今回のテーマは「絶対温度」です。

普段の生活の中で温度は摂氏(℃)で表記されている。摂氏はセルシウス温度と呼ばれているぞ。また、温度には別の温度があるのを知っているか?それが華氏(℉)です。

日常生活でも摂氏と華氏の2種類の温度表記がありますが、化学や物理の世界では他の温度がある。それが絶対温度です。

今回は化学や物理の世界で当たり前に使われる「絶対温度とはどのように定義されるのか」そして、「セルシウス温度と絶対温度の関係」を物理に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

大学院を修了するまで、研究に明け暮れた理系ライター。目の前で起きた現象を深掘りすることが大好きで、化学や物理など幅広く勉強している。現在は化学メーカーで技術職として働きながら、化学や物理の楽しさを発信していく。

絶対温度とは

まずは、絶対温度とはどういう意味でしょうか。絶対温度とは、「熱力学に基づいて定義される温度」のことです。絶対温度を詳しく紹介する前に、絶対零度について解説していきます。

原子や分子の熱運動が完全に止まる絶対零度とは

image by iStockphoto

「絶対零度」という言葉は聞いたことがある方も多いと思います。目には見えませんが、原子や分子は常に振動しながら運動しているんです。これを熱運動と呼びます。

熱運動が完全に停止していまう温度のことを絶対零度と呼び、絶対零度をゼロの基準にして決めた温度が絶対温度です。絶対温度の単位はKを使って表し、ケルビンと読みます。つまり、絶対零度は0Kというわけです。

また、古典力学では、絶対零度で分子の持つエネルギーは最低になり、原子や分子の熱運動が完全に停止すると考えられます。しかし、量子力学の世界では、原子や分子の揺らぎが残るため、絶対零度でもゼロ点振動していると考えられているんです。

教科書では古典力学の考え方に基づいて絶対温度は説明されているので、ここからも古典力学の考え方に基いて解説していきます。

温度は原子や分子の熱運動で決まる

image by iStockphoto

そもそも、温度とはどうやって決まるのでしょうか。絶対零度よりも温度が高ければ、原子や分子は常に振動し、運動している状態ですよね。温度や熱の正体は熱運動のエネルギーなんです。

もちろん、カチコチに凍った氷も分子レベルで見ると分子は動き回っています。なので、氷の温度は絶対零度よりも高温というわけですね。そして、熱運動が小さくなり、分子の動きが完全に止まったときの温度が絶対零度です。

ちなみに、絶対零度は分子の熱運動が完全になくなる温度なので、すべての原子・分子で同じ温度を示します。水の融点と二酸化炭素の融点は違う温度ですが、水も二酸化炭素も分子の熱運動が完全に停止する絶対零度は同じ温度(0K)です。

セルシウス温度と絶対温度はお互いに変換できる

セルシウス温度と絶対温度はお互いに変換できる

image by Study-Z編集部

私たちの生活では、温度は基本セルシウス温度を使います。セルシウス温度は、もともと水の凝固点を0度、沸点を100度として定義されていました。私たちにとって、水は最も親しみのある物質といっても過言ではありません。水の沸点と融点から定義したセルシウス温度はとてもなじみやすいですよね。

しかし、物理や化学の世界では絶対温度を使います。セルシウス温度と絶対温度はお互いに変換できることを覚えておいてください。

絶対温度をT[K]、セルシウス温度をt[℃]とすると、T(K)=t(℃)+273.15という式で表すことができます。ちなみに、現在の日本の計量法でセルシウス温度は、「ケルビンで表した熱力学温度の値から273.15を減じたもの」と定義されているんです。

\次のページで「摂氏と華氏と絶対温度もお互いに変換可能」を解説!/

摂氏と華氏と絶対温度もお互いに変換可能

また、私たちの使う温度表記にはもう一つ別の表記があるのを知っていますか。それが華氏です。日本では摂氏(セルシウス温度)が使われるので、一般的ではありませんが、アメリカなど海外は華氏を使っているところもあります。

摂氏から華氏へ変換もできるので、華氏から絶対温度への変換も可能です。摂氏と華氏の関係については別の記事で詳しく紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。

絶対零度とは絶対温度の0Kのことでした。0Kでは、分子や原子の熱運動が完全に停止するため、絶対温度にはマイナスの値は存在しません。

しかし、量子力学では絶対零度でも分子の揺らぎが残っており、零点振動をしていると考えられているため、絶対零度以下の温度の存在を探る研究もおこなわれています。実際に、絶対零度以下の温度を発現したという研究結果も報告されていますが、まだまだ研究段階の現象です。

絶対零度付近を扱う低温物理学とは

image by iStockphoto

ここまで、絶対温度について解説してきました。

ここからは、絶対零度付近で起きる現象について解説していきます。絶対零度付近では、原子や分子の熱運動が停止した状態に近づくため、常温では起こらない不思議な現象が観察できるんです。

絶対零度付近の極めて低い温度を極低温といい、極低温で起きる不思議な現象を専門に扱う学問を低温物理学といいます。極低温付近で起きる不思議な現象の代表例が「超伝導」と「超流動」です。超電導は別で解説している記事があるので、そちらをチェックしてみてください。

液体ヘリウムが起こす超流動とは

ここからは、超流動現象について簡単に紹介していきます。まずは、超流動現象がどのような現象なのかチェックしていきましょう。

超流動とは、極低温において液体ヘリウムの流動性が高まり、容器の壁面をつたって外へ溢れ出たり、原子一個が通れる程度の隙間に浸透したりする現象

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E6%B5%81%E5%8B%95

\次のページで「超流動状態の液体ヘリウムは容器の壁をよじ登る?」を解説!/

超流動状態の液体ヘリウムは容器の壁をよじ登る?

Helium-II-creep.svg
Design: Aarchiba; SVG rendering: Júlio Reis - Redrawn after Aarchiba's Helium-II-creep.png, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

超流動は液体ヘリウムが起こす特徴的な挙動のことを指しています。まずヘリウムは、4K(-269℃)で気体から液体へ相転移し液体ヘリウムに変化し、さらに冷却された約2K(-271℃)で超流動状態へ転移が起きるんです。

この時、液体ヘリウムが不思議な挙動を示します。超流動状態になった液体へイルムは粘性がゼロになるため、容器の側面を勝手によじ登って外へこぼれてしまうんです。超流動状態の液体ヘリウムは、ヘリウム同士の分子間相互作用よりも容器壁面との相互作用が強く、容器表面と次々相互作用することで、壁面をよじ登っていくことができます。

この現象は、量子効果を視覚的に確認できる非常に重要な現象です。極低温に近づくほど、「量子力学の世界が視覚的に見えるようになる」といってもいいかもしれません。

絶対温度とセルシウス温度の関係、絶対零度付近で起きる不思議な現象を解説

今回は「絶対温度と絶対零度の関係」と「セルシウス温度から絶対温度への変換方法」を解説しました。

化学や物理の問題では、ほとんどの場合絶対温度を使って計算を進めていきます。そのため、セルシウス温度と絶対温度の変換はスラスラできるようにしておきましょう。

また、極低温下で起きる不思議な現象についても紹介しました。極低温下では、「超流動」「超伝導」といった、常識が通用しない現象が起こります。

極低温下で起きる現象を扱う低温物理学は量子力学と関係の深い学問です。まだ研究段階の部分も多くありますが、気になったら、ぜひ調べてみてください。

" /> 絶対温度とは?セルシウス温度への変換や絶対零度との関係も理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
化学原子・元素古典力学熱力学物理物質の状態・構成・変化理科

絶対温度とは?セルシウス温度への変換や絶対零度との関係も理系ライターがわかりやすく解説

今回のテーマは「絶対温度」です。

普段の生活の中で温度は摂氏(℃)で表記されている。摂氏はセルシウス温度と呼ばれているぞ。また、温度には別の温度があるのを知っているか?それが華氏(℉)です。

日常生活でも摂氏と華氏の2種類の温度表記がありますが、化学や物理の世界では他の温度がある。それが絶対温度です。

今回は化学や物理の世界で当たり前に使われる「絶対温度とはどのように定義されるのか」そして、「セルシウス温度と絶対温度の関係」を物理に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

大学院を修了するまで、研究に明け暮れた理系ライター。目の前で起きた現象を深掘りすることが大好きで、化学や物理など幅広く勉強している。現在は化学メーカーで技術職として働きながら、化学や物理の楽しさを発信していく。

絶対温度とは

まずは、絶対温度とはどういう意味でしょうか。絶対温度とは、「熱力学に基づいて定義される温度」のことです。絶対温度を詳しく紹介する前に、絶対零度について解説していきます。

原子や分子の熱運動が完全に止まる絶対零度とは

image by iStockphoto

「絶対零度」という言葉は聞いたことがある方も多いと思います。目には見えませんが、原子や分子は常に振動しながら運動しているんです。これを熱運動と呼びます。

熱運動が完全に停止していまう温度のことを絶対零度と呼び、絶対零度をゼロの基準にして決めた温度が絶対温度です。絶対温度の単位はKを使って表し、ケルビンと読みます。つまり、絶対零度は0Kというわけです。

また、古典力学では、絶対零度で分子の持つエネルギーは最低になり、原子や分子の熱運動が完全に停止すると考えられます。しかし、量子力学の世界では、原子や分子の揺らぎが残るため、絶対零度でもゼロ点振動していると考えられているんです。

教科書では古典力学の考え方に基づいて絶対温度は説明されているので、ここからも古典力学の考え方に基いて解説していきます。

温度は原子や分子の熱運動で決まる

image by iStockphoto

そもそも、温度とはどうやって決まるのでしょうか。絶対零度よりも温度が高ければ、原子や分子は常に振動し、運動している状態ですよね。温度や熱の正体は熱運動のエネルギーなんです。

もちろん、カチコチに凍った氷も分子レベルで見ると分子は動き回っています。なので、氷の温度は絶対零度よりも高温というわけですね。そして、熱運動が小さくなり、分子の動きが完全に止まったときの温度が絶対零度です。

ちなみに、絶対零度は分子の熱運動が完全になくなる温度なので、すべての原子・分子で同じ温度を示します。水の融点と二酸化炭素の融点は違う温度ですが、水も二酸化炭素も分子の熱運動が完全に停止する絶対零度は同じ温度(0K)です。

セルシウス温度と絶対温度はお互いに変換できる

セルシウス温度と絶対温度はお互いに変換できる

image by Study-Z編集部

私たちの生活では、温度は基本セルシウス温度を使います。セルシウス温度は、もともと水の凝固点を0度、沸点を100度として定義されていました。私たちにとって、水は最も親しみのある物質といっても過言ではありません。水の沸点と融点から定義したセルシウス温度はとてもなじみやすいですよね。

しかし、物理や化学の世界では絶対温度を使います。セルシウス温度と絶対温度はお互いに変換できることを覚えておいてください。

絶対温度をT[K]、セルシウス温度をt[℃]とすると、T(K)=t(℃)+273.15という式で表すことができます。ちなみに、現在の日本の計量法でセルシウス温度は、「ケルビンで表した熱力学温度の値から273.15を減じたもの」と定義されているんです。

\次のページで「摂氏と華氏と絶対温度もお互いに変換可能」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: