この記事では「本家(ほんけ)」と「元祖(がんそ)」の違いについてみていきます。

どちらもお店の宣伝や屋号などに使われているため、なんとなく「ここが始まり」の意味だと思うよな。その違いはずばり、“創始者”か“最初の家(店)”かなのですが、調べてみると他にも色々あるみたいです。

今回はそんな「本家」と「元祖」の違いを、神社や名所巡りの他にカフェ通いが好きなライターさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めました。わかりやすい言葉で説明します。

「本家」と「元祖」の違いとは?

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皆さんも旅行先や街中などで、「本家! 栗ようかん」「元祖! 芋ようかん」のような看板や宣伝を目にしたことがあるかと思います。この「元祖」や「本家」とは一体“何”で、区分する際はどんな"定義"があるのでしょうか?

それぞれが"最初”で“中心”となるイメージがありますが、どちらが「格上」もしくは「最初」なのか色々と調べてみました。

「本家」:一族の血筋

「本家」とは、一族の中心や元となる“血筋・血統”のことで、茶道や華道などさまざまな芸事の“本筋・家元(芸道などを継承している家系)の意味です。本家から離れて作った新たな家を「分家(ぶんけ)」といい、例えば、三兄弟の長男が実家(=本家)を継いだ場合は次男と三男が"分家"になります。

飲食関係の“のれんわけ”などは、本家から許しを得たことで「本家○○」と名乗れるわけです。つまり、系列(一族の血筋)の家や店となります。

ほん‐け【本家】
1 一族の中心となる血筋の家。
2 流派などで、そのおおもととなる家。家元。宗家。「観世流の—」
3 分家の出たもとの家。⇔分家。
4 妻の親のほうの家。里方。
「三日の夜は—、五日の夜は摂政殿より」〈栄花・さまざまの喜び〉
5 「本所(ほんじょ)1」に同じ。

(出典:weblio辞書,https://www.weblio.jp/content/%E6%9C%AC%E5%AE%B6)

「元祖」:創始者

「元祖」とは、家系(=様々な関係で結ばれる特定の家族)の最初の人、ある一つの物事の“創始者”、最初に始めた人という意味で、そこから「発祥」や「ルーツ」などと言い換えることができます。

例えば、「元祖バナナあんぱん」を名乗っている店は、商品の「バナナあんぱん」を最初に作った「人=バナナあんぱんを最初に作ったのはうちの店主」と主張しているわけです。このお店で修行や正式なレシピを貰い“のれんわけ”やテンスの許可を貰えれば、他のお店でも「元祖バナナあんぱん」を名乗れます。

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がん‐そ〔グワン‐〕【元祖】
1 家系の最初の人。始祖。
2 物事を最初に始めた人。鼻祖。創始者。「二刀流の—」
3 仏教の一宗の開祖。特に、法然をさす。

(出典:weblio辞書,https://www.weblio.jp/content/%E5%85%83%E7%A5%96)

「本家」と「元祖」の違いを一言で説明するなら“対象が違う”です。
■元祖…物事の創始者=人が対象。
■本家…一族の中心や元となる血筋=家や店が対象。
※2つの言葉は上記が元になっていますが、実際の使い方・使われ方については次の項目で説明します。

「本家」と「元祖」どちらが格上?

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ここまで2つの違いを調べてきましたが、「本家」と「元祖」はどちらが格上なのでしょう?実際に使われている「本家」と「元祖」を例にあげながら、色々と調べてみました。

「本家」は「元祖」と混合されがち?

前の項目では2つの違いを調べてみましたが、実は「本家」はお店にも用いることがあるため「元祖」と混同されがちなのが事実です。

例えば、「元祖バナナあんぱんの店」の創始者の家系が代々営むお店を「本家バナナあんぱんの店」と呼ぶことがあります。このように、さまざまな事情や場合によっては「本家」と「元祖」どちらの条件もあてはまることがあるのです。

「本家」と「元祖」に厳密なルールはない

前述した「本家」についてもう少し調べてみました。「本家バナナあんぱん」の店で修行をして“のれんわけ”した店を「分家」と考えた場合、「元祖バナナあんぱん」の店と名乗ることができます。

とは言え、2つに厳密なルールがないため、のれんわけしたお店が「本家」から許可を貰い「本家バナナあんぱん」と名乗ることもあるようです。

「本家」と「元祖」格上なのは?

「本家」は一族の中心となる血筋、「元祖」は物事の創始者と、それぞれ異なる意味を持つためどちらが格上かは比べることはできません

また2つの使い方に明確なルールが存在しないため、“元”となる相手が“許可”することで「分家」が「本家」や「元祖」を名乗る場合もあります。そのため、商売として宣伝するため「本家△△」「元祖○○」と表現することもあるようです。チェーン店などで“屋号”の一部として使うお店も見掛けますよね。

ここまでの簡単なまとめです。

■「本家」と「元祖」の区別はあるものの、厳密なルールはなく使われ方は曖昧で混合されがち
■「本家」と「元祖」はそれぞれ異なる意味を持つうえ、2つの使い分けに明確なルールもないのでどちらが格上かは比べられない

\次のページで「似た言葉「真打ち」や「初代」とは?」を解説!/

似た言葉「真打ち」や「初代」とは?

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「本家」や「元祖」と似た言葉に「真打ち(真打)」「初代」「宗家」などがあります。これらは「本家」や「元祖」などと同じ意味なのでしょうか?こちらの項目では、それぞれの意味を調べてみました。

真打ち:最高の技量を持つ存在

「真打ち=真打(しんうち)」とは落語や講談師の身分のひとつで、最高の技量を持つ者です。そのため、興行の最後の出番(=トリ)での出演権利を与えられることが転じて、「最後や遅れて登場する」を「最高の力量を持つ者=お客が期待する人物」などに使われます。

■落語家の□□一門の◇◇が真打ちに昇格した。
■お待ちかね!次はいよいよ真打ち登場、○○代目△△師匠の十八番(おはこ)の演目。

初代:最初の代・人

「初代(しょだい)」とは、ある系統(家系・芸事)において最初の代や人を意味します。“最初の人”を意味する「元祖」に近いですね。ちなみに、「家系(かけい)」の初代は「先祖」および「祖先」になります。

家元・宗家:芸道のトップ

一般に、日本の芸道(舞踊、茶道、華道、武道など)における流派のトップを「家元(いえもと)」と言いますが、似た呼称に「宗家(そうけ)」があります。

おおまかではありますが、「家元」は特に華道、茶道、日本舞踊など芸能の伝統を「本家」としてきた家筋(いえすじ)や当主、「宗家」は芸道でその流派の“正統”を伝えて来た家となるわけです。前述した人の「元祖」や店の「本家」と似ていますね。

\次のページで「開祖・始祖:一番最初に始めた人」を解説!/

開祖・始祖:一番最初に始めた人

「開祖(かいそ)」と「始祖(しそ)」は、ある物事を一番最初に始めた人の意味合いを持つ言葉です。明確に分けると、「開祖」は宗教で宗派を最初に開いた人、「始祖」は学問・伝統芸能で最初に流派を開いた人を指します。

■開祖…宗教・学問・伝統芸能において初めて一派(一門)を開いた人。
 →教祖、宗祖など宗派によって異なった名称。
 例)仏陀は仏教の開祖。
■始祖…ある物事を最初に行った人。「元祖」「先祖」と同義。
 →禅宗における達磨大師の別名。
 例)千利休は千家流茶道の始祖。
※それぞれの「例)」については混同しないよう注意が必要。

本舗:総本店

「本舗(ほんぽ)」とは、ある特定の商品を製造・販売するおおもとの店や総本店を意味します。ちなみに、創業側に「本店」「総本店」「總本店(そうほんてん)」「本家」「総本家」などを加える場合は、「分家」や支店、"のれんわけ"先と区別する場合です。

■本舗…アカチャンホンポ(赤ちゃん本舗)など。
■本店…西武池袋本店など。
■総本店…千疋屋(せんびきや)総本店など。
■總本店…木村屋總本店など。

■真打ち…落語家などにおける最高身分。最高の技量を持つ人物、刀など。
■初代…最初の代や人。
■家元…茶道や日本舞踊など芸能の家筋や当主。
■宗家…芸道で正統な家。
■開祖…宗教などを開いた人。
■始祖…最初に行った人。
■本舗…おおもとの店。

正しい意味を知らずに使いがちな「本家」と「元祖」

お店の箔や印象付けをするために、街中には「本家」や「元祖」の煽り文句が溢れています。わかっていながら使用している場合は理由や方針があるかもしれませんが、修行やのれんわけをせず誤った使い方をしている場合もあるようです。

似た言葉として紹介した「真打ち」や「家元」なども同様に、これらは日本文化を形作るために使用してきた言葉とも言えます。おおよその意味を踏まえながら使ったり、お店や家柄についてを理解してみて下さいね。

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5分で分かる本家と元祖の違い!定義や真打ち・初代との違いも小説家兼ライターがわかりやすく解説!

この記事では「本家(ほんけ)」と「元祖(がんそ)」の違いについてみていきます。

どちらもお店の宣伝や屋号などに使われているため、なんとなく「ここが始まり」の意味だと思うよな。その違いはずばり、“創始者”か“最初の家(店)”かなのですが、調べてみると他にも色々あるみたいです。

今回はそんな「本家」と「元祖」の違いを、神社や名所巡りの他にカフェ通いが好きなライターさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めました。わかりやすい言葉で説明します。

「本家」と「元祖」の違いとは?

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皆さんも旅行先や街中などで、「本家! 栗ようかん」「元祖! 芋ようかん」のような看板や宣伝を目にしたことがあるかと思います。この「元祖」や「本家」とは一体“何”で、区分する際はどんな”定義”があるのでしょうか?

それぞれが”最初”で“中心”となるイメージがありますが、どちらが「格上」もしくは「最初」なのか色々と調べてみました。

「本家」:一族の血筋

「本家」とは、一族の中心や元となる“血筋・血統”のことで、茶道や華道などさまざまな芸事の“本筋・家元(芸道などを継承している家系)の意味です。本家から離れて作った新たな家を「分家(ぶんけ)」といい、例えば、三兄弟の長男が実家(=本家)を継いだ場合は次男と三男が”分家”になります。

飲食関係の“のれんわけ”などは、本家から許しを得たことで「本家○○」と名乗れるわけです。つまり、系列(一族の血筋)の家や店となります。

ほん‐け【本家】
1 一族の中心となる血筋の家。
2 流派などで、そのおおもととなる家。家元。宗家。「観世流の—」
3 分家の出たもとの家。⇔分家。
4 妻の親のほうの家。里方。
「三日の夜は—、五日の夜は摂政殿より」〈栄花・さまざまの喜び〉
5 「本所(ほんじょ)1」に同じ。

(出典:weblio辞書,https://www.weblio.jp/content/%E6%9C%AC%E5%AE%B6)

「元祖」:創始者

「元祖」とは、家系(=様々な関係で結ばれる特定の家族)の最初の人、ある一つの物事の“創始者”、最初に始めた人という意味で、そこから「発祥」や「ルーツ」などと言い換えることができます。

例えば、「元祖バナナあんぱん」を名乗っている店は、商品の「バナナあんぱん」を最初に作った「人=バナナあんぱんを最初に作ったのはうちの店主」と主張しているわけです。このお店で修行や正式なレシピを貰い“のれんわけ”やテンスの許可を貰えれば、他のお店でも「元祖バナナあんぱん」を名乗れます。

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