今回のテーマは虫眼鏡と太陽です。
虫眼鏡は物体を拡大してみることができる。なぜ虫眼鏡を通すと物体を拡大してみることができるでしょうか。まずはその秘密を解説していく。また、虫眼鏡で太陽の光を集めると、紙を燃やすこともできる。この現象も解説していきます。
さらに、太陽の熱を使った発電方法「太陽熱発電」についても詳しく解説していきます。

今回は「虫眼鏡と凸レンズの関係」、さらに「太陽の熱を使う発電方法」を物理に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

大学院を修了するまで、研究に明け暮れた理系ライター。目の前で起きた現象を深掘りすることが大好きで、化学や物理など幅広く勉強している。現在は化学メーカーで技術職として働きながら、化学や物理の楽しさを発信していく。

なぜ虫眼鏡で物を拡大できるのか

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何か物を拡大して観察したい時「虫眼鏡」を使いませんか。虫眼鏡を使うことで、小さな物も大きく見ることができます。なぜ虫眼鏡を通すと小さな物を拡大して観察することができるのでしょうか。その理由は凸レンズです。まずは、虫眼鏡に使われている凸レンズの特徴を紹介していきます。

虫眼鏡は光を曲げている

ここからは虫眼鏡に使われている凸レンズの特徴を紹介していきますね。

理科の教科書で必ず出てくる凸レンズですが、レンズ自体はガラスでできています。光は波の性質を持っているため、空気からガラスへ光が入っていく際、屈折率の違いで、光は曲がるんです。この現象を屈折といいます。「屈折」という現象を利用することで、虫眼鏡の特徴でもある「物を大きく見せる」ことができるんです。

虫眼鏡を使って太陽の光を集めることができる

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凸レンズは「光を屈折させる」ことができるのが大きな特徴です。そして、屈折された光は同じ1点を通ります。つまり、凸レンズを使うと光を一点に集めることができるということです。

理科の実験で実際に行ったことがあるかもしれませんが、虫眼鏡を使うと、太陽から降り注ぐ光を集めることができます。太陽の光を1点に集めることができるので、エネルギーが集まり、温度も上昇するんです。

虫眼鏡で太陽の光を集めて、紙を燃やす実験をした方も多いと思いますが、これは、虫眼鏡で太陽の光を集め、紙に多くのエネルギーを伝えることで紙が発火したんですね。

白い紙と黒い紙で、同じように実験すると、黒い紙の方が早く発火します。虫眼鏡で太陽の光を1点に集めても白い紙では1部の光は表面で反射するんです。一方で黒い紙は光を吸収するので、より温度が上がりやすく、発火しやすいんですね。

人の目もレンズの役割がある!

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実は、レンズが使われているのは虫眼鏡だけではありません。人の目にもレンズが入っているんです。そのレンズは「水晶体」と呼ばれ、水とたんぱく質からできています。

水晶体は凸レンズのような形をしていて、無色透明です。そして、虫眼鏡などに使われている凸レンズとは異なり、形を変えることができます。近くの物を見るときは、水晶体が分厚くなり、逆に遠くを見るときは水晶体が薄くなるんです。

水晶体は、レンズの厚さを変えることで、ピントを合わせています。凸レンズは厚みが大きくなると屈折率も大きくなり、近距離で焦点を結ぶことができるんです。逆に薄くなると、屈折率は小さくなり、焦点も遠くなります。

\次のページで「太陽を直接みてはいけない理由」を解説!/

水晶体で屈折した光は、凸レンズと同様に、一点で重なり像を描きます。水晶体の奥には、硝子体と網膜と呼ばれる部位があり、網膜で光が重なることで、はっきりと物を見ることができるんです。

太陽を直接みてはいけない理由

凸レンズで太陽の光を1点に集めると、紙が発火するほど温度を上げることができます。

「目で直接太陽を見てはいけない」と学習するのも、これが原因なんです。目にも凸レンズの機能を持った水晶体があることを紹介しました。つまり、太陽を直接見ると、水晶体を通って太陽の光が1点に集まってしまうんです。太陽の強い光が水晶体や網膜を通ると、目が焼けてしまいます。

この症状を「日食網膜症」と呼び、目に強い痛みや熱さを感じ、最悪の場合失明してしまうこともあるんです。

太陽熱発電とは

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虫眼鏡を使うことで、太陽の光を集めることができると先ほどご紹介しました。「光を1点に集め、紙が発火する実験」を応用した発電方法を知っていますか。それが「太陽熱発電」です。太陽熱発電とはどのような発電方法なのか、紹介していきます。

太陽熱発電の原理は虫眼鏡と同じ

太陽熱発電は、太陽の光を集め、その熱を利用して発電する方法です。太陽の光を1点に集めると温度が上昇することを先ほどご紹介しました。太陽熱発電は、太陽熱で蒸気を発生させ、タービンを回すことで発電します。発電の原理としては火力発電と同じですね。火力発電と違う点は、燃料を使わないところです。

石油や石炭、天然ガスを燃やしてタービンを回している火力発電に対し、太陽熱発電は太陽熱を使ってタービンを回すため、燃料を使わず、発電時に二酸化炭素も発生しません。

そのため、クリーンエネルギーとして、実用化もされています。レンズと反射板という違いはありますが、太陽の光を1点に集めて温度を上昇させるという点では、太陽熱発電と虫眼鏡の原理は同じといえますね。

太陽光発電との違いとは

太陽光発電との違いとは

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太陽光を使った発電と聞くと、まず思い浮かぶのは「太陽光発電」ではないでしょうか。太陽光発電は太陽の光エネルギーを直接電気に変える発電方法です。一般的な住宅の屋根から大きな建物の屋上など、太陽光パネルの大きさを調整することで、様々なスペースで導入することできます。

一方で太陽熱発電は太陽の熱エネルギーを利用して、電気を生み出す発電方法ですね。

太陽光発電は太陽の光エネルギーを利用して、電子を動かすことで発電します。一方太陽熱発電は水蒸気でタービンを回すことでモーターを回す発電方法です。太陽光発電と太陽熱発電は名前はよく似ていますが、発電方法が全く異なります。

\次のページで「日本で太陽熱発電が普及しない理由」を解説!/

日本で太陽熱発電が普及しない理由

クリーンなエネルギーとして注目されている太陽熱発電ですが、日本では普及していません。

日本で太陽熱発電が普及しない理由は日本の土地柄にあります。太陽熱発電はシステム自体が大きいので、広大な土地が必要です。さらに、太陽光の熱を利用するため、砂漠のような直射日光の強い土地が適しています。そのため、国土が狭く、温暖な気候の日本で普及させることが難しいんです。

虫眼鏡で紙を燃やす原理と太陽の熱を利用した発電方法を紹介

今回は「虫眼鏡で太陽光を集め、紙を燃やす原理」と太陽の熱を利用した発電方法の「太陽熱発電」を紹介しました。

虫眼鏡で太陽の光を集め、紙を燃やす実験は、実際にやったことがある方も多いと思いますが、凸レンズを使って光を集める原理を利用しているんです。そして、太陽の光を集め、温度を上昇させることで髪を燃やしています。

また、太陽の光を集め温度を上昇させることで発電する「太陽熱発電」についても解説しました。日本ではあまり知られていませんが、世界では実用化されている発電方法なんです。

ぜひチェックしておいてください。

" /> 虫眼鏡と太陽で物が燃える原理とは?太陽の熱を使う発電方法と合わせて理系ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
体の仕組み・器官化学物理理科

虫眼鏡と太陽で物が燃える原理とは?太陽の熱を使う発電方法と合わせて理系ライターがわかりやすく解説!



今回のテーマは虫眼鏡と太陽です。
虫眼鏡は物体を拡大してみることができる。なぜ虫眼鏡を通すと物体を拡大してみることができるでしょうか。まずはその秘密を解説していく。また、虫眼鏡で太陽の光を集めると、紙を燃やすこともできる。この現象も解説していきます。
さらに、太陽の熱を使った発電方法「太陽熱発電」についても詳しく解説していきます。

今回は「虫眼鏡と凸レンズの関係」、さらに「太陽の熱を使う発電方法」を物理に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

大学院を修了するまで、研究に明け暮れた理系ライター。目の前で起きた現象を深掘りすることが大好きで、化学や物理など幅広く勉強している。現在は化学メーカーで技術職として働きながら、化学や物理の楽しさを発信していく。

なぜ虫眼鏡で物を拡大できるのか

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何か物を拡大して観察したい時「虫眼鏡」を使いませんか。虫眼鏡を使うことで、小さな物も大きく見ることができます。なぜ虫眼鏡を通すと小さな物を拡大して観察することができるのでしょうか。その理由は凸レンズです。まずは、虫眼鏡に使われている凸レンズの特徴を紹介していきます。

虫眼鏡は光を曲げている

ここからは虫眼鏡に使われている凸レンズの特徴を紹介していきますね。

理科の教科書で必ず出てくる凸レンズですが、レンズ自体はガラスでできています。光は波の性質を持っているため、空気からガラスへ光が入っていく際、屈折率の違いで、光は曲がるんです。この現象を屈折といいます。「屈折」という現象を利用することで、虫眼鏡の特徴でもある「物を大きく見せる」ことができるんです。

虫眼鏡を使って太陽の光を集めることができる

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凸レンズは「光を屈折させる」ことができるのが大きな特徴です。そして、屈折された光は同じ1点を通ります。つまり、凸レンズを使うと光を一点に集めることができるということです。

理科の実験で実際に行ったことがあるかもしれませんが、虫眼鏡を使うと、太陽から降り注ぐ光を集めることができます。太陽の光を1点に集めることができるので、エネルギーが集まり、温度も上昇するんです。

虫眼鏡で太陽の光を集めて、紙を燃やす実験をした方も多いと思いますが、これは、虫眼鏡で太陽の光を集め、紙に多くのエネルギーを伝えることで紙が発火したんですね。

白い紙と黒い紙で、同じように実験すると、黒い紙の方が早く発火します。虫眼鏡で太陽の光を1点に集めても白い紙では1部の光は表面で反射するんです。一方で黒い紙は光を吸収するので、より温度が上がりやすく、発火しやすいんですね。

人の目もレンズの役割がある!

実は、レンズが使われているのは虫眼鏡だけではありません。人の目にもレンズが入っているんです。そのレンズは「水晶体」と呼ばれ、水とたんぱく質からできています。

水晶体は凸レンズのような形をしていて、無色透明です。そして、虫眼鏡などに使われている凸レンズとは異なり、形を変えることができます。近くの物を見るときは、水晶体が分厚くなり、逆に遠くを見るときは水晶体が薄くなるんです。

水晶体は、レンズの厚さを変えることで、ピントを合わせています。凸レンズは厚みが大きくなると屈折率も大きくなり、近距離で焦点を結ぶことができるんです。逆に薄くなると、屈折率は小さくなり、焦点も遠くなります。

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