この記事では蕎麦の食べ方についてみていこう。蕎麦の食べ方は色々あるんですが、日本の文化独特のおもしろいメニューの名前や食べ方、雑学も多のです。知らないと危険なアレルギーの知識も含めて、10年以上食育指導に関わってきた元保育士ライター榎木えふと一緒に解説していきます。

ライター/榎木えふ

現在は我が子の育児を楽しむ元保育士。蕎麦屋ではおかわりをもらうほど蕎麦湯が好きだが、なかなか食べに行く機会がないので仕方なく自宅で蕎麦粉をお湯で溶いて飲んでいる。長らく食育に携わった経験を踏まえて食に関する知識をわかりやすく発信していく。

蕎麦の様々なメニュー!もりとざるの違いは?

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蕎麦はトッピングによって多くのメニューがあります。知らずにメニューの名前だけを見ると、一体何が入っているのか想像がつかないものもあるかもしれません。人気がある食べ方をいくつかみていきましょう。

1.もり蕎麦・ざる蕎麦・せいろ蕎麦

麺とつゆが別々になっていて、冷たいつゆに蕎麦をつけて食べる定番メニュー。シンプルな蕎麦にネギやワサビが薬味として添えられることも多いです。

2.かけ蕎麦・ぶっかけ蕎麦

麺につゆをかけた状態で提供される蕎麦です。丼の中でつゆに麺が入っているように見えますが、蕎麦はもともとが麺をつゆにつけて食べる料理なのでこのように呼ばれますよ。手早く食べられると江戸で人気になった食べ方です。

3.月見蕎麦

蕎麦の入った丼に生卵を落として、黄身を満月に見立てた蕎麦。黄身を崩して蕎麦に絡めながら食べます。つゆは温かいものが一般的です。

4.天ぷら蕎麦・かき揚げ蕎麦

天ぷらは冷たい蕎麦では別皿に盛られ、温かい蕎麦では丼に盛られてつゆに浸した状態で提供されることが多いです。サクサクの衣を楽しむもよし、衣につゆを吸わせてふわふわにして食べるのもよし。ボリューム満点の一品です。

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5.おろし蕎麦

大根おろしが添えられています。大根おろしを冷たいつゆに入れてつけつゆにして食べる場合と、つゆをかけて丼で食べる場合がありますよ。大根おろしに含まれるビタミンCは蕎麦に含まれるルチンの吸収率を高めるので、栄養的にもメリットのある組み合わせです。おろし蕎麦は福井県で有名な食べ方で、別名「越前そば」と呼ばれます。

6.とろろ蕎麦

長芋や自然薯(じねんじょ)、つくね芋などをすりおろしたとろろがかかっている蕎麦。ぬるぬるとしているため蕎麦をすするときののど越しが増し、出汁のきいた蕎麦つゆにもよく合う組み合わせが人気です。大正時代に東京の八王子、高尾山のふもとの蕎麦店が山登りの参拝客に精をつけてもらおうと提供したのが始まりと言われていますよ。

7.南蛮(なんばん)蕎麦

南蛮とはネギのことです。江戸時代に来日していた南蛮人(ポルトガル・スペイン人)が、健康のためにネギをよく食べていたことに由来していると言われています。鴨肉の入った鴨南蛮蕎麦も有名ですね。

8.たぬき蕎麦

天かすが入っている蕎麦がたぬき蕎麦です。天かす=天ぷらのタネを抜いたものであることから、「タネ抜き」という言葉がなまったと言う説が有力ですよ。

9.きつね蕎麦

油揚げが入った蕎麦がきつね蕎麦です。油揚げはキツネの好物だといわれているのでこの名がついているのですが、キツネの好む油揚げは薄切りの豆腐をあげたものではなく、ネズミを揚げたものであるという説があります。

もり蕎麦とざる蕎麦の違いは?

具のない冷たい蕎麦という見た目にほぼ違いのないもりとざるですが、昔は、ざるの方はよいかつお節で出汁をとっていた説や、つゆと蕎麦を一緒の丼で提供するぶっかけそばとの区別のためにもり蕎麦という名前がうまれ、他店との差別化のために蕎麦をのりと一緒にざるに盛りつけた店がでたのがざる蕎麦の発祥だという説もあります。

せいろそばも同じような蕎麦のメニューの名前ですが、昔は蕎麦と言えばつなぎなしで打った十割蕎麦が一般的で、切れやすく扱いにくい麺ゆえにゆでずに蒸籠(せいろ)で蒸して、せいろのまま提供していたことが由来と言われていますよ。

せいろ・もり・ざるの違いは元々器の違いだけというシンプルなものでしたが、現代ではさらにはっきりせず、ざる蕎麦にはのりが添えてあることぐらいの差となっているようです。

\次のページで「蕎麦の食べ方にまつわる豆知識」を解説!/

蕎麦の食べ方にまつわる豆知識

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日本人にとってなじみ深い蕎麦には、土地や時代の文化が反映された風習も現代まで多く残っていますよ。知っていると少しお得な豆知識を紹介します。

その1.蕎麦は音を立てて食べるのがマナー?

ゆで蕎麦は蕎麦の香りがわかりづらく、空気を一緒にすすり込んで鼻から抜くようにして食べることで蕎麦の香りをより感じられるとされる説があります。

他にも、江戸で流行った蕎麦は気取らず食べられる庶民の料理なのでマナーを気にしなくてもよかったという説、江戸の蕎麦屋には男性客が多く、音を立てて豪快にすすって食べるのが粋だと江戸っ子の間で流行ったという説もありますよ。現代では必ずしもすすって食べる必要はありませんし、すする音を不快に感じる人もいるので気負わずに美味しく食べるのがよいでしょう。

その2.蕎麦湯ってなに?

蕎麦湯は、蕎麦店などで食後に出されることの多い蕎麦のゆで汁です。白くてとろみがあり、少し粉っぽい蕎麦の風味が鼻に抜ける素朴な味わいがします。蕎麦湯には蕎麦の栄養成分が溶けだしているので飲んでみることをおすすめしますよ。ストレートで飲んだり、つゆで割って飲んだりもします。

蕎麦湯を飲むのは主に東日本の文化で、西日本の人は蕎麦湯自体を知らない、ゆで汁を飲むということ自体が信じられないという人もいるようですよ。蕎麦湯自体というより西日本ではそばよりうどん文化が栄えているためという説もあります。

その3.縁起をかつぐ年越し蕎麦・引っ越し蕎麦

年越し蕎麦は、蕎麦のように細く長く生きられるようにと健康長寿を願って大晦日に食べる蕎麦です。また、家族の縁が続くようにという説や、蕎麦は切れやすい食べ物であることから旧年の厄や嫌なものごと・人との縁を切るために食べるという説もあります。

引っ越し蕎麦は、現在では引っ越してきた本人たちが食べたり手伝ってくれた人たちにふるまうことが多いようですが、元々は「そば(側)に引っ越してきました」というしゃれを含んだご近所への挨拶品でした。

その4.東西で違うインスタントカップ蕎麦

実はうどんや蕎麦は日本の東西で味に違いがあり、それぞれの土地の人が別の土地の蕎麦を食べると「つゆの色が違う!」と驚くことも多いそうです。西日本では薄口しょうゆや昆布だしでとられた透き通ったつゆが一般的で、東日本のかつお出汁や醤油で作られたつゆでは色が濃く、つゆが黒いと表現されることもあります。

一部のメーカーのインスタントカップ蕎麦にはこのスープの東西の違いが反映されているので、食べ比べてみるとおもしろいですよ。

\次のページで「その5.世界ではソバはどんな風に食べられる?」を解説!/

その5.世界ではソバはどんな風に食べられる?

ソバの実が収穫できるソバは2大生産国であるロシアと中国の他にも全国で栽培されていますが、食べ方はその土地によって様々です。東ヨーロッパではソバの実をお粥のように炊いたカーシャ、ブリヌイと呼ばれる蕎麦粉入りのパンケーキがありますし、イタリアでは蕎麦粉のパスタが、フランスではガレットという蕎麦粉のクレープもあります。

韓国の冷麺にも蕎麦粉が使われていたり、ネパールでは蕎麦粉をお湯で練って作ったそばがきにカレーをかけたり…。国は違ってもソバは庶民にとって身近な料理に使われて伝統的に食べられています

ゆで蕎麦の保存方法・食べる時の注意点

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最後に、蕎麦の保存で最も悩むであろうたくさんゆでて余ってしまったときの保存の仕方と、蕎麦のアレルギーについてみていきましょう。

ゆでそばの保存方法は?

ゆでたあとの蕎麦は麺がくっつきやすいので一食分に分けてラップに包み、ジッパー付きの袋に入れて空気を抜いて冷蔵保存するのがよいでしょう。蕎麦は氷水でしっかり締めると伸びにくくなり、サラダ油を絡めておくとくっつきにくくなります

冷蔵保存と同じ方法をとった後に冷凍庫に入れることもできるのですが、冷凍すると食感が落ちるためおすすめはできません。冷蔵して早めに食べきるようにしてください。また、乾麺は茹でても伸びにくい特徴があるため比較的ゆでた後の保存に向いています。

アレルギーに要注意

蕎麦は小麦やピーナッツなどと同じくアレルギーの原因となる食品です。アレルギーの症状は咳やくしゃみ・じんましん・嘔吐などがあり、特に蕎麦アレルギーはアナフィラキシーショックという命に関わる重症となる傾向が高いと言われています。

また、他の食物アレルギーと違って歳をとることで耐性がつく可能性が低いため、子どもから大人まで患者がいるのが特徴。初めて食べる時は必ず病院が開いている時間に少量から食べるのが鉄則です。

アレルギーは医師に相談の上、原因となる蕎麦を食べない・近づかないことで身を守る必要があります。外食では蕎麦と同じかまでゆでられたうどん、蕎麦粉を使ったそばぼうろやかりんとうなどのお菓子・ソバの花のハチミツ・ソバ茶などの加工品にも要注意です。また、ソバ殻を中身に使った枕の使用でもアレルギーの危険性があるので使用しないようにしましょう。

日本人にとって身近な伝統食、蕎麦を味わおう!

庶民の食事として愛されてきた蕎麦は今ではコンビニでも手に入りインスタント麺もあるので、身近な食品というのは昔も今も変わりないのかもしれません。さらに調べてみると蕎麦の粋な食べ方や通な食べ方などが語られることもあって蕎麦の世界は実に奥深いのですが、いづれも必ず決まっているルールではありません。気負わずに気軽に蕎麦を楽しんでくださいね。

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蕎麦のおいしい食べ方は?ゆでたら保存できる?豆知識や注意点も元保育士がわかりやすく解説

蕎麦の食べ方にまつわる豆知識

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日本人にとってなじみ深い蕎麦には、土地や時代の文化が反映された風習も現代まで多く残っていますよ。知っていると少しお得な豆知識を紹介します。

その1.蕎麦は音を立てて食べるのがマナー?

ゆで蕎麦は蕎麦の香りがわかりづらく、空気を一緒にすすり込んで鼻から抜くようにして食べることで蕎麦の香りをより感じられるとされる説があります。

他にも、江戸で流行った蕎麦は気取らず食べられる庶民の料理なのでマナーを気にしなくてもよかったという説、江戸の蕎麦屋には男性客が多く、音を立てて豪快にすすって食べるのが粋だと江戸っ子の間で流行ったという説もありますよ。現代では必ずしもすすって食べる必要はありませんし、すする音を不快に感じる人もいるので気負わずに美味しく食べるのがよいでしょう。

その2.蕎麦湯ってなに?

蕎麦湯は、蕎麦店などで食後に出されることの多い蕎麦のゆで汁です。白くてとろみがあり、少し粉っぽい蕎麦の風味が鼻に抜ける素朴な味わいがします。蕎麦湯には蕎麦の栄養成分が溶けだしているので飲んでみることをおすすめしますよ。ストレートで飲んだり、つゆで割って飲んだりもします。

蕎麦湯を飲むのは主に東日本の文化で、西日本の人は蕎麦湯自体を知らない、ゆで汁を飲むということ自体が信じられないという人もいるようですよ。蕎麦湯自体というより西日本ではそばよりうどん文化が栄えているためという説もあります。

その3.縁起をかつぐ年越し蕎麦・引っ越し蕎麦

年越し蕎麦は、蕎麦のように細く長く生きられるようにと健康長寿を願って大晦日に食べる蕎麦です。また、家族の縁が続くようにという説や、蕎麦は切れやすい食べ物であることから旧年の厄や嫌なものごと・人との縁を切るために食べるという説もあります。

引っ越し蕎麦は、現在では引っ越してきた本人たちが食べたり手伝ってくれた人たちにふるまうことが多いようですが、元々は「そば(側)に引っ越してきました」というしゃれを含んだご近所への挨拶品でした。

その4.東西で違うインスタントカップ蕎麦

実はうどんや蕎麦は日本の東西で味に違いがあり、それぞれの土地の人が別の土地の蕎麦を食べると「つゆの色が違う!」と驚くことも多いそうです。西日本では薄口しょうゆや昆布だしでとられた透き通ったつゆが一般的で、東日本のかつお出汁や醤油で作られたつゆでは色が濃く、つゆが黒いと表現されることもあります。

一部のメーカーのインスタントカップ蕎麦にはこのスープの東西の違いが反映されているので、食べ比べてみるとおもしろいですよ。

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