世の中には色々な働き方があるよな。その中でも派遣や業務委託という言葉は聞いたことがあるでしょう。派遣というと実際にそこの会社に出向き、業務委託だとそうではないといったふわっとした感覚しかないんじゃないか。実際には法律で色々決まっているし、働き方も違うぞ。業務委託と派遣の違いを、実際に業務委託契約を請けたり、逆に発注したこともあるプログラマのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。業務委託の発注も受注も経験済み。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさんです。

業務委託と派遣の違いは?

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正規雇用と非正規雇用といったキーワードが報道でもよく出てきます。非正規雇用の中でも「派遣」や「派遣社員」という言葉がよくありますよね。その派遣とよく比べられるのが「業務委託」です。では業務委託と派遣はどう違うのでしょう。

ざっくり言えば責任範囲と指示命令系統の違いです。これだけではよくわからないので、詳しく見ていきます。

業務委託:依頼内容に合わせて自分で動く

会社には従業員がいるので多くの仕事は自社の中でこなします。ただ、いろいろな理由で外部の会社にサポートをお願いすることも。昔は外部発注の略で「外注」と呼びましたが、今は「アウトソーシング」と呼んだりします。そのアウトソーシングの契約形態の1つが「業務委託」です。

業務委託とは何かのものや作業を別の会社に依頼すること。どんなものか、どんな作業かは依頼元が決めます。しかし、それをどうやって実行するかを決めるのは依頼を請けた側。ものが完成したり、作業が完了すると依頼元がその内容を確認して契約完了です。基本はおまかせなので、作業のやり方や依頼先のメンバーへの細かい指示を依頼元がすることはできません必要なことは先に決めておく必要があります。

派遣:派遣先の指示通りに動く

派遣は依頼先の会社や指示された場所に行って働くことが多いです。言葉通りですね。他の従業員と同じように、その会社の上司やリーダー役の指示で働きます

こういう作業をしてほしいという仕事の内容はあらかじめ決めます。しかし、何をどれだけしてもらうかを決めるのは依頼元の会社の人です。仕事ですので責任感を持ってするのは当然ですが最終的に責任を持つのは依頼元。何かが完成しなかったり特定の分量をこなせないことの責任は派遣された人にはありません。もちろんサボっていたら依頼元の人に怒られますよ。派遣された人の仕事の仕方や進み具合を確認して指示するのも依頼元の会社の責任になります。

業務委託と派遣の法律的な違いとは?

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派遣は依頼元の会社で、業務委託は自分の会社で仕事をする、という場所の違いと捉えていないでしょうか。実際には業務委託でも依頼元の会社で作業することもあります。その場でしかできない仕事や、その方が効率のよい仕事もあるので当然ですね。

業務委託と派遣はそのような場所の違いではなく法律で責任範囲が決まっています。ざっくりと違いを説明しましたが、もう少し詳しい話をするとともに、業務委託と派遣の相違を確認していきましょう。

\次のページで「違いは責任範囲と誰が指示するか」を解説!/

違いは責任範囲と誰が指示するか

業務委託と派遣の違いは誰に責任があり、それによってどう指示するかです。どちらの場合も仕事を依頼する側と請ける側に分かれます。請ける側が責任を持つのが業務委託、依頼する側が責任を持つのが派遣です。

そのため、業務委託では細かい作業の仕方や作業指示は請ける側に任せて依頼する側からは行いません。一方、派遣では請ける側の人はその会社の他の普通の従業員と同様に依頼する側の指揮系統に従って仕事をします。そのため、派遣は労働力を提供することと捉えることが可能です。

例えば、ある作業をしてほしい、あるものを作ってほしいというのは「業務委託」で、ある作業をするために人手を出してほしいというのは「派遣」になります。派遣は人手を出してもらっているだけなので細かい指示を出すのは依頼する側。一方、業務委託は作業やものを作ることを任せているので基本は請ける側に任せることになります。

期間が決まっている?いない?派遣の種類

一口に派遣と言っても2種類あります。それは派遣会社とその従業員の契約期間が決まった期間か、無期限かです。

期間が決まっているものを登録型派遣や有期雇用派遣と呼びます。派遣会社に一定期間登録して仕事を紹介してもらい、依頼のあった会社に派遣されるものです。期間が決まっていないものは常用型派遣や無期雇用派遣と呼びます。

登録型派遣では実際に派遣されている期間だけ所定の時給が支払われるケースが多いです。常用型派遣では派遣されていない間も派遣会社の従業員として給料がもらえます。ただし、どういう仕事をしたいということの自由度は登録型派遣の方が高いです。収入が保証される反面派遣先は派遣会社任せになる常用型と、派遣先の希望は出しやすいが収入は保証されない登録型という違いになります。自分の働き方でどちらかを選ぶのです。

何かを作る?作業する?業務委託の種類

業務委託もその内容で2種類あります。何かのものを作るのが請負契約、何かの作業を行うのが委任契約や準委任契約です。この何かものを作るというのは形のある物もあればプログラムやイメージデータといった形のないものもあります。何を作るにしても目的となるもの、成果物が必要です。どういう形のものかは様々ですが何らかの成果物をつくって依頼元に納めるのが請負契約になります。

一方、委任契約/準委任契約は成果物を作るのではなく、何かの作業を完了させるものです。この内弁護士とか税理士などの法律に関わる業務ならば委任契約、それ以外の全ては準委任契約になります。成果物がない点では派遣と似ていますね。

しかし、派遣と違いどう作業を進めるかといったことは契約を受けた側が決めます作業を完了させる責任は指示に従って働く派遣よりも重いです。

どちらが向いている?業務委託と派遣の特徴とは

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ここまで法律的な違いを確認してきました。では、実際に依頼を受ける側や依頼する側としてはどのような違いがあり、何を気をつけなければいけないのでしょう?ここではそれぞれの立場から見た特徴や、どちらが向いているかを確認していきます。

依頼を受ける側から見た特徴は?

業務委託のメリットは自由度が高いことです。契約内容によっては毎日や毎週の決まった時間の会議への参加や報告資料の作成といった作業が必要になります。しかし、契約内容以外のことの判断や決定権を持つのは受ける側です。実力がある人ならばその能力を最大限に発揮できるでしょう。

派遣のメリットは逆に細かい作業内容の指示をしてもらえること。法的な責任はないとはいえ、責任感を持って仕事をすることは必要です。しかし、様々なことを判断、決定するのは依頼する側。その分、経験や実績を求められることも業務委託よりは少なくなります。場合によっては派遣会社で教育制度があることも。また、同じ派遣先で働くのは3年というルールが法律で決まっています。そのため、実績を認められて正社員採用されるケースも。採用を前提とした紹介型派遣というものもあります。

\次のページで「依頼する側から見た特徴は?」を解説!/

依頼する側から見た特徴は?

依頼する側から見た場合、仕事を任せるなら業務委託、人手が欲しいのならば派遣です。例えば、誰かが病気や怪我、あるいは育児休業でしばらく仕事を離れるのでその間の人手が欲しいという場合は派遣が向いています。その代わり、お願いする業務に関する手順書やマニュアルを用意するか、経験者の指導が必要です。

一方、社内で知見がなかったり、あっても忙しくて代わりにやってほしいという場合は業務委託が向いています。働き方改革を進めたい、既存の業務を効率化したいといったコンサルティングも業務委託です。その仕事のプロにお願いするのですから、依頼する側では成果物や作業内容を決めればおまかせになります。

ただし、契約で決めてあること以外の口出しはできません。特に、業務委託している先の個々人に直接指示するのは絶対避ける必要があります。これは「偽装請負」という法律違反です。指示は相手側の責任者を通す必要があります。

業務委託のキモは?契約内容を明確にしよう

法律的な違いやルールを説明してきましたが、実際業務委託での注意点はあるのでしょうか。実際の業務委託の場でも曖昧になりがちなのが成果物や作業内容の明確化です。なんとなく既存の書類をコピペして日付や内容だけ書き換えただけ、などということも。こういうやり方でも問題が発生していないときは大丈夫なことが多いです。

ただ、何か問題が起きた時にトラブルになりやすいのも内容の曖昧さ。依頼する側もそれを受ける側もあまりここに時間をかけたくないので細かい内容は作業を進めながら決めましょう、と曖昧なままで進めてしまうことも。ただ、結局後回しはそのまま放置され、問題が起きたときにはもめることもあります。

業務委託の最重要ポイントはいかに明確な内容で契約を合意できるかです。後で痛い目を見ないためにも、合意内容はよく確認し曖昧なままにしないようにしましょう。

業務委託は自らに責任、派遣は指示に従う

自社だけでできない仕事を外の会社にお願いするのが業務委託と派遣業務委託には成果物をつくってもらう請負契約と、何かの作業をしてもらう委任/準委任契約があります。派遣は労働力を提供してもらうものです。そのため、成果物や作業を完了する責任は依頼を受けた側にあるのに対して、派遣では派遣された人を管理、指導するのは依頼する側の責任になります。

仕事の場所や名前だけの違いではなく、その仕事に対する責任を誰が持つかが大きな違いです。そのため、内容に合わせて業務委託や派遣を選択することが必要。働く側からすれば派遣から正規社員に採用されるケースもあるので、自分の働き方をどうするか考えて選択しましょう。

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ビジネス雑学

業務委託と派遣の違いとは?特徴や責任・指揮命令も発注経験のあるプログラマがわかりやすく解説

世の中には色々な働き方があるよな。その中でも派遣や業務委託という言葉は聞いたことがあるでしょう。派遣というと実際にそこの会社に出向き、業務委託だとそうではないといったふわっとした感覚しかないんじゃないか。実際には法律で色々決まっているし、働き方も違うぞ。業務委託と派遣の違いを、実際に業務委託契約を請けたり、逆に発注したこともあるプログラマのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。業務委託の発注も受注も経験済み。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさんです。

業務委託と派遣の違いは?

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正規雇用と非正規雇用といったキーワードが報道でもよく出てきます。非正規雇用の中でも「派遣」や「派遣社員」という言葉がよくありますよね。その派遣とよく比べられるのが「業務委託」です。では業務委託と派遣はどう違うのでしょう。

ざっくり言えば責任範囲と指示命令系統の違いです。これだけではよくわからないので、詳しく見ていきます。

業務委託:依頼内容に合わせて自分で動く

会社には従業員がいるので多くの仕事は自社の中でこなします。ただ、いろいろな理由で外部の会社にサポートをお願いすることも。昔は外部発注の略で「外注」と呼びましたが、今は「アウトソーシング」と呼んだりします。そのアウトソーシングの契約形態の1つが「業務委託」です。

業務委託とは何かのものや作業を別の会社に依頼すること。どんなものか、どんな作業かは依頼元が決めます。しかし、それをどうやって実行するかを決めるのは依頼を請けた側。ものが完成したり、作業が完了すると依頼元がその内容を確認して契約完了です。基本はおまかせなので、作業のやり方や依頼先のメンバーへの細かい指示を依頼元がすることはできません必要なことは先に決めておく必要があります。

派遣:派遣先の指示通りに動く

派遣は依頼先の会社や指示された場所に行って働くことが多いです。言葉通りですね。他の従業員と同じように、その会社の上司やリーダー役の指示で働きます

こういう作業をしてほしいという仕事の内容はあらかじめ決めます。しかし、何をどれだけしてもらうかを決めるのは依頼元の会社の人です。仕事ですので責任感を持ってするのは当然ですが最終的に責任を持つのは依頼元。何かが完成しなかったり特定の分量をこなせないことの責任は派遣された人にはありません。もちろんサボっていたら依頼元の人に怒られますよ。派遣された人の仕事の仕方や進み具合を確認して指示するのも依頼元の会社の責任になります。

業務委託と派遣の法律的な違いとは?

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派遣は依頼元の会社で、業務委託は自分の会社で仕事をする、という場所の違いと捉えていないでしょうか。実際には業務委託でも依頼元の会社で作業することもあります。その場でしかできない仕事や、その方が効率のよい仕事もあるので当然ですね。

業務委託と派遣はそのような場所の違いではなく法律で責任範囲が決まっています。ざっくりと違いを説明しましたが、もう少し詳しい話をするとともに、業務委託と派遣の相違を確認していきましょう。

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