今回のテーマは帯電です。冬の乾燥した時期にバチッとくる静電気は帯電が原因で起きている。
帯電と静電気は身近な現象ですが、非常に奥深い物理現象の1つです。帯電現象の種類は「摩擦帯電」「剥離帯電」「誘電帯電」「接触帯電」の4つがある。

今回はそれぞれの帯電現象の特徴、さらに帯電を抑える方法を物理に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

大学院を修了するまで、研究に明け暮れた理系ライター。目の前で起きた現象を深掘りすることが大好きで、化学や物理など幅広く勉強している。現在は化学メーカーで技術職として働きながら、化学や物理の楽しさを発信していく。

冬の静電気は帯電が原因

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冬場にパチッとくる静電気。特に冬の乾燥した日は静電気が発生しやすいのは、日常生活を送っていると当たり前に感じますよね。そもそも、静電気が発生するということは、物質が帯電しているということです。今回は、物質がどのように帯電するのか、そして帯電とはどのような現象なのか、解説していきます。

帯電は電子が移動する現象

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まず、私たちの身の回りの物質や人間の体は原子でできています。原子は、中心にプラス電荷をもつ陽子と電荷をもたない中性子からなる原子核を持ち、その周りを電子がまわっている構造です。

基本的にそれぞれの物質内では、プラスの原子核とマイナスの電子の電荷量は釣り合っています。そのため、プラスの電荷が偏っていることやマイナスの電荷が偏っていることはありません。

しかし、別々の物体が接触すると、接触面で電子の移動が起こります。別の物体から電子を奪った場合、物体表面の電子量が多くなるので、マイナスに帯電するんです。一方で、電子を取られた物体はプラスに帯電します。

帯電現象は身近なところで起きている!

身近な例として、下敷きを髪の毛に擦りつけた時を考えてみましょう。下敷きを髪の毛に擦りつけたとき、髪表面から下敷き側に電子が移動することで下敷きはマイナスに帯電し、髪はプラスに帯電します。プラスとマイナスは引き合うので、髪の毛は下敷き側に引っ張られるんです。

また、服を脱ぐとき「バチバチ」と静電気が発生する現象も帯電が原因。素材の異なる服同士がこすり合わされることで、片方の繊維に電子が移動するので、一方はマイナスに、もう一方はプラスに帯電します。

4つの帯電現象をそれぞれ紹介

ここからは、帯電の種類を4つ紹介していきます。帯電現象では「2つの物体が密着すること」「電子の移動が起きること」が重要なポイントです。

\次のページで「その1.接触帯電」を解説!/

その1.接触帯電

接触帯電とは、2つの物質が接触したとき物質間で電子の移動が起こり、電子を放出した側がプラスに帯電し、電子を受け取った側がマイナスに帯電する現象です。この接触帯電はこの後紹介する「摩擦帯電」や「剥離帯電」にもつながります。

その2.摩擦帯電

摩擦帯電は、2つの物質の接触面をさらにこすり合わせた時に発生する帯電現象です。摩擦は、原子レベルとみると、非常に激しい「接触」と「剥離」が繰り返されるため、より多くの電子が移動し大きな帯電量が発生します。

その3.剥離帯電

剥離帯電は重なり合った2つの物体が剥離する際に発生する帯電現象です。具体的には、液晶画面から保護フィルムをはがした直後、保護フィルムが画面に吸い付くように張り付きませんか?

この時、液晶画面と保護フィルムが剥離によって帯電しています。原理的には、接触帯電や摩擦帯電と同じですが、「剥離」という動作があるとき、剥離帯電と呼んでいるんです。

その4.誘電帯電

誘電体電は先に紹介した3つと少し異なります。

誘電帯電は物質が導体の時に限り起きる帯電現象です。ある帯電した物質が導体に近づくと、導体の表面には帯電した電荷とは逆の電荷が引き寄せられてきます。例えば、マイナスに帯電した帯電物を導体に違づけた場合、導体表面にはプラスの電荷が集まってくるんです。

この状態で導体をアースする(地面などに接地させる)と引き寄せられていない電荷は放出されるため、帯電物質によって引き寄せられた電荷のみ物質側に残ります。これが誘導帯電です。

帯電のしやすさ?「帯電列」を解説

帯電のしやすさ?「帯電列」を解説

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帯電と静電気を勉強するうえで、一番身近な表が帯電列。

帯電列は2つの物質が接触や摩擦で帯電するときに、その物質がプラスに帯電しやすいか、マイナスに帯電しやすいかを物質ごとに並べた表です。この表をチェックすることで、物質が「プラスに帯電しやすいのか」「マイナスに帯電しやすいのか」分かります。

例えば、ポリエチレンの下敷きを髪の毛に擦りつけ、摩擦帯電させた場合を考えてみましょう。帯電表から、髪の毛はプラスに帯電しやすく、ポリエチレンはマイナスに帯電しやすいことが分かります。

静電気が放電されるとバチッと感じる?

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ここからは、帯電と静電気の関係を紹介していきます。実は静電気とは、帯電して動かない電気のことを指すんです。つまり、身体が帯電している=静電気を体内にため込んでいるということ。しかし、私たちの想像する静電気とは、ドアノブや車のドアを触ろうとしたときにバチッとくる電気のことですよね。

その正体は、体内から一気に放出されていた静電気なんです。人の体は電気を通しますが、靴や靴下を履いているとアース(接地)できないので、体内に静電気をため込んでいきます(帯電していることと同じです)。

体内に溜まった静電気は電気を通す導体には流れることができるので、金属でできているドアノブを触ろうとしたとき、体内から一気に電子が移動していきます。これがバチッとくる電気の正体です。

\次のページで「製造業と静電気の関係を紹介」を解説!/

絶縁体では電気を流すことができないので、帯電した状態で絶縁物を触ってもバチッとすることはありません。帯電した状態でサランラップを触っても、バチッとくることはないですよね。

絶縁体は電気を流すことができないので、誘導帯電に似た現象で皮膚に吸い付いてきます。

製造業と静電気の関係を紹介

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最後に製造業と静電気の関係を紹介します。製造業では「静電気をどのように放出するか」が非常に重要な課題です。

保護フィルムをはがす」「配管内に液体を流す」「物を移動させる」など、物体同士が接触・摩擦されることで物質は摩擦帯電します。材料が帯電することで空気中のごみが引き寄せられ、付着してしまう。さらに静電気が、引火や火災の原因になることもあります。

そのため、製造業の現場では、「どのように物質を帯電させないようにするか」が非常に重要なポイントなんです。

最も身近な物理現象「帯電」を解説

今回は身近な物理現象の「帯電」と「静電気」について解説しました。帯電には4つの種類があり、最も身近なのは摩擦帯電です。2つの物質の擦り合わさることで大きく帯電するため、冬の時期にバチッとなる静電気も摩擦帯電が大きな原因になっています。

さらに、マイナスに帯電しやすいのかプラスに帯電しやすいのかを物質ごとに並べた帯電列を紹介しました。帯電や静電気はテストで出題されることはあまり多くありませんが、身近な物理現象のひとつなので、ぜひチェックしておいてください!

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物理物質の状態・構成・変化理科生活と物質

摩擦帯電とは?帯電のメカニズムと静電気との関係を理系ライターがわかりやすく解説



今回のテーマは帯電です。冬の乾燥した時期にバチッとくる静電気は帯電が原因で起きている。
帯電と静電気は身近な現象ですが、非常に奥深い物理現象の1つです。帯電現象の種類は「摩擦帯電」「剥離帯電」「誘電帯電」「接触帯電」の4つがある。

今回はそれぞれの帯電現象の特徴、さらに帯電を抑える方法を物理に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

大学院を修了するまで、研究に明け暮れた理系ライター。目の前で起きた現象を深掘りすることが大好きで、化学や物理など幅広く勉強している。現在は化学メーカーで技術職として働きながら、化学や物理の楽しさを発信していく。

冬の静電気は帯電が原因

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冬場にパチッとくる静電気。特に冬の乾燥した日は静電気が発生しやすいのは、日常生活を送っていると当たり前に感じますよね。そもそも、静電気が発生するということは、物質が帯電しているということです。今回は、物質がどのように帯電するのか、そして帯電とはどのような現象なのか、解説していきます。

帯電は電子が移動する現象

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まず、私たちの身の回りの物質や人間の体は原子でできています。原子は、中心にプラス電荷をもつ陽子と電荷をもたない中性子からなる原子核を持ち、その周りを電子がまわっている構造です。

基本的にそれぞれの物質内では、プラスの原子核とマイナスの電子の電荷量は釣り合っています。そのため、プラスの電荷が偏っていることやマイナスの電荷が偏っていることはありません。

しかし、別々の物体が接触すると、接触面で電子の移動が起こります。別の物体から電子を奪った場合、物体表面の電子量が多くなるので、マイナスに帯電するんです。一方で、電子を取られた物体はプラスに帯電します。

帯電現象は身近なところで起きている!

身近な例として、下敷きを髪の毛に擦りつけた時を考えてみましょう。下敷きを髪の毛に擦りつけたとき、髪表面から下敷き側に電子が移動することで下敷きはマイナスに帯電し、髪はプラスに帯電します。プラスとマイナスは引き合うので、髪の毛は下敷き側に引っ張られるんです。

また、服を脱ぐとき「バチバチ」と静電気が発生する現象も帯電が原因。素材の異なる服同士がこすり合わされることで、片方の繊維に電子が移動するので、一方はマイナスに、もう一方はプラスに帯電します。

4つの帯電現象をそれぞれ紹介

ここからは、帯電の種類を4つ紹介していきます。帯電現象では「2つの物体が密着すること」「電子の移動が起きること」が重要なポイントです。

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