
冷媒はどうやって物を冷やすの?その仕組みを解説!

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冷媒が物質を冷やすために大事な働きは熱交換です。液体から気体に変化するとき、周囲から熱を奪い、逆に、気体から液体に変化するときには周囲に熱を放出します。前者の奪われる熱を気化熱、後者の放出される熱を凝縮熱です。
冷媒は気化熱によって周囲から熱を奪い、別の場所に移動してから凝縮熱によって熱を放出することで熱を運ぶ役割を果たします。これが熱交換です。この熱交換を連続的に行うことで、空間の気温を下げることができ、これは冷凍サイクルと呼ばれます。冷凍サイクルを効率的に繰り返すためには気体と液体それぞれの状態を容易に行き来しなければならないため、冷媒には特定の温度域を持つガスが選ばれるのです。
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冷媒は環境問題の原因になる?
冷媒に使われているフロンは長年環境への悪影響が懸念されています。
中でもオゾン層の破壊と地球温暖化に与える影響が大きな問題です。フロンの中には燃えやすかったり、人体に有毒なものがあり、地球環境にも人体にも影響の少ないフロンの開発が求められています。なので、環境に対して配慮された冷媒(ガス)の開発が求められているのです。
オゾン層を破壊する
NASA – http://www.nasa.gov/vision/earth/lookingatearth/ozone_record.html, パブリック・ドメイン, リンクによる
冷媒が環境に与える悪影響の最も代表的なものがオゾン層の破壊です。
クロロフルオロカーボンなどのフロンと総称される物質は塩素(クロロ)を含む化合物ですが、不燃性・無毒性であり、化学的に安定しています。安定性が高いので大気中に放出されても、ほとんど分解されないまま成層圏に至りますが、太陽からの紫外線によって分解され塩素分子を放出するのです。この塩素分子のせいでオゾン層は破壊されます。
そのため、クロロフルオロカーボンは初期の冷房装置、冷温冷凍機やカーエアコン、電気冷蔵庫で使われてきた冷媒ですが、1987年に採択されたモントリオール議定書において、生産中止・全面廃止が決定され、特定フロンと呼ばれるようになったのです。現在ではハイドロフルオロカーボンが主流であり、代替フロンと呼ばれています。
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地球温暖化の原因になる
コイコイ – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる
冷媒が環境に与える悪影響として、オゾン層の破壊以外にも地球温暖化があります。理由は冷媒が温室効果ガスとして働くからです。
太陽からの光で温められた熱は、地表から地球の外に向かって放射されます。この時、温室効果ガスは放射された赤外線を吸収し、地表を温めるのですが、このことを温室効果といい、この効果をもたらす気体が温室効果ガスです。
一般的に二酸化炭素が温室効果ガスの代表としてよく知られています。しかし、ハイドロフルオロカーボンなどの冷媒の地球温暖化係数は二酸化炭素の数百倍から1万倍であり、二酸化炭素よりも非常に強力な温室効果ガスなのです。
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捨て方は?
冷媒の使用されている家電はそのままゴミとして廃棄できず、専門の業者が処理しなければならないので注意が必要です。
製造メーカーや販売店に引き取ってもらったり、ごみ処理業者に依頼したり、県に登録を有するフロン類充填回収業者に依頼してフロンガス抜いた後に廃棄する必要があります。
環境に優しい冷媒はあるの?
現在、使用されている冷媒で環境に悪影響がないものは残念ながらありません。
オゾン層破壊への影響がないことからハイドロフルオロカーボンが、現在使用されている冷媒の主流ですが、地球温暖化への影響は依然として残ったままです。
最近では、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)がオゾン層への影響もなく、地球温暖化への影響が低い(ハイドロフルオロカーボンの約1/6)ことから、注目されていますが、燃焼性は高いことや、毒性による人体への影響が課題となっています。その他、プロパンガスやブタン、プロピレンなども候補ですが、地球温暖化係数は低く効率もいいものの、燃焼性が高いため安全性は低くなるのが課題です。
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