今回のテーマは「接着」です。
物同士をくっつける「接着」ですが、物同士をくっつける際使う道具に接着剤と粘着剤があるな。まずは、接着剤と粘着剤の違いを解説していきます。
さらに、接着剤に注目し、接着剤が物同士を接着させる際のメカニズムを解説していく。

「接着」は生活の中に密接に関わっている現象で、非常に奥が深い現象です。今回は物同士をくっつける接着の原理と接着剤のメカニズムを物理に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

大学院を修了するまで、研究に明け暮れた理系ライター。目の前で起きた現象を深掘りすることが大好きで、化学や物理など幅広く勉強している。現在は化学メーカーで技術職として働きながら、化学や物理の楽しさを発信していく。

物と物をくっつける「接着」と「粘着」

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物と物をくっつけることは、私たち自身、毎日のように行っています。その時に使う道具に接着剤や粘着剤がありますよね。接着剤と粘着剤の違いをご存じですか。まずは、「接着剤」と「粘着剤」の違いを解説していきます。

接着剤と粘着剤の違いを解説

接着剤と粘着剤の違いを解説

image by Study-Z編集部

物同士をくっつける際、糊やテープ、瞬間接着剤などを使いますよね。物をくっつけるために使う道具に「接着剤」と「粘着剤」がありますが、2つの違いはなんでしょうか。

接着剤は「使う前は液体状で、貼り付けると固体になる」のに対し、粘着剤は「半固形の性質を持ち、常に濡れた状態」を保っています。

物同士を接着できる点では、接着剤も粘着剤も変わりませんが、物同士を接着させた後の状態が違うんです。接着剤は初めは液状ですが、乾燥や冷却、化学反応によって液体から固体に変化することで、物同士を接着させます。

対して、常に濡れた状態を保っている粘着剤は、接着剤のように状態変化が起こらずとも物同士を接着できるので、「すぐに」くっつけることができるんです。さらに、くっつけたもの同士をはがすこともできます。

なぜ物同士がくっつくのか

物同士はくっつくとき、当然ですが、分子レベルで「近づく」ことが必要です。

しかし、物同士を近づけただけではくっつくことはできません。その理由は、固体と固体が近づくだけでは、分子同士が引き合う距離まで近づけることができないからです。固体表面はデコボコした状態のため、ぴったりと表面同士をくっつけることはできません。

そのため、物同士がくっつくためには、固体表面の「デコボコ」を埋めることが必要です。粘着剤や接着剤はそのデコボコに入り込んでいくことができます。

接着剤は入り込んだ液体が固体に変わることで新しい化学結合が生まれるため、物同士を接着させることができるんです。一方で、半固体の粘着剤はデコボコに入り込み広範囲で粘着剤と物が接着します。その結果、粘着剤と固体表面で大きな分子間力が働くので、強固に接着させることができるんです。

物同士をくっつける4つのメカニズム

ここからは、物同士をくっつける際に働く4つのメカニズムを紹介していきます。

・ アンカー効果
・ 静電効果
・ 化学結合
・ 相互拡散

「アンカー効果」は固体表面のデコボコに粘着剤、液体の接着剤が入り込み、粘着剤は大きな分子間力で、接着剤は固まることで物同士を接着させます。

「静電効果」はくっつく物同士の電気的な偏りから、静電気の働きで接着が起こるんです。こすって帯電させたプラスチックの下敷きを髪の毛に近づけると静電気で髪が引き付けられ逆立つ現象と同じ原理ですね。

「化学結合」はくっつく物同士の界面で分子が化学変化を起こし、新しい化学結合が生まれることで接着が起こります。瞬間接着剤は、この原理を使って物同士をくっつけているんです。

「相互拡散」はくっつく物同士の表面を溶かして、分子を絡ませて固めることで、接着させます。プラモデルなどに使われる、溶剤が主成分の揮発性接着剤がこの原理を利用してるんです。

接着剤のメカニズムを紹介

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ここからは、接着剤に注目して、メカニズムを解説していきますね。先ほど紹介した4つの効果のうち、接着剤はアンカー効果と化学結合を主に使って物同士を接着させます。

新しい化学結合を作るとき、乾燥や冷却、化学反応を刺激として使いますが、接着剤によって使う刺激も違うんです。2つの接着剤に注目して、メカニズムをチェックしていきましょう。

\次のページで「水で固まる?瞬間接着剤の原理とは」を解説!/

水で固まる?瞬間接着剤の原理とは

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物同士をくっつけるときに、一番よく使うのは「瞬間接着剤」ではないでしょうか。液体状の瞬間接着剤をくっつけたいもの同士に塗り貼り付ける。しばらく待つと液体状だった接着剤が硬化し物同士がくっついています。

瞬間接着剤の主成分は「α-シアノアクリレート」と呼ばれる成分です。この成分は強力かつ急速硬化性のある接着剤の一種で、工業用、医療用、家庭用などに広く使われています。

シアノアクリレートが硬化するのは、空気中の水と反応し、長く強固な高分子鎖を形成することができるためです。

シアノアクリレートは水と反応する事で重合が進み硬化します。そのため、保管には注意が必要です。使用後はキャップをしっかりと閉めて、冷蔵庫で保管すると長持ちします。この時乾燥剤などと一緒に密閉できる袋に入れておことがおすすめです。

また、再度使用するときは室温に戻してから使うようにしましょう。冷たいまま使用しようとすると、結露で容器の周りに水滴がついてしまいます。容器内に水滴が入ると、その水とシアノアクリレートが反応し容器内で硬化が進んでしまうんです。

ライトで固まる?光硬化型接着剤とは

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瞬間接着剤の化学反応が始まるきっかけはほかにもあります。それが紫外線などの光です。

光硬化型接着剤と呼ばれ、瞬間接着剤に配合されている光重合開始剤が光エネルギーを吸収することで、反応が開始します。反応が開始すれば、あとの原理は同じです。分子量の小さなモノマー同士が重合していき、分子量の大きな高分子鎖を作ることで硬化し、接着していきます。

反応する光の波長も選ぶことが出来るんです。紫外線で硬化が始まる「紫外線硬化型接着剤」や可視光線で硬化が始まる「可視光硬化型接着剤」など、波長によって呼び方も変わります。光硬化型接着剤は、光が当たると数秒から数十秒で接着接着が完了するという特徴もあるんですよ。

物同士をくっつける「接着」の原理をチェック

今回は物同士をくっつける「接着」について解説してきました。接着に使う「粘着剤」と「接着剤」は、それぞれに違った特徴があるので、ぜひチェックしておいてください。

さらに、接着剤に注目し、日常的に使っている瞬間接着剤の原理を解説しました。接着剤や粘着剤は非常に古くから研究されており、奥が深いテーマです。今回はほんの一部しか紹介できませんでしたが、気になった方はぜひ調べてみてください。

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化学物理物質の状態・構成・変化理科生活と物質高分子化合物

接着の原理とは?接着剤と粘着剤の違いも理系ライターがわかりやすく解説!



今回のテーマは「接着」です。
物同士をくっつける「接着」ですが、物同士をくっつける際使う道具に接着剤と粘着剤があるな。まずは、接着剤と粘着剤の違いを解説していきます。
さらに、接着剤に注目し、接着剤が物同士を接着させる際のメカニズムを解説していく。

「接着」は生活の中に密接に関わっている現象で、非常に奥が深い現象です。今回は物同士をくっつける接着の原理と接着剤のメカニズムを物理に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

大学院を修了するまで、研究に明け暮れた理系ライター。目の前で起きた現象を深掘りすることが大好きで、化学や物理など幅広く勉強している。現在は化学メーカーで技術職として働きながら、化学や物理の楽しさを発信していく。

物と物をくっつける「接着」と「粘着」

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物と物をくっつけることは、私たち自身、毎日のように行っています。その時に使う道具に接着剤や粘着剤がありますよね。接着剤と粘着剤の違いをご存じですか。まずは、「接着剤」と「粘着剤」の違いを解説していきます。

接着剤と粘着剤の違いを解説

接着剤と粘着剤の違いを解説

image by Study-Z編集部

物同士をくっつける際、糊やテープ、瞬間接着剤などを使いますよね。物をくっつけるために使う道具に「接着剤」と「粘着剤」がありますが、2つの違いはなんでしょうか。

接着剤は「使う前は液体状で、貼り付けると固体になる」のに対し、粘着剤は「半固形の性質を持ち、常に濡れた状態」を保っています。

物同士を接着できる点では、接着剤も粘着剤も変わりませんが、物同士を接着させた後の状態が違うんです。接着剤は初めは液状ですが、乾燥や冷却、化学反応によって液体から固体に変化することで、物同士を接着させます。

対して、常に濡れた状態を保っている粘着剤は、接着剤のように状態変化が起こらずとも物同士を接着できるので、「すぐに」くっつけることができるんです。さらに、くっつけたもの同士をはがすこともできます。

なぜ物同士がくっつくのか

物同士はくっつくとき、当然ですが、分子レベルで「近づく」ことが必要です。

しかし、物同士を近づけただけではくっつくことはできません。その理由は、固体と固体が近づくだけでは、分子同士が引き合う距離まで近づけることができないからです。固体表面はデコボコした状態のため、ぴったりと表面同士をくっつけることはできません。

そのため、物同士がくっつくためには、固体表面の「デコボコ」を埋めることが必要です。粘着剤や接着剤はそのデコボコに入り込んでいくことができます。

接着剤は入り込んだ液体が固体に変わることで新しい化学結合が生まれるため、物同士を接着させることができるんです。一方で、半固体の粘着剤はデコボコに入り込み広範囲で粘着剤と物が接着します。その結果、粘着剤と固体表面で大きな分子間力が働くので、強固に接着させることができるんです。

物同士をくっつける4つのメカニズム

ここからは、物同士をくっつける際に働く4つのメカニズムを紹介していきます。

・ アンカー効果
・ 静電効果
・ 化学結合
・ 相互拡散

「アンカー効果」は固体表面のデコボコに粘着剤、液体の接着剤が入り込み、粘着剤は大きな分子間力で、接着剤は固まることで物同士を接着させます。

「静電効果」はくっつく物同士の電気的な偏りから、静電気の働きで接着が起こるんです。こすって帯電させたプラスチックの下敷きを髪の毛に近づけると静電気で髪が引き付けられ逆立つ現象と同じ原理ですね。

「化学結合」はくっつく物同士の界面で分子が化学変化を起こし、新しい化学結合が生まれることで接着が起こります。瞬間接着剤は、この原理を使って物同士をくっつけているんです。

「相互拡散」はくっつく物同士の表面を溶かして、分子を絡ませて固めることで、接着させます。プラモデルなどに使われる、溶剤が主成分の揮発性接着剤がこの原理を利用してるんです。

接着剤のメカニズムを紹介

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ここからは、接着剤に注目して、メカニズムを解説していきますね。先ほど紹介した4つの効果のうち、接着剤はアンカー効果と化学結合を主に使って物同士を接着させます。

新しい化学結合を作るとき、乾燥や冷却、化学反応を刺激として使いますが、接着剤によって使う刺激も違うんです。2つの接着剤に注目して、メカニズムをチェックしていきましょう。

\次のページで「水で固まる?瞬間接着剤の原理とは」を解説!/

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