今回は黒紫色の実でおなじみの野菜、ナスについてみていこう。ナスは和食に使われることの多い野菜ですが、調べてみるとそのルーツは日本ではないようです。また、スカスカで栄養がないなどと言われるナスの栄養や効能の真実にも迫っていこう。10年以上食育指導に関わってきた元保育士ライター榎木えふと一緒に解説していきます。

ライター/榎木えふ

現在は我が子の育児を楽しむ元保育士。身体にいいことをしているなと嬉しくなるので、食材の栄養成分や効果を調べながら食事するのが好き。長らく食育に携わった経験を踏まえながら食に関する知識をわかりやすく発信していく。

ナスってどんな食べ物?

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ナスは子どもも知っている定番の野菜です。ここでは野菜としての特徴や意外と知られていないルーツを確認してみましょう。

ナスはインド生まれの野菜

ナスはもともとインドが原産とされる作物です。紀元前から栽培されていてインドから東に広まり、中国や朝鮮半島・東南アジアを経たルートで奈良時代に日本に入ってきたと言われています

インドから西へは13世紀頃とかなり遅れてヨーロッパ・アメリカに伝わり、全世界に広がることとなりました。ヨーロッパでは、なんと食べるよりも花を見て楽しむ植物として扱われていたようですよ。ナスは紫色のかわいらしい花を咲かせます。

水分たっぷりな淡色野菜の仲間

ナスの皮は濃い色をしているので緑黄色野菜と間違われやすいですが、淡色野菜に分類されます。外側の黒に近いような紫色とは違い、果肉は白くふかふかとしていてまるでスポンジのよう。また、ナスの実は93%以上が水分のみずみずしい食材で体の熱を冷ます・こもった熱を取り除くと言われています。

どんな味?苦味はある?

ナスは淡泊な見た目の通り味や香りにも大きな特徴がありませんが、その分どんな調理方法や味付けにも合う野菜です。特に油を使って焼く・揚げる・炒める調理法とは相性がよいですよ。加熱したナスはやわらかくトロトロとした食感が特徴です。

皮の下には苦味がありアクが強いので、適切な処理をしないと苦味や渋みを感じてしまいます。この渋みや食感は子どもたちには苦手とされることも多く、ナスが嫌いな子どもがあげる理由には苦い・ぶよぶよした食感が嫌だというものがあるようです。調理方法を工夫してあげると子どもでもおいしく食べられるでしょう。

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ナスの栄養素は?栄養がないって本当?

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ナスはその大部分が水分なうえ、実の中の白い色や淡泊な味からもなんだか栄養がなさそうなイメージを持ってしまいますね。確かに野菜の中では目立つ栄養素は多くないかもしれませんが、ナスならではの特徴もありますよ。さっそくみてみましょう。

その1.ナス特有の色素ナスニン

ナスの皮の紫色は赤ジソやブルーベリーの色と同じアントシアニンによるものですが、ナスに含まれるものは特にナスニンと呼ばれています。なんだかかわいい名前ですね。ナスニンはポリフェノールの一種。ポリフェノールには強い抗酸化作用があり、体内で細胞や遺伝子にダメージを与えてしまう活性酸素という物質のはたらきを抑えてくれます。

その2.目立つ栄養素はカリウム

カリウムは体の水分を外に出す働きをもつミネラル。白米100gに対して29㎎のところ、ナス100gには220㎎含まれていて、ナスの中では目立つ栄養素です。その他のビタミンやミネラル類は特別多いものはないのですが、微量ながらもビタミンB群・C・E・Kやミネラル類が含まれています。

その3.食物繊維は淡色野菜の中では多い

ナスには100gあたり2.2gの食物繊維が含まれています。淡色野菜の仲間でナスと同じく水分が多いきゅうりと比べてみると、きゅうりでは100gあたり1.1gなので2倍にもなります。食物繊維が多そうに思えるキャベツでも1.8gなので、ナスは淡色野菜の中では食物繊維が多いと言えるでしょう。

ナスの効能は?美肌になるって本当?

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ビタミンやミネラルといった栄養素はさほど多くないナスですが、ナスだからこその成分には健康や美容によい効果がたっぷり。驚きの5つの効能を紹介していきます。

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1.抗酸化作用によるがん・生活習慣病予防効果に期待

私たちの身体は酸素によって生命活動を維持していますが、体内に取り込まれた酸素の一部は活性酸素というものに変化します。活性酸素は増えすぎると細胞や遺伝子を傷つけて様々な病気の原因となることがわかっている物質。ナスの皮の部分に含まれるポリフェノールの一種ナスニンは強い抗酸化作用を持ち、活性酸素のはたらきを阻止する効果が期待できます

身体の酸化に対抗する力は年齢と共に減るので、抗酸化力を高めることが重要と言われています。抗酸化力はもともと私たちの身体に備わっているのですが、食物などで身体の外からも抗酸化物質を取り入れて補助してあげることが必要なのです。

2.肌の老化を遅らせる効果も

活性酸素は紫外線を浴びると大量に発生するため、肌が酸化しやすい状態になってしまいます。酸化によって肌の細胞が攻撃されると肌のハリやうるおいを保つためのタンパク質を作る機能が落ちてしまい、しわやたるみの原因となってしまうのです。

さらに活性酸素はメラニンを作る色素細胞を刺激するため、シミの原因にもなってしまいます。抗酸化作用効果が期待できる栄養を食事で補うことで肌の酸化を防ぎ、老化を遅らせることにつながります

3.血圧を下げる成分コリンエステル

ナスにはコリンエステルという機能性成分が大量に含まれています。その量は同じナス科のトマトやピーマン、その他の野菜100gあたりに比べて3000倍以上とも言われていますよ。このコリンエステルは身体に吸収されると自律神経に作用して高血圧を改善し、気分をリラックスさせる効果もあると考えられています。令和2年には高知で生産された高知ナスが、この血圧改善効果について生鮮ナスでは初めて機能性表示食品に登録されました。

コリンエステルは加熱すると効率的に摂れるため、ナスを加熱調理して食べるのがおすすめです。

4.目の疲労回復にもよい

ナスニンはブルーベリーや赤ジソに含まれるアントシアニンの仲間。アントシアニンは血流を促進することで目の周りの筋肉の緊張をほぐして目のピント調節機能を維持したり、目の疲れを改善したりするはたらきがあります。白内障などの病気や視力の低下を防ぐ効果が期待できますよ。

5.身体の熱をとって夏バテ予防に

ナスは水分たっぷりの食材なので、身体の熱を冷ますことができる野菜です。また、汗で身体の外に出てしまいがちなカリウムを補給することもできます。カリウムには体内の水分を調節して余分な水分を外に出してくれるはたらきがあるため、夏場に冷房にあたったり冷たいものをとりすぎたりすることでむくんだ身体をすっきりさせてくれますよ。

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バランスのよい食事のなかでナスの味わいを楽しんで

ナスは栄養がなく中身はスカスカなどと誤解を受けてしまうこともありますが、ナスニンやコリンエステルというナスが特別に多く持っている成分もあり、病気の予防になったり目や肌を健康に保ったりするなどの嬉しい効果がたくさんあります。ナス自体にクセがなく和・洋・中どの調理法や味付けとも相性がよいので、他の食材と組み合わせたトータルバランスのとれた食事をして健康維持に役立てられるとよいですね。

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家庭科

ナスってどんな食べ物?栄養がないって本当?特徴や美肌・病気予防の効能についても元保育士がわかりやすく解説

今回は黒紫色の実でおなじみの野菜、ナスについてみていこう。ナスは和食に使われることの多い野菜ですが、調べてみるとそのルーツは日本ではないようです。また、スカスカで栄養がないなどと言われるナスの栄養や効能の真実にも迫っていこう。10年以上食育指導に関わってきた元保育士ライター榎木えふと一緒に解説していきます。

ライター/榎木えふ

現在は我が子の育児を楽しむ元保育士。身体にいいことをしているなと嬉しくなるので、食材の栄養成分や効果を調べながら食事するのが好き。長らく食育に携わった経験を踏まえながら食に関する知識をわかりやすく発信していく。

ナスってどんな食べ物?

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ナスは子どもも知っている定番の野菜です。ここでは野菜としての特徴や意外と知られていないルーツを確認してみましょう。

ナスはインド生まれの野菜

ナスはもともとインドが原産とされる作物です。紀元前から栽培されていてインドから東に広まり、中国や朝鮮半島・東南アジアを経たルートで奈良時代に日本に入ってきたと言われています

インドから西へは13世紀頃とかなり遅れてヨーロッパ・アメリカに伝わり、全世界に広がることとなりました。ヨーロッパでは、なんと食べるよりも花を見て楽しむ植物として扱われていたようですよ。ナスは紫色のかわいらしい花を咲かせます。

水分たっぷりな淡色野菜の仲間

ナスの皮は濃い色をしているので緑黄色野菜と間違われやすいですが、淡色野菜に分類されます。外側の黒に近いような紫色とは違い、果肉は白くふかふかとしていてまるでスポンジのよう。また、ナスの実は93%以上が水分のみずみずしい食材で体の熱を冷ます・こもった熱を取り除くと言われています。

どんな味?苦味はある?

ナスは淡泊な見た目の通り味や香りにも大きな特徴がありませんが、その分どんな調理方法や味付けにも合う野菜です。特に油を使って焼く・揚げる・炒める調理法とは相性がよいですよ。加熱したナスはやわらかくトロトロとした食感が特徴です。

皮の下には苦味がありアクが強いので、適切な処理をしないと苦味や渋みを感じてしまいます。この渋みや食感は子どもたちには苦手とされることも多く、ナスが嫌いな子どもがあげる理由には苦い・ぶよぶよした食感が嫌だというものがあるようです。調理方法を工夫してあげると子どもでもおいしく食べられるでしょう。

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