今回のテーマは「順守」と「遵守」の違いについてです。
「法令順守」と「法令遵守」など、それなりに見かけるものの明確な違いが分からない人も多いでしょう。
「順守」と「遵守」の違いはいったい何なのか。雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

順守と遵守の違い

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スマートフォンやパソコンで「じゅんしゅ」と入力すれば「順守」と「遵守」という予測変換が表示されます。仕事などで「どちらの漢字を使った方がいいのだろうか」と迷った人もいるかもしれません。今回は「順守」と「遵守」の違いについて解説していきます。

どちらも同じ意味

結論から言うと「順守」と「遵守」に意味上の違いはありませんどちらも「言いつけ、きまり、法律などにそむかず、それをよく守ること」という意味です。あくまで表記の違いでしかないんですね。

たとえば「法令順守」と「法令遵守」では、どちらも法令をしっかり守るという意味自体に差はありません。「順法精神」と「遵法精神」も、法を強く守るという精神を表す同義語です。

遵守のほうが厳しめなニュアンス

意味としては同じですが、漢字という表意文字を使っている以上、漢字から受けるニュアンスの違いがあります。「遵」は「しんにょう」に「尊い」と書く漢字。「しんにょう」には「行く、進む」という意味があるため、「尊重して進む」というニュアンスがあります。結果として、ルールを尊重した上で進めていく、つまり厳しめなニュアンスが「遵守」にはあるのです。

ちなみに「尊守」という書き方は完全な誤用。そのような二字熟語は存在していませんので、使用しないようにしましょう。

なぜ2通りの書き方が存在するの?

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「順守」と「遵守」の意味は同じであることをご理解いただけたと思います。しかしここで気になるのは、なぜ2種類の表記が存在しているのかですよね。ここでは「順守」と「遵守」のどちらも使われるようになった由来について解説していきます。

\次のページで「元々は遵守だけだった」を解説!/

元々は遵守だけだった

「遵守」には元々「遵」の字だけが使われていました。「遵」の漢字が持つイメージもあり、二字熟語として適切な使い方をされていたと言えるでしょう。

普段の生活では「遵」という漢字をあまり見かけませんよね。事実「遵」は常用漢字外であり、「遵守」などの一部の二字熟語以外には使われていません。音読みだけが存在しており、訓読みがないのです。この「遵」の字が常用漢字外ということが、後の2表記両立を生んでいきます。

遵守の代用として順守が使われた

昭和29年に国語審議会という団体が「当用漢字表審議報告」という報告の中で、当用漢字表から「遵」を含む28字を削除するという宣言をしました。削除される「遵」を使うのはいかがなものかと、日本新聞協会という団体では「遵守」を「順守」に置き換える方針を取りました。つまり「遵守」の代用語が「順守」だったんですね。

最終的に「当用漢字表審議報告」の削除案は実現されなかったので、日本社会において「遵守」と「順守」の2表記が両立することとなったのです。

どのように使い分ければいいの?

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「遵守」と「順守」の意味は同じで、成立した順番が違うだけだったんですね。では日本社会において、この2表記をどう使い分ければいいのでしょうか?ここではそれぞれに適切なシーンを解説していきます。

遵守:公用文やビジネス

公用文(国や共同団体の正式な文書)では「遵守」を使用します。義務教育内で使われる教科書も、文部科学省という国の機関が指定しているため「遵守」が使われているのです。またビジネスで用いる契約書や規約文なども、公式な書類となるため「遵守」を使います。

順守:新聞などのメディア

新聞がルーツということもあり、当然ながら新聞で使用されるのは「順守」。またテレビ番組やニュースサイトでも「順守」を使用します。これは報道業界において「メディアは新聞の表記に合わせる」ことが暗黙の了解となっているためです。

\次のページで「順守と遵守は同じ意味で、適切なシーンが違う」を解説!/

順守と遵守は同じ意味で、適切なシーンが違う

ここまで「順守」と「遵守」の違い、なぜ2通りの書き方が存在するのか、そしてそれぞれの表記の使い分けについて解説してきました。

日本語は漢字文化圏でありながら、独特な漢字の使い方をしてきました。そのため今回ご紹介した「順守」と「遵守」以外にも、同じ意味で表記が異なる熟語は存在します。もし使い分けに困ったら、一度立ち止まって両者の違いを調べてみるとおもしろいですよ。

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3分でわかる順守と遵守の違い!ビジネスではどちらを使えばいい?由来や使い分けも雑学好きライターがわかりやすく解説

今回のテーマは「順守」と「遵守」の違いについてです。
「法令順守」と「法令遵守」など、それなりに見かけるものの明確な違いが分からない人も多いでしょう。
「順守」と「遵守」の違いはいったい何なのか。雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

順守と遵守の違い

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スマートフォンやパソコンで「じゅんしゅ」と入力すれば「順守」と「遵守」という予測変換が表示されます。仕事などで「どちらの漢字を使った方がいいのだろうか」と迷った人もいるかもしれません。今回は「順守」と「遵守」の違いについて解説していきます。

どちらも同じ意味

結論から言うと「順守」と「遵守」に意味上の違いはありませんどちらも「言いつけ、きまり、法律などにそむかず、それをよく守ること」という意味です。あくまで表記の違いでしかないんですね。

たとえば「法令順守」と「法令遵守」では、どちらも法令をしっかり守るという意味自体に差はありません。「順法精神」と「遵法精神」も、法を強く守るという精神を表す同義語です。

遵守のほうが厳しめなニュアンス

意味としては同じですが、漢字という表意文字を使っている以上、漢字から受けるニュアンスの違いがあります。「遵」は「しんにょう」に「尊い」と書く漢字。「しんにょう」には「行く、進む」という意味があるため、「尊重して進む」というニュアンスがあります。結果として、ルールを尊重した上で進めていく、つまり厳しめなニュアンスが「遵守」にはあるのです。

ちなみに「尊守」という書き方は完全な誤用。そのような二字熟語は存在していませんので、使用しないようにしましょう。

なぜ2通りの書き方が存在するの?

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「順守」と「遵守」の意味は同じであることをご理解いただけたと思います。しかしここで気になるのは、なぜ2種類の表記が存在しているのかですよね。ここでは「順守」と「遵守」のどちらも使われるようになった由来について解説していきます。

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