今回はドラキュラとヴァンパイアの違いについてみていきます。「ドラキュラ」「ヴァンパイア」と聞くと、次に思い浮かべるのは「吸血鬼」じゃないか?どれも血を吸って生き延びる怪物のことを指す同じ意味の言葉だと思われがちですが、実はドラキュラだけ違う意味があるんです。今回は読書好きライターの早坂佳歩と一緒に、それぞれの意味や吸血鬼と呼ばれた人物についてなどを詳しく解説していきます。

ライター/早坂佳歩

会計事務所に勤務しながら副業webライターとして活動している。小説によってさまざまな吸血鬼を知った読書好きライターがわかりやすく解説していく。

吸血鬼とは

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吸血鬼は狼男やフランケンシュタインと並び、世界中で知られている怪物の一種です。生き血を吸って蘇った死人不死の存在のことを指します。血を吸われた人間も吸血鬼になってしまう、という話もよく聞きますよね。吸血鬼の伝承の多くは、死者が腐敗しない肉体を持ち、人間や家畜に害を与えるというものです。

死亡したとみなされ埋葬されたカタレプシー患者が棺の中で蘇生したり、狂犬病患者の症状が吸血鬼に似ていたりと、伝承の始まりは病気による勘違いが多いとも言われています。

ドラキュラもヴァンパイアも吸血鬼?

ドラキュラ・ヴァンパイアと聞いて思い浮かべるのは、長い牙や黒いマント、十字架などでしょうか。どれも吸血鬼の特徴として挙げられるものですよね。ドラキュラもヴァンパイアも吸血鬼であることは違いないのですが、名前の持つ意味が少し違います。

ドラキュラ:吸血鬼の名前

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ドラキュラとは、1897年にアイルランド人作家のブラム・ストーカーが発表した小説「吸血鬼ドラキュラ」に出てくる男性吸血鬼の名前です。この小説が有名になったため吸血鬼=ドラキュラと思われがちですが、ドラキュラは固有名詞になります。

ドラキュラの特徴は、赤い目と痩せ細った体。日没から日の出までの時間のみ活動し、夜が明けたら死体に戻ります。十字架やニンニクを嫌うという設定はドラキュラのもので、すべての吸血鬼に該当するものではありません。

ヴァンパイア:吸血鬼の英訳

吸血鬼は英語で「Vampire」、つまりヴァンパイアと言います。吸血鬼=ヴァンパイアということですね。スラブ語で「死から蘇る人」という意味の「vampir(バンピル)」や、リトアニア語で「飲む」を意味する「wempti(ウェンピィ)」、トルコ語で「魔女」を指す「uber(ウバー)」などが語源であるとされています。

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ドラキュラだけじゃない!世界各地の吸血鬼

吸血鬼は世界各地でさまざまな描かれ方をしています。「吸血鬼といえば」なイメージを確立してきたものから紹介しましょう。

その1:カーミラ

1872年にアイルランド人作家ジョセフ・シェリダン・レ・ファニュが著した小説「吸血鬼カーミラ」には、カーミラという名前の女性吸血鬼が登場します。この作品は「吸血鬼ドラキュラ」に大きな影響を与えたとされていて、「吸血鬼の定番」を生み出したと言っても過言ではないでしょう。

棺桶で眠り、杭で心臓を打たれて死ぬという特徴はドラキュラに引き継がれています。ドラキュラとの違いは女性であることと、太陽を苦手としないところです。

その2:ヴァーニー

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1845年から1847年にかけてイギリスで連載された「吸血鬼ヴァーニー」では、吸血鬼のフランシス・ヴァーニー卿が主人公として描かれます。物語の設定は詳しく決められておらず、キャラクター像に矛盾が生じることもしばしば。ただ、黒いロングコートを着て鋭い牙を持ち、女性の首に噛みついて血を吸うという吸血鬼像は、後世に大きな影響を与えました。

その3:キョンシー

中国の妖怪「キョンシー」も吸血鬼の一種です。ゾンビと吸血鬼の特徴を併せ持った妖怪ですね。長い年月が経っても腐らずに動き回る死体のことを指します。

西洋の吸血鬼は痩せている個体が多いのに対し、キョンシーはふっくらとして髪の毛も長いです。性格は凶暴で、生き物の首をねじり切るという伝承も。腕を前に伸ばして跳ねながら移動する姿が有名ですが、これは関節があまり動かないため足首のみを利用し、腕でバランスをとっているのです。

その4:ストリィガ

ストリィガはあまり有名ではないかもしれませんね。他の吸血鬼が伝承や小説であるのに対し、ストリィガは古代ゲルマンの法律上で存在が認められていました。鳥の姿をした女性吸血鬼で、赤ちゃんや若い男性の血を飲むとされています。

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吸血鬼と呼ばれた実在の人物

「吸血鬼はフィクションである」という考えが一般的ですが、吸血鬼と呼ばれた人物は実在します。血に囚われ残酷な行為を繰り返した「鬼のような人間」を、吸血鬼と呼んでいたのです。

1.ドラキュラ公と呼ばれたヴラド3世

ヴラド3世吸血鬼ドラキュラのモデルとされています。父であるヴラド2世が「ドラゴン公」と呼ばれていたため、ヴラド3世はドラゴンの子という意味の「ドラキュラ公」と呼ばれていました。

罪人を串刺しにして死亡するまで放置するという残忍さから「串差し公(ツェペシュ)」と呼ばれることも。この行為は権威の誇示と、畏怖の念を抱かせるためであろうと考えられています。

ドラゴンと悪魔は同一視されることが多く、ヴラド3世は串差し公のイメージから「悪魔の子」という解釈をされるようになりました。実際に処刑していたのは罪人だけとされていますが、伝説では罪のない人々を串差しにして滴る血を飲んでいたと言われています。

2.血の伯爵夫人と呼ばれたエリザベート・バートリ

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「血の伯爵夫人」と呼ばれたハンガリー王国の貴族、エリザベート・バートリ処女の血によって美を保てると信じたエリザベートは、内側に棘のついた球形の檻に娘を閉じ込めて宙に吊るして血を浴びたり、集めた血を浴槽に溜めて浸かったりという残虐行為を、召使いや町娘、下級貴族に対して繰り返します。

閉じ込められた娘が逃げ出したことで事件は発覚しますが、エリザベートが高貴な貴族であったために死刑とはなりませんでした。食事を渡すための小窓以外はすべて漆喰で塞がれた部屋に生涯幽閉となり、その3年半後に他界。

血への執着と、暗闇の中でも生き延びられたという事実から、エリザベートは吸血鬼と呼ばれるようになったのです。

ドラキュラは小説に出てくるヴァンパイア

世界にはさまざまな吸血鬼伝説が存在します。伝承をもとに描かれた小説に、ドラキュラが出てくるのですね。小説に出てくる吸血鬼は、姿や特徴は似ていることが多いですが、性格や物語はそれぞれです。ただ生き延びるために血を欲したり、復讐をしたり、人間に恋をしたり。残酷な事件が実在するのは悲しいことですが、フィクションとしての吸血鬼は実に興味深いものですよ。

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雑学

吸血鬼って実在するの?ドラキュラとヴァンパイアの違いや吸血鬼の種類を読書好きライターがわかりやすく解説

ドラキュラだけじゃない!世界各地の吸血鬼

吸血鬼は世界各地でさまざまな描かれ方をしています。「吸血鬼といえば」なイメージを確立してきたものから紹介しましょう。

その1:カーミラ

1872年にアイルランド人作家ジョセフ・シェリダン・レ・ファニュが著した小説「吸血鬼カーミラ」には、カーミラという名前の女性吸血鬼が登場します。この作品は「吸血鬼ドラキュラ」に大きな影響を与えたとされていて、「吸血鬼の定番」を生み出したと言っても過言ではないでしょう。

棺桶で眠り、杭で心臓を打たれて死ぬという特徴はドラキュラに引き継がれています。ドラキュラとの違いは女性であることと、太陽を苦手としないところです。

その2:ヴァーニー

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1845年から1847年にかけてイギリスで連載された「吸血鬼ヴァーニー」では、吸血鬼のフランシス・ヴァーニー卿が主人公として描かれます。物語の設定は詳しく決められておらず、キャラクター像に矛盾が生じることもしばしば。ただ、黒いロングコートを着て鋭い牙を持ち、女性の首に噛みついて血を吸うという吸血鬼像は、後世に大きな影響を与えました。

その3:キョンシー

中国の妖怪「キョンシー」も吸血鬼の一種です。ゾンビと吸血鬼の特徴を併せ持った妖怪ですね。長い年月が経っても腐らずに動き回る死体のことを指します。

西洋の吸血鬼は痩せている個体が多いのに対し、キョンシーはふっくらとして髪の毛も長いです。性格は凶暴で、生き物の首をねじり切るという伝承も。腕を前に伸ばして跳ねながら移動する姿が有名ですが、これは関節があまり動かないため足首のみを利用し、腕でバランスをとっているのです。

その4:ストリィガ

ストリィガはあまり有名ではないかもしれませんね。他の吸血鬼が伝承や小説であるのに対し、ストリィガは古代ゲルマンの法律上で存在が認められていました。鳥の姿をした女性吸血鬼で、赤ちゃんや若い男性の血を飲むとされています。

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