柿は秋になるとスーパーの店頭に手頃な値段で並び、時には民家の庭先でも目にする、我々にとってごく一般的な果物です。ですが、柿の品種の違いやおいしい柿の特徴まで知っているでしょうか?どれもが同じ「オレンジ色の丸っこいフルーツ」じゃないんです!この記事では、旬や産地といった柿の良く知られる情報をおさらいしながら、果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。生まれ育った実家には大きな柿の木があり、柿は小さい頃から慣れ親しんできた果物。

柿の旬と産地

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柿は秋の味覚として有名ですが、正確には何月頃が一番収穫される時期なのでしょうか?また、柿の有名な産地の中で、一番収穫量の多い地域はどこなのでしょうか?身近だからこそ、普段あまり気に留めない、柿の生産時期や育てやすい気候についておさらいしながら詳しく解説します。

旬は秋

柿は秋の味覚のイメージ通り、収穫最盛期は10月~11月頃です。年間の生産量の約70%がこの2か月に収穫されています。秋はまさに旬ですね!

収穫期間全体で見てみると、ハウス栽培など収穫の早いものが少しずつ8月頃から出回り、早生の品種が9月中旬頃から収穫され始めるといよいよ旬を迎えます。その後、産地や品種により時期を少しずつずらしながら、12月頃までスーパーなどで見かけることができますよ。

柿の名産地

日本各地で栽培される柿ですが、北海道で育てられることはほとんどありません。また、柿は温暖な気候を好み、暖かい地方では甘柿、比較的寒い地方では渋柿が主に栽培されます。気温が低いと甘くなりにくいようです。それでは柿の生産高を見てみましょう。

地域生産量全体における生産高の割合その地域の平均気温
和歌山県47520トン21%16.7℃
奈良県29393トン13%14.9℃
福岡県18646トン8%17.1℃
岐阜県14566トン6%16.1℃
愛知県13100トン5%16.1℃

表から分かる通り、生産高トップはミカンやウメ・モモなど果物の産地として名高い和歌山県です。同時に、年間の平均気温を見てみると、やはり、15℃前後の温暖な地域に生産量が高いようですね。

また、和歌山県が全体の21%、次いで奈良県が13%、以下が1ケタ台というところから、柿は独占的に栽培する地域はなく、全国各地で広く栽培されていることがうかがえます。

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市場の相場は?

全国のスーパーなどで売られている柿の価格の平均は1㎏あたり708円、東京都中央卸売市場の富有柿の平均は1㎏あたり387円と言われています。柿が1個200gとして、1個当たり80円~140円ですね。柿は比較的手が届きやすい価格であることが、我々に馴染みのフルーツである一因かもしれません。

反対に、ギフト用で個包装され化粧箱に詰められた高級ブランド柿も存在します。比較的日持ちし、時期的にもお歳暮などに好まれるようです。

おいしい柿の見分け方は?

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スーパーで並んだ柿の実を見てみると、正直どれもきれいで、あまり変わりがないように見えますが...せっかくなら一番おいしい柿を食べたいですよね。ここでは、知ってるようで知らないおいしい柿の見分け方を解説します。

柿の選び方

おいしい柿を見分ける時は柿のヘタに注目しましょう!柿にとってヘタはとっても重要です。成長の途中でヘタが欠けてしまうと、養分が十分に行き届かず、甘くならなかったり大きい実にならなくなってしまいます。その分、ヘタが大きいと、果実も大きくなるのです。では、おいしい柿のヘタの特徴を挙げてみましょう。

1.形がきれいで4枚そろっている
2.果実に隙間なく張り付いている
3.なるべく緑色のもの

また、果実部分は、「ツヤがあって、色が濃く、形が整っていて大きく重みがあるもの」が良い柿とされています。軽い場合、果肉がスカスカしている場合があるようです。出来れば手に取って確かめてみましょう。

ゴマはおいしい証

甘柿を切ってみると、黒い斑点がある場合があります。この黒い斑点は「柿のゴマ」と呼ばれ、柿の渋み成分であるタンニンが不溶化して固まったものです。そのため渋みを感じさせず、逆に渋が抜けて甘くなっている証拠ですよ。西日本で採れる柿に多いとされています。

中にはカットした断面がゴマだらけで果肉が黒く見えるものも。とっても甘い柿ですよ!

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表面の白い粉って?

柿の表面に白い粉のようなものがついている場合があります。これはブルームといって、柿の油脂成分からできている天然のワックスのようなものです。このブルームが果実を覆うことで、果肉の乾燥や菌の侵入を防いでいます。ブドウやリンゴなどにも見られることがありますね。

このブルームがしっかりついている柿は新鮮でおいしい果実です。残留農薬などではないので、保存する場合はそのままでOK。

柿の品種

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現在では約1000種類ほどあるとされる柿の品種は、大きく「甘柿」と「渋柿」に分けられます。そこからさらに、「完全甘柿」「不完全甘柿」「完全渋柿」「不完全渋柿」と4つに分けることができるのです。大雑把に言うと「成熟したとき、どう甘くなるか」の違いがあります。

では、それぞれの種類別にどんな品種があるのか、種類の特徴と一緒に紹介していきましょう。

1.完全甘柿:富有・次郎・太秋

完全甘柿は、種があってもなくても渋みが抜けて甘くなる品種です。

代表的な品種が、スーパーなどでもよく目にする「富有」。「富有」は甘柿の生産量の中でも約60%、柿全体の生産量でも25%を占めており、その知名度と味わいの良さから「柿の王様」と呼ばれています。日持ちが良く、高級な富有は贈答用にも。果肉が柔らかく、ジューシーな柿です。

ほかには「次郎」も有名ですね。次郎柿は江戸時代から栽培されている歴史の古い品種です。四角い形をしていて、果汁は少なめでやや固めの食感が特徴でしょう。「太秋」比較的新しい品種で、大ぶりで食べ応えのある人気の柿です。表面のひび割れ(条紋)が多いほど甘いそうですよ!サクサクした独特の歯ざわりの果肉を持ち、果汁が多くまろやかな甘さがあります。

2.不完全甘柿:筆柿・西村早生

不完全甘柿は、種が多く入ると甘くなる柿です。同じ木でも、種の量によって甘い実と渋い実がなることもあります。種ができる際にゴマの入りやすい品種です。

おすすめは「筆柿」と「西村早生」。「筆柿」はその名の通り、筆の先に似た形が特徴的です。小ぶりサイズで、食べると歯ごたえがあります。「西村早生」は甘柿の中で最も早く旬を迎える品種です。果肉はやや硬めで、高い糖度でありながらさっぱりした味わいを楽しめます。断面には一面にゴマの斑点が見え、果肉の色が黒っぽいのが特徴です。

3.不完全渋柿:平核無・紀の川柿・刀根早生

不完全渋柿は、種の周辺だけ甘くなる柿です。甘くなるのは種の周りだけで、果実全体は渋いままのことが多いようですよ。

代表的な品種は、「富有」に次いで生産高2位の「平核無」。その名の通り、平たい形でもともと種(核)がありません。平核無は味も食感もバランス良く、幅広い層に食べやすい柿です。おけさ柿・庄内柿という名で出回ることもあります。

また、同じ平核無でありながら、独特の渋抜き製法で生まれる「紀の川柿」も人気です。断面はゴマが一面に入り真っ黒。濃厚な甘みと意外にもシャキッとした食感を味わえます。栽培に手間がかかり、生産量が少ないことから一般的な平核無よりも高値で販売される高級ブランド柿です。ほかには生産高3位の「刀根早生」があります。「刀根早生」は「平核無」から生まれた品種で、形・食感共によく似ているそうです。名前に付いている通り早生種なので、平核無より2週間ほど早く旬を迎えます。

4.完全渋柿:市田柿・西条

完全渋柿は、種が入っても渋いままの柿の品種です。干し柿専用として作られることも多いですが、渋みはあっても糖度は高いので、渋抜きすれば生食でも甘く食べられます。お店で生食用として出荷されるものはしっかり渋抜きしてあるので、安心して食べられますよ。

代表的な品種は「市田柿」。干し柿として有名ですね。ほかには、広島県原産の珍しい柿「西条」。やや小さめサイズで縦長の4本の溝が特徴です。渋抜きをすると非常に甘くなるのですが、日持ちが悪いので注意しましょう。

\次のページで「こんな柿は要注意!」を解説!/

こんな柿は要注意!

ここまでおいしい柿について解説してきましたが、反対に食べられない柿はどのような特徴があるでしょうか?柿は熟すほどに柔らかくなり、さらに完熟を通り越すと腐り始めます。柔らかく熟した柿と腐敗し始めた柿のボーダーラインは分かりづらいですが、主なポイントは下記の3つです。

1.酸っぱい臭いがする
2.水分が出ている
3.カビが生えている

柿は熟すと少し甘い香りがありますが、本来あまり香りがしない果物です。酸っぱい臭いがあれば完全に腐っている状態。食べずに廃棄しましょう。

また、熟して柔らかいだけでなく、水分が出ている場合も要注意です。熟しすぎて腐り始めている柿は果肉が溶けてドロドロになり、果皮の割れ目から水分が出てきます。さらに、皮の部分にカビが見える場合は、残念ながら中の果肉もカビている場合が多いです。いずれも、切らなくてもわかる腐敗の特徴ですね。これらのサインが見えたら、食べずに廃棄しましょう。

完熟のトロっとした柿がお好きな方も多いですよね。かなりブヨブヨするまで熟しきっていても、例に挙げたような特徴がなければ食べられます。しかし、追熟の進んだ柿は一晩で食べられなくなってしまうことも。食べる前には臭いや見た目をちゃんと確認してからいただきましょう。腐った柿は腹痛や食中毒を起こす恐れがありますよ。

見た目は似てても確かな違い!食べ比べて秋を味わおう!

柿は大体どれもオレンジ色で丸っこい果実です。しかし品種によって、形・断面・食感・風味など食べ比べて確かに分かる上品な違いがあります。「渋柿だ」と思って味わう平核無や西条は、その甘みに先人たちの知恵と現代の技術を感じ取り、感慨深いものがありますね。ぜひ秋には柿を手に取って、品種の違いも気にかけながら溢れる甘みを味わってください。

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家庭科

おいしい柿の選び方って?柿の旬や品種も果物大好きパティシエが詳しくわかりやすく解説

柿は秋になるとスーパーの店頭に手頃な値段で並び、時には民家の庭先でも目にする、我々にとってごく一般的な果物です。ですが、柿の品種の違いやおいしい柿の特徴まで知っているでしょうか?どれもが同じ「オレンジ色の丸っこいフルーツ」じゃないんです!この記事では、旬や産地といった柿の良く知られる情報をおさらいしながら、果物大好きパティシエのmei.mと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/mei.m

15年近くウェディングケーキを作ってきたパティシエで、現在は2児のママ。フルーツが大好きで、味見と称して様々な果物を食べてきました。生まれ育った実家には大きな柿の木があり、柿は小さい頃から慣れ親しんできた果物。

柿の旬と産地

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柿は秋の味覚として有名ですが、正確には何月頃が一番収穫される時期なのでしょうか?また、柿の有名な産地の中で、一番収穫量の多い地域はどこなのでしょうか?身近だからこそ、普段あまり気に留めない、柿の生産時期や育てやすい気候についておさらいしながら詳しく解説します。

旬は秋

柿は秋の味覚のイメージ通り、収穫最盛期は10月~11月頃です。年間の生産量の約70%がこの2か月に収穫されています。秋はまさに旬ですね!

収穫期間全体で見てみると、ハウス栽培など収穫の早いものが少しずつ8月頃から出回り、早生の品種が9月中旬頃から収穫され始めるといよいよ旬を迎えます。その後、産地や品種により時期を少しずつずらしながら、12月頃までスーパーなどで見かけることができますよ。

柿の名産地

日本各地で栽培される柿ですが、北海道で育てられることはほとんどありません。また、柿は温暖な気候を好み、暖かい地方では甘柿、比較的寒い地方では渋柿が主に栽培されます。気温が低いと甘くなりにくいようです。それでは柿の生産高を見てみましょう。

地域生産量全体における生産高の割合その地域の平均気温
和歌山県47520トン21%16.7℃
奈良県29393トン13%14.9℃
福岡県18646トン8%17.1℃
岐阜県14566トン6%16.1℃
愛知県13100トン5%16.1℃

表から分かる通り、生産高トップはミカンやウメ・モモなど果物の産地として名高い和歌山県です。同時に、年間の平均気温を見てみると、やはり、15℃前後の温暖な地域に生産量が高いようですね。

また、和歌山県が全体の21%、次いで奈良県が13%、以下が1ケタ台というところから、柿は独占的に栽培する地域はなく、全国各地で広く栽培されていることがうかがえます。

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