ソビエト連邦ロシアロシア革命世界史

プーチン大統領が信奉する「強いロシア」その内容と背景について元大学教員が5分でわかりやすく解説

ウクライナの領土はロシアからの「贈り物」

プーチン大統領にとってウクライナはロシアの一部。2008年、アメリカのブッシュ大統領と会見したときウクライナの領土の一部について「私たちからの贈り物なのだ」と説明しました。そのためウクライナのNATO(北大西洋条約機構)を強く反対しています。

他国の領土が「贈り物」というのは、一般的には受け入れられるものではありません。しかしながらプーチンにとってウクライナの離脱は「西側の東方拡大」に他なりません。かつてはソビエト連邦の構成国として親密な関係にあったウクライナ。そのような国が離脱することは「強いロシア」のイメージを打ち崩すものなのです。

裏切者を許さないプーチンの強硬姿勢

プーチン大統領は、自分がスパイとして活動し、そのさなかにベルリンの壁の崩壊そしてソ連の解体を目の当たりにします。プーチンにとってソ連から離脱する国々は「裏切者」に他なりません。かつての栄光を取り戻すことがプーチンの野望。これ以上の「裏切り」はあってはなりません。

「強いロシア」を実現するのは愛国心。プーチンは真の愛国心がある者は裏切者を許すことはないという趣旨の発言をたびたびしています。裏切者を見つけたら厳重に処罰することも良し。あれほど執拗にウクライナを攻撃するのは「裏切者」という認識があるからです。

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ソ連が崩壊したとき、その中核にあったロシアは「敗者」という汚名を着せられた。それはプーチンにとって耐えがたい屈辱なったのだろう。だから今のロシアは敗者であってはならない。だからこそ、国際社会の批判を気にせず、ウクライナを攻めているのだろう。

「強いロシア」はロシア国民をまとめる思想

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かつてのソビエト連邦時代は、マルクス・レーニン主義を通じて、さまざまな国や人々をまとめてきました。ところが現在は、民主化の思想も浸透しており、ひとつの思想で人々を束ねることは困難。そこでプーチンは、ロシア人や管轄国の人々をまとめるために「強いロシア」を打ち出しています。

唯一無二の存在である「強いロシア」

プーチンが強調するのは「アジアでもヨーロッパでもない唯一無二の存在であるロシア」というもの。ロシアは純粋な存在でなくてはならず、アジアの影響もヨーロッパの影響も受けてはなりません。ロシアのみならず、ロシアと協力関係を結んでいる国も同様です。

そんな唯一無二のロシアを揺るがすのが西側の軍事機構であるNATO。北欧諸国や東ヨーロッパ諸国でも徐々にNATOに加盟する、加盟を希望するケースが増えてきました。それはロシアの純潔性を汚す行為に他なりません。NATOの影響力を排除することが、「強いロシア」を維持するためには不可欠と考えました。

ロシア人の士気を高める「ナチ化」というワード

「強いロシア」を維持するためにはロシア国民の士気を鼓舞する必要があります。今でもロシアでは、ソ連時代の伝統を継承して、ナチス・ドイツに勝利した日を「戦勝記念日」と位置づけて壮大な軍事パレードを実施。ナチスを倒した「強いロシア」は正義そのものだという考えを国民に発信してきました。

ウクライナ進攻を「打倒ナチス」とすることで、国際社会の非難とは関係なく正当化できます。ナチスは絶対悪なので、多少乱暴なやり方をしても最終的には正しいことだというのがプーチンの主張。ソ連時代から植え付けられている思想のため、信じている人が一定数いることも事実です。

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実際、第二次大戦の時期に、ウクライナの蜂起軍がナチス・ドイツに協力したことがある。それを根拠にウクライナをナチスと呼んでいるのかもしれない。ただ、当時のロシア軍にもウクライナ人が一定数いた。ウクライナは歴史的に微妙な立場にいたのだろう。

低迷の危機にある「強いロシア」

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プーチンが望むのは大国ロシアの再来。アメリカと肩を並べたかつてのロシアです。しかしながら2010年以降のロシアは経済成長の波に乗り遅れ、低迷しているという現実があります。

ロシアの低迷のきっかけとなったクリミア併合

プーチン政権は長らく高い支持率を誇ってきました。しかし2014年のクリミア併合については批判が殺到します。クリミア半島は、クリミア自治共和国とセヴァストポリ特別市から構成されていますが、国際的にはウクライナの領土と見なされていました。それを強制的にロシア連邦の領土に組み込みました。

ロシアの経済成長を支えてきた石油の価格が下落したことに加え、クリミア併合を批判する国際社会から経済制裁が加えられます。その結果、ロシアの一人当たりのGDPは1万ドルを切ることも目立つようになりました。

ウクライナ進攻の経済制裁が「強いロシア」に与える影響

クリミア併合と同じようにウクライナ進攻でもロシアは経済制裁が加わりました。戦費がかさんでいることに加え、貿易の制裁や外国企業の撤退により、ロシア経済は揺らぎつつあります。とくに打撃を受けているのがエネルギー部門。EUは原油や天然ガスの輸入を段階的に減らすことを決定しました。

プーチン大統領はそれでもウクライナ進攻をやめようとしません。それはウクライナを傘下に置くことが「強いロシア」をアピールするうえで不可欠だからです。ロシアの経済が悪化することで、ロシア人がどのように考えるのでしょうか。展開を注視していきたいところです。

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プーチン大統領のウクライナに対する固執はストーカーレベルだ。ウクライナを手放すことは「強いロシア」を否定すること。ソ連崩壊を想起されることでもある。だからこそ、どんな手を使ってでもウクライナを手元に置いておきたいのだろう。

「強いロシア」はこれからどうなるのか?

ソ連崩壊のトラウマとその後の貧困生活から、「強いロシア」にこだわり続けるプーチン大統領。ウクライナ進攻に対する国際的な批判は強く、経済制裁も長引いています。そのまま「強いロシア」を維持し続けることはできるのでしょうか。国民の反応も併せて見ていくと、歴史の転換期の目撃者になれるかもしれません。

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