今回は「力学的エネルギー」について解説していきます。

力学的エネルギーは力学を学ぶ上で重要になる概念であり、中学・高校の理科の授業でも大々的に扱われているぞ。しかしながら、その厳密な定義や応用例といった部分に踏み込んだ解説は少ない。そこで、この記事では力学的エネルギーについての基本的な知識だけでなく、工学などにおける具体的な応用例も解説するつもりです。ぜひこの機会に、「力学的エネルギー」についての理解を深めてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

力学的エネルギーの定義を知ろう!

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今回の記事のメインテーマは『力学的エネルギー』です。この言葉は中学校の理科の授業で大々的に取り上げられるので、聞き覚えのある方も多いでしょう。しかしながら、力学的エネルギーの正体を厳密に説明するのは難しいかもしれません。

そこで本記事では、最初に力学的エネルギーの定義を確認することにしました。運動エネルギー→ポテンシャルエネルギー→力学的エネルギーの順で定義を説明していきます。それでは早速、解説をはじめますね。

その1.運動エネルギー:運動する物体がもつエネルギー

その1.運動エネルギー:運動する物体がもつエネルギー

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運動エネルギーは、運動する物体がもつエネルギーのことです。ここにおける運動とは、移動および回転のことをさしますよ。まずは、移動に伴う運動エネルギーを考えましょう。速度ベクトルvで移動する質量mの物体がもつ運動エネルギーKは、K=(1/2)mv2となります。この式はニュートンの運動方程式から導出されますよ。

続いて、回転に伴う運動エネルギーを考えますね。角速度ωで回転する慣性モーメントIの物体がもつ運動エネルギーKは、K=(1/2)Iω2となります。慣性モーメントは物体の回転しやすさを表す指標で、その値が大きくなるほど物体の回転に必要なエネルギーは増えるのです。以上が、運動エネルギーの定義となります。

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その2.ポテンシャルエネルギー:物体の位置関係に依存するエネルギー

その2.ポテンシャルエネルギー:物体の位置関係に依存するエネルギー

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ポテンシャルエネルギーは、物体の位置関係に依存するエネルギーのことです。ポテンシャルエネルギーには、重力による位置エネルギーバネによる弾性エネルギーなどが存在します。今回はこの2つのポテンシャルエネルギーを例にとって説明をしますね。

重力による位置エネルギーUは、基準水平面からの高さhを用いて、U=mghと表現されます。mは質量で、gは重力加速度です。一方、バネによる弾性エネルギーUは、U=(1/2)kx2となります。ここで、kはバネ定数、xは変位です。

他にも、電場・磁場によるポテンシャルエネルギー万有引力によるポテンシャルエネルギーなどが存在しますが、説明が長くなるので今回は割愛します。

その3.力学的エネルギー:運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和

その3.力学的エネルギー:運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和

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一般に、力学的エネルギーEは固定された系の運動エネルギーKとポテンシャルエネルギーUの和で表されます。これを数式で表現すると、E=K+Uとなりますよ。

「系」という言葉に馴染みのない方もおられるかもしれません。系は物理学における現象の見方のことを表しますよ。例えば、ボールの投射運動をみるとき、ボールを対象に力学的エネルギーを観測したとします。このとき、ボールが1つの系になるのです。

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力学的エネルギー保存則について解説!

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力学的エネルギーについて学ぶと必ず目にするものが、「力学的エネルギー保存則」です。この法則を知っていると、物理学における計算が簡単になることがあるので、多くの教科書や参考書で取り上げられいます。また、力学的エネルギー保存則は、身近な物理現象を直感的に理解する助けにもなりますよ。

本チャプターでは、力学的エネルギー保存則とは何か力学的エネルギー保存則の具体的な例は何か、といった点を深掘りしていきますね。ぜひ最後まで記事を読んでみてください。

力学的エネルギー保存則とは?

力学的エネルギー保存則は、系に対して保存力以外が仕事をしないとき、系における力学的エネルギーが常に一定になるという法則です

保存力は、物体の移動経路にかかわらず仕事量が同じになる力として定義されます。例えば、重力・フック力・万有引力・クーロン力などが保存力に分類されるのです。一方で、摩擦力や空気抵抗などは移動経路が増えるほど仕事量が増えてしまうので、非保存力に分類されますよ。

以上が力学的エネルギー保存則の概要となります。力学的エネルギー保存則を用いる際には、成立条件を確認することが重要になりますよ。

力学的エネルギー保存則の具体例

力学的エネルギー保存則の説明でよく用いられるものは、ジェットコースターの運動です。以下では、ジェットコースターに保存力以外が作用しないという条件で話を進めていきますよ。ジェットコースターは最初に動力によって一番高い場所まで持ち上げられます。このとき、位置エネルギーは最大になり、運動エネルギーはゼロです。

その後、ジェットコースターは加速し、最下点に至りますよね。このとき、位置エネルギーはゼロになり、運動エネルギーは最大になります。このとき、(最高点における位置エネルギー)=(最下点における運動エネルギー)という式が成り立つことが重要なポイントです。つまり、位置エネルギーと運動エネルギーはトレードオフになるということですね。

そして、再びジェットコースターが上昇するときは、運動エネルギーが位置エネルギーへと置き換わり、ジェットコースターは減速します。このとき、外部の動力は必要としません。

\次のページで「力学的エネルギーの減衰」を解説!/

力学的エネルギーの減衰

現実世界では、保存力以外に摩擦力などが存在し、それが系に対して仕事をしますよ。ジェットコースターを例に挙げると、レールと車体の間に摩擦力が作用し、力学的エネルギーの総量は少なくなっていきます。摩擦力により、力学的エネルギーが熱エネルギーに変換されてしまうのです

それゆえ、ジェットコースターの力学的エネルギーは最終的にゼロになり、完全に停止してしまいます。このように現実世界の現象を力学で解こうとすると、非保存力の考慮が必要になることも覚えておきましょう。

力学的エネルギーについて学ぶ意義

この記事では、力学的エネルギーの定義と力学的エネルギー保存則について詳しく説明しました。これらは、力学の学習の中でも、一二を争うような重要な概念です。また、物理学の他分野を学ぶ際にも、力学的エネルギーを理解する過程で身につくエネルギーの基本的な概念が役に立ちます。

また、身近な現象とも関係の深い概念ですがから、雑学として知っておいても損はしないでしょう。ぜひ、この機会に力学的エネルギーについて詳しく学んでみてくださいね。

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物理物理学・力学理科

3分で簡単力学的エネルギー!保存則の成立条件は?力学の重要公式を現役理系学生ライターが詳しくわかりやすく解説!

今回は「力学的エネルギー」について解説していきます。

力学的エネルギーは力学を学ぶ上で重要になる概念であり、中学・高校の理科の授業でも大々的に扱われているぞ。しかしながら、その厳密な定義や応用例といった部分に踏み込んだ解説は少ない。そこで、この記事では力学的エネルギーについての基本的な知識だけでなく、工学などにおける具体的な応用例も解説するつもりです。ぜひこの機会に、「力学的エネルギー」についての理解を深めてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

力学的エネルギーの定義を知ろう!

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今回の記事のメインテーマは『力学的エネルギー』です。この言葉は中学校の理科の授業で大々的に取り上げられるので、聞き覚えのある方も多いでしょう。しかしながら、力学的エネルギーの正体を厳密に説明するのは難しいかもしれません。

そこで本記事では、最初に力学的エネルギーの定義を確認することにしました。運動エネルギー→ポテンシャルエネルギー→力学的エネルギーの順で定義を説明していきます。それでは早速、解説をはじめますね。

その1.運動エネルギー:運動する物体がもつエネルギー

その1.運動エネルギー:運動する物体がもつエネルギー

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運動エネルギーは、運動する物体がもつエネルギーのことです。ここにおける運動とは、移動および回転のことをさしますよ。まずは、移動に伴う運動エネルギーを考えましょう。速度ベクトルvで移動する質量mの物体がもつ運動エネルギーKは、K=(1/2)mv2となります。この式はニュートンの運動方程式から導出されますよ。

続いて、回転に伴う運動エネルギーを考えますね。角速度ωで回転する慣性モーメントIの物体がもつ運動エネルギーKは、K=(1/2)Iω2となります。慣性モーメントは物体の回転しやすさを表す指標で、その値が大きくなるほど物体の回転に必要なエネルギーは増えるのです。以上が、運動エネルギーの定義となります。

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