にんにくたっぷりの焼肉、餃子にラーメン…うまそうな香りを想像するだけでたまらないし、食べたら疲れがふっ飛びそうだよな!今回はそんなにんにくについてみていこう。調べてみると、元気になるというのは決して気のせいではなく、栄養学に基づいた理由があるようです。10年以上食育指導に関わってきた元保育士ライター榎木えふと一緒に解説していきます。

ライター/榎木えふ

現在は我が子の育児を楽しむ元保育士。身体にいいことしているなと嬉しくなるので、食材の栄養成分や効果を調べながら食事するのが好き。長らく食育に携わった経験を踏まえて食に関する知識をわかりやすく発信していく。

にんにくってどんな食べ物?

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まずはにんにくの基本的な情報をおさえておきましょう。特徴や歴史について解説します。

にんにくの特徴

にんにくは、玉ねぎと同じように主に鱗茎(りんけい)と呼ばれる球根の部分を食べる食材です。うろこのような形の鱗片(りんぺん)が6~10個程度集まっていて、外側が白い皮に覆われています。何と言っても、大きな特徴は強い香りがすることでしょう。生では刺激の強いにおいですが、火を通すと食欲をそそる香ばしい香りが漂います。

にんにくは野菜の仲間

にんにくは淡色野菜に分類される野菜の仲間です。ニラやネギと同じ、ユリ科ネギ属の植物に分類されます。ネギ属の植物は特有のにおい成分を持っているため強い香りがありますよ。

昔は野草の野蒜(のびる)やネギに似た山菜である行者にんにく(小蒜)と区別するために大蒜(おおびる)とも呼ばれていました。蒜(ひる)とはネギを指す言葉です。にんにくと呼ばれるようになったのは仏教用語で我慢を意味する「忍辱(にんにく)」が由来という説が有力で、強烈なにおいに耐えながら食べるものと言われていたことによるようですよ。

にんにくの歴史は?

にんにくの原産地は中央アジアとも西アジアの地中海沿岸とも推定されていますが、紀元前の古代エジプトではすでににんにくが利用されていて、ピラミッドを作る労働者の健康維持と疲労回復のためににんにくが与えられていたことが古文書に記されています。

日本へはインドや中国・朝鮮半島を経て飛鳥時代以降に伝わったと言われていて、西暦400年頃の古事記や奈良時代の万葉集にはすでににんにくの使い方やおいしい食べ方が書かれているようです。一般市民に広く食べられるようになったのは明治時代以降とされています。

にんにくはどのように利用される?

にんにくは食用として料理に使われることはもちろんですが、大蒜(たいさん)と言って健胃・発汗・利尿・整腸の漢方薬としても古くから使われています。トウガラシと同様に強いにおい成分によって害虫・害獣を寄せ付けない効果を目的とした使われ方もありますよ。

また、にんにくの強い匂いは世界中で魔除けとして使われています。昔は病気というものが魔物や悪魔のしわざだと考えられていたので、抗菌作用が高いにんにくの効果が病気を追い払う=魔除けと考えたことが由来と言われていますよ。吸血鬼がにんにくを嫌うという話も有名ですね。

にんにくに含まれる栄養素や成分は?

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にんにくは水分が60%以上含まれていて主要な成分は炭水化物です。スタミナがつく・滋養強壮によいと言われる栄養素が小さなひとかけらに詰まっているので、詳しくみていきましょう。

その1.ビタミンの中ではB6が豊富

にんにくのビタミンにはビタミンB1・B2、B6・E・Cが含まれていますが、中でも多く含まれているのはビタミンB6。タンパク質の分解を助けてエネルギーを作るためのビタミンなので、タンパク質をよく食べる人ほどビタミンB6は多く必要になります。免疫機能を正常に維持したり、皮膚や粘膜の健康を保つ作用もありますよ。

100gあたり1.53㎎のビタミンB6が含まれていて、ビタミンB6が多く含まれる食べ物のランキングでは1位から10位までのうち4つがにんにくやその加工品であるというデータもあるほどです。

その2.ミネラル類は無難

骨や歯を丈夫にするカルシウム、カルシウムの吸収を助けるリン、体内の水分とナトリウムの排出に関わるカリウムなどが含まれていますが、特出して多いものではありません。にんにくだけをたくさん食べることも少ないので、他の食材と合わせてバランスをとりましょう

\次のページで「その3.にんにくのにおい成分アリシン」を解説!/

その3.にんにくのにおい成分アリシン

アリシンはにんにく独特のにおいのもとになる成分です。アリル化合物と呼ばれるもののひとつでビタミンB1と結合しやすいという特徴があります。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えてくれる栄養素なので、この作用によって吸収が高まり疲労回復効果に期待ができるのです。これこそがスタミナがつく食材と言われる理由。アリシンは油と一緒に調理することでその作用が高まります。

また、アリシンは加熱によってスコルジニンと呼ばれる有効成分に変化し、毛細血管を拡張して新陳代謝によい影響を与えます

アリシンはアリインというアミノ酸のかたちで細胞の中に溶け込んでいるため、もとは無臭です。細胞が傷つけられるとアリインがアリナーゼという分解酵素と結びついて分解され、その過程でにおいのもとになるアリシンが作られます。そのため、にんにくを切ったり潰したりすると香りが立ち、刻む・すりおろすなど細かくすることでよりにおいが強くなりますよ

その4.整腸作用があるオリゴ糖

オリゴ糖は糖質の一種で、消化吸収がされにくく大腸まで届くという特徴があります。腸内で健康に良い働きをするビフィズス菌に代表される善玉菌の栄養源となり、善玉菌の数を増やしてくれますよ。このオリゴ糖がにんにくには豊富。善玉菌には便通を整える作用もあるため、結果的に便秘の解消に繋がるのです。オリゴ糖は他にも大豆などの豆類や玉ねぎ、ブロッコリーやバナナなどに多く含まれていますよ。

にんにくの効能・健康効果

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にんにくが身体に与える影響を解説していきます。食べる以外での効果にも注目ですよ。

1.疲労回復

にんにくのにおい成分であるアリシンにはエネルギーを生み出し、疲労回復に欠かせないビタミンB1の吸収を高める効果があります。アリシンと結びついたビタミンB1は血液中に長く留まり吸収率もアップしているので、疲れにくい体づくりをサポートしてくれますよ。アリシンが加熱によって変化した成分スコルジニンも疲労回復に役立つとされています。

\次のページで「2.血行促進による体質改善」を解説!/

2.血行促進による体質改善

アリシンには血液をサラサラにする働き、ビタミンEには血管を拡張する効果があり、合わせて血行を促進して身体の隅々まで栄養を届ける働きが期待できます。これによって動脈硬化や血栓の予防効果が見込めますよ。また、全身の血流がよくなると手足の冷えを緩和し、冷えが原因のむくみの解消にも繋がるでしょう。

3.抗菌・殺菌・殺虫作用

にんにくの抗菌・殺菌作用は微生物やカビ・細菌などに対して有効であり、害虫を避ける・殺虫作用もあります。これらの秘密もアリシンという成分です。アリシンの作用は元はと言えばにんにくが自分の身を守る防衛機能。虫や動物に傷つけられることで強いにおいを発して敵を遠ざけ、傷や菌に侵された部分をアリシンの持つ殺菌作用で癒やしているというわけです。

この殺菌作用は私たちに身近なところにも活かされていますよ。例えばかつおのたたきをすりおろしにんにくと一緒に食べるのは食中毒防止の知恵なのです。

4.健胃・整腸作用

アリシンはさらに胃腸の動きを活発にし、胃液の分泌の促進・胃腸の調子を整える作用を持ち、食欲不振にも改善をもたらします。しかし、刺激の強い成分なので食べ過ぎは下痢や腹痛の原因になってしまいますよ。

にんにくパワーを知って食生活に取り入れよう!

食欲をそそる独特の香りで料理の風味付けに活躍するにんにくは、身体への素晴らしい作用が期待できる食材です。一度に多く食べるような食べ方はあまりしない食材ですが、たくさんの健康効果が含まれていると知っていると料理に取り入れるだけでお得な気持ちになりそうですね。

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家庭科

にんにくってどんな食べ物?スタミナがつくと言われる理由は?栄養・効能も元保育士がわかりやすく解説

にんにくたっぷりの焼肉、餃子にラーメン…うまそうな香りを想像するだけでたまらないし、食べたら疲れがふっ飛びそうだよな!今回はそんなにんにくについてみていこう。調べてみると、元気になるというのは決して気のせいではなく、栄養学に基づいた理由があるようです。10年以上食育指導に関わってきた元保育士ライター榎木えふと一緒に解説していきます。

ライター/榎木えふ

現在は我が子の育児を楽しむ元保育士。身体にいいことしているなと嬉しくなるので、食材の栄養成分や効果を調べながら食事するのが好き。長らく食育に携わった経験を踏まえて食に関する知識をわかりやすく発信していく。

にんにくってどんな食べ物?

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まずはにんにくの基本的な情報をおさえておきましょう。特徴や歴史について解説します。

にんにくの特徴

にんにくは、玉ねぎと同じように主に鱗茎(りんけい)と呼ばれる球根の部分を食べる食材です。うろこのような形の鱗片(りんぺん)が6~10個程度集まっていて、外側が白い皮に覆われています。何と言っても、大きな特徴は強い香りがすることでしょう。生では刺激の強いにおいですが、火を通すと食欲をそそる香ばしい香りが漂います。

にんにくは野菜の仲間

にんにくは淡色野菜に分類される野菜の仲間です。ニラやネギと同じ、ユリ科ネギ属の植物に分類されます。ネギ属の植物は特有のにおい成分を持っているため強い香りがありますよ。

昔は野草の野蒜(のびる)やネギに似た山菜である行者にんにく(小蒜)と区別するために大蒜(おおびる)とも呼ばれていました。蒜(ひる)とはネギを指す言葉です。にんにくと呼ばれるようになったのは仏教用語で我慢を意味する「忍辱(にんにく)」が由来という説が有力で、強烈なにおいに耐えながら食べるものと言われていたことによるようですよ。

にんにくの歴史は?

にんにくの原産地は中央アジアとも西アジアの地中海沿岸とも推定されていますが、紀元前の古代エジプトではすでににんにくが利用されていて、ピラミッドを作る労働者の健康維持と疲労回復のためににんにくが与えられていたことが古文書に記されています。

日本へはインドや中国・朝鮮半島を経て飛鳥時代以降に伝わったと言われていて、西暦400年頃の古事記や奈良時代の万葉集にはすでににんにくの使い方やおいしい食べ方が書かれているようです。一般市民に広く食べられるようになったのは明治時代以降とされています。

にんにくはどのように利用される?

にんにくは食用として料理に使われることはもちろんですが、大蒜(たいさん)と言って健胃・発汗・利尿・整腸の漢方薬としても古くから使われています。トウガラシと同様に強いにおい成分によって害虫・害獣を寄せ付けない効果を目的とした使われ方もありますよ。

また、にんにくの強い匂いは世界中で魔除けとして使われています。昔は病気というものが魔物や悪魔のしわざだと考えられていたので、抗菌作用が高いにんにくの効果が病気を追い払う=魔除けと考えたことが由来と言われていますよ。吸血鬼がにんにくを嫌うという話も有名ですね。

にんにくに含まれる栄養素や成分は?

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にんにくは水分が60%以上含まれていて主要な成分は炭水化物です。スタミナがつく・滋養強壮によいと言われる栄養素が小さなひとかけらに詰まっているので、詳しくみていきましょう。

その1.ビタミンの中ではB6が豊富

にんにくのビタミンにはビタミンB1・B2、B6・E・Cが含まれていますが、中でも多く含まれているのはビタミンB6。タンパク質の分解を助けてエネルギーを作るためのビタミンなので、タンパク質をよく食べる人ほどビタミンB6は多く必要になります。免疫機能を正常に維持したり、皮膚や粘膜の健康を保つ作用もありますよ。

100gあたり1.53㎎のビタミンB6が含まれていて、ビタミンB6が多く含まれる食べ物のランキングでは1位から10位までのうち4つがにんにくやその加工品であるというデータもあるほどです。

その2.ミネラル類は無難

骨や歯を丈夫にするカルシウム、カルシウムの吸収を助けるリン、体内の水分とナトリウムの排出に関わるカリウムなどが含まれていますが、特出して多いものではありません。にんにくだけをたくさん食べることも少ないので、他の食材と合わせてバランスをとりましょう

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