蕎麦は今や日本全国に名産地がある日本食の代表ですが、ひとくちに蕎麦と言っても土地ならではの食文化が現れることでその種類は数百にもなるようです。今回は蕎麦の旬や産地・種類について・代表的なご当地蕎麦も元保育士ライター榎木えふと一緒に解説していきます。

ライター/榎木えふ

現在は我が子の育児を楽しむ元保育士。手打ちうどんが成功したので蕎麦も打ってみたが、知識不足で大失敗したことがある。過去の失敗と長らく食育に携わった経験を踏まえて、食に関する知識をわかりやすく発信していく。

蕎麦の旬はいつ?主な産地は?

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蕎麦の旬は、材料であるソバの実の収穫時期に関係があります。日本での産地も含めて確認していきましょう。以降、わかりやすさのために当記事内では食品のそばを蕎麦、蕎麦の材料になるそばの実をソバと分けて表記します

ソバの旬は主に秋

多くの場合、ソバの旬は一般的には秋とされています。と言うのも、ソバは日照時間が長くても育つ夏向きと、日照時間が短い季節でないと育たない秋向きの品種があって、それぞれの旬は別と考えられるからです。

その年に収穫されたソバで作られた蕎麦を新蕎麦と呼びますが、10~11月に収穫されたソバで作った蕎麦を「秋新」、7~8月に収穫・加工されたものを「夏新」と呼んで区別することもあります。

昔は「夏蕎麦は犬さえ食わぬ」とも言われ香り・風味がないなどとされていたようですが、現在ではその土地と品種の相性や保管技術が発達して夏でも秋蕎麦に劣らないようなおいしい蕎麦を食べることができますよ。

一大産地は北海道

日本国内におけるソバの都道府県別収穫量のトップ3をみてみましょう。

令和2年度 ソバ収穫量/単位:t(トン)カッコ内は全国収穫量に対しての割合
全国:44,800t
北海道:19,300t(43%)
長野:3,960t(9%)
栃木:2,860t(6%)

参照:農林水産省ホームページ

ソバは昼と夜の気温差が10℃以上と大きく開き、日中の気温が25℃を下回る暑すぎない環境が栽培に適しているため北海道や長野などが栽培条件に合っているのですね。信州(現在の長野県)は蕎麦切り発祥の地とも言われていて、良質なソバが採れることから蕎麦店の数が日本一と言われるほどに蕎麦の名産地がたくさんあります。(蕎麦発祥の地については諸説あります)

\次のページで「世界でも栽培されているソバ」を解説!/

世界でも栽培されているソバ

前の項ではソバの日本国内の生産地をみてきましたが、実はソバはアジア内陸部・ヨーロッパ各地・南米諸国・オーストラリアや南アフリカと世界中で栽培されている作物です。中でもロシアと中国は2大生産国で、世界の総生産量約200万トンのうち3分の2をこの2か国で生産しているとも言われます。

蕎麦は日本食だから日本の材料で作られているのだと思う方が多いかもしれませんが、国産の蕎麦粉で作られている蕎麦は全体の約20%ほど。残りは海外から輸入された材料でまかなわれているのが現状です。

蕎麦にはどんな種類がある?

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蕎麦の種類といっても、材料・加工状態・食べ方などによりけりです。ここでは3つのテーマ別に蕎麦の種類をみていきましょう。

その1.麺の加工による種類

蕎麦は保存性とゆで時間によって3つのタイプに分けることができます。おいしい蕎麦と言えば手打ち蕎麦を思い浮かべるかもしれませんが、今では品質や技術の向上によってそれぞれにおいしく食べることができますよ。

生(なま)蕎麦
蕎麦粉と水・つなぎなどを入れて打った生地を包丁で細長く切り、ゆでる前の蕎麦のことです。いわゆる手打ち蕎麦と呼ばれる、コシや香りが最も強いお店の味。日持ちがしないので専門店で食べるのが一般的でしょう。ゆで時間が短く、1分半~2分ほどゆであがります。

半生蕎麦
生蕎麦の風味をできるだけ保ちながら一定期間の保存がきくように加工された蕎麦。ゆで時間は約3~4分です。袋やプラスチックトレーに入って販売され、スーパーなどでも手に入ることがあります。

乾蕎麦
干して乾燥させた蕎麦で最も長期保存に適しています。ゆで時間は5分以上と1番長くかかりますが、蕎麦自体の水分を極力減らしているおかげでゆでた後も伸びにくくコシが強いのが特徴。日持ちするので家庭でのストックにも便利です。

その2.材料となる蕎麦粉による種類

蕎麦の材料である蕎麦粉には挽き方によって一番粉から四番粉までの分類があり、蕎麦の種類に影響します。

\次のページで「その3.つなぎの量による種類」を解説!/

更科(さらしな)蕎麦
ソバの実を挽くと、実の外側よりも柔らかい中心部分=胚乳が一番最初に砕かれて粉になってでてきます。これを一番粉と呼び、一番粉を使って作られるのが更科蕎麦です。実の甘皮の部分がまざらないので粉は白く、この粉で打った蕎麦も白いのが特徴。蕎麦らしい香りは少ないものの、のどごしがよく味は甘みがあると言われています。

藪(やぶ)・田舎蕎麦
外皮に近い部分まで挽きこんだ三番粉と呼ばれる蕎麦粉を使った風味の強い蕎麦です。甘皮部分も多く混ざっているので食感は劣りますが、色も香りも濃く栄養価も高い蕎麦になります。

挽きぐるみ蕎麦
一番粉から三番粉または四番粉までをとりわけず、ソバの実を甘皮の状態にしてまるごと挽きこんだ蕎麦粉を使って作られる蕎麦です。食感や香り・栄養とそれぞれの粉のよいところを兼ね備えたバランスのよい蕎麦になると言われています。

その3.つなぎの量による種類

蕎麦粉はグルテンを形成する力が弱いため、蕎麦粉だけで麺を作ると切れやすくぼそぼそとした食感になってしまいます。そこで主に小麦粉をつなぎとして使うのですが、このつなぎと蕎麦粉の割合によって以下のように表されます。

十割(とわり)蕎麦
蕎麦粉100%で作られた蕎麦。つなぎが入っておらず切れやすいゆえの食感や、蕎麦の香りの高さが人気の秘密と言われます。生蕎麦(きそば)とも呼ばれますよ。

二八(にはち)蕎麦
つなぎが2割、蕎麦粉が8割。しなやかで食感がなめらかになるためのどごしがよい蕎麦になります。一般的な蕎麦屋さんで最も多く扱われている種類です。

他にも、九割・七三・外一・外二・同割…と、蕎麦粉とつなぎの割合によって数種類の呼ばれ方があります。

日本三大蕎麦と各地のご当地蕎麦

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三大温泉や三大祭りなど、色々なテーマの中で日本を代表するものを3つに絞って三大○○と呼ぶことがありますが、日本三大蕎麦もありますよ。ひとつぐらいは聞いたことがあるかもしれません。さっそくみていきましょう。

1.長野県の戸隠(とがくし)蕎麦

長野県は気候がおいしいソバを育てるのに適していることもあり、蕎麦が郷土食として根付いている土地で総じて信州蕎麦とも呼ばれています。戸隠で扱うソバは霧が立ち込める高原の山間で成長するため、霧下蕎麦とも呼ばれますよ。麺の水切りをしないこと、ぼっち盛りといってざるに小分けにして盛りつけられること、戸隠の伝統工芸品である丸型のざるが使われることなどが特徴です。

2.島根県の出雲(いずも)蕎麦

出雲蕎麦は蕎麦粉を作るときに粉を挽き分けずにソバの皮もまるごと挽くため、できあがった麺は黒っぽく蕎麦の香りも強いことが特徴。ゆでた蕎麦を水洗いせずにとろみのついた状態で器に盛って、温かいつゆをかけて食べる「釜揚げ蕎麦」と、割子と呼ばれる円柱状の丸い重箱に盛られていて、上から順に冷たいつゆをかけて食べる「割子蕎麦」があります。

3.岩手県のわんこ蕎麦

わんことは岩手県の方言でお椀のこと。給仕の方が隣につき、小さなお椀に入れられたひと口の蕎麦を食べると次々とおかわりが入れてもらえるシステムが特徴です。「ハイどんどん、ハイじゃんじゃん」という給仕さんの掛け声と共に、終わりの合図であるお椀のふたを閉める動作をするまで蕎麦が追加されますよ。

遊び心のある面白い食べ方ですが、たくさん食べたり急いで食べたりすることは目的ではなく「ゆでたての蕎麦をおいしくたくさん食べてください」という土地の人たちのおもてなしの心から生まれた食べ方です。15杯くらいで通常の蕎麦の1杯分になります

知れば知るほど奥深い蕎麦の世界

元々は庶民の食べ物であったとされる蕎麦が、粉の挽き方や土地ごとのこだわりの食べ方などで多種多様になったのは少し意外にも思えます。食感や風味・のどごしなどそれぞれに特徴があると言われているので、一度興味を持ったらはまってしまう料理かもしれませんね。

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家庭科

蕎麦の旬はいつ?産地や種類・ご当地蕎麦についても元保育士がわかりやすく解説

蕎麦は今や日本全国に名産地がある日本食の代表ですが、ひとくちに蕎麦と言っても土地ならではの食文化が現れることでその種類は数百にもなるようです。今回は蕎麦の旬や産地・種類について・代表的なご当地蕎麦も元保育士ライター榎木えふと一緒に解説していきます。

ライター/榎木えふ

現在は我が子の育児を楽しむ元保育士。手打ちうどんが成功したので蕎麦も打ってみたが、知識不足で大失敗したことがある。過去の失敗と長らく食育に携わった経験を踏まえて、食に関する知識をわかりやすく発信していく。

蕎麦の旬はいつ?主な産地は?

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蕎麦の旬は、材料であるソバの実の収穫時期に関係があります。日本での産地も含めて確認していきましょう。以降、わかりやすさのために当記事内では食品のそばを蕎麦、蕎麦の材料になるそばの実をソバと分けて表記します

ソバの旬は主に秋

多くの場合、ソバの旬は一般的には秋とされています。と言うのも、ソバは日照時間が長くても育つ夏向きと、日照時間が短い季節でないと育たない秋向きの品種があって、それぞれの旬は別と考えられるからです。

その年に収穫されたソバで作られた蕎麦を新蕎麦と呼びますが、10~11月に収穫されたソバで作った蕎麦を「秋新」、7~8月に収穫・加工されたものを「夏新」と呼んで区別することもあります。

昔は「夏蕎麦は犬さえ食わぬ」とも言われ香り・風味がないなどとされていたようですが、現在ではその土地と品種の相性や保管技術が発達して夏でも秋蕎麦に劣らないようなおいしい蕎麦を食べることができますよ。

一大産地は北海道

日本国内におけるソバの都道府県別収穫量のトップ3をみてみましょう。

令和2年度 ソバ収穫量/単位:t(トン)カッコ内は全国収穫量に対しての割合
全国:44,800t
北海道:19,300t(43%)
長野:3,960t(9%)
栃木:2,860t(6%)

参照:農林水産省ホームページ

ソバは昼と夜の気温差が10℃以上と大きく開き、日中の気温が25℃を下回る暑すぎない環境が栽培に適しているため北海道や長野などが栽培条件に合っているのですね。信州(現在の長野県)は蕎麦切り発祥の地とも言われていて、良質なソバが採れることから蕎麦店の数が日本一と言われるほどに蕎麦の名産地がたくさんあります。(蕎麦発祥の地については諸説あります)

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