今回のテータは気体の溶解です。水素、酸素、窒素など、身の回りには様々な気体がある。その気体は水に溶けるでしょうか?
実は、気体にも水に溶けやすい気体と溶けにくい気体がある。その違いは何でしょうか。そして、気体の性質以外にも気体を水に溶かしやすくする方法を解説していきます。

今回は水に溶けやすい気体と溶けにくい気体の違いと、水に気体を溶けやすくする方法を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

気体の定義とは

image by iStockphoto

まずは、気体の定義をおさらいしていきましょう。「気体」をwikipediaで検索してみると次のように書かれていました。

気体(きたい、英: gas)とは、物質の状態のひとつであり、一定の形と体積を持たず、自由に流動し圧力の増減で体積が容易に変化する状態のこと。 

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%97%E4%BD%93

気体は物質の三態のひとつです。「固体」「液体」「気体」という物質の三態は化学の教科書で必ず出てくる重要なキーワードなので、チェックしておいてくださいね。

物質の三態は温度と圧力を変化させると制御できるので、すべての物質は「気体」になりうるということです。常温常圧では液体の水も、温度をあげれば沸騰して気体の水蒸気に変化しますね。また、常温常圧で気体の窒素も温度を冷やして、-196℃以下にすれば液体になります。これが液体窒素です。

気体は水に溶けるのか

ここからは、水に溶けるとはどういうことなのか、簡単に解説していきます。気体が水に溶けるためには、「分子が極性を持つ」「電離する」「水と反応する」この3つのどれかが必要です。どれも必ず、気体分子が水と水和するところからスタートします。

つまり、気体分子が水和できないと、物質が水に溶けることができないということです。「水和」とはどのような現象なの?と思った方は、別の記事で水和について解説しているので、合わせてチェックしておいてください。

\次のページで「水に溶けやすい分子と溶けにくい分子はどう違う?」を解説!/

水に溶けやすい分子と溶けにくい分子はどう違う?

気体が水に溶けるためには、「分子が極性を持つ」「分子が電離する」「分子が水と反応する」3つのどれかが必要と解説しました。つまり物質を構成する分子が水和できないと水に溶けることができません。ここからは、代表的な気体分子が水に溶けるのかを紹介していきますね。

水に溶けやすい分子と溶けにくい分子を紹介

まず、水に溶けやすい分子の代表ですが「アンモニア」「二酸化硫黄」「二酸化炭素」などがあります。一方で水に溶けにくい分子の代表ですが、「水素」「酸素」「窒素」などです。

アンモニア分子は極性を持ち、さらに水と反応します。そのためアンモニアが溶けた水はアルカリ性を示すんです。また、二酸化硫黄分子は極性を持ちます。

二酸化炭素分子は極性を持ちませんが、分子内で電子の偏りがあるので、水と反応するんです。二酸化炭素分子が溶けた水は炭酸水と呼ばれますが、実は二酸化炭素と水が反応すると、炭酸(H2CO3)ができます。炭酸が水素イオンを出すので、炭酸水は酸性なんですね。

水素や酸素、窒素は分子自体に極性がない無極性分子です。さらに電離せず、水とも反応しないため、アンモニアなどの分子と比べて水に溶けることができません。

\次のページで「気体の溶解度とは」を解説!/

気体の溶解度とは

気体の溶解度とは

image by Study-Z編集部

気体が水へ溶ける量をまとめたものが気体の溶解度です。水1Lに対して、何molの気体が溶けるか を表したもので定義されています。

図を見ていただくと分かりますが、水に溶けやすい分子と水に溶けにくい分子を比較すると、溶解度に大きな差があることが分かりますね。アンモニアや二酸化硫黄、二酸化炭素は「気体分子に極性がある」「気体分子が水と反応する」といった特徴があるため、水に多く溶け込むことができます。

一方で、水に溶けにくい分子の「水素」「酸素」「窒素」は気体分子は無極性で、反応性が低く水と反応できないんです。

温度を上げると気体は溶けにくくなる?

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物質を水に溶かしやすくするとき、「温度を上げる」ことを一番に思いつきませんか?しかし、気体の場合は様子が違います。先ほどの溶解度の表を見てみると、温度が上がるほど、気体は水に溶けにくくになるんです。

その理由は…温度が上がるほど、気体分子の熱運動が活発になるため。つまり、水面から分子が飛び出して気体に戻ってしまうからなんです。

圧力を上げることで気体は溶けやすくなる「ヘンリーの法則」とは

では、気体を水に溶けやすくするためには、どうしたらいいのでしょうか。そこで注目するのが「ヘンリーの法則」です。ヘンリーの法則は、気体を扱う問題でよく出題される法則なので、チェックしておいてくださいね。

「温度と溶媒の量が一定であるとき、溶媒に溶ける気体の物質量は圧力に比例する」というのがヘンリーの法則。圧力を大きくすると、溶媒に溶ける気体の物質量は多くなるということです。

圧力が2倍、3倍になると、気体の溶ける物質量も2倍、3倍になるということですね。

ヘンリーの法則は、水への溶解度が小さい気体(水素や酸素など)で成り立つ法則であることも覚えておいてください。ヘンリーの法則は、別の記事でさらに詳しく解説しているため、ぜひあわせてチェックしてみてください。

水に溶けない分子を集める実験方法とは

水上置換法svg.svg
すじにくシチュー - 投稿者自身による著作物, CC0, リンクによる

水素や酸素は水に溶けにくいと先ほど解説しました。気体分子が水に溶けにくい性質を利用した、気体の捕集方法があります。それが「水上置換法」です。

化学実験で必ず学習する気体の捕集方法ですね。気体の捕集方法は、大きく分けて3つありますが、覚えていますか。「水上置換法」「上方置換法」「下方置換法」の3つですが、気体の性質に応じてそれぞれの捕集方法を使い分けます。

水上置換法を使う例としては、塩酸と金属を反応させた際に発生する気体を捕集する場合です。この反応では、水素が発生しますが、水素は水に溶けにくい気体なので、水上置換法を使うことができます。

水上置換法は、水で満たされた捕集瓶の中に気体を集めていきます。発生した気体は空気と混ざることがないため、純粋な気体を集めることができるんです。

分子が水に溶けるための3要素・ヘンリーの法則・「水上置換法」を要チェック!

今回は、水に溶けやすい分子と水に溶けにくい分子の違いと、分子が水に溶けるために必要な特徴を解説しました。分子が水に溶けるために必要な3つの要素「極性を持つ」「電離する」「水と反応する」は覚えておいてください。

そして、ヘンリーの法則を解説しました。ヘンリーの法則は、気体を扱う問題では頻出の法則です。圧力と気体分子の溶解度の変化はぜひチェックしておいてくださいね。

また、水素や酸素など、水に溶けにくい気体分子を捕集するための「水上置換法」を紹介しました。「水上置換法」「上方置換法」「下方置換法」はそれぞれ特徴があり、気体分子によって使い分ける必要があります。

それぞれの特徴もぜひチェックしておいてくださいね。

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化学理科

水素は水に溶ける?水に溶けやすい気体と溶けにくい気体の違いを理系ライターがわかりやすく解説!



今回のテータは気体の溶解です。水素、酸素、窒素など、身の回りには様々な気体がある。その気体は水に溶けるでしょうか?
実は、気体にも水に溶けやすい気体と溶けにくい気体がある。その違いは何でしょうか。そして、気体の性質以外にも気体を水に溶かしやすくする方法を解説していきます。

今回は水に溶けやすい気体と溶けにくい気体の違いと、水に気体を溶けやすくする方法を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

気体の定義とは

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まずは、気体の定義をおさらいしていきましょう。「気体」をwikipediaで検索してみると次のように書かれていました。

気体(きたい、英: gas)とは、物質の状態のひとつであり、一定の形と体積を持たず、自由に流動し圧力の増減で体積が容易に変化する状態のこと。 

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%97%E4%BD%93

気体は物質の三態のひとつです。「固体」「液体」「気体」という物質の三態は化学の教科書で必ず出てくる重要なキーワードなので、チェックしておいてくださいね。

物質の三態は温度と圧力を変化させると制御できるので、すべての物質は「気体」になりうるということです。常温常圧では液体の水も、温度をあげれば沸騰して気体の水蒸気に変化しますね。また、常温常圧で気体の窒素も温度を冷やして、-196℃以下にすれば液体になります。これが液体窒素です。

気体は水に溶けるのか

ここからは、水に溶けるとはどういうことなのか、簡単に解説していきます。気体が水に溶けるためには、「分子が極性を持つ」「電離する」「水と反応する」この3つのどれかが必要です。どれも必ず、気体分子が水と水和するところからスタートします。

つまり、気体分子が水和できないと、物質が水に溶けることができないということです。「水和」とはどのような現象なの?と思った方は、別の記事で水和について解説しているので、合わせてチェックしておいてください。

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