この記事ではカラスアゲハとクロアゲハの違いについてみていきます。どちらもキレイな黒い翅をもっている蝶というイメージがあるんじゃないか。わかりやすい違いはずばり翅にあるようですが、生息場所や幼虫の時の見た目など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんなカラスアゲハとクロアゲハの違いを、そもそもどんな蝶であるか特徴から確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。生き物をモチーフにしたイラストなども描いている。様々な視点から違いを詳しく解説。

そもそもカラスアゲハとクロアゲハって?

image by iStockphoto

カラスアゲハとクロアゲハは蝶の仲間です。外でたまに見かけるという方はいらっしゃると思いますが、地域によっては全然見かけない場合もあります。違いを知る前に、どんな蝶であるのか確認していきましょう。

どちらも黒色の羽を持つ蝶

カラスアゲハとクロアゲハは、黒い翅(はね)を持つアゲハチョウの仲間です。名前に「カラス」や「クロ」とついているのも、翅の色からきていると考えられますね。どちらも見た目はよく似ていますが、全く同じ種類の蝶というわけではありません。

黒いアゲハチョウの仲間は何種類かいますが、全体的に森林や山間で見かけることが多いです。食べ物を求めて飛んでいるだけでなく、何頭か地面に集まって吸水している姿なども見られます。

アゲハチョウの場合、水を飲んでいる個体はオスであることがほとんどです。理由はまだ解明されていませんが、メスを探し求めて飛び回ることも多いため、栄養を補給している説などがあります。

日本で見ることができる黒いアゲハ蝶の主な仲間は以下です。

黒いアゲハ蝶の仲間
・オナガアゲハ
・ジャコウアゲハ
・ナガサキアゲハ
・ミヤマカラスアゲハ
・モンキアゲハ など

違い(1)見た目

image by iStockphoto

一見すると同じ蝶だと勘違いしがちなカラスアゲハとクロアゲハですが、見た目にも様々な違いがあります。どちらの蝶なのか迷ったとき、一番手がかりになるのが見た目の特徴です。それぞれのポイントをしっかりと押さえていきましょう!

カラスアゲハ:青緑色のメタリックな輝きを持つ翅/尾が長い

カラスアゲハは黒い蝶ですが、よく見るとだた黒い色という訳ではありません。光があたると、鱗粉が青緑色のメタリックな色に輝きます。また後ろ翅の下側にある、尾のような突起(尾状突起)が長めであることも特徴です。模様は性別によっても変わります。以下にポイントをまとめてみました。

\次のページで「クロアゲハ:真っ黒な翅/尾が短い」を解説!/

カラスアゲハの見た目
・翅の色:黒(ただし鱗粉が青緑色)
・尾状突起の長さ:長め
・オスの翅の特徴:後ろ翅の裏だけに赤い紋がある
・メスの翅の特徴:後ろ翅の表面と裏に赤い紋がある
・開張(大きさ):約80〜120mm

クロアゲハ:真っ黒な翅/尾が短い

クロアゲハは名前の通り翅が黒色の蝶。カラスアゲハのように、青緑色に見えることはありません。また尾状突起が短い点も見分ける際のポイントです。翅の模様については、クロアゲハもカラスアゲハと同じでオス・メスによって違いがあります。

クロアゲハの見た目
・翅の色:黒(前翅は淡めな黒)
・尾状突起の長さ:短め
・オスの翅の特徴:後ろ翅に紋がない個体が多い/後ろ翅の付け根付近(後翅前縁)に白帯がある
・メスの翅の特徴:後ろ翅に赤く曲線(あるいは丸型)の紋がある/前翅の色が淡い黒
・開張(大きさ):約80〜120mm

違い(2)日本での分布・生息場所

カラスアゲハとクロアゲハは、日本だけでなくインド・中国・朝鮮半島・台湾などに分布しています。分布や生息場所も似ている2種の蝶ですが、詳しくみると少し違いがあるのです。日本ではどんなところにいるのかを解説していきます。

カラスアゲハ:日本全国/山地・渓流沿いなど

カラスアゲハは北海道〜九州まで、日本全国に広く分布している蝶です。自然豊かな場所にいることが多く、森林・渓流などに生息しています。基本的に住宅街などには現れません。

ただ、エサ(草)を求めて人が多い場所に現れることも。カラスアゲハの活動が活発になるのは春と夏の2回です。都市部でも自然が豊かな公園や土手などで姿を見ることができるかもしれません。

クロアゲハに比べると、ややレアな蝶ではありますが山登りをしていると遭遇する確率は高いです。ハイキングがてら探してみるのもいいでしょう。

クロアゲハ:本州(一部を除く)〜南西諸島/森林・民家など

クロアゲハは本州以南の地域に分布しています。残念ながら北海道ではみることができません。主な生息場所は森林・農地・住宅街・公園など。カラスアゲハよりも生息場所が幅広い蝶といえます。

都会にも生息しているため、町中で黒い蝶を見かけた場合、クロアゲハである可能性も高いです。活動時期は春〜秋にかけて。南西諸島など気温が高い地域では、冬でも姿を見られることもあります。

違い(3)飛び方

アゲハチョウ科のオスは毎日決まった場所を飛行していることはご存知ですか?蝶道(ちょうどう)と呼ばれるルートで、飛んでいる時間帯もだいたい決まっています。

なぜ同じルートを飛んでいるのか、理由はまだわからない部分もありますが、食草の位置や羽化した場所が関係しているそうです。カラスアゲハとクロアゲハのオスが、それぞれどのような飛び方をするかご紹介していきます。

カラスアゲハ:明るい場所を飛ぶ

カラスアゲハが活動する時間帯は日中です。ツツジ類・ネムノキ・クサギ・アザミなどの花の蜜を吸ったり、地面にとまって水を吸ったり。少し高めの位置を飛行しながら蝶道に沿って移動しています。

カラスアゲハの蝶道はアゲハチョウなどと同じで、日が当たる明るい場所であることがほとんどです。アゲハチョウ科は飛ぶスピードが速いですが、カラスアゲハは遅めである点も特徴といえます。

\次のページで「クロアゲハ:少し暗い場所を飛ぶ」を解説!/

クロアゲハ:少し暗い場所を飛ぶ

クロアゲハは日が昇る頃から活動を始めます。カラスアゲハよりも高い位置で飛んでいることも多いです。河原に吸水しに行ったり、ツツジ類・ヤマユリ・オニユリ・クサギの蜜を求めて蝶道を飛行します。

クロアゲハの蝶道は、カラスアゲハと違い少々暗い場所であることが多いです。飛ぶスピードはゆったりとしていて遅め。ヒラヒラと優雅に飛んでいます。

違い(4)幼虫時の見た目

蝶は幼虫から成虫になったときに、見た目が変わる完全変態の昆虫です。カラスアゲハやクロアゲハも、蛹になる少し前はいわゆる青虫の姿をしているのですが、この時から見た目にハッキリとした違いがあります。カラスアゲハとクロアゲハの幼虫(終齢幼虫)を見分けるポイントをチェックしていきましょう。

カラスアゲハ:胸部が雲のような模様/臭角が黄色で短め

カラスアゲハの終齢幼虫は体が鮮やかな黄緑色で、胸部に雲のような模様が入っています。胸部の両サイドには目のような模様も。胸部前方から目の模様あたりまで、フチに薄黄色の線があるのもポイントです。

またアゲハチョウ科の幼虫は、攻撃されたときに頭部から臭角を出します。臭角はイヤな臭いを出す分泌器官で、カラスアゲハの場合は黄色く短めです。

クロアゲハ:胸部にライン状の幾何学模様/臭角が赤色で長め

クロアゲハの終齢幼虫は少し渋い緑色です。胸部にある目のような模様を繋ぐように、ライン状の幾何学模様が入っています。また胸部と腹部のつなぎ目・腹部の切れ目にある、茶系の模様もポイントです。

クロアゲハの臭角はピンクに近い赤色で長め。カラスアゲハと同じで刺激を受けたときに、頭部から出します。

体を優しくつつくことで臭角を見ることはできますが、幼虫にストレスがかかっていることは忘れないでください。体力もかなり消耗するため、何度もつつかないようにしましょう。

カラスアゲハとミヤマカラスアゲハの見分け方は?

image by iStockphoto

クロアゲハとカラスアゲハの仲間であるミヤマカラスアゲハ。黒い翅をもつ蝶です。特にカラスアゲハと似ていて見分けがつきづらいため、見分け方を解説していきます。

白帯の有無をチェックする

カラスアゲハとミヤマカラスアゲハの一番わかりやすい見分けポイントは、白帯という翅にある模様です。

\次のページで「黒いアゲハ蝶にはスピリチュアルな意味も!」を解説!/

ミヤマカラスアゲハ
・前翅:幅が均等で黄色がかった白帯がある
・後翅:幅が均等でハッキリとした白帯がある

カラスアゲハ
・前翅:幅が末広がりでぼやけた白帯がある
・後翅:なし

ミヤマカラスアゲハの後ろ翅(裏面)には、ハッキリと白い線が入っています。また前翅の表面にも黄色がかった白帯が。ペン先が四角いマーカーで書いたような、幅が等しい線であることもポイントです。

カラスアゲハも前翅には白帯が入っていますが、末広がりでぼやけています。後翅には白帯がないため、前翅で見分けがつかない場合はチェックしてみてください。

黒いアゲハ蝶にはスピリチュアルな意味も!

カラスアゲハやクロアゲハなど、黒い翅の蝶はスピリチュアルな意味を持っています。何となく不吉に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。どのような意味を持っているのかご紹介していきます。

変化の訪れを表す蝶・魂を運ぶ蝶

黒い蝶は「変化の訪れを表す蝶」や「魂を運ぶ蝶」と言われています。今の生活や状況が変わることを告げていたり、亡くなった方からのメッセージを運んでくるようです。

仕事や人間関係などで悩んでいるときに黒い蝶が現れた場合、今の状況から抜け出せることを意味します。お墓参り中や故人を偲んでいるときに現れた場合は、黒い蝶を通して亡くなった方があなたに想いを伝えているのかもしれません。

悩んでいたり悲しんでいたり、ツラい状況のときにそっと背中を押してくれているようですね。近くに黒い蝶が現れたら、「何かのサインかも」と少し思い出してみてください。

見分ける際は翅に注目してみよう

カラスアゲハとクロアゲハには様々な違いがあります。その中で最も見分けるポイントとなるのは翅です。青緑色にキラッと輝く翅であればカラスアゲハ、真っ黒な翅であればクロアゲハと覚えておきましょう。

また後ろ翅にある尻っぽのような突起の長さも違いがあります。長ければカラスアゲハで短ければクロアゲハです。地面や花にとまっていたら、ぜひ近くで観察してみてくださいね。

" /> カラスアゲハとクロアゲハの違いは名前だけ?特徴や見分け方も生き物好きライターが詳しくわかりやすく解説 – Study-Z
生き物・植物雑学

カラスアゲハとクロアゲハの違いは名前だけ?特徴や見分け方も生き物好きライターが詳しくわかりやすく解説

この記事ではカラスアゲハとクロアゲハの違いについてみていきます。どちらもキレイな黒い翅をもっている蝶というイメージがあるんじゃないか。わかりやすい違いはずばり翅にあるようですが、生息場所や幼虫の時の見た目など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんなカラスアゲハとクロアゲハの違いを、そもそもどんな蝶であるか特徴から確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。生き物をモチーフにしたイラストなども描いている。様々な視点から違いを詳しく解説。

そもそもカラスアゲハとクロアゲハって?

image by iStockphoto

カラスアゲハとクロアゲハは蝶の仲間です。外でたまに見かけるという方はいらっしゃると思いますが、地域によっては全然見かけない場合もあります。違いを知る前に、どんな蝶であるのか確認していきましょう。

どちらも黒色の羽を持つ蝶

カラスアゲハとクロアゲハは、黒い翅(はね)を持つアゲハチョウの仲間です。名前に「カラス」や「クロ」とついているのも、翅の色からきていると考えられますね。どちらも見た目はよく似ていますが、全く同じ種類の蝶というわけではありません。

黒いアゲハチョウの仲間は何種類かいますが、全体的に森林や山間で見かけることが多いです。食べ物を求めて飛んでいるだけでなく、何頭か地面に集まって吸水している姿なども見られます。

アゲハチョウの場合、水を飲んでいる個体はオスであることがほとんどです。理由はまだ解明されていませんが、メスを探し求めて飛び回ることも多いため、栄養を補給している説などがあります。

日本で見ることができる黒いアゲハ蝶の主な仲間は以下です。

黒いアゲハ蝶の仲間
・オナガアゲハ
・ジャコウアゲハ
・ナガサキアゲハ
・ミヤマカラスアゲハ
・モンキアゲハ など

違い(1)見た目

image by iStockphoto

一見すると同じ蝶だと勘違いしがちなカラスアゲハとクロアゲハですが、見た目にも様々な違いがあります。どちらの蝶なのか迷ったとき、一番手がかりになるのが見た目の特徴です。それぞれのポイントをしっかりと押さえていきましょう!

カラスアゲハ:青緑色のメタリックな輝きを持つ翅/尾が長い

カラスアゲハは黒い蝶ですが、よく見るとだた黒い色という訳ではありません。光があたると、鱗粉が青緑色のメタリックな色に輝きます。また後ろ翅の下側にある、尾のような突起(尾状突起)が長めであることも特徴です。模様は性別によっても変わります。以下にポイントをまとめてみました。

\次のページで「クロアゲハ:真っ黒な翅/尾が短い」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: