今回は「円運動」について解説していきます。

円運動という概念は力学を学ぶと必ず目にするものです。身近なところから宇宙の科学に至るまで、多くの物理現象の説明に円運動の概念が必要になるからです。つまり、円運動の知識はそれほど重要なものだということです。今回は様々な具体例とともに、円運動の概念を解説することにした。ぜひ、この機会に円運動についての理解を深めてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

具体例から学ぶ円運動

この記事では、円運動という物理現象について解説しますね。円運動とは、空間上のある点を中心として円を描くように物体が移動する現象のことを指しますよ。このような運動のメカニズムを数式で説明できるようになることが今回の最終ゴールになります。

以下では、まずはじめに円運動の具体例として、天体の公転ハンマー投げの運動を紹介しますね。まずは具体例を知り、円運動の概要を理解しましょう。その後、計算式を用いて、円運動の仕組みを力学の視点で深堀りしていきます。それでは早速、解説をはじめていきますね。

天体の公転

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地球は太陽のまわりを円を描くように移動しており、月は地球のまわりを円を描くように移動しています。このように、惑星や衛星は別の天体の周りを公転しているのです。多くの場合、公転軌道の形状は楕円形をしており、これを近似することで円運動と捉えることができますよ

天体の公転が円運動になっていることは、コペルニクスやケプラーが提唱した地動説を裏付けるものになっています。また、現代においても、人工衛星の打ち上げを行うときに円運動の理論が応用されているのです。以上のことから、円運動の概念は宇宙科学の基礎であることがわかりますよね。

ハンマー投げの運動

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オリンピックの種目になっているハンマー投げですが、円運動という物理現象と深い関わりがありますよ。選手がハンマーを投げる前、ワイヤーにつながれた鉄球は円を描くように運動します。まさに、これが円運動なのです。

ハンマー投げのイメージから、鉄球の速度が大きくなるほど力が必要そうに思う方も少なくないでしょう。実はこの直感的なイメージこそ、後に解説する円運動の計算式に結びつく重要な知見になりますよ。

等速円運動の理論

ここまでは、いくつかの具体例を紹介を通して円運動の概要を学んできました。ここからは、力学の理論を用いて、円運動という現象を一般化する手法を解説していきます。今回は、円運動の中でも最も単純な「等速円運動」について述べますね。

具体的には、円軌道における物体の位置をベクトルで表す方法や円運動における速度加速度の考え方について詳しく解説しますよ。聞きなれない用語が登場することもあるかと思いますが、そのようなときは、定義や意味をしっかりと確認してくださいね。

\次のページで「等速円運動を特徴を表すパラメータ」を解説!/

等速円運動を特徴を表すパラメータ

最初に、等速円運動の定義とその特徴を表すパラメータについて考えてみましょう。等速円運動とは、半径が一定である円周上を一定の速さで物体が移動する現象のことを指します。そして、等速円運動は軌道の半径r角速度ωの2つのパラメータによって決定づけることができますよ。

角速度という言葉は聞きなれない方も多いかと思いますので、意味を説明しておきます。円運動における角速度ωは、軌道の中心Oと物体の位置Pを結んでできた動径OPが単位時間あたりに回転する角度のことを指しますよ。また、角速度ωは円運動をしている物体の速さvを半径rで割ったものでもあります。

等速円運動の位置ベクトル

等速円運動の位置ベクトル

image by Study-Z編集部

次に、等速円運動の位置ベクトルを表現する方法を考えます。ここでは、等速円運動が始まってからt秒経過したときの位置ベクトルを導出しますね。位置ベクトルの値は、円軌道の中心Oを原点とするxy直交座標上における物体の位置に等しいと考えて問題ありません。

このとき、位置ベクトルPをxy成分に分けて考えると、P=(rcosωt,rsinωt)となりますよ。角速度ωに経過時間tをかけることで、角移動量ωtがわかります。角移動量ωtの余弦(cos)と正弦(sin)をとり、それに半径を掛け算することで位置ベクトルが求まるのです。

等速円運動の速度ベクトル

等速円運動の速度ベクトル

image by Study-Z編集部

続いて、等速円運動の速度ベクトルについて考えます。一般に、位置ベクトルを時間で微分すると速度ベクトルになりますよ。微分とは、限りなく短い間隔で変化率を算出する数学の方法です。今回は力学の議論ですから、微分について深く考える必要はありません。

位置ベクトルPを時間で微分すると、(-rωsinωt,rωcosωt)となります。これが速度ベクトルvです。このベクトルを図示すると、円軌道の接線に沿うようになることがわかりますよね。この点が非常に重要な知見になります。

また、速度ベクトルの大きさはrωとなりますよ。半径rと角速度rは定数なので、速度ベクトルの大きさも定数です。これにより、確かに「等速」で物体が移動していることが読み取れますよね。

\次のページで「等速円運動の加速度ベクトル」を解説!/

等速円運動の加速度ベクトル

等速円運動の加速度ベクトル

image by Study-Z編集部

等速円運動の加速度ベクトルについても説明しますね。加速度ベクトルとは、単位時間あたりにどれだけ速度ベクトルが変化するのかを表す指標です。速度ベクトルを時間で微分すると、加速度になります。それゆえ、等速円運動の加速度ベクトルa(-rω2cosωt,-rω2sinωt)となりますよ。

実は加速度ベクトルaは、位置ベクトルPの符号が真逆になっています。これは、加速度ベクトルが円運動をする物体から中心Oに向かっていることを表すのです。そして、加速度ベクトルは向心力の源になります。向心力とは、円運動をする物体を中心に向てけ引っ張る力のことです。例えば、ハンマー投げの選手がワイヤーを掴む力が向心力になります。

円運動について学ぶ意義

この記事では、円運動の具体例を足掛かりにして、円運動における位置・速度・加速度の関係性について詳しく説明しました。そして、この中では遠心力といった身近な力についても言及する場面がありましたよね。難しそうに思われる円運動の概念ですが、本当は私たちに非常に近い存在なのです。

ですから、物理学のスタートアップとして学ぶのはもちろん、雑学として円運動の知識を身につけるというもの悪くないでしょう。ぜひこの記事を読んで、円運動について学んでみてくださいね。

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地学宇宙物理物理学・力学理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単にわかる円運動!天体の公転やハンマー投げの例を挙げて理系学生ライターがわかりやすく解説!

等速円運動の加速度ベクトル

等速円運動の加速度ベクトル

image by Study-Z編集部

等速円運動の加速度ベクトルについても説明しますね。加速度ベクトルとは、単位時間あたりにどれだけ速度ベクトルが変化するのかを表す指標です。速度ベクトルを時間で微分すると、加速度になります。それゆえ、等速円運動の加速度ベクトルa(-rω2cosωt,-rω2sinωt)となりますよ。

実は加速度ベクトルaは、位置ベクトルPの符号が真逆になっています。これは、加速度ベクトルが円運動をする物体から中心Oに向かっていることを表すのです。そして、加速度ベクトルは向心力の源になります。向心力とは、円運動をする物体を中心に向てけ引っ張る力のことです。例えば、ハンマー投げの選手がワイヤーを掴む力が向心力になります。

円運動について学ぶ意義

この記事では、円運動の具体例を足掛かりにして、円運動における位置・速度・加速度の関係性について詳しく説明しました。そして、この中では遠心力といった身近な力についても言及する場面がありましたよね。難しそうに思われる円運動の概念ですが、本当は私たちに非常に近い存在なのです。

ですから、物理学のスタートアップとして学ぶのはもちろん、雑学として円運動の知識を身につけるというもの悪くないでしょう。ぜひこの記事を読んで、円運動について学んでみてくださいね。

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