今回は「重合体」について解説していきます。重合体はある特徴を持った化合物の総称です。重合体の性質を利用した製品は現代の生活では欠かせないものとなっている。身近なものから特殊な環境なものまで幅広い価値を持っている材料と言える。この記事では、重合体の用途や性質等を化学に詳しいライターY.oBと一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。大学から現在まで化学に携わってきた化成品に詳しいライター。

重合体とは何?

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重合体はポリマーとも呼ばれる特定構造が複数回の化学結合した化合物の総称です。この特定構造を単量体(モノマー)と呼び、モノマーの構造や結合後の分子量の大きさによって目的の重合体を合成しています。それではどのような重合体を合成していくのでしょうか。この章では重合体の種類や特徴について学んでいきましょう。

重合体の種類とは?

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重合体にはつながったモノマーの数によって呼び方が違います。単量体(モノマー)、二量体(ダイマー)、三量体(トリマー)、数十個の場合はオリゴマーと呼び、それ以上は高分子ポリマーです。一般に重合体と言えば、高分子を指します。

それ以外には由来から種類を分けており、分け方は天然ポリマーや半合成ポリマー、合成ポリマーです。体を構成しているタンパク質や植物の細胞壁のセルロース等は天然ポリマーの一例になります。

重合体の特徴とは?

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重合体の特徴は典型的な粘弾性体であり、それによる加工や成形のしやすさです。重合体の最も身近なものはプラスチック製品になります。半合成、合成した重合体は安価に大量に製造することができるだけではなく、金属や木材にできない性質を持たせることができ、加熱で軟化することで複雑な成形が可能です。

そのため、戦後には安価で利便性の高い材料として金属に置き換わり、年々生産量が増加してきました。生産量が増えるとニーズも増えていき、幅広い特徴を持った製品開発がされています。

重合体と共重合との違いは?

重合体と共重合との違いは?

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重合体には共重合と呼ばれる種類があります。重合体を合成するにはモノマーが必要ですが、モノマーの種類を複数使用したものが共重合です。単一のモノマーでは出せない高度で複雑な物性を出すことができるようになります。複数種類のモノマーを使用する際には何をどのくらい入れるのか、触媒や温度制御等で反応制御は複雑です。そのため高度な合成知識が必要となります。

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高分子の重合体について解説!

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重合体はいつ頃発見され、どのように合成し、どのように加工しているのでしょうか。重合体は数多く存在しているため、代表的なものを例に挙げ、解説します。

重合体の歴史とは?

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重合体、特に高分子の概念が確立されたのは1935年以降となります。確立させたのはドイツの化学者Herman Staudinger教授です。それまではセルロースや天然ゴム等は共有結合でつながった巨大分子ではなく、低分子化合物が会合したものと考えられていました。教授は高分子化合物の存在について、実験による根拠を集めていき、高分子の概念の確立します。

概念の確立には15年の学術論争がありました。諦めず根拠を集めた教授の勝利です。その後にも高分子化学分野に多大な貢献をし、1953年にノーベル化学賞を得ています。

重合体の合成方法とは?

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重合体の合成方法するためは原料となる単量体(モノマー)が反応する官能基が2ヶ所必要となります。例えば合成ゴムでは分子内に炭素-炭素二重結合が2ヶ所あるため、新しい結合に二重結合を一つ使用。残った二重結合がまた新しい結合に使用されることで分子が大きくなっていきます。

PETボトルのPET(ポリエチレンテレフタレート)はエチレングリコールとテレフタル酸の共重合です。縮合反応によりアルコールとカルボン酸を繋げていき、高分子を合成しています。

重合体の加工方法は?

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重合体は金属や生物由来の材料と比較すると加工が容易です。金属よりも低温で軟化し、型で成形したり、押し出して成形することができます。成形の自由度は高く、繊維や棒、管や板状、シートやフィルムに加工することができ、被覆電線のような異なる素材と同時に押出成形することも可能です。

重合体の用途について解説!

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重合体はゴムや樹脂、繊維等の様々な用途に使用されています。身近な化成品に使用されていないものはないと言っても過言ではありません。ここでは重合体の中でも代表例としてプラスチックや繊維について解説します。

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重合体の代表例プラスチックとは?

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プラスチックは合成樹脂を指したり、合成樹脂を成形した化成品を指す言葉です。可塑性物質という意味も含まれています。可塑性とは力を加えて歪ませて、力を除いた時にも歪みが残る性質です。化成品の材料としては非常に優秀で、安価なため身近な製品にも多く使用されています。

原油の精製時に得られるナフサが原料です。代表例は日用品の容器やデバイスの筐体等になります。

重合体の高吸水性ポリマーとは?

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高吸水性ポリマーとは自身の重量に対して100~1000倍の重量の水を保持できるよう合成された高分子を指します。一般的な布製品が水を吸水するのは、繊維の隙間に水が入り込んでいるからです。吸水ポリマーは水に触れると高分子の網が広がり、水と水素結合する官能基によって高い保水能力を持っています。

一度保持した水をほぼ外に出さないため、紙おむつやペットシート、ゲル芳香剤等が代表例です。

重合体の合成繊維とは?

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合成繊維は合成樹脂を繊維状に加工したものです。合成繊維は天然繊維と比較すると水に強く、繊維が丈夫で品質が安定しています。衣服の材料として使用され、メリットは伸縮性があり染色しやすい等です。天然繊維にはない特徴を出すことができます。ナイロンやポリエステルが代表例です。

重合体は現代の生活様式を支える最重要材料

重合体は戦前の1935年頃に確立され、戦時中は金属不足と安価で加工しやすい特徴から材料の置き換わりが起きました。戦後も徐々に利便性の良さから様々な製品の材料として大量生産され、今では重合体の化成品がないものを探す方が難しいです。より多くのニーズから製品開発はより複雑化し、共重合を利用し高度な物性を持つ材料を開発しています。

プラスチック、機能性樹脂、合成繊維は一例で、合成ゴムやシリコーン樹脂も重合体です。現代の生活には欠かせない材料のため、今後も研究が盛んに行われると思います。

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化学有機化合物理科生活と物質高分子化合物

重合体とは一体何?共重合との違いや定義・構造も現役研究員が5分でわかりやすく解説!

重合体の代表例プラスチックとは?

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プラスチックは合成樹脂を指したり、合成樹脂を成形した化成品を指す言葉です。可塑性物質という意味も含まれています。可塑性とは力を加えて歪ませて、力を除いた時にも歪みが残る性質です。化成品の材料としては非常に優秀で、安価なため身近な製品にも多く使用されています。

原油の精製時に得られるナフサが原料です。代表例は日用品の容器やデバイスの筐体等になります。

重合体の高吸水性ポリマーとは?

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高吸水性ポリマーとは自身の重量に対して100~1000倍の重量の水を保持できるよう合成された高分子を指します。一般的な布製品が水を吸水するのは、繊維の隙間に水が入り込んでいるからです。吸水ポリマーは水に触れると高分子の網が広がり、水と水素結合する官能基によって高い保水能力を持っています。

一度保持した水をほぼ外に出さないため、紙おむつやペットシート、ゲル芳香剤等が代表例です。

重合体の合成繊維とは?

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合成繊維は合成樹脂を繊維状に加工したものです。合成繊維は天然繊維と比較すると水に強く、繊維が丈夫で品質が安定しています。衣服の材料として使用され、メリットは伸縮性があり染色しやすい等です。天然繊維にはない特徴を出すことができます。ナイロンやポリエステルが代表例です。

重合体は現代の生活様式を支える最重要材料

重合体は戦前の1935年頃に確立され、戦時中は金属不足と安価で加工しやすい特徴から材料の置き換わりが起きました。戦後も徐々に利便性の良さから様々な製品の材料として大量生産され、今では重合体の化成品がないものを探す方が難しいです。より多くのニーズから製品開発はより複雑化し、共重合を利用し高度な物性を持つ材料を開発しています。

プラスチック、機能性樹脂、合成繊維は一例で、合成ゴムやシリコーン樹脂も重合体です。現代の生活には欠かせない材料のため、今後も研究が盛んに行われると思います。

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