「普通選挙法」はいつ制定された?治安維持法との関係や女性の参政権などを歴史好きライターがわかりやすく解説
現在の日本の選挙に問題はあるか?
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現在の日本では完全普通選挙が実現していますが、依然として選挙制度などに問題があると考えられます。どんな問題が存在しているのか、改めて見ていくことにしましょう。
一票の格差
一票の格差とは、一票の重みに不平等が生じる現象のことです。都道府県や市町村の区割りに準拠する選挙区を設定する場合、選挙区ごとに有権者の数が異なる状況が発生します。特に都道府県を単位とする参議院選挙区は格差が生じやすく、人口比で6倍以上の格差が生まれたこともありました。
いわゆる一票の格差是正の訴訟は、1960年代から起きています。違憲判決が出ることもありますが、事情判決の法理により選挙自体が無効になったことはありません。区割りを変更するなどで対応していますが、人口の多い都市部の意見が優先されて人口減に悩む地方の意見が軽視されやすくなるという事態も起こりつつあります。
低い投票率
2003(平成15)年より期日前投票制度が導入され、従来の不在者投票よりも要件や投票方法が簡素化されました。それにより、投票日に仕事や病気などで投票所に行けない人も投票する機会が増えることになります。2021(令和3)年の総選挙では、有権者の約15%が不在者投票を利用しました。
しかし、若い世代の投票率が低いことに懸念すべきでしょう。過去30年で行われた総選挙では、20代の投票率がすべて半数を割っています。2016(平成28)年から選挙権が18歳以上に引き下げられましたが、2回行われた総選挙ではいずれも10代の投票率は40%台です。若い世代への啓発活動が求められるのは言うまでもありません。
日本は完全な普通選挙の実現までに多くの時間を要した
日本に帝国議会が設立されてから、しばらくは一部の者にしか選挙権が与えられませんでした。1924(大正13)年の普通選挙法成立により、25歳以上の男子すべてに選挙権が与えられるようになります。しかし、普通選挙法でも女性に参政権は与えられず、同時に制定された治安維持法は濫用されました。女性にも参政権が付与されたのは、戦後になってからのことでした。