この記事ではぼたもちとおはぎの違いについてみていきます。2つとも春や秋の彼岸にお供えするあんこを使った和菓子として知られていますね。食べたことのある人も多いのではないか。しかし、同じような味や見かけで具体的な違いについてはよく分からないかもしれませんね。今回はおいしいあんこの和菓子について菓子作りを趣味としていた祖父を持つライター海辺のつばくろと一緒に解説していきます。

ライター/海辺のつばくろ

菓子屋で修行した経験のある祖父を持ち、一緒におはぎとぼたもちを作ったことのある文学部卒ライター。

ぼたもちとおはぎ違いはどこにある?

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ぼたもちもおはぎも、お彼岸にお供えをする和菓子です。菓子店やスーパーで買う方もいますよね。もしくは、炊飯器などで炊いたもち米を、すりこ木などで軽くつぶして丸めて作るご家庭もあるのでは。おはぎもぼたもちも小豆のあんこで包むのが一般的です。現代では見た目にはあまり違いがありません

地域によっては、うぐいす餡やずんだ(枝豆)餡などの緑色のあんやきなこ、ごまをまぶしたものもあるようです。ただ、おはぎやぼたもちという名前で呼ばれることに変わりはないですね。

春と秋のお彼岸によって呼び名が違う

ぼたもちとおはぎは、春と秋のお彼岸によって呼び名に違いがあるのです。もともとは女房詞(にょうぼうことば:御所に仕えた女房達が使った語)で、それぞれ春と秋のお彼岸の頃に盛りを迎える花の名前がついているのとのこと。きれいな表現ですね。現在は見た目はあまり変わらないようですが、昔は花の咲き方によってこしあんと粒あんを使い分けたこともあるそうです。もちろん大きさも少し違っていたようですよ。

春のお彼岸:ぼた餅(牡丹餅)

春のお彼岸はぼたもち。漢字で「牡丹餅」と書きます。春のお彼岸の時期は、牡丹の花が見頃。牡丹は大きな丸い花を咲かせるので、昔はぼたもちを花の形に見立て、現在よりも少し大きなサイズで円形に形作られていたようです。あんこはこしあんを使います。なぜこしあんが使われるかというと、小豆の収穫は秋に行われるため。あんこを作るには、皮は固くてつぶしてこさないと食べにくいということです。

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秋のお彼岸:おはぎ(萩の花)

秋のお彼岸はおはぎ。漢字で「御萩」です。秋のお彼岸の時期は、萩の花が見頃。萩は小さいピンクの花を咲かせます。

小豆は秋に収穫できるので、秋のお彼岸の時は小豆の皮は柔らかく粒があっても食べやすいとのこと。そのまま粒が残っていても食べられるので、粒あんを使いました。粒あんのつぶを萩の小さな花に見立てておはぎという名前に。サイズはぼたもちよりも二まわりほど小さく楕円形(俵のような形)に作られたようです。

お彼岸のお供えにするのはなぜ?

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ぼたもちやおはぎはなぜお彼岸にお供えとして使うのでしょうか。小豆の赤紫色が魔除けの目的で使われたという説。真西に死者の世界があると考えられていて、昼と夜の時間が同じお彼岸の中日(春分の日や秋分の日)が最も生きている世と距離が近いと考えられていました。そのため、先祖の無事を祈るために魔除けとしてぼたもちやおはぎをお供えしたといわれています。

もう1つの説は太陽を五穀豊穣の神として信仰したという説。春と秋のお彼岸を最も太陽と近い時期と考えて、神への感謝の気持ちを伝えるために縁起の良いぼたもちとおはぎをお供えしたともいわれています。

夏や冬に作る場合の呼び名

ぼたもちとおはぎの別名は、夏と冬の季節もあります。また、季節に関係なく使える呼び方もあるのです。現在ではすっかりすたれてしまいましたが、どのような名前でしょうか。

呼び名の由来:餅つきのように音がしない

夏と冬、季節に関係なく使える場合の別名の由来は、見た目や材料などはおはぎやぼたもちと変わりはありません。呼び方の由来は、もち米をすりこ木などでついてつぶすことからきています。餅つきをする場合、家の外でぺったんぺったんと音を立ててつきますね。つく人、手返しをする人など人手も多く必要とし、賑やかで周囲の人に知られてしまうことも。

一方、ぼたもちやおはぎを作るには家の中ででき、音をたてずに静かにつぶせるためご近所に知られることはほぼないでしょう。

夏:夜船

夏の季節の別名は「夜船」(よふねよぶね)。夜中に船着き場や港に到着する船のこと。なぜ夜船と付いたかというと、人が寝静まっている夜に近所迷惑にならないように静かに船が入るので、「近所の人もいつ(船が)着いたかが分からない」ところから由来しています。

たしかに、ぼたもちとおはぎは餅つきとは違い、家の中で音もせずにご飯をついてつぶせますね。「(ぼたもちやおはぎを作るのに)いつご飯をついたのかわからない」から近所の人に気づかれません。

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冬:北窓

冬の季節の別名は「北窓」(きたまど)。文字通り北側を向いている窓のことです。これは「(北向きの窓からは)月が見られない」ところからきています。ぼたもちやおはぎのご飯は「(餅つきのように)つかない」で作りますよね。「つかない」を「月がない」という言葉にかけているのです。一種の言葉遊びからきた呼び名ですね。

季節に関係なし:隣知らず

季節に関係なく使える別名としては「隣知らず」(となりしらず)があります。もう、解説の必要はないかもしれませんね。「(音を立てないで作れるので、)いつご飯をついてお菓子を作っているか隣近所にも知られていない」というところから、名前が付きました。遊び心が感じられる表現です。

おはぎとぼたもちになぜ物騒な名前?

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おはぎやぼたもちには、物騒な名前が付いている地域もあるのをご存知でしょうか。その名も「皆殺し(みなごろし)」と「半殺し(はんごろし)」。どのようなシーンで使われるのか、恐ろしいですよね。

もち米の粒があるかないかによる

はんごろしみなごろしは、どの程度もち米の粒が残っているか、つぶれた具合によって変わります。「殺し」は犯罪に関係がなく、この場合はご飯をつぶすこと。地域によっては、あんこの粒のあるなしの状態(つぶあんこしあんか)を指すこともあるようですね。しかし、もち米の粒の状態から判断する地域のほうが多いということです。

1.みなごろし:中のご飯がほとんどつぶれている状態

みなごろしとは、中のご飯がほとんどつぶれている状態。もしくは、こしあんのように粒がほとんどないあんこをいいます。

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2.はんごろし:粒が半分残り、半分はつぶれている状態

はんごろしは、ご飯の粒が半分程度残り、半分程度はつぶれている状態をいいます。あんこであれば粒あんのことですね。

一部地域でのぼたもちとおはぎの分け方

一部の地域での例外として、中に包むお米の種類でぼたもちとおはぎを使い分けることも。もち米はぼたもちうるち米(一般的な白米)をおはぎというそうです。また、あんこで包んだものをぼたもちきなこをまぶしたものをおはぎというところも。地域によって呼び名はそれぞれ。同じ日本でも面白いですね。

ぼたもちとおはぎは春と秋の彼岸で呼び名が違うだけ(一部地域を除く)

ぼたもちとおはぎは、一部地域を除いて春と秋との彼岸で呼び名が違うだけです。それぞれの時期に咲く花から取られていて、昔はサイズや使われるあんこに違いがありましたが、現代ではほぼ同じような意味で使われます。夏や冬、季節に関係なく使える呼び名もありますが、今はほとんど使われていません。

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3分で分かるおはぎとぼたもちの違い!お彼岸や季節ごとの名前・少し怖い表現の呼び名も文学部卒ライターが詳しくわかりやすく解説

この記事ではぼたもちとおはぎの違いについてみていきます。2つとも春や秋の彼岸にお供えするあんこを使った和菓子として知られていますね。食べたことのある人も多いのではないか。しかし、同じような味や見かけで具体的な違いについてはよく分からないかもしれませんね。今回はおいしいあんこの和菓子について菓子作りを趣味としていた祖父を持つライター海辺のつばくろと一緒に解説していきます。

ライター/海辺のつばくろ

菓子屋で修行した経験のある祖父を持ち、一緒におはぎとぼたもちを作ったことのある文学部卒ライター。

ぼたもちとおはぎ違いはどこにある?

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ぼたもちもおはぎも、お彼岸にお供えをする和菓子です。菓子店やスーパーで買う方もいますよね。もしくは、炊飯器などで炊いたもち米を、すりこ木などで軽くつぶして丸めて作るご家庭もあるのでは。おはぎもぼたもちも小豆のあんこで包むのが一般的です。現代では見た目にはあまり違いがありません

地域によっては、うぐいす餡やずんだ(枝豆)餡などの緑色のあんやきなこ、ごまをまぶしたものもあるようです。ただ、おはぎやぼたもちという名前で呼ばれることに変わりはないですね。

春と秋のお彼岸によって呼び名が違う

ぼたもちとおはぎは、春と秋のお彼岸によって呼び名に違いがあるのです。もともとは女房詞(にょうぼうことば:御所に仕えた女房達が使った語)で、それぞれ春と秋のお彼岸の頃に盛りを迎える花の名前がついているのとのこと。きれいな表現ですね。現在は見た目はあまり変わらないようですが、昔は花の咲き方によってこしあんと粒あんを使い分けたこともあるそうです。もちろん大きさも少し違っていたようですよ。

春のお彼岸:ぼた餅(牡丹餅)

春のお彼岸はぼたもち。漢字で「牡丹餅」と書きます。春のお彼岸の時期は、牡丹の花が見頃。牡丹は大きな丸い花を咲かせるので、昔はぼたもちを花の形に見立て、現在よりも少し大きなサイズで円形に形作られていたようです。あんこはこしあんを使います。なぜこしあんが使われるかというと、小豆の収穫は秋に行われるため。あんこを作るには、皮は固くてつぶしてこさないと食べにくいということです。

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