今回は商業簿記と工業簿記の違いについてみていきます。「簿記」という言葉は聞いたことあるよな。簿記検定を持っていると就職で役に立つことも多く、人気の高い資格です。書類選考で有利になる可能性が高いから、持っておいて損はないでしょう。ですが、簿記には「商業簿記」と「工業簿記」の2種類あるらしいのです。何が違って、どっちを勉強したらいいのか…。そこで今回は会計事務所職員の早坂佳歩を呼んです。検定の種類や業種による簿記の違いなどをわかりやすく解説していきます。

ライター/早坂佳歩

会計事務所に勤務しながら副業webライターとして活動している。日商簿記検定2級・全商簿記検定1級保有の商業高校卒業生が、わかりやすく解説していく。

簿記の検定には種類がある

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簿記の勉強を始めるとき、検定合格を目標とすることが多いのではないでしょうか。簿記検定には王道の一般向け・高校生向け・専門学生向けの3種類あります。まずは検定の種類からみていきましょう。

その1:日商簿記検定

簿記検定といえば、一般的には日商簿記検定を指すことが多いです。日本商工会議所主催の簿記検定で、1級に合格すると税理士試験の受験資格を得ることができます。株式会社の経営管理にも役立ち、企業の経理担当には必須資格となっていることも多いです。

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その2:全商簿記検定

全商簿記検定とは「全国商業高等学校協会主催簿記実務検定」の略称です。名前の通り、商業高校の生徒に向けた検定で、日商簿記検定よりも難易度は低めになっています。全商簿記検定の1級を取得することで「学校で学んだことが身についている」という基準にもなり、学校からの推薦で役に立つことも多いです。

その3:全経簿記検定

全経簿記検定経理専門学校の生徒に向けた検定で、社団法人全国経理教育協会が主催しています。全商簿記検定より難しく、日商簿記検定よりやや簡単です。全経簿記検定には1級の上に上級があり、難易度は日商簿記検定1級と同等もしくはそれ以上。上級合格者には、日商簿記検定1級合格者と同じく税理士試験の受験資格が付与されます。

商業簿記と工業簿記の違い

そもそも簿記とは「帳簿記入」の略称で、企業版の家計簿のようなものです。この簿記はさらに「商業簿記」と「工業簿記」に分けられます。では、両者の違いをみていきましょう。

商業簿記:一般的な簿記

一般的な「簿記」とは商業簿記のことを指します。商品を仕入れて販売した、というお金の流れや結果を帳簿に記していくのが商業簿記です。

例えば1,000円の商品を現金で仕入れて1,200円で販売した場合。まずは資産が1,000円増えて、現金が1,000円減りますね。そして1,200円の売上が生じて、200円の利益が出ます。このような日々の取引を記帳していき、まとめることで決算報告書財務諸表が出来上がるのです。

工業簿記:製造業を対象とした簿記

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工業簿記とは、製造業を対象とした簿記のことです。仕入・販売を主としている商業経営と違い、製造業は製品を作るのにかかるお金の計算が必要となります。「原価計算」という言葉を聞いたことはありますか?材料を仕入れて加工したとき、製品1個あたりの原価を計算しないと利益は出ません。

商業簿記の例と同じ金額で考えてみましょう。1,000円で仕入れた材料を加工するのに、機械の稼働や人件費で300円かかったとします。すると製品の原価は1,300円になり、1,200円で販売したら赤字になってしまいますね。このような計算をするのが工業簿記です。

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勘定科目にも違いがある?

工業簿記には商業簿記にない加工の工程があるぶん、使う勘定科目が多くなります。加工して完成させた「製品」や、作りかけの製品である「仕掛品」「材料」「労務費」などは工業簿記でしか使いません。

受験にはどっちが必要?

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商業簿記と工業簿記の違いはわかりましたね。では検定合格を目指すには、どちらを勉強すれば良いのでしょうか。判断基準となるのは、受験する等級です。一般的な日商簿記検定をもとにみていきましょう。

3級は商業簿記のみ

3級で必要なのは、簿記の基礎的な知識です。日々の取引の処理や、簡単な決算書の作成など、小規模企業の経理を想定した問題となっています。経理担当でなくとも、会社に勤めているのであれば知っておきたいレベルの内容です。科目は商業簿記のみで、合格率は約50%。独学でも合格を目指せるレベルと言えるでしょう。

2級以上は商業簿記と工業簿記

2級からは工業簿記と原価計算が試験内容に加わります。企業の経営状況を理解するには、2級程度の知識が必要です。1級になると商業簿記と工業簿記の試験が分かれ、どちらも合格しなければ1級取得とはなりません。合格率は2級で20%1級で10%前後です。3級に比べて、ガクンと下がりますね。会計に対する高度な理解が求められますことがわかります。

商業簿記と工業簿記はどっちが難しい?

商業簿記と工業簿記、どちらを難しいと感じるかは人それぞれです。工業簿記が加わる2級から合格率が下がるため、工業簿記の方が難しそうな印象かもしれませんね。工業簿記は計算が多く、数学が得意であれば比較的理解しやすいです。それに対して商業簿記は広範囲の暗記と文章を読み解く力が必要なため、国語が得意な方に向いています。

文系の方は工業簿記が、理系の方は商業簿記が難しいと感じることが多いでしょう。

\次のページで「自分の求める知識に応じて学んでみよう」を解説!/

自分の求める知識に応じて学んでみよう

基礎をまず知りたい!という場合は3級の商業簿記を、原価計算をしたい場合は工業簿記を、会計のエキスパートを目指すならどちらも高レベルで。自分の学びたいものによって範囲は変わってきます。漫画形式で進められるわかりやすい本も多く出ていますので、一度触れてみてはいかがでしょうか。難しそうでも、意外と向いているかもしれませんよ。

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商業簿記と工業簿記の違いとは?受験に必要なのはどっち?対象の業種や難易度も会計事務所職員がわかりやすく解説

今回は商業簿記と工業簿記の違いについてみていきます。「簿記」という言葉は聞いたことあるよな。簿記検定を持っていると就職で役に立つことも多く、人気の高い資格です。書類選考で有利になる可能性が高いから、持っておいて損はないでしょう。ですが、簿記には「商業簿記」と「工業簿記」の2種類あるらしいのです。何が違って、どっちを勉強したらいいのか…。そこで今回は会計事務所職員の早坂佳歩を呼んです。検定の種類や業種による簿記の違いなどをわかりやすく解説していきます。

ライター/早坂佳歩

会計事務所に勤務しながら副業webライターとして活動している。日商簿記検定2級・全商簿記検定1級保有の商業高校卒業生が、わかりやすく解説していく。

簿記の検定には種類がある

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簿記の勉強を始めるとき、検定合格を目標とすることが多いのではないでしょうか。簿記検定には王道の一般向け・高校生向け・専門学生向けの3種類あります。まずは検定の種類からみていきましょう。

その1:日商簿記検定

簿記検定といえば、一般的には日商簿記検定を指すことが多いです。日本商工会議所主催の簿記検定で、1級に合格すると税理士試験の受験資格を得ることができます。株式会社の経営管理にも役立ち、企業の経理担当には必須資格となっていることも多いです。

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