今回は「ニオブ」という元素について解説していきます。オスミウムは知名度が低い元素ではありますが、とても優れた特徴を持つ希少な金属です。ニオブにしかできないこと、代替がない重要な物質と言えるでしょう。この記事では、ニオブの特徴、利用例等を化学に詳しいライターY.oBと一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。大学から現在まで化学に携わってきた元素に詳しいライター。

ニオブとは何?

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ニオブという元素をご存じでしょうか?この元素は理科や高校化学でもほとんど紹介されないほど影が薄い存在です。しかしながら、ニオブは特定の分野ではなくてはならない存在であり、皆さんの生活を支える縁の下の力持ちでもあります。

この章ではニオブについて、特徴や性質について学んでいきましょう。

ニオブの特徴

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原子番号41、元素記号Nbの希少金属の一つ。柔らかく灰色で結晶質の延性のある遷移金属でもあり、パイロクロアやコルンブ石といった鉱物としてしばしば産出されています。

ニオブという名前はギリシア神話のニオベーが由来です。ニオベーはタンタロス(タンタルの語源)の娘ですが、タンタルとニオブが物理的・化学的に非常によく似ており、区別を付けづらいという特徴が反映されています。

ニオブの物理的な性質とは?

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ニオブは光沢のある灰色で、展延性を持ち、常磁性を持った周期表の第5族に属する金属です。最外殻電子の配置は第5族としては変則的になっています。また、重要な性質として、ニオブは極低温において超伝導になる事です。

超伝導とは特定の金属を冷やしていくと電気抵抗が急激に0になる現象。ニオブは極低温ではあるが、大気圧下、最も高い臨界温度で超伝導になります。さらに、ニオブは第2種超伝導体(常伝導と超伝導の中間相)です。これはバナジウムおよびテクネチウムと並んで、3つだけしか存在しません。

ニオブの化学的な性質とは?

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室温で長期間空気にさらされると、青色に呈色します。元素としては高い融点(2,468℃)を持ちますが、比較的密度は小さい。また、腐食耐性が高く、超伝導特性があり、誘電酸化物層を形成します。

ニオブの大きさは原子番号が1つ小さいジルコニウムに比べると、わずかに小さく、タンタルとほとんど同じ大きさです。結果、ニオブの化学的、物理的特性は周期表上での直下にあるタンタルととてもよく似ています。希少金属の一つですが、価格が安く豊富に入手可能

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ニオブの歴史と希少性について解説!

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ニオブはどのように発見され、地球上にどのくらい存在しているでしょうか。また、地球上に満遍なく存在しているのか。この章ではニオブ発見の歴史と地球上での産出場所についてご紹介します。

ニオブを発見したのは?

Charles Hatchett.jpg
Edgar Fahs Smith (1854-1928) - Scanned from The Discovery of the Elements (1933) by Mary Elvira Weeks, 3rd rev Ed, p. 77 ( First published by Mary Elvira Weeks in The discovery of the elements: VII. Columbium, tantalum, and vanadium. J. Chem. Educ. 1932, 9, 863.), パブリック・ドメイン, リンクによる

ニオブの発見をしたのはチャールズ・ハチェットです。しかし、ニオブの歴史はとても混沌としており、最終的に決定付けたのはジャン・マリニャックになります。18世紀の初頭、イングランドのチャールズ・ハチェットが鉱物標本の点検し、未知の元素(ニオブ)の酸化物が含まれていることが判明しました。しかし、化学的な性質がよく似た新元素タンタルが発見され、タンタルと未知の元素は同じ元素であると考えられるようになりました。

様々な議論があった中、最終的にスイスの化学者ジャン・マリニャックがニオブとタンタルの差異を証明し、タンタルを含まないニオブの大規模精製に成功しました。

ニオブの精製方法

ニオブの精製方法

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ニオブを得るためには、まず鉱石を溶けやすくするために粉砕します。その後フッ化水素水と硫酸に溶解し、不溶物を濾過で除去。酸濃度の高い水溶液と有機溶媒(メチルイソブチルケトン)を十分に接触させるとタンタルとニオブが有機溶媒層に抽出されるのです。

抽出液を希硫酸で逆抽出すると、ニオブだけが水溶液に移動します。水溶液にア ンモニア水を加えて水酸化物としてニオブを沈殿、濾過によりニオブ化合物を得る事ができるのです。

ニオブはどのくらい存在している?

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ニオブは地球上に満遍なく存在してはいません。しばしばタンタルと共に偏在しています。南アメリカやブラジル、カナダ、アフリカに鉱床が存在しており、それらの国が主要産出国です。ニオブとタンタルは地殻中に24ppmほど存在していると推定されています。主要産出国の供給が十分で新規鉱床の探索も必要ないと予想されているほどです。

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ニオブの用途について解説!

ニオブは合金や電子材料、光学レンズの材料等に使用され、用途は多岐にわたりますが、鉄鋼に添加剤として使用されるフェオニオブ(FeNb)が最も需要があります。この章では多岐にわたる用途の内、合金や超伝導、そして添加剤について学んでいきましょう。

ニオブの合金とは?

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宇宙産業にニオブの合金が使用されています。この合金は89パーセントのニオブ、10パーセントのハフニウム、1パーセントのチタンで構成されており、アポロ月着陸船のメインエンジンや液体燃料ロケットに使用。 スペースXのファルコン9ではロケットエンジンのノズルがニオブ合金です。

また、ニオブ超合金(高度な耐熱性が求められる合金)はニッケル、コバルト、鉄から構成されており、ジェットエンジン部品、耐熱部品、燃焼設備等に使用されています。

ニオブ合金の超伝導電磁石とは?

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ニオブの合金には超伝導磁石としての需要があります。具体的にはニオブゲルマニウム、ニオブスズ、ニオブチタンのような合金は、第二種超伝導体としてワイヤーに成形。超伝導電磁石の材料として使用します。こうした超伝導電磁石は、核磁気共鳴画像法 (MRI)、核磁気共鳴 (NMR) 装置、加速器といった用途に必要不可欠です。

例えば、大型ハドロン衝突型加速器には600トンの超伝導撚線が用いられており、ITER(国際熱核融合実験炉)には推定で600トンのニオブスズの撚線と250トンのニオブチタンの撚線が使用されていると言われています。

鋼材のおけるニオブ添加剤とは?

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ニオブは添加剤としての需要が最も大きいです。添加剤はフェオニオブ(FeNb)の状態で添加することが多く、このフェオニオブを炭素鋼 に0.1%もしくはそれ以下の量を添加すると、溶接性(材料の溶接による適合性)や靭性(圧力に対する抵抗性)が改良されます。この特徴から日本でよく材料として使用されているのはラインパルプの材料です。

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ニオブは超合金、超伝導の重要な原材料

ニオブは希少金属ですが、安価で入手も容易な点がまず材料として優秀です。一番の用途は添加剤ですが、少量で十分な効果が出せるので需要は高いと思います。宇宙産業の材料は極限状態での物性要求になるので、代替のない重要な物質であることは間違いありません。超伝導も現状ニオブ合金がほとんどあり、MRIの他にも超伝導リニアにも使用されています。今後の技術、生活を支える縁の下の力持ちのような元素です。

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化学原子・元素無機物質理科

ニオブとは一体何?用途や特徴・毒性・希少性・合金も現役研究員が5分でわかりやすく解説!

今回は「ニオブ」という元素について解説していきます。オスミウムは知名度が低い元素ではありますが、とても優れた特徴を持つ希少な金属です。ニオブにしかできないこと、代替がない重要な物質と言えるでしょう。この記事では、ニオブの特徴、利用例等を化学に詳しいライターY.oBと一緒に解説していきます。

ライター/Y.oB(よぶ)

大学・大学院と合成化学を専攻した後、化学メーカーで研究職として勤務。大学から現在まで化学に携わってきた元素に詳しいライター。

ニオブとは何?

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ニオブという元素をご存じでしょうか?この元素は理科や高校化学でもほとんど紹介されないほど影が薄い存在です。しかしながら、ニオブは特定の分野ではなくてはならない存在であり、皆さんの生活を支える縁の下の力持ちでもあります。

この章ではニオブについて、特徴や性質について学んでいきましょう。

ニオブの特徴

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原子番号41、元素記号Nbの希少金属の一つ。柔らかく灰色で結晶質の延性のある遷移金属でもあり、パイロクロアやコルンブ石といった鉱物としてしばしば産出されています。

ニオブという名前はギリシア神話のニオベーが由来です。ニオベーはタンタロス(タンタルの語源)の娘ですが、タンタルとニオブが物理的・化学的に非常によく似ており、区別を付けづらいという特徴が反映されています。

ニオブの物理的な性質とは?

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ニオブは光沢のある灰色で、展延性を持ち、常磁性を持った周期表の第5族に属する金属です。最外殻電子の配置は第5族としては変則的になっています。また、重要な性質として、ニオブは極低温において超伝導になる事です。

超伝導とは特定の金属を冷やしていくと電気抵抗が急激に0になる現象。ニオブは極低温ではあるが、大気圧下、最も高い臨界温度で超伝導になります。さらに、ニオブは第2種超伝導体(常伝導と超伝導の中間相)です。これはバナジウムおよびテクネチウムと並んで、3つだけしか存在しません。

ニオブの化学的な性質とは?

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室温で長期間空気にさらされると、青色に呈色します。元素としては高い融点(2,468℃)を持ちますが、比較的密度は小さい。また、腐食耐性が高く、超伝導特性があり、誘電酸化物層を形成します。

ニオブの大きさは原子番号が1つ小さいジルコニウムに比べると、わずかに小さく、タンタルとほとんど同じ大きさです。結果、ニオブの化学的、物理的特性は周期表上での直下にあるタンタルととてもよく似ています。希少金属の一つですが、価格が安く豊富に入手可能

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