今回は「インジウム」という元素について解説していきます。インジウムは知名度が低い元素ではありますが、昨今注目されている重要な金属です。インジウムが含まれている製品は身近に存在しているため、この機会に学んでいこう。この記事では、インジウムの用途や性質等を化学に詳しいライターY.oBと一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。大学から現在まで化学に携わってきた元素に詳しいライター。

インジウムとは何?

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インジウムという元素をご存じでしょうか?この元素は中学理科や高校化学でもほとんど紹介されず、大学でも化学反応ではほぼ出てこないほど影が薄い存在です。しかしながら、インジウムは最近の注目されている元素の一つで、特定の分野ではなくてはならない存在であり、皆さんの身近にも存在している金属でもあります。

この章では注目のインジウムについて、特徴や性質について学んでいきましょう。

インジウムの特徴

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原子番号49、元素記号Inの希少金属の一つ。単体は柔らかく銀白色で常温で安定な金属です。硫化物鉱床や錫-多金属鉱床でしばしば産出されています。

インジウムという名前は輝線スペクトルの色がインジゴ(injigo)色であるため、インジウムと命名されました。輝線スペクトルは気体原子の発光によって得られる線スペクトルの事です。原子事に特徴的な波長を示すため、元素分析に使用されます。

インジウムの物理的な性質とは?

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インジウムは塊状では銀白色で周期表の第13族に属する金属になります。展延や延性に優れており、特に大切な性質は低融点である事と薄膜状では透明になる事です。金属材料なのでインジウムは電気を通しますが、透明で電気を通す材料はほぼありません。

また、どのくらい融点が低いかと言いますと、156℃しかなく、金属全体でもここまで低い金属は珍しいです。ナイフで切れるほどの柔らかさも持っているため、加工がしやすい事も特徴となります。

インジウムの化学的な性質とは?

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空気中、常温では安定して存在できます。酸と反応し溶解しますが、塩基や水、有機溶媒には溶解しません。酸水溶液中では水素を発生させながら、生成したインジウム三価が溶解します。人体への毒性は低いとされていますが、特定のインジウム化合物の中には強い肺障害性を発生する報告もあるため、注意が必要です。

化学反応に使用する事は少なく、反応例もほぼありません。有機インジウム反応剤を調整し、アルキル鎖を伸ばす方法や、カップリング反応に使用するパラジウム触媒の還元剤としての使用例があります。

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インジウムの歴史について解説!

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インジウムはどのように発見され、地球上にどのくらい存在しているでしょうか。また、地球上に満遍なく存在しているのか。この章ではインジウム発見の歴史と主要な産出国についてご紹介します。

インジウムを発見したのは?

Hieronymus Theodor Richter.jpg
Ernst Friedrich Wilhelm Hugo Höffert (1832–1903) - http://www.digiporta.net/index.php?id=949598802 Deutsches Bergbau-Museum, montan.dok, パブリック・ドメイン, リンクによる

インジウムを発見したのはドイツの化学者フェルナンド・ライヒとその助手のテオドール・リヒターです。当時、新元素であったタリウムを亜鉛鉱石から検出できないか分析をしていました。分析途中で見慣れない黄色の化合物に気がつき、それが報告にない未知の元素であることが判明します。この未知の元素がインジウムでした。

フェルナンド・ライヒは色盲のため、分析した線スペクトルをテオドール・リヒターが確認したところ、鮮やかな藍色(injigo)だったため、インジウムと命名しました。

インジウムの精製方法

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インジウムは亜鉛鉱石を原料として生産することができます。亜鉛鉱石から亜鉛や鉄のような金属を精製する過程で、ガリウムやインジウムが副生成物として生産。ガリウム、インジウム混合物を適切な抽出液やpHの調整を行うことで、インジウムだけを析出させる事ができます。

この時のインジウムは水酸化インジウムとして存在しており、さらに水酸化インジウムを電解製錬を行うことで高純度のインジウム単体にできるのです。

インジウムの産出国と希少性は?

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インジウムは地球上に偏在しているレアメタルの一つで、希少性が高いものになります。しかし、かつては日本が世界最大の産出国で、北海道の豊羽鉱山は世界最大のインジウム鉱山です。現在は簡便に取り出すことが難しくなったため、閉山しています。現在の主要な生産国は中国、韓国、日本です。

インジウムは今後需要が伸びていくと予想されています。現状は需要に対して供給が追いついていますが、新興国の成長とともに供給が間に合わなくなるかもしれません。

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インジウムの用途について解説!

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インジウムはタッチパネルや半導体、発光ダイオード等に使用され、それらを使用している業界が近年伸びているため需要も増えていきました。これからも重要度は高くなっていきます。この章ではインジウムの重要な化合物ITO、はんだ、そして発光ダイオードについて学んでいきましょう。

インジウム化合物ITOとは?

インジウム化合物ITOとは?

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インジウム化合物の一つであるITOとは酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide)の事です。主な用途は電極になります。ITOの優れている所は可視光領域の透過率が高いため、薄膜にした際にほぼ無色透明となる点です。電気伝導性が高く、透明な素材はほぼありません。液晶ディスプレイやタッチパネル、太陽電池等幅広い需要があります。

非常に優れた特性がありますが、欠点は曲げ耐性が低い事や価格が高い等です。代替品の研究も盛んに行われ、安価で環境にやさしい素材も出てきています。

インジウムの鉛フリーはんだとは?

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鉛フリーはんだ、無鉛はんだとは鉛をほとんど含まないはんだの総称です。一般的にはんだは鉛とスズの合金を言い、これまで多く使用されてきました。しかし、鉛は人体に悪影響があり、産業廃棄物としては地下水の汚染等の懸念があります。この問題を解決するためにインジウムの低い融点に注目し、研究や開発が盛んです

インジウムのLED用素子とは?

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LED(発光ダイオード)はLEDチップに電圧をかけることで発光します。発光する際の色の違いはチップに使用される化合物の種類が理由です。このチップを構成する化合物がインジウム化合物になります。例えば、AlInGaN(アルミニウムインジウムガリウム窒素)は青色、緑色に発光し、AlInGaP(アルミニウムインジウムガリウムリン)は黄色、赤色の発光です。

インジウムは半導体、LED等に使用されている大事な元素

インジウムは希少金属で高価ですが、それでも使用するのは理由があります。酸化インジウムスズの伝導性と無色透明である特徴や、発光ダイオードの素子等は現状代替品がないほど優秀な材料です。日本はこの優秀な材料の世界最大の産出国でした。現在ではリサイクルに研究と開発に注力しており、通信デバイスやタッチパネル等は今の生活には欠かせないものです。今後もインジウムは技術、生活を支えていくでしょう。

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化学原子・元素理科生活と物質

インジウムとは一体何?用途や性質・毒性・産出国などを現役研究員が5分でわかりやすく解説!

今回は「インジウム」という元素について解説していきます。インジウムは知名度が低い元素ではありますが、昨今注目されている重要な金属です。インジウムが含まれている製品は身近に存在しているため、この機会に学んでいこう。この記事では、インジウムの用途や性質等を化学に詳しいライターY.oBと一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。大学から現在まで化学に携わってきた元素に詳しいライター。

インジウムとは何?

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インジウムという元素をご存じでしょうか?この元素は中学理科や高校化学でもほとんど紹介されず、大学でも化学反応ではほぼ出てこないほど影が薄い存在です。しかしながら、インジウムは最近の注目されている元素の一つで、特定の分野ではなくてはならない存在であり、皆さんの身近にも存在している金属でもあります。

この章では注目のインジウムについて、特徴や性質について学んでいきましょう。

インジウムの特徴

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原子番号49、元素記号Inの希少金属の一つ。単体は柔らかく銀白色で常温で安定な金属です。硫化物鉱床や錫-多金属鉱床でしばしば産出されています。

インジウムという名前は輝線スペクトルの色がインジゴ(injigo)色であるため、インジウムと命名されました。輝線スペクトルは気体原子の発光によって得られる線スペクトルの事です。原子事に特徴的な波長を示すため、元素分析に使用されます。

インジウムの物理的な性質とは?

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インジウムは塊状では銀白色で周期表の第13族に属する金属になります。展延や延性に優れており、特に大切な性質は低融点である事と薄膜状では透明になる事です。金属材料なのでインジウムは電気を通しますが、透明で電気を通す材料はほぼありません。

また、どのくらい融点が低いかと言いますと、156℃しかなく、金属全体でもここまで低い金属は珍しいです。ナイフで切れるほどの柔らかさも持っているため、加工がしやすい事も特徴となります。

インジウムの化学的な性質とは?

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空気中、常温では安定して存在できます。酸と反応し溶解しますが、塩基や水、有機溶媒には溶解しません。酸水溶液中では水素を発生させながら、生成したインジウム三価が溶解します。人体への毒性は低いとされていますが、特定のインジウム化合物の中には強い肺障害性を発生する報告もあるため、注意が必要です。

化学反応に使用する事は少なく、反応例もほぼありません。有機インジウム反応剤を調整し、アルキル鎖を伸ばす方法や、カップリング反応に使用するパラジウム触媒の還元剤としての使用例があります。

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