今回は「蒸気機関車の仕組み」について解説していきます。

蒸気機関車は鉄道車両の1つです。蒸気機関車と聞くと、煙を出しながら進む大迫力の黒い車体を思い浮かべる方も多いでしょう。では、その蒸気機関車はどのような仕組みで走っているのでしょうか。今回は、その疑問に対する答えを基礎から丁寧に説明していきます。ぜひこの記事を読んで、蒸気機関車の仕組みについて勉強してみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

蒸気機関車について知ろう!

image by iStockphoto

突然ですが、皆さんは蒸気機関車をご存知でしょうか?蒸気機関車は鉄道車両の1種で、黒い煙を出している姿が印象的ですよね。今回の記事では、蒸気機関車の仕組みについて深堀りしていこうと思います

しかしながら、蒸気機関車そのものについてよく知らないという方も少なくないことでしょう。そこで、記事の前半では、蒸気機関車とは一体何かのかそれはどのような歴史を持っているのかといった点についてまとめました。

これらを知っておけば、蒸気機関車の仕組みについてもスムーズに理解できますよ。それでは早速、蒸気機関の概要について述べます。

蒸気機関車とは?

蒸気機関車とは?

image by Study-Z編集部

蒸気機関車は、蒸気機関と呼ばれる動力(エンジン)をもとに走行する機関車のことをさします。機関車は、客車や貨車を引っ張る役割を担いますよ。

蒸気機関はワットが発明した熱エネルギーを運動エネルギーに変換する装置で、18世紀にイギリスではじまった産業革命の原動力になったものです。蒸気機関車も産業革命期にイギリスで誕生しました

蒸気機関車の英語名は、「Steam Locomotive」であり、日本ではSLという呼び名でも親しまれていますよ。日本の蒸気機関車は、ほとんどが黒く塗装されています。この影響もあって、蒸気機関車と聞くと、黒色を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

蒸気機関車の歴史

蒸気機関車は産業革命期にイギリスで発明され、1814年に初めての走行に成功しました。その後、鉄道の普及と同時に、世界中で蒸気機関車が走るようになりますよ。

日本では、1872年(明治5年)に鉄道が開通したときに、はじめて蒸気機関車が輸入されましたよ。電気で走る電車の技術が発達する前、蒸気機関車は日本中を走り回っていました。

しかしながら、低いエネルギー変換効率・高いコスト・煙害などの問題をかかえる蒸気機関車は少しずつ姿を消していくことになります。現在、日本国内では、観光目的以外で走っているものや博物館で展示されているもの以外に蒸気機関車を目にすることはできません。

\次のページで「蒸気機関車の仕組み」を解説!/

蒸気機関車の仕組み

The main components of a steam locomotive (click to enlarge)
By SCHolar44, adding to previous work by AGoon and Panther. - Commons – File:Steam locomotive scheme - detailed.png, CC BY-SA 3.0, Link

蒸気機関車がどのような乗り物かがわかったところで、ここからは本題である「蒸気機関車の仕組み」について学んでいきましょう。蒸気機関車の仕組みを知ると、物理学や化学についての知識を深めることができますよ。

蒸気機関車では、燃料を燃やしてから車輪を動かすまでの間、何度かエネルギーが変換されます。今回は、このエネルギー変換のメカニズムに注目して、仕組みを説明していきますね。

火室:化学エネルギーを熱エネルギーに変換

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蒸気機関車におけるエネルギー変換の過程で、一番最初に見られるのは「化学エネルギーから熱エネルギーへの変換」です。この様子は、蒸気機関車の火室で見られます。火室では、燃料の石炭を燃焼させることで熱エネルギーを発生させるのです。

多くの蒸気機関車において、火室の燃料投入口は運転席の中に設置されています。ここに、乗務員をつとめる人が次々と石炭を運び入れるのです。このことから、蒸気機関車を運転するためには、運転手さん以外にも乗組員が必要になることがわかりますね

ボイラー:熱エネルギーから水蒸気を発生させる

Cutaway steam locomotive.jpg
Parrot of Doom - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

火室で作られた熱エネルギーはボイラーに移動します。ボイラーでは、熱エネルギーで水を温めて、水蒸気を発生させますよ。以上のような理由から、蒸気機関車を走らせるためには、水を用意する必要があるのです。実際、蒸気機関車が現役で走行していた時代は、多くの駅に給水塔が設置されていましたよ。

ボイラーは蒸気機関車のボンネット部分に搭載されており、上に示した写真のように何本ものパイプによって構成されています。このパイプの構造が複雑であるため、蒸気機関車のメンテナンスにはコストと時間の両方がかかったそうです。また、蒸気機関車のボイラーが爆発する事故などもあり、安全面でも課題をかかえていたことがわかりますよね。

\次のページで「シリンダーエンジン:水蒸気を運動エネルギーに変換」を解説!/

シリンダーエンジン:水蒸気を運動エネルギーに変換

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ボイラーで発生した水蒸気はシリンダーエンジンに送り込まれます。ここで、水蒸気のエネルギーは運動エネルギーに変換されますよ。シリンダーエンジンでは、水蒸気の圧力変化を利用して、往復運動を生み出すことができるのです。

多くの蒸気機関車において、シリンダーエンジンは先頭部分の脇に設置されていました。上に示した写真に写りこんでいる黒い箱が、シリンダーエンジンの格納されている場所になります。

動力変換装置:往復運動を円運動に変換

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シリンダーでは、水蒸気の熱エネルギーが往復運動に変換されますが、このままでは蒸気機関車を前に進めることができません。蒸気機関車を前進させるには、車輪を回転させる必要があり、そのためには円運動のエネルギーが必要です

このような理由から、蒸気機関車には往復運動を円運動に変換する機構が用意されています。シリンダーエンジンと車輪は、主連棒・偏心棒・連結棒などの複数の剛体で接続されており、これらが動力変換装置の役割を担いますよ。

上に示した写真にも、車輪に接続されている複数の金属棒を見つけることができます。この金属棒こそが、動力変換装置なのです。

鉄道の黎明期を支えた蒸気機関車の仕組みを知ろう!

私たちが日々利用する電車ですが、今から1世紀ほど前、その電車が走っている線路には蒸気機関車が走っていました。そして、蒸気機関車は様々な分野の機械職人によって作られた工芸品とも言えるほど、当時の技術を結集して作られたものなのです。

ですから、蒸気機関車について知ると、化学や物理学の幅広い知識が身に付きます。ぜひこの機会に、蒸気機関車の仕組みについて理解を深めてみてくださいね。

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化学古典力学熱力学物理物理学・力学物質の状態・構成・変化理科生活と物質

3分で簡単蒸気機関車の仕組み!SLの中でエネルギーが変換される?現役理系学生ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は「蒸気機関車の仕組み」について解説していきます。

蒸気機関車は鉄道車両の1つです。蒸気機関車と聞くと、煙を出しながら進む大迫力の黒い車体を思い浮かべる方も多いでしょう。では、その蒸気機関車はどのような仕組みで走っているのでしょうか。今回は、その疑問に対する答えを基礎から丁寧に説明していきます。ぜひこの記事を読んで、蒸気機関車の仕組みについて勉強してみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

蒸気機関車について知ろう!

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突然ですが、皆さんは蒸気機関車をご存知でしょうか?蒸気機関車は鉄道車両の1種で、黒い煙を出している姿が印象的ですよね。今回の記事では、蒸気機関車の仕組みについて深堀りしていこうと思います

しかしながら、蒸気機関車そのものについてよく知らないという方も少なくないことでしょう。そこで、記事の前半では、蒸気機関車とは一体何かのかそれはどのような歴史を持っているのかといった点についてまとめました。

これらを知っておけば、蒸気機関車の仕組みについてもスムーズに理解できますよ。それでは早速、蒸気機関の概要について述べます。

蒸気機関車とは?

蒸気機関車とは?

image by Study-Z編集部

蒸気機関車は、蒸気機関と呼ばれる動力(エンジン)をもとに走行する機関車のことをさします。機関車は、客車や貨車を引っ張る役割を担いますよ。

蒸気機関はワットが発明した熱エネルギーを運動エネルギーに変換する装置で、18世紀にイギリスではじまった産業革命の原動力になったものです。蒸気機関車も産業革命期にイギリスで誕生しました

蒸気機関車の英語名は、「Steam Locomotive」であり、日本ではSLという呼び名でも親しまれていますよ。日本の蒸気機関車は、ほとんどが黒く塗装されています。この影響もあって、蒸気機関車と聞くと、黒色を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

蒸気機関車の歴史

蒸気機関車は産業革命期にイギリスで発明され、1814年に初めての走行に成功しました。その後、鉄道の普及と同時に、世界中で蒸気機関車が走るようになりますよ。

日本では、1872年(明治5年)に鉄道が開通したときに、はじめて蒸気機関車が輸入されましたよ。電気で走る電車の技術が発達する前、蒸気機関車は日本中を走り回っていました。

しかしながら、低いエネルギー変換効率・高いコスト・煙害などの問題をかかえる蒸気機関車は少しずつ姿を消していくことになります。現在、日本国内では、観光目的以外で走っているものや博物館で展示されているもの以外に蒸気機関車を目にすることはできません。

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