回りとなっているのです。ところで、地球の地軸は23.4度傾きがあります。公転とこの地軸の傾きによって、地球には季節が生じているのです。

\次のページで「4.赤い惑星、火星」を解説!/

4.赤い惑星、火星

Mars atmosphere.jpg
NASA - http://solarsystem.nasa.gov/multimedia/gallery/Mars__atmosphere.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

火星は表面が酸化鉄で覆われている惑星です。この酸化鉄の影響で、火星は赤く見えています。自転にかかる時間が24時間30分と地球と同じくらいの火星。ですが、公転にかかる時間は約687日と、地球の1.8倍近い時間がかかっているのです。

火星は2つの衛星を持っています。この衛星をフォボスダイモスといい、公転周期はそれぞれ約7時間40分、約30時間です。地球の衛星、月の公転周期が約27日なので、それに比べると火星の衛星公転周期は短めなのですね。

5.太陽系最大の惑星、木星

2014年時点の自然色木星全体図(カッシーニ撮影)
NASA/JPL/University of Arizona - http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA02873, パブリック・ドメイン, リンクによる

木星の公転周期は約12年(11.86年)と、4番目の火星と比べていきなり長くなっています。木星は太陽系で最も大きく、質量も最大の惑星です。公転は長い木星ですが、その一方で自転は約10時間と地球の半分以下の時間で1周しています。木星で暮らすと1日は地球の半分以下になるのですね。

木星には太陽系で最も大きな衛星、ガニメデがあります。水星よりも大きな衛星で、公転周期は7日3時間です。

6.環が魅力的、土星

カッシーニによる撮影 (2004年3月27日)
NASA / JPL / Space Science Institute - http://www.ciclops.org/view/205/Ringworld-Waiting http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/pia06077, パブリック・ドメイン, リンクによる

土星の公転周期は約30年( 29.53年)。木星のさらに2倍以上の長さです。土星と言えばその環が印象的ですね。この環は小さな氷のかけらでできています。また、衛星が多い事も土星の特徴です。

太陽系で最も衛星を持つ土星。地球の衛星はひとつですが土星は80以上の衛星を持っているのです。ちなみに2番目は木星の80個、3番目は天王星の27個となっています。土星の衛星の中で最も大きなものが、タイタンです。タイタンは約16日で1回土星の周りを公転しています。

7.寝っ転がった惑星、天王星

Uranus clouds.jpg
NASA, ESA, and M. Showalter (SETI Institute) - http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2007/32/image/c/, パブリック・ドメイン, リンクによる

太陽系で3番目に大きな惑星、天王星。天王星は自転軸が、98度傾いています。つまりほぼ横倒しで自転しているというのが、この天王星の特徴です。

天王星の公転周期は約84年。人が生きている間に1回公転できるか?というほど長いのです。さらに先ほど説明したように、回転軸がほぼ寝ています。そのため、北極・南極では昼と夜の長さが42年ずつとなっているのです。その一方、自転周期は17時間程度となっています。

8.最も外側の惑星、海王星

ボイジャー2号が撮影した海王星の画像。中央に大暗斑とそれに付随した明るい模様が見え、西側の周縁には「スクーター」と呼ばれる、移動速度が速い明るい模様と小さな暗点が見られる。
Justin Cowart - https://www.flickr.com/photos/132160802@N06/29347980845/, パブリック・ドメイン, リンクによる

最も公転周期が長い惑星は海王星です。海王星は、最も太陽から遠いところにある惑星で肉眼で見る事ができず、計算によってその存在を発見されました。太陽から45億㎞も離れたところにあり、その公転周期は164.8年です。

海王星には13個の衛星があります。海王星の衛星で最大なのがトリトンです。トリトンは約6日で1回、海王星の周りを回っています。

公転するのは天体だけじゃない~人工衛星

Sputnik asm.jpg
NSSDC, NASA[1] - http://nssdc.gsfc.nasa.gov/database/MasterCatalog?sc=1957-001B, パブリック・ドメイン, リンクによる

地球などの惑星の軌道上に存在する、目的を持った人工天体のことを人工衛星と言います。この「目的を持った」というのが人工衛星のポイントです。軌道上を回り続けていたとしても、使用済みのロケットや人工衛星の残骸はスペースデブリ宇宙ゴミ)と言います。

初の人工衛星は1957年にソビエト連邦が打ち上げたスプートニク1号(上記写真)で、それから数多くの人口衛星が打ち上げられてきました。有人宇宙船や宇宙ステーションなども人工衛星に含まれているのです。人工衛星の用途としては通信衛星、気象衛星などがあげられます。また火星探査機など、他の惑星の軌道上にも人工衛星が存在しているのです。

公転とケプラーの法則

image by PIXTA / 43427967

ケプラーの法則とは、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが発見した惑星の運動に関する法則です。

\次のページで「公転周期ってどれくらい?」を解説!/

第1法則 楕円軌道の法則
惑星は太陽を焦点の一つとする楕円軌道上を動く

第2法則 面速度一定の法則
惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積は一定である

第3法則 調和の法則
惑星の公転周期の2乗は、軌道長半径の3乗に比例する

この法則によって、惑星の軌道が楕円形になっていることがわかります。そしてその楕円の焦点(楕円の基準となる2つの点で、焦点からの距離の和は一定となる)が太陽となっているのです。このケプラーの法則によって太陽を中心に惑星が運動しているという地動説の信憑性がより増したのでした。

公転周期ってどれくらい?

公転周期は太陽から離れるほどどんどん長くなっていきます。最も短い水星で約88日なのに対して最も長い海王星では約165年もかかるのです。

公転周期があるのは惑星だけではありません。惑星の周りを回る衛星にもそれぞれ公転周期があります。月は約27日7時間45分なのに対し、火星のフォボスは約7時間、木星のガニメデは7日3時間、土星のタイタンは約16日と結構まちまちです。

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地学理科

3分で簡単公転周期!公転の定義や公転周期ランキングも科学館職員がわかりやすく解説

今回のテーマは「公転周期」です。

恒星の周囲を回る公転。地球を含め惑星が公転していることはみんな知っているでしょう。ところで、太陽系には8つの惑星がありますが、それぞれの公転周期がどれくらいかは知っているか。

今回は公転の謎とそれぞれの惑星の周期について学ぶ。解説は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

高校は化学部、大学は工学部化学系の科学館職員。理科教育にかかわる仕事がしたかったから、科学館の仕事が大好き。

公転って何?定義から確認する「公転」

今回のテーマは公転です。まずはその定義から確認していきましょう。辞書を見ると、公転は次のように書かれています。

天体が他の天体のまわりを回転すること。惑星,すい星の太陽のまわりの回転,衛星の母惑星のまわりの回転,連星で伴星の主星のまわりの回転など。自転の対。
[コトバンク 公転]

簡単に説明すると、公転とは「系の中心(重心)の周りを、天体が周る」ことなのです。

公転といえば太陽の周りを地球が回ることですが、実は公転運動の重心に必ず天体があるとは限りません。例えば同じくらいの質量をしたふたつの恒星が連星(2つの恒星が両者の重心(共通重心)の周りを軌道運動している天体)を作る場合、系の重心は2つの星の間となるのです。

公転といえば太陽の周りを公転する地球、地球の周りを公転する月がありますね。系の重心に恒星がある場合、この天体を主星といい公転する星を伴星(ばんせい)と言います。太陽系の場合、主星は太陽です。

太陽系で公転しているものとして、以下のものがあげられます。
【惑星】
水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星
【準惑星】
冥王星、ケレスなど
【小惑星】
パラス、ベスタなど
【衛星】
月(地球)、フォボス・ダイモス(火星)、ガニメデ(木星)、タイタン(土星)など

今回のテーマである公転周期は、1回個上転するのにかかる時間のことで、軌道周期とも言います。惑星、準惑星、小惑星、衛星についてはこちらの記事をどうぞ。

公転周期ランキング

公転周期ランキング

image by Study-Z編集部

それでは太陽系の惑星の公転周期を短い順にランキング形式でご紹介します。

1.公転周期が最も短い惑星、水星

公転周期が最も短いのは水星約88日で地球の周りを1回公転しています。水星は太陽に近く、大きさ・質量が太陽系で最小の惑星です。水星は地球よりも内側に公転軌道があるため、観測できるのは日の出直前と日の入り直後の短い時間だけとなっています。

2.地球の姉妹惑星、金星

探査機「ガリレオ」による撮影(1990年2月)
NASA/JPL – http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA00223, パブリック・ドメイン, リンクによる

大きさや質量など地球と似たところが多く、地球に最も近い公転軌道を持つ金星。金星の公転周期は約225日です。水星同様、地球の内側に公転軌道があるため、見える時間は日の出、日没の頃しか見る事ができません。また、金星は地球から太陽、月の次に明るく見えるため、日の出の頃に見えるものを明けの明星・日没の頃に見えるもの宵の明星と言われています。

3.生命の星、地球

地球の1年は365日。これは地球が365日かけて地球の周りを1回、公転しているということです。公転にかかる正確な時間は365.242日、そのため4年で約1日分の誤差が生じます。これを解消するためにあるのが閏年(うるうどし)なのです。

自転公転の向きは、北極側の天から見て反時計回りとなっています。自転も公転同様、反時計回りとなっているのです。ところで、地球の地軸は23.4度傾きがあります。公転とこの地軸の傾きによって、地球には季節が生じているのです。

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