この記事では「側杖を食う」について解説する。

端的に言えば「側杖を食う」の意味は「とばっちりを食うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「側杖を食う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「側杖を食う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「側杖を食う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。ちなみに読み方は「そばづえをくう」です。

「側杖を食う」の意味は?

「側杖を食う」には、次のような意味があります。

自分と関係のないことで思わぬ災難を受ける。「他人のけんかの―・ってけがをする」「事故の―・って待ち合わせに遅れる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「側杖を食う」

この言葉は、「自身とは関係のないことのために、災難を受けてしまう」ということを意味する慣用表現です。

「自身とは関係のない」というところがポイントで、「とばっちり・巻き添えを受ける」のニュアンスが表れています。自分がそのトラブルの関係者だったり、中心にいる人物だとしたらこの表現は使えません。

「とばっちり」のため、「自分は悪くない・(相手が)ひどい」という意味合いを持つことも。文章中に登場した場合、どんな意図でこの表現が用いられているのかには注意が必要です。

余談ですが、「災難を被る(こうむる)」という言い方を聞いたことはあるでしょうか。「被害者」の「被」でもありますが、読み方を問われやすい漢字です。「側杖を食う」の意味を選ばせる問題などでも出てくるかもしれません。一緒に覚えておきましょう。

「側杖を食う」の語源は?

次に「側杖を食う」の語源を確認しておきましょう。「側杖」とはもともと、「喧嘩などの近く(側・傍)にいて、打ち合っている杖などに思わず打たれてしまうこと」を意味する言葉でした。これが転じて、「関係ないトラブルに巻き込まれる」という用法まで拡大していったわけですね。

このため、「側杖を食う」を略して「側杖」とだけ言う場合もあるようです。何かトラブルに遭って「まったくとんだ側杖だよ」という感じでしょうか。「側杖」を「傍杖」と書くこともあるので、こちらも押さえておいてください。

それにしても「喧嘩の近くにいて杖に打たれる」場面なんて、現代ではなかなか想像がつきにくいのですが、この言葉が生まれた時代ではそんなシーンが一般的だったのでしょうか。現代と昔との違いに思いを馳せてみるのも面白いですね。

\次のページで「「側杖を食う」の使い方・例文」を解説!/

「側杖を食う」の使い方・例文

「側杖を食う」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・とても便利なアプリを使っていたのに、運営と製作会社のトラブルによってサービスがいきなり終了してしまい、利用者としては側杖を食った形だ。
・流通関連の仕事は、生産量や交通インフラの問題、円高円安など多くの影響要因を抱えているせいで、側杖を食う結果になったとしか言えない状況になることも多い。
・話題のお店に行って、写真を撮ってシェアしようとしただけなのに、芸能人の盗撮問題があったとかで撮影自体が禁止されていて、ひどい側杖を食わされた。

「自分とは関係のない災難を受ける・とばっちりを食う」というニュアンスが伝わりますでしょうか。「自分が受けた災難」と「その原因」に注目です。例文一番目なら、「サービスが使えなくなったこと」と「運営側の問題」ですね。この両者に直接的な関係が無い場合に、この表現を使うことができます。

そのため、この言葉の裏側には「自分は悪くなかったのに」という被害者意識的なものも読み取れるかもしれません。使い方によっては、相手への非難になっていることもあるため、使用意図にまで注意して読み解いてください。

一方で、たとえ直接的な関係は無かったとしても、同じ組織間や家族間で「自分は関係ない」という意味合いだけで使っていたら、その人の無責任感が強調されることにもなるでしょう。色々な読解のポイントとなる表現と言えますね。

「側杖を食う」の類義語は?違いは?

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「側杖を食う」の類義語には、「とばっちり」「あおりを食らう」を紹介します。

「とばっちり」「あおりを食う」

「とばっちり」は「巻き添えを食うこと。トラブルの近くにいて、被害を受けること」。「あおりを食う」は、「周囲の状況から、思わぬ被害を受けること」

両者とも似た意味ですが、「とばっちり」のほうがより「無関係なことに巻き込まれる」ニュアンスが強いでしょうか。「あおりを食う」は、「不況のあおりを食って~」などと言うように、トラブルの原因と自身の問題が繋がっているイメージです。

それぞれ語源として、「とばっちりは」「迸り」と書き、「とばちり」という言葉が変化したもの。これは「そばにいて水しぶきを受けること」を意味しています。「あおりを食う」は「強い風の衝撃を受けること」。両者とも自然の影響から出来た表現でしょうか。そんな場面を想像しながら使ってみましょう。

\次のページで「「側杖を食う」の対義語は?」を解説!/

・弟二人がくだらないことで喧嘩を始めて、呆れて関わらないようにしていたのに、なぜか自分まで怒られてしまって全くとばっちりもいいところだ。
・急いでいたので一般道路ではなく首都高速を使ったら、事故で規制が行われていて思わぬあおりを食った形で大幅に遅刻してしまった。

「側杖を食う」の対義語は?

「側杖を食う」の対義語は「対岸の火事」などが考えられます。

「対岸の火事」:自分の意は全く関係のないことなので痛くもかゆくもない

「対岸の火事」は「自分の意は全く関係のないこと。そのため、痛くもかゆくもないこと」を意味することわざです。言葉の語源としては、言葉そのまま「川の向こうで起こっている火事」。そこから連想して使われるようになった表現と言われています。

なんとも想像力豊かな表現と言えますが、もしかしたら、我関せずと知らぬ顔をしていたら火の粉が飛んできたりして大変なことになる可能性もありますね。その場合は「側杖を食った」と表現するのもいいでしょう。

不景気で他の業界で倒産が相次いでいることを対岸の火事だと思っていたら、いつかは自分たちにも大きな影響があるかもしれない。

「側杖を食う」の英訳は?

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「側杖を食う」の英訳は「get a by‐blow」で表すことができます。

「get a by‐blow」:横から殴られる

「by-」は、名詞や動詞の単語の頭に付く接頭辞で、「近くの、脇道の」という意味を与えるものです。日本語でも「バイパス(bypass=脇道)」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

それが「blow=(拳や棒で)殴ること」とセットになって、「横から殴られる=側杖を食う」という意味合いになったのですね。英語でも日本語と同様の使い方があるのは面白いところです。なお、「by-blow」だけでも「側杖・とばっちり」と名詞として使うことができますので、一緒に覚えておきましょう。

\次のページで「「側杖を食う」を使いこなそう」を解説!/

I got an unexpected by‐blow when watching the fight between my sisters.
姉たちの喧嘩を眺めていたら、思わぬ側杖を食った。

「側杖を食う」を使いこなそう

この記事では「側杖を食う」の意味・使い方・類語などを説明しました。実は読んで字のごとく、本当に「側・傍の杖で打たれること」が語源となっている言葉でした。巻き込まれた理不尽さもさることながら、あまりの唐突さに驚いてしまっているニュアンスが窺えます。

「まさかそんな、信じられない」という衝撃的な事件に巻き込まれた時に、使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【ことわざ】「側杖を食う」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「側杖を食う」について解説する。

端的に言えば「側杖を食う」の意味は「とばっちりを食うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「側杖を食う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「側杖を食う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「側杖を食う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。ちなみに読み方は「そばづえをくう」です。

「側杖を食う」の意味は?

「側杖を食う」には、次のような意味があります。

自分と関係のないことで思わぬ災難を受ける。「他人のけんかの―・ってけがをする」「事故の―・って待ち合わせに遅れる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「側杖を食う」

この言葉は、「自身とは関係のないことのために、災難を受けてしまう」ということを意味する慣用表現です。

「自身とは関係のない」というところがポイントで、「とばっちり・巻き添えを受ける」のニュアンスが表れています。自分がそのトラブルの関係者だったり、中心にいる人物だとしたらこの表現は使えません。

「とばっちり」のため、「自分は悪くない・(相手が)ひどい」という意味合いを持つことも。文章中に登場した場合、どんな意図でこの表現が用いられているのかには注意が必要です。

余談ですが、「災難を被る(こうむる)」という言い方を聞いたことはあるでしょうか。「被害者」の「被」でもありますが、読み方を問われやすい漢字です。「側杖を食う」の意味を選ばせる問題などでも出てくるかもしれません。一緒に覚えておきましょう。

「側杖を食う」の語源は?

次に「側杖を食う」の語源を確認しておきましょう。「側杖」とはもともと、「喧嘩などの近く(側・傍)にいて、打ち合っている杖などに思わず打たれてしまうこと」を意味する言葉でした。これが転じて、「関係ないトラブルに巻き込まれる」という用法まで拡大していったわけですね。

このため、「側杖を食う」を略して「側杖」とだけ言う場合もあるようです。何かトラブルに遭って「まったくとんだ側杖だよ」という感じでしょうか。「側杖」を「傍杖」と書くこともあるので、こちらも押さえておいてください。

それにしても「喧嘩の近くにいて杖に打たれる」場面なんて、現代ではなかなか想像がつきにくいのですが、この言葉が生まれた時代ではそんなシーンが一般的だったのでしょうか。現代と昔との違いに思いを馳せてみるのも面白いですね。

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