この記事ではあいさつ言葉の「こんばんは」と「こんばんわ」どちらが正しいのか見ていきます。今は言い切りの単語ですが、昔は後に続く言葉があったみたいです。意味や語源をたどりながら探っていきます。今回は、情報誌の制作や、外国の方に日本語を教えた経験もある言葉好きライターいしいを呼んで、解説してもらうぞ。

ライター/いしいゆうこ

情報誌制作の仕事の後に、外国の方に日本語を教えていた経験を持つ。言葉や日本語に関する疑問が生まれると、ついつい調べ始めて止まらないと言う、調べ物好きな一面も持つ。

「こんばんは」と「こんばんわ」の意味・語源・表記

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では早速、「こんばんは」と「こんばんわ」の意味と語源、表記について見ていきましょう。

意味:夜間のあいさつ語

「こんばんは」「こんばんわ」の意味は以下のようになります。

【今晩は】 (感) 日が暮れてから,人に会ったり,人を訪ねたりした時の挨拶(アイサツ)の言葉。 〔「は」は助詞。「今晩はよい晩です」などの下を略した形〕

出典:大辞林(三省堂)「こんばんは」

日が暮れてからの、家の外の人へ向けた挨拶なんですね。ちなみに、辞書にも「こんばんは」で掲載されています。理由を掘り下げる前に正解が出てしまいましたが、「こんばんは」が正解でした。

\次のページで「語源:祝福語の略」を解説!/

語源:祝福語の略

なぜ「こんばんは」が正解なのか、それは語源を辿ることでより明確になっていきます。実は「こんばんはの語源は、「今晩は◯◯ですね」という祝福語が省略されたものでした。ちなみに、「こんにちは」も同様だそうです。現代では挨拶語として、言い切りの形が一般的ですが、昔は文章の形で相手を祝福するために使われていたのですね。

表記:正解は「こんばんは」

語源からも分かるように、元々は「こんばんは」の後ろには文章がありました。「は」は前後の文章をつなぐ助詞だったということです。しかし、時代の変遷とともに後ろが省略されてしまったのですね。図説すると以下のようになります。

こんばん+は(助詞)+〇〇ですね。→こんばん+は(助詞)[省略]

昔の人々は、後半にどんな言葉を言っていたのでしょう。気になりますが、助詞の「は」だからかと思うと、しっくり来ますね。

「こんばんは」が正しい理由は?

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「は」は助詞だから、当然と言えば当然。しかし、発音的には「わ」ですよね。 なぜ「は」と書くのでしょう。もう少し言葉の仮名表記の変遷を見ながら解説していきましょう。

その1.内閣府が告示を出した

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一つ目は国が定めたからです。仮名遣いについては、それまでも「歴史的仮名遣い」から「現代かなづかい」へ変更する旨の公布が昭和21年にあったのですが、昭和61年3月、それを更に改訂する「現代仮名遣い」が公布されました。告示には以下のようにあります。

\次のページで「その2.歴史的な言葉の変遷」を解説!/

助詞の「は」は,「は」と書く。

例 今日は日曜です  山では雪が降りました
  あるいは  または  もしくは
  いずれは  さては  ついては  ではさようなら  とはいえ
  惜しむらくは  恐らくは  願わくは
  これはこれは  こんにちは  こんばんは
  悪天候もものかは

[注意] 次のようなものは,この例にあたらないものとする。
  いまわの際  すわ一大事
  雨も降るわ風も吹くわ  来るわ来るわ  きれいだわ

出典:『常用漢字表・現代仮名遣い 外来語の表記(付 人名用漢字)』(大蔵省印刷局編集発行)

「こんばんは」も例文にしっかりと載っていますね。

その2.歴史的な言葉の変遷

国が定めたのだから、その通りとは言えるのですが、そもそも発音が「わ」なのに、どうして「は」と書くようになったかは謎ですよね。もう少し、歴史を遡って見ましょう。

実は、昔はむしろ助詞以外のものでも、文中・文末にある「わ」を「は」と発音していた時代がありました。川を「かは」と読んだ時代があったのです。それを近代、音声に基づいた表記に戻しました。その際、助詞は「は」のままで残ったのですね。

その3.混在しているのはなぜ?

混在の謎を解くためには、改訂された現代仮名遣いが告示された時期が鍵となります。この告示が出たのは、1986(昭和61)年。よく考えてみると、まだ「こんばんは」と書く事が明示されてから、35年ほどしか経っていないのですね。

その前は「こんにちは」「こんばんわ」どちらも正しい表記だったそうです。そのために、年代によっては「わ」が正しいと習っていた人たちもいます。まだ「こんばんは」のみが正しいとなってから、それほど経っていないのですね。

「こんばんは」が正解。しかし歴史は浅い

今まで見てきたように、「こんばんは」が正しい事が分かりました。しかし、元々「わ」の発音が「は」であって、表記の方を音に合わせていき、助詞だけが「は」として残ったと言う流れだったのですね。

そのような事情があったにも関わらず、告示に例として明示がされたのは昭和61年。とっても最近で、それまではどちらでも良いと言うことになっていたから、今でも「こんばんわ」の表記が残っているんですね。ですが、今は「こんばんは」が正しいとされましたので、そちらを使っていくようにしましょう。

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雑学

「こんばんは」と「こんばんわ」どちらが正解?世代で違う?意味や語源を元情報誌制作ライターがわかりやすく解説!

助詞の「は」は,「は」と書く。

例 今日は日曜です  山では雪が降りました
  あるいは  または  もしくは
  いずれは  さては  ついては  ではさようなら  とはいえ
  惜しむらくは  恐らくは  願わくは
  これはこれは  こんにちは  こんばんは
  悪天候もものかは

[注意] 次のようなものは,この例にあたらないものとする。
  いまわの際  すわ一大事
  雨も降るわ風も吹くわ  来るわ来るわ  きれいだわ

出典:『常用漢字表・現代仮名遣い 外来語の表記(付 人名用漢字)』(大蔵省印刷局編集発行)

「こんばんは」も例文にしっかりと載っていますね。

その2.歴史的な言葉の変遷

国が定めたのだから、その通りとは言えるのですが、そもそも発音が「わ」なのに、どうして「は」と書くようになったかは謎ですよね。もう少し、歴史を遡って見ましょう。

実は、昔はむしろ助詞以外のものでも、文中・文末にある「わ」を「は」と発音していた時代がありました。川を「かは」と読んだ時代があったのです。それを近代、音声に基づいた表記に戻しました。その際、助詞は「は」のままで残ったのですね。

その3.混在しているのはなぜ?

混在の謎を解くためには、改訂された現代仮名遣いが告示された時期が鍵となります。この告示が出たのは、1986(昭和61)年。よく考えてみると、まだ「こんばんは」と書く事が明示されてから、35年ほどしか経っていないのですね。

その前は「こんにちは」「こんばんわ」どちらも正しい表記だったそうです。そのために、年代によっては「わ」が正しいと習っていた人たちもいます。まだ「こんばんは」のみが正しいとなってから、それほど経っていないのですね。

「こんばんは」が正解。しかし歴史は浅い

今まで見てきたように、「こんばんは」が正しい事が分かりました。しかし、元々「わ」の発音が「は」であって、表記の方を音に合わせていき、助詞だけが「は」として残ったと言う流れだったのですね。

そのような事情があったにも関わらず、告示に例として明示がされたのは昭和61年。とっても最近で、それまではどちらでも良いと言うことになっていたから、今でも「こんばんわ」の表記が残っているんですね。ですが、今は「こんばんは」が正しいとされましたので、そちらを使っていくようにしましょう。

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