フランボワーズは市販のお菓子やデザートの風味として珍しい果物ではないが、フレッシュのものが食卓に並ぶことはあまりない…それはなぜでしょう?その答えの一つに、生の果実として市場に出回ることが少ないからです。今回の記事では、その理由に目を向けてみよう。また、美味しいフランボワーズの入手方法や選び方、あまり知られていない品種の数々も果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。フランボワーズは、デコレーションからムース・アイス・ソースetcにも使い、いつも隣にあった果物です。

フランボワーズの産地と旬

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スーパーであまり見かけることのないフランボワーズですが、少ないながらも出回っているフランボワーズのおよそ99%以上が輸入品です。手に取るフランボワーズはほとんどと言っていいほど輸入のものなのですね。しかも生鮮で輸入されるものは少なく、その多くが冷凍、もしくはピューレ状にすでに加工されています。

では、どのような地域で作られているのか、世界と日本のフランボワーズ生産事情について見てみましょう。

世界のフランボワーズ栽培

まずは世界のフランボワーズの生産高を見てみましょう。

順位:国名/生産量(トン)
1位 :ロシア/174,000
2位 :メキシコ/128,848
3位 :セルビア/120,058
4位 :アメリカ/102,510
5位 :ポーランド/75,660

世界ではロシアが第1位で、そのシェアは全体の20%以上を占めています。量だけだとピンときませんが、日本国内の果物生産高で置き換えてみると、ぶどうの国内総生産高が約174,700トン、イチゴが約161,800トンと1位のロシアと同じくらいの量でしょう。世界ではポピュラーな果物だということが分かりますね。

輸入フランボワーズの産地・旬

続いて、日本に輸入されているフランボワーズの輸入先と旬を見てみましょう。

輸入先:輸入量(トン)/旬の時期
アメリカ:310/4月~9月頃 
メキシコ:177/10月~5月頃

\次のページで「国産フランボワーズの産地・旬」を解説!/

日本に輸入されている生のフランボワーズは主にアメリカ産とメキシコ産です。アメリカのフランボワーズが輸入量全体の60%を占め、残り30%強をメキシコ、そして稀にニュージーランドやチリなどからも輸入されています。先ほどの世界の生産高と比べると、日本に出荷されるフランボワーズがいかに少ないか分かりますね。

国産フランボワーズの産地・旬

わずかですが、国産のフランボワーズも栽培されています。しかし、生産量が極端に少ないため、スーパーなどに並ぶことは滅多になく、こだわりのレストランや洋菓子店に出荷されることがほとんどです。では、国産フランボワーズの栽培される地域を見てみましょう。

順位:地域/生産量(トン)
1位:秋田/2.4
2位:山形/1.4
3位:北海道/0.9

上記から分かる通り、生産高は非常に少ないですね。また、日本のフランボワーズの旬は6月~9月頃です。フランボワーズの栽培は比較的冷涼な地域が好まれますが、旬は夏のフルーツなのですね。

なぜ国産フランボワーズは少ないの?

お菓子の飾りやその加工品のバリエーションから見ても需要は多いと思われますが、なぜ日本国内での生産量は少ないのでしょうか

その理由は明確にされていませんが、フランボワーズは日本の風土で安定して育てにくく、歴史的に栽培事例が少ないため、栽培管理の方法が確立していないことが大きな要因と言えそうです。また、需要と収穫時期のバランスも重要ですね。フランボワーズの収穫時期は遅くとも11月が限界のため、大幅需要が見込まれるクリスマスには出荷が間に合わないとか。そうしたリスクがありながら、フランボワーズの栽培には、手作業で地道な作業が多いため、なかなか好んで栽培する農家さんがいないのです。

海外でのフランボワーズ栽培の中にはすでに機械化により整備されている地域もあり、大量生産も実現しています。現在は国内でもフランボワーズ需要の高まりによって、効率の良い栽培方法も開発が進められているようですよ。

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フランボワーズの品種

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果実として販売されているフランボワーズは決して多くはありませんが、実はフランボワーズにはたくさんの品種があるのです。主に赤い果実が実りますが、中には黄色や黒っぽい実がなる品種もありますよ。機会があれば、ぜひ苗から育ててみましょう

フランボワーズは病気や寒さに強く、品種によっては日本の夏の暑さも気にせず、鉢植えで簡単に育ちます。フランボワーズを栽培する場合、注目するのが「2季なり性」「1季なり性」という違いです。具体的に言うと、2季なり性は収穫が1年に2回6〜7月と10〜11月、1季なり性は収穫が1年に1回6〜7月になります。では、それぞれの代表的な品種を紹介していきましょう。

2季なり性:インディアンサマー/サマーフェスティバル

家庭で栽培するフランボワーズの代表的な品種「インディアンサマー」。園芸コーナーなどで品種が明記されず「フランボワーズ」または「ラズベリー」とだけしか書かれていない場合、このインディアンサマーがほとんどです。果実は赤く、食味は酸味が強めでコクがあり、小粒ながら安定してたくさん実ります。寒さに強く丈夫な品種なので、初心者にも育てやすい品種ですよ。

次いで人気の品種「サマーフェスティバル」です。インディアンサマー同様、小粒で赤い実のフランボワーズが実ります。酸味が少なく、香り豊かな濃厚な味わいが特徴です。どちらも初夏と秋の2回収穫が楽しめます。食としてのフランボワーズだけでなく、赤い果実のなった可愛らしい様子は見ているだけでも心ときめきますね。

1季なり性:グレン・アンプル/ファールゴールド/ブラックキャップ

1季なり性の人気品種の1つが「グレン・アンプル」です。「グレン」とつく品種はたくさんあるのですが、グレン・アンプルはその中でも高級品種といわれています。暑さや病気に強く、何といってもトゲがないのが特徴。お手入れも楽で、お子さんと一緒でも安心して収穫体験ができますよ。収穫時期は1年の中で1ヵ月程度ですが、果実は大きく美味しい品種です。

見た目の可愛らしさでおすすめの品種が「ファールゴールド」。別名「イエローラズベリー」と呼ばれる黄色い実のなるフランボワーズです。たくさんの実がなりやすく、酸味の少ない生食向きの甘い食味なのですが、暑さにあまり強くないため、やや育てにくいと思われるかもしれません。

最後に紹介するのが「ブラックキャップ」。黒っぽい色の実がなる「ブラックラズベリー」と呼ばれる品種です。大きめの果実で、酸味・甘み・コクがあり、食べ応えのある味わいが楽しめます。

フランボワーズの選び方

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普段、生鮮ではなかなか見かけないフランボワーズ。手軽に購入できるのはどこでしょうか?また、せっかくなら買う時の選び方のコツを知っておきたいですよね。この章では、購入できる場所と、美味しいフランボワーズの特徴について解説します。

フランボワーズはどこで買えるの?

自分で栽培する方法もご紹介しましたが、フレッシュの果実を購入する場合スーパーや百貨店、果物専門店、なかなか見つからない場合は通販を利用すると確実でしょう。

しかし、生鮮のフランボワーズは前述の通り流通する数が少なく、輸入の場合は運搬費用も掛かるため、果物としては割高な値段になってしまうことが多いようです。200g2000円前後が値段の相場のようですよ。

美味しいフランボワーズって?

実際手に取って選べる場合、良品かどうかよく見てから選びましょう!どのようなフランボワーズの粒が美味しい状態でしょうか?食べごろを見極めるためのコツを解説していきます。

\次のページで「どんな状態が良くないの?」を解説!/

美味しいフランボワーズの特徴
・鮮やかで濃い色をしている
・実の形がふっくらしてハリがある
・良い香りがする
・実が柔らかい
・傷がない

フランボワーズは傷がついていたり、果汁でべたべたしていると、そこからカビが生えやすくなるので傷のないものを選んでください。パックでフレッシュのものを購入する場合、下の方がつぶれていないかも確認しましょう。

また、フランボワーズは新鮮さが保たれる期間の短い果物です。まだ白っぽく熟しきっていないフランボワーズは、追熟しる前に傷む可能性がありますので、完熟しているものを選びましょう。完熟すると実が少し柔らかくなりますが、実崩れしやすくなるので、食べ頃を見逃さないようにしたいですね。

どんな状態が良くないの?

最後に傷んでいる状態を解説します。カビや腐敗は元に戻らないため、こうなっているともう食べられません。フランボワーズの粒は小さいので、一つ一つ、サインを見逃さないように!

良くないフランボワーズの特徴
・香りが弱い、またはカビ臭い
・ヘタの部分にカビや傷みがある
・白っぽく変色している
・水分が出て、ぐちゃぐちゃしている
・白いふわふわしたカビ・緑や黒のカビが生えている

フランボワーズは日持ちが悪い果物です。傷むと柔らかくなり、やがて汁気が出ます。柔らかくなったフランボワーズは腐敗の一歩手前!カビや汁気が出ていなければギリギリセーフです。

また、パックの中に変色したフランボワーズやカビたものが混ざっていることがありますが、他のフランボワーズは問題がなければ食べることができます。フランボワーズのカビは、元気なフランボワーズに移ってさらに広がっていくので、見つけたらすぐに抜き取るようにしましょう。

国産フランボワーズは希少!珍しい品種も美味しい果実を見分けて食べ比べたい!

赤色と思われがちなフランボワーズ、実は品種によって、赤・黄・黒と色とりどりの果実です。現在は輸入が主ですが、将来、国産フランボワーズ栽培の開発が進んだら、旬の名産地で様々な品種を食べ比べられる日が来るかもしれません。新鮮で香り豊かなフランボワーズをたっぷり頬張りたいですね!

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家庭科

フランボワーズは輸入が多い?珍しい品種や美味しい果実の見分け方も果物大好きパティシエが詳しくわかりやすく解説

フランボワーズは市販のお菓子やデザートの風味として珍しい果物ではないが、フレッシュのものが食卓に並ぶことはあまりない…それはなぜでしょう?その答えの一つに、生の果実として市場に出回ることが少ないからです。今回の記事では、その理由に目を向けてみよう。また、美味しいフランボワーズの入手方法や選び方、あまり知られていない品種の数々も果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。フランボワーズは、デコレーションからムース・アイス・ソースetcにも使い、いつも隣にあった果物です。

フランボワーズの産地と旬

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スーパーであまり見かけることのないフランボワーズですが、少ないながらも出回っているフランボワーズのおよそ99%以上が輸入品です。手に取るフランボワーズはほとんどと言っていいほど輸入のものなのですね。しかも生鮮で輸入されるものは少なく、その多くが冷凍、もしくはピューレ状にすでに加工されています。

では、どのような地域で作られているのか、世界と日本のフランボワーズ生産事情について見てみましょう。

世界のフランボワーズ栽培

まずは世界のフランボワーズの生産高を見てみましょう。

順位:国名/生産量(トン)
1位 :ロシア/174,000
2位 :メキシコ/128,848
3位 :セルビア/120,058
4位 :アメリカ/102,510
5位 :ポーランド/75,660

世界ではロシアが第1位で、そのシェアは全体の20%以上を占めています。量だけだとピンときませんが、日本国内の果物生産高で置き換えてみると、ぶどうの国内総生産高が約174,700トン、イチゴが約161,800トンと1位のロシアと同じくらいの量でしょう。世界ではポピュラーな果物だということが分かりますね。

輸入フランボワーズの産地・旬

続いて、日本に輸入されているフランボワーズの輸入先と旬を見てみましょう。

輸入先:輸入量(トン)/旬の時期
アメリカ:310/4月~9月頃 
メキシコ:177/10月~5月頃

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